第43話 最強魔法と初めての手料理
「はい、ではこちらが成功報酬です」
受付嬢さんが、布袋を手渡してくれる。
ズシリとした重さを感じる。
「ゴブリンロード討伐は危険度の割に報酬が安くてなかなか受注してくれる人がいないんです・・・本当にありがとうございました」
受付嬢さんはペコリと頭を下げてくれた。
「いや、気にしないでください。困っている人が居るなら助けるのが騎士の務めです」
ちなみにこれは受付嬢さんを前にカッコ付けている訳ではなく、本心だ。父さんとトーマスから、騎士がどうあるべきか散々叩き込まれて育ってきたのだ。
「また何か依頼があったら、直接依頼させていただきます」
受付嬢さんに見送られながら、俺とヒナタは騎士組合を後にする。
さて、どうするか。
「どうする?ヒナタ、飯でも食べるか?」
俺はヒナタに尋ねる。
気が付けば夕方で、夕飯にしても良い時間だ。
「そうする」
ヒナタから了承を得たので、俺はあたりを見回す。
どこかに手頃な店があればいいが。
「外食は嫌い」
そんな俺の様子を見て、ヒナタが言う。
「じゃ、どうするんだ?」
「うちで食べれば良い。簡単なものなら作れる」
「え」
俺は生まれて初めて女性の部屋に招かれたのであった。
・・・
・・
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結論から言うと、ヒナタが作ってくれた料理は簡単なもの、
なんて範疇を超えた素晴らしい料理であった。
ここまで美味しい料理はこっちの世界に来てから食べていない。
このヒナタにここまでの料理スキルがあったとは、意外だった。
「お前、何者だよ」
「?どういうこと」
満腹になった腹をさすりながら、ヒナタと言葉を交わす。
そういえばヒナタとこんなにゆっくり話すのは初めてかも知れない。
しかもここはヒナタの部屋だ。
ヒナタの部屋はあまり特徴の無い部屋で、
ベッドと机、それからいくつかの小物が置いてあるだけだった。
だがここが女の子の部屋だと意識するだけでドキドキしてくる。
俺はなぜか急にヒナタの顔を見るのが恥ずかしくなってしまった。
くそー、童貞には難易度が高すぎるイベントだな。
俺は緊張を隠すために話題を懸命に探した。
「ヒナタは聖都に来るまで何をしてたんだ?騎士団を作ったのも最近だったんだろ?」
「ん、聖都で仕事を探してたら騎士団に勧誘された」
「勧誘?じゃどこかの騎士団に所属してたのか?」
「違う。勧誘してきた騎士団には私より強い人が居なかった」
「試したのか?」
「全員倒した」
さらりと言うヒナタ。
「そいつは災難だったな」
主に相手の騎士団が、だが。
「私は自分より弱い相手の下につくつもりは無い、だから騎士団を作った。とりあえず仕事がしたかったから」
「そうなのか?俺は?」
「貴方は私より強い。それに勇者」
「ヒナタより強いって言うのは自信がないけどな」
「謙遜は不要。それに、あなたはまだ強くなる」
「勇者だから、か?」
ヒナタは首を振る。
「貴方といれば、私も強くなれる。」
ヒナタから莫大な信頼を得ている事が分かった。
これは変な事をして信頼を裏切らないようにしないとな。
「ありがとう、美味かったよ」
「ん、気を付けて」
俺はヒナタに礼を言って帰路に着いた。
今日は色々とヒナタの事をしることが出来た。
明日からまた頑張ろう、もっと強くならねば、そう思えた。
・・・
・・
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そこから俺たち3人は毎日、騎士団の仕事を続けた。
オークやゴブリン、ボアファングと呼ばれる大猪の討伐など、片っ端から討伐系の依頼を片付けていった。
報酬額は二の次で、依頼が発生してから時間の経っているものや、報酬が安くて他の騎士団には忌避されるような依頼を中心に受けていた。
一ヶ月後に遠征を控えているため、聖都から離れる依頼は受注しなかったが、聖都回りには多くの魔物がいるため仕事に困ることは無かった。
元より戦力と言う意味では俺とヒナタが居れば問題ない。
加えてテレシアという優秀なナビゲーターも居るため、
俺たちの依頼達成スピードはかなりのものであった。
当然、周囲からも注目を集め、
俺たちを名指しで依頼してくる依頼人も出てきたくらいだ。
またヒナタもテレシアも見た目はかなりレベルが高いため、
そう言った意味でも注目度は高まっていた。
そしてそんな俺たちに突如、吉報が届くことになる。




