第40話 最強魔法と女神の誤算
「なるほど、人間体験ツアーね」
俺はテレシアから事の経緯を聞いた。
「はい・・」
テレシアは俺が用意してやった暖かいハーブティーを飲んでいる。
落ち着いてきた様子だ。
「それがなんで帰れなくなったんだ?」
「実は先日の戦いで通行手形を紛失してしまったみたいで・・・」
あぁ、いるよな。
旅行先で物無くすやつ。
「再発行しないと天界の門を通れないんです・・・」
「なら再発行すればいいじゃないか、簡単だろ」
「それが再発行には時間がかかる上、大使館に出向かないとダメなんです・・・」
海外旅行みたいだな。
「大使館はどこにあるんだ?聖都にはないのか?」
「はい、ありません。それどころかこの世界には数ヶ所しかなく・・・一番近くですとボルド王国ってところにあるみたいなんです」
「ボルド王国・・・」
偶然か、必然か。
テレシアが挙げたのはちょうど一ヶ月後に俺たちが向かう場所だ。
「どうしました?ルーク君」
考え込むテレシアに、今度はこちらの状況を説明してやる。
テレシアは驚いたようなリアクションのあと、深く何かを考え始めた。
「まさか、私自身もルーク君のイベントに?そんなまさか・・」
テレシアが自分の世界に入ったので、少しの間放っておく。
やがてテレシアは何かを決したように、俺の顔を見た。
「ボルド王国に、私も連れていっていただけないでしょうか?」
当然、そうなるよな。
俺は目の前の女神をどうすればいいのか考える。
まぁいい、知らない仲じゃないし。
テレシアが近くに居れば便利な事も多いだろう。
俺はテレシアの申し出を快諾する。
テレシアはかなり嬉しそうに喜んでいた。
結局、テレシアはそのまま俺の部屋に宿泊した。
もちろんベッドはテレシアに譲り、俺はソファーで寝た。
黙っていれば美少女のテレシアに、
緊張してしまい眠りに着いたのは明け方近くであった。
・・・
・・
・
翌日、俺はヒナタと待ち合わせをして騎士組合へと向かっていた。
一ヶ月後のボルド王との謁見までは引き続き地道な騎士団活動だ。
「胸が高鳴る。勇者の伝説の始まり」
ヒナタは引き続きご機嫌だ。
騎士組合の建物は相変わらず地味な建物であった。
俺はまた中央のカウンターへと足を向ける。
「いらっしゃいませー、ってあら?」
そこに居たのはムートン騎士団設立の手続きをしてくれた受付嬢さんだった。
相変わらずの美貌だ。
「お久しぶりです」
俺は彼女に話しかける。
「ルークさん、ですよね?お久しぶりです」
意外にも受付嬢さんは俺の名前を知っていた。
自己紹介したかな?
「ふふ、驚いてますね。ルークさん、ちょっとした有名人なんてですよ」
受付嬢さんの話によると、
アークタラテクトと昇格の話が噂になっているらしい。
「Cクラス昇格なんて珍しくもないですよね?」
「ふふ、でも最初の依頼達成でクラス昇格なんて聞いたことありません」
美人に褒められて悪い気はしないな。
「ルーク、依頼は?」
ヒナタに声をかけられ我に返る。
「あ、あぁ。そうだったな」
「あら、依頼ですか?それならちょうどお願いしたい依頼が届いているんです」
受付嬢さんが満面の笑みで手を合わせる。
・・・
・・
・
俺とヒナタは聖都から30分ほどのところにある平原に来ていた。
「えーっとなになに」
俺は受付嬢さんに手渡された依頼書を読む。
標的:ゴブリンロード一体
出現場所:トドロキ平原
ゴブリンロード。
ゴブリン達の小隊を率いる進化体で、
Cランクに属する魔物だ。
ちなみに魔物のランクはDからAランク。
そしてその上に災害級、天災級、伝説級がある。
上に行くほど討伐に多くの戦力を必要とする。
「とは言ったものの、どこにいるんだ」
平原は広い。
手間がかかりそうだ。
もしかして受付嬢さん、分かってて依頼したんじゃないだろうな。
面倒くさい仕事を上手く押し付けたんじゃ・・・。
「ルーク」
ヒナタに袖を引かれる。
「なんだ、ゴブリンロードが居たか?」
「あれ」
ヒナタの指を指す方を見ると、
平原に生えた木の影によく見たシルエットが見えた。
「あの時の不審者」
ダメ女神、ここまで付いてきたのか。




