第45話 最強魔法とロベルト・パーカー
「すごいじゃないの!さすが私の騎士団ね!」
そう言って大喜びしているのはロゼだ
「大したもんだ、驚いたぜ!」
ポイヤックの元将軍、ガルドも大笑いしている。
「珍しいこともあるものですね。新設騎士団がランキングに載るなど、聞いたことがありません。いったい何がどう間違って評価されたのやら」
そう言って辛辣なコメントをくれたのは財政官のラインバッハだ。
だが俺もラインバッハの意見に賛成だ。
ランキングに載った喜びよりも、一体なぜ俺たちがという気持ちの方が強い。
100位とは言え、今のムートン騎士団ではランキングに載るほどの実力はない。
「おいラインバッハ!せっかくルークたちが頑張ったのに水差すんじゃねーよ!」
すかさずガルドがラインバッハに噛み付く。
ラインバッハはやれやれと首を振るばかりで、相手にしない。
この二人にとってはいつものやりとりだ。
「コメントに書いてある」
一等書記官のセレティアが言う。
「ふふふ、その通りよ。」
そう言ってロゼが騎士団ランキングの詳細欄を読み上げる。
『ムートン騎士団は新興の騎士団でありながら、報酬に関わらず緊急度の高い依頼を多くこなすなど、その振舞いには一流の騎士の素質を感じさせる。騎士団長と副長は、若年ながらも確かな剣技を身に付けており、単身としての実力は上位騎士にも通じる。またナビゲート担当が非常に可憐で、今後の成長に大いに期待する意味でもランキング入りとした。』
そこまで読んでロゼがドヤ顔で顔を挙げる。
「さすがロベルト・パーカーね!確かな眼を持っているわ」
ロベルト・パーカーはこの騎士団ランキングの唯一無二の審査官であり、
知らぬ者のいない有名人である。
審査の目は超一流と言ってもいいもので、
彼に発掘され一流の騎士団への階段を駆け上っていった騎士団も多い。
公明正大、かつ万人に平等。国家すら彼に意見することは出来ないと言う。
彼の存在があるからこそ、
この騎士団ランキングはその影響力を保っていられると言っても過言ではなかった。
だが、ロベルト・パーカーよ最後の一文だけは必要だったのか。
「私って可憐ですか・・・?」
テレシアは騎士団ランキングがよく分かっていない様子ではあったが
ヘラヘラとまんざらでもない様子であった。
おい、ダラしない顔をするな。
「これで報酬額も上がる」
ヒナタもまた違う形で喜んでいた。
この数週間は報酬額をほぼ度外視で、かたっぱしから依頼を受けていたため、
ヒナタはかなりストレスを溜めている様子だった。
まさかランキングに載るとは予期していなかったが、
ヒナタの我慢に報いることが出来てよかった。
「さぁ、今夜はお祝いよ!」
ロゼの声に、ミリアルドが反応する。
「承知しております」
分不相応ではあるが、これだけ喜んでくれるのであれば素直に祝われるとしよう。
ここで俺だけが乗り気でないのは、水を差すと言うものだ。
その晩は、ミリアルドさんとヒナタが腕を振るい大宴会となった。
ボルド王国への出立まであと3日。
100位なんてなんの後ろ盾にもならないが、
それでも俺たちが弾みを付けるには充分であった。
・・・
・・
・
「おい、ジーク。見たか?」
聖都騎士団のシャトーに飛び込んできたトーマスが言う。
「何をだ?」
そう答えるのはルークの父、ジークだ。
「何って、これに決まってんだろ!」
そう言ってトーマスが机に叩き付けたのは騎士団ランキングの紙面であった。
「ルークのやつやりやがった!Cクラスに昇格したのも早すぎるってのに、今度は騎士団ランキングだってよ!さすがお前の子だな!」
トーマスは我が事のように喜んでいる。
だが実の父親であるジークの反応はまた違ったものであった。
「・・・まだまだだよ。それよりトーマス。例の依頼の件は片付いたのか?」
そう言ってジークはトーマスをジロリと睨む。
トーマスにはここ数日、ある事件を調査する依頼を担当して貰っているのだ。
「・・・う、いや。それはまだ進展が」
「もしかして進展も無しに帰ってきたのか?これを俺に見せるためだけに」
ジークの圧力に、トーマスは冷や汗をかいている。
「違うって!聖都内で裏付けを取る必要があったから戻ってきたんだ!こうしちゃ居られない、俺は調査を進めに先に失礼するぜ!」
そう言ってトーマスは、来た時と同様慌ただしくシャトーから出ていった。
その様子をジークはため息をついて見送った。
誰もいなくなった部屋で、ジークはトーマスの持ってきた騎士団ランキングを手にとった。
そして我が子の活躍を読み、思わず笑みがこぼれるのを必死で我慢するのであった。
「・・・この紙面は、永久保存しておくか」
ジーク=ピースクラフト。
聖都騎士団の騎士団長として名高いこの男であったが、
遅過ぎた子離れを果たした結果、なぜか親バカへと急激な進化を遂げつつあった。




