第42話 最強魔法と女神の悩み
「今の技、なに?見たこともない技」
声に反応して顔を上げると、すでにゴブリンを倒し終えたヒナタが俺の戦いを見ていた。
「<陽炎>って技だ。魔力を使って剣閃を飛ばしている。まだ改良の余地があって、2メートルも飛ばせないがな」
「剣を飛ばす。聞いたことない」
たしかにヒナタがそう言うのも仕方ないことだろう。
これは俺が前世の知識を元に編み出した技だからだ。
俺は魔法が使えない。
だが魔力がない訳では無いらしく、
むしろ一般人よりも多くの魔力を保有しているらしい。
俺はなんとか、有り余る魔力を活用する術を模索し、
この<陽炎>の開発にたどり着いたと言うわけだ。
「不思議、でも勇者なら納得」
ヒナタはそう言うとゴブリン達の剥ぎ取りを始めた。
物わかりが良いのか、興味がないのか。
不思議なやつはお前だぞ。
「そういえばテレシアはどうした?」
この戦闘の功労者は彼女だ。
「知らない」
ヒナタが答える。
俺は元居た大木の方にテレシアを探しにいく。
「おーい、テレシア?もう終わった・・・ぞ?」
そこで見つけたのは、
意識を失い倒れるテレシアの姿であった。
・・・
・・
・
「魔力の使いすぎ・・・ですな」
ベッドで眠るテレシアを診て、
ミリアルドさんが言う。
俺たちはゴブリンロードを討伐した後、
倒れたテレシアを背負い急いで聖都に帰ってきたのであった。
「使いすぎ、ですか?」
「はい、ルークさんは魔法はお使いにならないんでしたな。人には魔力の限界量があり、通常それを超えては魔法は使えません。ゆえに魔力の限界量がその魔導師の強さを表すひとつの指標になるわけです」
「テレシアは、その限界を越えた、と?」
「ええ、不思議なことですが。限界量を越えるとこうして意識を失ったりしてしまう訳です。もっと悪いと死に至ることもあります」
「死・・・ですか」
「はい。幸い彼女の症状は軽いものですが、魔法の使用には十分に注意するようにお伝えください」
「わかりました」
「では、私はこれで。何かありましたらお声がください」
そう言ってミリアルドさんは部屋からでていった。
「ごめんなさい 」
俺はその声にハッとする。
「目が覚めたのか」
「はい、そのご迷惑をおかけしました。女神の癖に魔力切れで倒れるなんて・・・本当にお恥ずかしいです」
テレシアは目元まで布団をかぶる。
「どういうことなんだ?女神が魔力不足なんて」
「じ、実は・・・」
テレシアが申し訳なさそうに話始めた。
「この身体はあくまで仮初めの身体で、最低限の魔力しか備えてないんです。探知とか索敵なんかは問題ないのですが、どうも攻撃魔法とは相性が悪いみたいで」
「なるほどな」
俺は頷く。
攻撃魔法は魔力を放出し現象を起こす。
魔力そのものを炎や風に変えて放出しているのだ。
「先日の蜘蛛と戦った後にも同じように気を失ってしまって・・・もしかしてと思っていたのですが」
「今日の戦闘で、予感が確信に変わったな。なぜそんな無理をした?」
「そ、それは・・・ルーク君の役に、立ちたくて・・・」
俺はため息をつく。
「役に立ちたいと思ってくれるのはありがたいが、倒れられても困る。テレシア、お前はしばらく攻撃魔法は禁止だ」
「そ、そんな・・・私、魔法を使えなかったらほとんど戦えません。お払い箱ですかぁぁぁ」
「誰がそんなこと言った、戦わなくていいとは言ってない。探知や索敵でも十分に貢献してくれてる」
「でも、でも・・・」
「心配するな、魔法を使えなくてもここで見捨てたりはしない。ボルド王国には連れていってやる」
「ほ、ホントにですか・・・?」
「あぁ、安心したら少し休め。顔が真っ青だぞ」
「は、はい・・分かりました・・」
そのままテレシアは眠りに着いた。
手のかかる女神だ、と俺は思った。
・・・
・・
・
俺は教会から出てヒナタと合流する。
「女神は無事?」
ヒナタが尋ねてくる。
どうやら心配していたようだ。
「あぁ、大丈夫だ。」
俺はテレシアの状況をヒナタに伝える。
もちろん人間界ツアーなんて話しは省略し、
とある事情で魔力が減少していることを話した。
「女神も大変」
ヒナタにはうまく伝わったようだった。
こいつの理解の早さと細かいことにこだわらない性格には
かなり助けられてるな。
俺とヒナタは騎士組合へと向かう。
ゴブリンロードの依頼達成を報告しなくてはならない。




