第23話 最強魔法と主人公フラグ
その夜はムートン騎士団の誕生を祝い、
ささやかな酒宴が開かれた。
と言っても仲間内だけの飲み会のような感じで、
参加者は俺の他にロゼとミリアルドさん、
それから会議の場に居合わせた例の3人だ。
「その歳で騎士団持ちとは良いご身分だな、小僧!あ?」
と酔っぱらって絡んでくるのは、旧ポイヤック王家の将軍ガルドだ。
ただの浅黒い大男と思ったら、軍部の最高司令官と聞いて驚いた。
「いい加減にしたまえ、ルーク君が困っているではないか。」
先日と同じくガルドを諌めてくれるのが、
旧ポイヤックの財政官をしていたラインバッハ。
見た目通り仕事が出来るようで、
国の財政はほぼこのラインバッハに任せられていたらしい。
二人は言い争いばかりしているが、恐らく仲は悪くない。
お互いに認めあっている感じがする。
「ルークは強いのよ。オークも襲いかかってきた男たちも一瞬で倒したんだから!」
なぜかロゼが俺の話を自慢げに語る。
「・・・ロゼ様は少し物事を大袈裟に語るところがある、真偽は現段階では未定」
そんなロゼにツッコミを入れるのが、一等書記官のセレティアだ。
背丈は非常に小さく、ロゼよりも年下に見える。
実際の歳は不明だ。
「セレティア!あんた、私のこと信じてないわけ!?」
「書記官は事実に基づき話す。ロゼ様の誇張表現は過去の記録が物語っている」
「くっ、あんた覚えてなさいよ」
「・・・」
セレティアは無口らしく、必要な時にしか口を開かない。
旧ポイヤック領に戻ればより多くの関係者がいるが、
だいたいこの人たちが今のロゼの味方だ。
会の終盤でミリアルドさんが口を開く。
「さて、ところで我々の今後についてですが・・・」
ガルドとラインバッハが厳しい表情に変わる。
セレティアは無表情のまま視線だけミリアルドさんに向けた。
「先日の姫様の宣戦布告がテステフに届いたようです。こちら宛に厳重な警告といった内容の親書が届きました」
「破り捨ててやったけどね!」
とロゼがどや顔で言う。
いやそれはダメだろ。
ため息をつくミリアルドさん。
「テステフにはこちらから交渉の場を要求いたしました。ポイヤックを取り戻したいのであれば、まず必要なのは話し合いです」
「待てよ、このまま交渉に赴いてもなんの意味もねぇだろ」
とガルドが言う。
「その通り。交渉に必要なのは対等な立場と根回しです。交渉の日までにそれらを手に入れなければ、我々は恥をかいて終わりでしょうな」
「どれも簡単には手に入りませんね。特に根回し・・・ですか」
と、ラインバッハ。
「ポイヤック復権のためには連合の主たるボルド王の力を借りる他ないでしょうな。まずはボルド王との謁見それを今後の目標としましょう。」
ミリアルドさんがため息をはく。
この人一気に老け込んだ気がするな。
・・・
・・
・
翌日、俺は一人で組合へと来ていた。
騎士団として最初の任務を受注するためだ。
「ルーク君はまずは騎士団として普通に活動してちょうだい。」
と言う、姫様の言葉により
俺は当面は騎士団として仕事をすることになった。
そりゃそうだ。12歳のなんの後ろ楯もない俺に政治的な分野の
活躍が出来てたまるか。
組合は混雑していた。
朝イチのこの時間は、
仕事を受注しようと言う騎士団が組合に押し寄せるのだ。
張り出された依頼を吟味し、どんどん受注が決まっていく。
聖都くらい大きな街になれば、地方から多くの騎士団が
食い扶持を得に集まってくるのだ。
俺は掲示板が空くまで待つことにした。
どうせ最下位クラスの俺では受注出来る仕事は少ない。
待ち時間を利用して女神様にでも連絡するか。
あんまり連絡しないと拗ねるからな。
「おーい、テレシア」
俺は小声で交信を始める。
『へぇ?わ、ああああルーク君!ちょっとこんな時に連絡してこないでください!』
交信口?の向こうでテレシアがドタバタしてるのが聞こえる。
何事だろうか。
『ふぅ、とりあえず大丈夫です。どうしたんですか』
「すまんすまん、特に用は無いんだが定期連絡ってやつだ」
『そうですか、それはご丁寧に。首尾はどんな感じですか?』
俺はテレシアにここまでの経緯を説明した。
『・・・騎士団、創設したんですね。おめでとうございます。羊ってところが可愛いですね』
「ありがとう。それでしばらくは騎士団の仕事をすることになってな、今仕事の受注待ちだ」
『騎士団の仕事って、魔物の討伐とかですよね?ルーク君なら大丈夫だと思いますが、気を付けてくださいね』
「あぁ、父さん仕込みの剣もあるし大丈夫だ。それにそんなに強い魔物は聖都の回りには居な・・・」
『ルーク君!ダメです』
テレシアが声を上げる。
「ど、どうした」
『私との交信が復活したことにより、ルーク君は今や勇者です、主人公です。王女様の件もそうですが、物語はルーク君を中心に進むようになってるんです。そのルーク君が、そんなフラグを立てるような発言をしたらどうなると思いますか?』
う、確かに。
テレシアの言うことはいちいち説得力がある。
「わ、悪かった・・・、気を付ける」
『そうです、間違っても「近くに強い魔物なんて居ないから大丈夫だ」なんて高笑いしないでくださいね』
その時、組合の扉を開けて大慌てと言った様相の男が入ってきた。
男はそのまま受付のなかに飛び込むと、組合の職員たちと何事かを話し合っている。
まだ組合に残っていた騎士団達が、何事かとざわざわしていた。
そして職員の一人が、依頼ボードに向かい新たな依頼書を張り付けた。
真っ赤な紙に書かれたその依頼書が意味するのは、緊急依頼。
最下位クラスの俺でも参加することが許される数少ない依頼のひとつである。
その依頼書にはこう書かれていた。
ーーー北の廃鉱に正体不明の魔物出現。
大至急、調査に向かえる騎士団を複数募集。
ランク不問、人数不問
テレシアの危惧した通り、物語は進み始める。




