第3話 最強魔法と星落とし
現れた熊はグルルルと喉を鳴らしこちらを見ている。明らかな敵意だ。
「お、おい。どうすればいい!?」
『計算中デス、計算中デス』
「こんな時にふざけるなよ!」
叫ぶと同時に熊がこちらに飛びかかってきた。
「うわあぁぁぁ!」
転げ回るように熊の突進を避ける。
俺が避けたことにより、熊は後ろにあった木に激突した。
音を立ててメキメキと壊れる大木。
あんなものを食らってはおしまいだ。
熊はゆっくりとこちらを向き、俺との距離を詰めてくる。
飛びかかることはせず、
ゆっくり間合いをつめても倒せると判断したのか。
賢いやつだ。
俺は熊に背を向け、川上へと走った。
だが、熊はとてつもないスピードで俺に追い付くとその鋭い爪を無防備な俺の背中に叩き込んだ。
「ぐぁぁぁ!」
焼けるような痛みが背中に走る。
同時に俺は川原に吹き飛ばされた。
「やばい、ヤバイぞ。テレシア!なんとかしたくれ」
『計算中、計算中、計算中、、、』
テレシアは壊れたように同じことしか言わない。
「このポンコツ!」
熊はノシノシとこちらに向かってきた。
凶悪な口許からはボタボタと涎が垂れている。
「あ、、あ、、」
腰が抜けて立てない。
俺は死を覚悟した。
その時、切り裂かれた背中ではなく胸元に熱さを感じた。
「な、なんだ!?」
カケルが胸元から自分の胸を見ると、
アザの一つが赤色に輝いていた。
『おーーー待たせいたしましたっ!発動完了です!ルーク君、いまこそ魔法の名を!』
久しぶりにテレシアが言葉を発する。
同時に脳裏に魔法の名称が浮かぶ。
「これを、唱えれば良いのか?」
<星落とし>
そう呟いた瞬間、胸のアザから天空に一筋の光が飛び出した。
「おわっ!」
その勢いに思わず尻餅をつく。
転んだ事により、空を見上げる形になる。
その時、俺の視線の先には煌めく光が見えた。
本能的にヤバイと感じる。
煌めく光はどんどん大きくなり、
その全貌が見えてくる。
俺は慌てて体勢を建て直し、
もつれる足を必死に動かしながら川の深いところに
飛び込んだ。
その瞬間、
空から降り注いだ大きな光が、
熊目掛けて一直線に落ちてくる。
それは巨大な隕石であった。
着弾と共に辺りは光に包まれ、
遅れてとてつもない地響きと爆風が生まれる。
川から上がった俺が目にしたのは、
なぎ倒され燃える木々と、
地形がすっかり変わってしまった
もともと川原であった場所。
そしてその場にぽっかりと空いた
底が見えぬほどの大穴であった。
凶悪な熊は跡形もなく消し飛んでいた。