第21話 最強魔法と亡国ポイヤック
次の日、俺と父は再び教会を訪れた。
父はロゼとミリアルドさんを呼び出すと、
息子と話し合いポイヤックの騎士となることを親として認めると返事をした。
そして息子をよろしくお願いしますと、
一礼すると俺を置いて早々に帰宅した。
なんともさらりとした別れだ。
「えっと・・・」
あっけに取られながら俺はロゼとミリアルドさんを見る。
「改めて、よろしくお願いします」
俺は父さんに習い、二人に頭を下げた。
二人からなんの反応もなく、
不思議な間を感じる。
チラリと頭を上げると、
ロゼが何か恥ずかしそうにモジモジしていた。
「ほら、姫様。今しかありませんよ」
ミリアルドさんがロゼを急かす。
なんだろう。
「あ、あの・・・ごめんなさい!!」
そう言ってロゼが深々と頭を下げた。
あの後、ミリアルドさんに散々怒られ、
ラインバッハさんに、なぜ父さんがあそこまで真剣に悩んでいたかを説明され、俺の下した判断が騎士としていかに重いものかをガルドさんに語り尽くされ、ようやく自分のしたことが理解できたらしい。
「わ、私・・・貴方にとんでもないことを」
そう言って涙を流すロゼ。
なんだこの子、ホントは良い子じゃないか。
もしかしてワガママなのは単に世間知らずなだけか。
「止めてください、姫様。俺はもう貴方の騎士です」
「そんな・・・」
「姫様には感謝してます、念願の騎士になれたし。王家を守護する騎士団なんて実力があっても運が良くなきゃ入れない」
ミリアルドさんが貴方も分かっておるようですな、
とでも言いたそうにウインクしてくる。
やめろ。
「でも・・・」
「でもはおしまいです。ほら、これから俺たちにはやることがたくさんあるんでしょう。新米騎士に色々教えて下さい」
その後はミリアルドさんに色々なことを教えて貰った。
ポイヤックの歴史や文化、王家と貴族に関すること。
それから今回の戦争の背景など。
新米騎士の俺には目から鱗と言うか、
とても勉強になる時間だった。
ミリアルドさんが話を切り上げ、
俺が自宅に帰る頃にはすっかり夜が更けてしまっていた。
・・・
・・
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この世界にはいくつもの王家があり、
その中で最も力を持つのがボルド王とその一族だ。
ボルド王の統治する地域はメドック国家連合と呼ばれ、
小国がいくつも連なり、地域を納めていた。
ポイヤックは地理的にメドック国家連合に中心に位置しており、
造船が盛んで、優雅な文化に溢れた、それは美しい国だったそうだ。
隣国テステフとは小さな領土争いはあるものの、
長年友好な関係を築けていたはずであった。
ところがポイヤックの先代の王、
つまりロゼの父親が流行り病で無くなり、
王位継承権により王の弟が即位すると、
隣国との関係性は一気に悪化することになる。
先代の王は温厚な性格で争いを好まなかったが、
弟王は反対に好戦的な性格だったためである。
先代の死から二年、小さな領土争いをきっかけに
ポイヤックとテステフはついに戦争へと至ってしまう。
「理解できないのは、ボルド王家が二国の仲裁に入らなかったことよ」
と、ロゼが言う。
国家連合間の争いはボルド王家が間に入り、
公正な仲裁役が国家連合のルールなのだと言う。
だが今回はボルド王家に動きはなく、
戦争で負けたポイヤックはそのまま領土を
奪われてしまったとのことだ。
テステフはポイヤックの領土と領民をほぼそのまま領土に取り込み、
無駄な蹂躙などを行わなかった。
考えてみれば当然だ。
侵略戦争と違い昨日まで肩を並べ、
交易を重ねてきた国なのだ。
下手なことをすれば、
他国からだけでなく、
自国内からも後ろ指を差されてしまう。
そう言った意味では、
テステフ王家は賢明な判断をしたと言える。
「だから、変わったのは私たちポイヤック王家だけよ。王家がひとつ、治める国を失っただけってわけ」
ロゼの言葉を聞き、
講師役のミリアルドさんを見るとなんとも悲しそうな表情で笑うのであった。




