第44話 最強魔法と騎士団ランキング
早朝。
いつもの様に騎士組合に行くと、なぜか周囲からの視線を感じた。
ヒナタとテレシアに無遠慮な目を向けてくる輩は多いが、
これはいつもとは少し違う感じがした。
なんなんだ。
「あ、噂をすればルークさん!おはようございます!」
組合に入った俺たちを見つけて、受付嬢さんが駆け寄ってくる。
彼女とはすっかり顔なじみになり、今では気軽に話をする仲だ。
「大変ですよ!これを見てください!」
受付嬢さんがそう言って手に持った紙束を見せてくれた。
「なんですか、俺たちの噂って。なになに、お、騎士団ランキングか。最新版が出たんですね」
騎士団ランキングとは騎士組合が発行する騎士団の序列表である。
組合に所属する騎士団は大小合わせて千を超える。
おおよそ半年に一度更新され、騎士団の強さや、国や街への貢献度、人々からの評判や、人気。
全てが洗いざらいに評価され、それがランキングになるのだ。
このランキングを楽しみに待っているファンも多くおり、国民には広く周知されていた。
騎士にとってランキングはかなり重要なものだ。
高いランキングの騎士団であればあるほど騎士組合の依頼量や報酬額も上がっていく仕組みだ。
またこのランキングを参考にして、勅命依頼なども届く。
高いランキングの騎士団に所属する事が一種のステータスでもある。
「それで、今回はどんな感じかね」
俺は紙束の一枚目から目を通していく。
1位 ラフィット騎士団
2位 オブリオン騎士団
3位 マルゴー騎士団
4位 ラトール騎士団
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やはり想像した通り。
ランキングのトップはSクラス騎士団の独占だった。
このあたりは鉄板だな。
ラフィット騎士団は言わずと知れたボルド王の近衛騎士団。
ボルド王国の王都防衛を担う、唯一無二の最強騎士団だ。
オブリオン騎士団は最古の騎士団とも呼ばれ、
現存の騎士団の中で最も歴史がある。
また「ボルドの救世主」と呼ばれる伝説的な老騎士が騎士団長を務めており、
実力も騎士としての気品も超一流で、すべての騎士の憧れでもある。
マルゴー騎士団はSクラス騎士団で唯一女性騎士団長が率いる騎士団だ。
騎士団長はとてつもない美貌の持ち主との噂だが、
人前に素顔を晒すことが少ないため民衆の噂の的になっている。
ラトール騎士団はメドック国家連合の中で最も堅牢なシャトーを持つ騎士団で、
主に海岸線の防御にあたっている。
元は野良騎士団から成り上がった、野性味あふれる騎士団でもある。
この4つのSクラス騎士団を総称し、4大騎士団と呼んでいる。
「まぁ、この辺は変化も起きようがないか」
俺は続けてペラペラと紙面を捲る。
4大騎士団以下はAクラスの有名騎士団が続く。
戦闘僧を中心とした、独自の宗教色を持つデストゥネル騎士団。
ロゼ達の仇敵であるテステフ国の守護騎士団、モンローズ騎士団。
有名なレオヴィル3兄弟が指揮する、ラスカーズ騎士団。
そのほかにも、名前が羅列されランキングは続く。
どこもかしこも第一線で活躍している名前ばかり。
ようやく知らない名前が出てくるのが50位を超えたあたりだ。
だがそれでもBクラスやCクラスの上位騎士団であることは間違いない。
ちなみに父さんとトーマスの居る聖都騎士団は50位以下だ。
聖都防衛に専念しているため、あまり注目されることが無いのだという。
「これの何が、大変なんですか?」
俺は受付嬢さんに尋ねる。
「諦めないでちゃんと最後まで読んでください!」
受付嬢さんに急かされて俺はランキングの続きを読む。
記載されているのは100位までだ。
俺は最後まで流し読みをするつもりであったが、
100位に記載されている騎士団の名前で目が止まった。
紙面を見たまま固まる俺を見て、
ヒナタとテレシアが異変に気が付く。
「どうしたんですか?ルーク君」
「何事?」
俺の手元にあるランキングに同じように目を通す二人。
ふむふむと上から目線を下げていくが、
彼女らもまた、俺と同じところで動きを止めるのであった。
100位 ムートン騎士団
そこにあったのは結成一か月にも満たない、俺たちの騎士団の名前であった。




