第28話 最強魔法と北の廃鉱
「えっと、これでよし、と」
テレシアは書類を作成していた。
ルークの魔法使用許可を求める申請書だ。
「これさえあれば、ルーク君は安全ね」
出来上がった書類を持って窓口へと急ぐ。
自分が担当する初めての転生者ということもあり、
テレシアはルークに執心していた。
テレシアにはもちろん女神としての他の仕事もあるのだが、
今はルークのことで頭が一杯だ。
「・・・なんか放っておけないのよね、ルーク君って」
誰に言うでもなく呟くテレシア。
やがて申請受付の窓口につく。
「こんにちは。申請はこちらです」
窓口の天使が手を挙げる。
「あ、はい。これ、お願いします」
テレシアは作成した書類を天使に渡す。
「ふむふむ、なるほど。危険魔法の使用許可。・・・あー、これちょっと前に話題になった奴ですね、なんか付与された魔法が強力すぎてすぐに禁止された」
「そうなんです・・・」
「あの時はこっちも調査に駆り出されて大変だったんですよ。はい、不備は無いようですね。受領します。」
「あ、これで魔法は使えるようになったんですか?」
「え?いや、それは無いですよ。魔法が使えるのは許可が降りてからです。決済者は老神様ですよね?そちらの回送ルートに乗せておきます」
「回送ルート・・・えっとどれくらいで許可されますか?実は明日くらいに必要で」
「明日ですか?テレシアさんちょっとそれは・・・」
「難しいんですか?」
「今回はここから天使長が内容確認をしたうえでまず世界調査部の方で影響調査がかかります。そのあとは世界監査部のほうで使用必要性の検討とコンプライアンスの観点から問題がないかの確認、最後に老神様の方で承認決済となります」
「そんな・・・なんとかなりませんか。」
「・・・すみませんが決まりですので、そうですね。一週間はかかると思います」
「一週間もですか!」
「最短で、ですよ。なにか不備や疑義があれば差し戻しとなります」
「そんな、そんなに待ってられません!ルーク君は明日にも魔物と戦うかも知れないんですよ!」
「すみませんが、決まりですので。私にはどうすることも出来ません」
天使が申し訳なさそうに謝ると、どこからともなく鐘の音が鳴った。
「あ、すみません。今日はもう終業時間のようなので、こちらで失礼します。承認が通りましたらすぐにご連絡いたしますので。」
「ち、ちょっと!」
そう言うと窓口はガラガラと閉じられた。
テレシアはそこで立ち尽くし、
神界の役所体質にイライラを募らせるのであった。
・・・
・・
・
北の廃校にはピジョン騎士団を含め、3組の騎士団が集合していた。
俺とヒナタがピジョン騎士団とチームを組んでいるため、
あと一組到着していないことになる。
「時間だ・・・」
他騎士団のリーダーと思われるゴツい男が腰をあげる。
フルアーマーのプレートメイルかなり強そうな騎士だ。
彼の後ろにいる一段も全員が重装備だった。
「おい、待たねぇのか?」
バロンが声をかける。
「ああ。聖都から一日とは言え、魔物もいる道中だ。なにかあったのだろう。だが我々は依頼を達成せねばならない。待つ理由はあるか?」
ゴツい男がそれとなく周囲に目配せをすると、
おおむね同意と言った雰囲気だっ
「俺はトトラク騎士団のモルガスだ。Dランクだが、この依頼が終わればCランクへ昇格する予定だ。俺が口火を切ってしまったがリーダー面するつもりはない。北の廃鉱は広い。別行動で調査を行うことを提案するがいかがだろうか」
「待て、魔物の正体が不明だ。個々の騎士団の戦力では太刀打ちできない可能性もある」
もうひとつの騎士団のリーダーと思われる男がいう。
魔導師っぽいローブを身に纏っている。
確かに彼の言うとおりだ。
敵の正体が分からない今の段階では別れるのは得策ではない。
「うむ。一理あるが、今回は討伐が依頼ではない。我々は調査対象と確信出来る魔物を見つけ次第帰還するつもりだ。そうだろう?」
トトラク騎士団の団長が言う。
嘘だな、この人自分の騎士団にかなり自信を持ってる様子だ。
対敵したら戦闘は間違いないだろう。
なんだその気合いの入った装備は。
手柄を独り占めする気満々じゃないか。
「・・・こっちはそれで構わねぇぜ、あまり大人数で彷徨いてて落盤で全員お陀仏って可能性もなくはねぇ」
バロンが言う。
別行動派が2、合同調査が1。
多数決により別行動で廃鉱に潜ることにした。
他の騎士団と合同で依頼に取り組む際には、
方針決定に多数決が用いられる場合が多い。
ピジョン騎士団が廃鉱の東側、
トトラク騎士団が北側、
もうひとつの騎士団が西側を中心に調査することになった。
その後は各騎士団長同士が情報交換をし合って、
順次廃鉱へと入っていった。
ピジョン騎士団は一番最後となった。
「なんで別行動を選んだんです?」
俺はバロンに尋ねた。
「あ?」
「見たところトトラク騎士団は戦力的にかなり充実していた。一緒に行動するのもありだったんじゃないかと」
「なんだ、俺の決定に文句あるってのか?ああ?」
バロンが立ち上がる。
「ちょっとやめなさい!」
ククルが叫ぶ。
「いや、単純に知りたいだけなんです。反対でもなんでもない。」
「ちっ。それならそうと言え。・・・理由はあいつらの装備だよ」
「装備?」
「フルアーマーの高そうな鎧着てやがっただろ。」
「騎士団っぽい格好だった。戦力をいやと言うほど見せつけられたな」
「たしかに平地での戦いなら、フル装備に敵う道理はねぇ。だが俺たちが今から入るのは廃鉱だ。あんだけ重装備で入れば中の湿度と気温で鎧の中は地獄になる。金属の触れる音で魔物にも気付かれやすい。いくら戦力として優秀だからってそんなやつらと一緒に行動できるかよ」
「そう言うこと、か・・・」
バロンの説明に俺は納得する。言われてみればその通りだ。
バロンは言葉こそ乱暴だが、頭は非常によく、先を読んでいる。
俺は目の前に居る男の評価を改めた。
「よし、行くぜ」
バロンを先頭に廃鉱へ入る一行。
バロンの言うとおり湿度が高く暑い。
松明を掲げ、少しずつ侵入していく。
「廃鉱には外とは違う生態系がある。当然、出てくる魔物も違うから注意しろよ」
二番手を歩く俺に、バロンが言う。
俺は腰に差した剣に、手をかけ歩く事にした。




