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第32話 最強魔法と慧眼の末


「ここ」


ヒナタが立ち止まる。


「先程、バロンと別れた場所」


坑道はどれも似たような道で見分けが付かないが、

ヒナタには分かるらしい。


「バロンは見当たらないな」


「この辺り、魔物の血の臭いが充満している。バロンが戦っていたのは明白。ただ気配はない。」


ヒナタの言葉で、辺りに神経を集中すると確かに血の臭いがする。


「バロン・・・」


ククルが心配そうな表情で呟く。


「戦いの後が奥に続いている。進んでみよう」


俺は二人に声を掛け、廃鉱の奥を目指した。



・・・

・・



ちょうどその頃、

ピジョン騎士団、トトラク騎士団と時を同じくして北の廃鉱に潜ったハイゼル騎士団は

東側の探索を終え進路をさらに炭鉱の深部へ向けていた。

騎士団長のハイゼルは先程より襲撃の数が増える蜘蛛の魔物の多さに異常事態を察知していた。


ここまでで調査を打ちきり、

確実に情報を持ち帰る事も出来たが、

異常発生の原因だけでも突き止められれば後続の調査、

または討伐隊に大きな貢献が出来るだろうと考えた。


情報、それは無力な人間が圧倒的な魔物たちに抵抗するための唯一無二の武器なのだ。

ハイゼルはそれをよく理解していた。


それに、とハイゼルは思う。

入り口で一緒になった他の騎士団。

トトラク騎士団の方は功名心に駆られた

脳筋のアホばかりであったが、

もうひとつの騎士団の方はまともそうであった。

騎士団長は一見ガラの悪い青年ではあったが、

騎士団の掟には忠実そうな一面も垣間見ることができた。


彼らならば北の廃鉱の異常事態の原因が

蜘蛛であることを突き止め、

それを街に持ち帰ることが出来るだろう。


ハイゼルは長年の騎士団生活で、

信用に値する騎士くらいは見抜けるような目を持っていた。


もっともそんな目を持っていたところで、

自分達が零細騎士団なのは変わりないかとハイゼルは

自嘲気味に笑った。



「ハイゼル、なにを笑ってるんだ?」


騎士団員のベガルタが尋ねる。

ハイゼル騎士団の中でも一番の古株だ。

魔導師のハイゼルが後衛、そして戦士のベガルタが

前衛の主軸を務めることでハイゼル騎士団は長い間

戦ってきた。戦友とも言える男だ。


「いや、何でもない。すまんな。ちょっと気が抜けていた」


ハイゼルはベガルタに答える。


「ったく、お前はいつも大事な時にそうだ。団長がそんなだから俺たちは万年Dレベルなんだぜ」


ベガルタの自虐的な言葉に騎士団の一行が笑う。

騎士団の中では定番の笑いだ。


「まぁいい!早めにこの蜘蛛どもが沸いて出てきてる原因を調べて早く街に戻ろうぜ!あとは上のクラスの騎士団様たちにお任せだ!」


ベガルタの言葉に騎士団の顔が明るくなる。

敵わないな、とハイゼルは思う。


本当ならばこの騎士団はベガルタが騎士団をやるべきだ、

とハイゼルはいつも思っていた。


だが設立時にベガルタが魔導師が騎士団長なのは珍しいから箔が付くはずだと主張し、ハイゼルが騎士団長を担うことになった。

以来何度も団長の座を譲ろうとしているが、はぐらかされ今に至る。


だがこの騎士団はこれで良いのだ。

気弱だが芯が強く、冷静な判断をするハイゼル。

繊細な配慮が苦手で、明るく楽観的なベガルタ。

この二人が両輪となりハイゼル騎士団は回っている。

どちらが欠けても上手くはいかない。

それを理解しているからこそ団員たちも、

ハイゼルとベガルタその両名を同じくらい敬っているのであった。




とはいえそろそろ引き返す頃合いか。

ハイゼルは思っていた。

潮時、と言う言葉がある。

いくら情報が必要とはいえ、

引き際と言うものを間違えては命取りになる。


ハイゼルはこの潮時を見極めが非常に上手く、

だからこそハイゼル騎士団は長い間活躍することが出来たのだ。



「・・・ベガルタ、そろそろ」


ハイゼルが戦友に一声掛けようとした瞬間。


「あん?」


ベガルタの身体が闇に消えた。


「ベガルタ?」


一瞬の事にあっけに取られるハイゼル。

だがそこは第一線の騎士団すぐに異常事態を察知し、

戦闘体制をとる。



「ぎゃっ!」

「ぐわっ」


だが四方から団員の声が聞こえ、一人またひとりと

姿を消していく。


「くっ!慌てるな!固まれ!」


ハイゼルが声を出すが、団は混乱状態に陥っている。

それほどの勢いで、一人、また一人と闇に消えていく団員たち。

何に教われているのかも分からない恐怖が、

団員たちから冷静さを奪っていた。


「くっ、<炎壁>」


ハイゼルが魔法を唱え、自陣の回りに炎の壁を展開する。

これで時間が稼げるだろう。

周りを見ると団員の数はすでに半分以下に減ってしまっていた。


「ハイゼル団長!」

「ベガルタさんが!他のやつらもどこに行っちまったんですか?」


「大丈夫だ!落ち着け!生きて帰るぞ」


ハイゼルが叫ぶ。

そうだ、自分達は情報を持ち帰る必要があるのだ。

こんなところで死ぬなんてありえない。


やがて魔法の効果が終わり、

ゆっくりと炎の壁が低くなっていく。

篝火の役割を果たした<炎壁>の炎は、

そこにいた一匹の魔物を照らし出した。


そこに居たのは、

今まで襲いかかってきた蜘蛛たちが小型に見えるほど巨大な蜘蛛の魔物であった。




「ア、アーク・・・タラテクト・・・・?」


炎の壁が消え、辺りが再び暗闇に包まれたとき、

そこにハイゼル騎士団の姿は無かった。

北の廃鉱は再び静寂に包まれた。


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