第37話 最強魔法と見知らぬ天井
「キュルルルルルル!!!!!」
「やったの!?」
テレシアか叫ぶ。
おい、それはフラグだから止めろと俺は思う。
だが胴体を焼き払われたアークタラテクトは、
断末魔とも呼べるような鳴き声をあげている。
焼け焦げた胴体をよじるように苦しむが、
やがてその動きは少なくなり、次第に動きを止めた。
「キュルルル・・・ルルル・・・」
アークタラテクトの最後の声を聞き、周囲にいた蜘蛛たちも
一斉に逃げ出した。
蜘蛛の子を散らすように、とはこの様な状況を示すのだろうか。
「なんとか・・・なったな・・・」
俺はその光景を確認すると、その場に倒れ込む。
体力を使い果たし、最後に<月穿>まで放ったのだ。
俺のライフは0だ。
「ルーク君!大丈夫ですか?ルーク君」
意識が遠退くなか、テレシアの声が聞こえた。
あぁそうだ、なんでテレシアがここにいるのかを聞かないと。
そもそも聞きたいことがたくさんあったのだ。
この機会を逃してなるものか。
だが俺の思いとは裏腹にどんどん瞼が落ちてくるのを感じる。
ダメだ、これ以上は。
俺の意識はそこで途切れた。
・・・
・・
・
目が覚めると、そこは部屋の中だった。
見知らぬ天井ってやつか。
「ここは・・・いたっ」
俺は身体を起こそうとする。
だが全身に走る痛みに悶絶した。
この痛みには覚えがある。
<月穿>を放った反動で、全身の筋肉がズタズタなのだ。
自由に放つには
まだ鍛練が足りないか。
「ルーク!目が覚めたのね良かった!」
声がする方に首だけ向けると、
そこに居たのはロゼであった。
涙目でこちらを覗き込んでいる。
「ロゼ・・・?なんでここに・・・」
「バカ!ルークが運び込まれたって組合から連絡があって飛んできたのよ!」
ロゼは感情のままに大声をあげる。
まずい、かなり怒っているようだ。
「お嬢様、そのように大きな声を上げては身体に障りますよ」
後ろから優しく声をかけてくれたのはミリアルドさんだ。
助かった。
「・・・う、分かってるわよ!ただ心配したんだからね!」
そう言ってロゼは寝ている俺に抱きついてくる。
ロゼから押し付けられた身体には確かな柔らかさ。
なんだこの最高の状況は。
「お嬢様・・・公衆の場でそのような・・・」
ミリアルドさんが後ろで狼狽しているのがわかるが、
俺には止める意思はない。
すまない、ミリアルドさん。
ミリアルドさんに無理矢理引き剥がされ、
ロゼは部屋から退場した。
どうやら俺が目を覚ますまで付きっきりでいてくれたらしい。
また明日来ると告げて二人は帰っていった。
「破廉恥」
今度は逆側からそんな声が聞こえて振り向く。
隣のベッドにはヒナタが寝ていた。
居たのかお前。
ヒナタには怪我を治療したあとがある。
どうやら同じ大部屋に運び込まれたようだ。
「・・・お前も無事だったんだな」
「無事とは言い難いが、生きてはいる」
ヒナタから話を聞くと、
意識を失った俺たちは組合の後発部隊に救助されたらしい。
ピジョン騎士団の他のメンバーが決死の覚悟で
街まで駆けてくれ緊急で救助隊が組まれたらしい。
調査をすると、同行していた俺たち以外の騎士団は全滅。
組合は依頼の設定難易度見込みが甘かったということで
大きな責任問題に発展しているとのことだ。
アークタラテクトは天災級に属する魔物で、
一歩間違えれば聖都に大きな被害が出てもおかしくなかったのだ。無理もない話だ。
「頑張った、私たちは特別な報酬をもらえる予定」
ヒナタがホクホクした顔で言う。
それも当たり前か。
Dランクの騎士団が大きな働きをしたのだ。
大金星と言っても良い。
金のために戦った訳ではないが、
結果的に命がけの依頼達成になってしまったのだから
ありがたく貰っておこう。
まぁほとんどテレシアのお陰でもあるが。
そこで俺は気が付く。
「そういえば・・・テレシアは?」
俺はヒナタに尋ねる。
「あの不審者は救助が到着する前に消えた。彼女は何者?あんな強力な魔法を放てる魔導師は会ったことがない」
ヒナタに言われ、言葉に詰まる俺。
第一、俺もなぜテレシアがあそこに現れたのか知らない。
「あー、勝利の女神・・・かな」
ヒナタにはそんな適当なことを言って誤魔化す。
「それで説明になっている?真実を話すべき」
さすがに鋭いヒナタは騙せないようだ。
俺は観念してテレシアと自分自身のことをヒナタに説明した。
父以外には話したことがないが、
なぜかヒナタは信頼が出来る、そんな確信があった。




