第35話 最強魔法と蜘蛛の包囲
颯爽と現れた少女に俺は話しかける。
「テレシアだよな?そこで何をしている」
「っ・・私はそんな名前ではありません」
「そうなのか?俺の知り合いに非常に似ているんだがな。」
「し、知りません」
そんなやりとりをヒナタが白い目でみていた。
「何事?」
「いや、俺が聞きたいよ」
「うぅ・・・もし私があなたの知り合いに似ていたとしても他人だと思ってください!こちらにはこちらの事情があるんですよ~」
そう言ったテレシア、に非常によく似た少女は半分泣き顔だ。
仕方ない、事情はあとでゆっくりと聞くとするか。
そんなことを思った瞬間、再びアークタラテクトが動き出した。
「危ないです!<炎球>」
テレシア?から再び同じ光弾が放たれる。
炎の中級魔法<炎弾>だ。
対象に着弾と同時に爆発を起こす。
だが先程の不意打ちでアークタラテクトも学習したのか、
素早く動いて<炎弾>を回避する。
標的を外した<炎弾>は地面に着弾すると同時に爆発した。
「キュルルルルルル」
アークタラテクトは怒りを露にしている。
だが先程と違いこちらに手は出してこない。
明らかにテレシア?の魔法を警戒している様子だ。
「今がチャンスです!私が牽制しているうちに早く出口へ!」
その言葉にククルとバロンが動き出す。
二人は出口の方へと向かう。
「キュルルルルルル!!」
アークタラテクトが再び鳴き声をあげる。
するとどこかからかまた蜘蛛の魔物がわき出てきた。
わらわらと夥しい数の蜘蛛が集まってくる。
「<炎弾>!」
再びテレシア?は魔法を放つ。
蜘蛛の群れの中に魔法が炸裂するも、
次から次へ蜘蛛たちがわき出てくる。
俺は剣を抜いてテレシア?の横へと立った。
「テレシア、なんでお前がここにいるのか説明は後だ。加勢するぞ」
「だ、だから私はそんな名前では・・・」
「そのやりとりは不毛」
声の方を見るとヒナタもまた剣を構えていた。
「お前、逃げられただろ。なんで・・・」
「逃げればあなたか、そこの不審者か誰かが死ぬことになる。ここは戦うしか道はない」
「キュルルルルルル!!!!」
アークタラテクトが今までで一番大きな咆哮をあげると
回りを囲んでいた蜘蛛たちが一斉に襲いかかってきた。
まるで黒い壁のように押し寄せる蜘蛛に、
俺とヒナタは同時に剣を振るった。
・・・
・・
・
俺は蜘蛛に剣を突き刺す。
絶命し動かなくなる蜘蛛。
一体一体は対して強くはない。
剣の一振りでその身体は真っ二つになる。
あたりには蜘蛛たちの死骸が転がっていた。
だがこの蜘蛛たち、とにかく量が多い。
斬っても斬っても次から次へと
襲いかかってくる。
ヒナタも同じ状況のようで、
死角を無くすためいつしかお互いに背中を守るように蜘蛛を相手取っていた。
こういう時には魔法で広範囲を攻撃をするのが定石だが、
肝心のテレシア?はアークタラテクトを相手にソロで戦っており、
蜘蛛たちに攻撃を放つような余裕は無さそうであった。
テレシア?はアークタラテクトと距離を取りながら、慎重に戦っている。
だがアークタラテクトの素早い攻撃に、後手に回っている様子だ。
時おり放つ<炎球>もアークタラテクトに警戒されており、クリーンヒットしない。
魔法は魔力の凝縮が必要不可欠なため、本来魔法使いは後衛となることが多い。
だがテレシア?はアークタラテクトの注意が俺たちに向かないように、
敢えて近距離で戦っている様子だった。
周囲の蜘蛛たちも途切れることなく沸いてきている。
このままじゃジリ貧だ。
そう思ったとき、ヒナタが口を開いた。
「このままじゃ、まずい」
まったく同意見だ。
「どうする?」
「ここを任せても平気?」
「正直かなり厳しいぞ。手はあるのか?」
「私があの不審者の前衛になって時間を稼ぐ。時間さえあれば火力の高い魔法が打てると推測する」
その考えは間違ってない。
仮にもテレシアは女神だ。中級魔法<炎球>しか使えないなんてことはないはずだ。
ヒナタの観察眼はかなり鋭い。
「頼む、ここは任せろ。長くは持たんけどな」
「ん」
そう言ってヒナタは目の前の蜘蛛を真っ二つにすると、
そのままテレシア?の方に走っていった。
何匹かの蜘蛛がそれを追う素振りを見せるが、
俺はその蜘蛛たちを優先的に切りつける。
「させねーぞ。お前らの相手は俺だ」
再び蜘蛛たちは俺を囲み出す。
頼むぞ、二人とも。




