第29話 最強魔法と集団戦闘
北の廃鉱は銀山として有名で、
魔力を含んだ魔銀を多く産出していた。
魔銀は武器や鎧に多く用いられる金属で、
普通の金属では出来ない特殊な加工が出来るため、
騎士団の装備に多く用いられた。
先頭を歩くバロンの大盾も、
魔銀による加工がしてあるそうだ。
「だだっ広いな。くそ、一日で調査なんか終わるのかよ」
「文句言わないの。魔力濃度の高い方へ向かってればそのうち何かあるわよ。ほら、そこは左」
廃鉱なだけあって、中は迷路のような造りになっていた。
その中をククルの指示により進んでいく。
「止まれ」
途中でバロンが手で制した。
「魔物だ」
バロンの言葉に緊張を感じる。
「たぶんオークどもだ。数はそんなに多くないが、逃がすと増援が沸いてくるぞ」
オークと聞いてククルが息を飲む。
当然だ、オークは女性には特に容赦がない。
「私が出る」
ヒナタが言う。
「とりあえず俺たちに任せろ。ルーク、お前もだ。ヒナタと一緒に撃ち漏らしが増援を呼ばないように仕留めてくれ。そうだな・・・あの岩影のあたりで待機だ」
そう言うとバロンとククル、それから後の3人が
前に出る。ピジョン騎士団のオリジナルメンバーだ。
「いくぞ」
バロンの声で、二人が弓を構える。
もう一人の魔導師が魔法の詠唱を始める。
そしてバロンが持っていた松明を奥へと放り投げた。
灯りに照らされるオークの姿。
一瞬の間に見えた影は4体。
「撃て!」
バロンの声で弓が放たれる。
そして続けて魔法。
<風鎌>
見えない風の刃を放つ初級魔法だ。
「グギャアア!」
オークの声が聞こえた。
どうやら弓と魔法がヒットしたようだ。
「オラァぁ!!」
奇襲の混乱に乗じて、バロンが飛び出す。
大盾を構えると彼の半身はほぼ盾に隠れている。
そのまま剣を振り、
目の前の一体を切り裂いた。
「あと二体だ!」
バロンが叫ぶ。
「グギャギャアア!」
オークは鳴き声を上げながら、
バロンに剣を振る。
だが大盾を装備したバロンに剣は届かない。
やがて魔導師の二回目の詠唱が終わる。
再び放たれる風の刃。
オークは鈍い音を立てて倒れた。
「一体走ったぞ!」
バロンが叫ぶ。
最後に残った1体が奥へと逃げ出したのだ。
ここで逃せば間違いなく大量のオークを引き連れて
報復にくるだろう。
「任せて」
俺の後ろからヒナタガ飛び出した。
とてつもない早さでオークを追っていく。
そしてあっという間に追い付くと、
その背中に剣を突き刺した。
「ギュアアアア!」
オークはその悲鳴を最後に
動かなくなった。
「どうだよ、俺たちの力は」
バロンが勝ち誇ったような表情をこちらに向ける。
どうやら昨日のゴブリンの意趣返しのつもりのようだ。
子供かよ。
「一体は逃していた」
ヒナタが言う。
「バカ、ありゃ逃したうちには入らねぇよ。お前らを予め置いておいたろうが!」
「だが配置場所は誤っていた。追い付いたのは私だから」
「テメェのスピードも折り込み済であの位置取りだ。調子乗んな」
「はいはい、言い争いしないの。バロン、あんた腕見せなさい」
ククルがそう言うとバロンが右腕を前に出す。
わずかに出血があるようだ。
ククルがその傷口に手を当て魔法を詠唱すると、
緑の光が生まれバロンの傷口を癒した。
「あんがとよ」
「ん、気を付けて」
そんなやりとりの後、俺たちは更に奥へと進む。
途中同じくオークと2度戦闘になったが、危なげなく倒すことができた。
そして北の廃墟の深奥に近づき始めた頃、俺たちは一度休憩を取ることにした。
朝から3時間、歩きっぱなしでかなり疲れた。
俺は休憩時間を利用し、テレシアに連絡を取ることにした。
「テレシア、聞こえるか?」
『ルーク君。どうですかそちらは』
「うん、オークとは何度か戦った。けど例の魔物の気配はまだないな」
『そうですか・・・』
「魔物の位置は分かるか?」
『はい、わかります。ここから北東方面、さらに地下に潜った辺りに魔力の集束を感じます。恐らく、戦闘かと』
北東方面と言えば、トトラク騎士団が進んだ方面だ。
大丈夫かな、あのモルガスとか言うフル装備のおっちゃん。
「わかった、そちらに行ってみる」
『はい、前にも言いましたが無理はされないようにお願いします』
そうしてテレシアとの会話は終了した。
視線を感じて顔をあげると、
ヒナタがこちらを不思議そうな目で見ていた。
やばいな、何か聞かれたか。
「今、誰と話していた?」
「ん、話してないぞ。独り言だ」
「そう?」
ヒナタはまったく納得していない様子で、
こちらを疑っているようだった。
だがこれでいい。
テレシアの話をすると色々と厄介だ。
めんどくさい事になるくらいなら、
誤魔化してしまった方がいい。
「オラ!休憩は終わりだ、出発すんぞ!」
バロンの声に救われ、俺はそそくさと準備をする。
しばらくヒナタからは視線を感じる羽目になった。




