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第20話 最強魔法と父親の愛情


トーマスとミリアルドさんが驚愕の表情でこちらを見ている。

父さんは、なんだろう不思議な表情だ。

肝心のロゼは何やら赤い顔でこちらを見ている。


ふふ、父さんとミリアルドさんの式典でのやりとりを見て

羨ましいと思っていたのだ。

これぞ、騎士の醍醐味。

完全に決まったな。


「・・・あ」

ロゼが俺を見て何かを言おうとする、その時。


「ガハハハハハ!やるじゃねぇか坊主!」


同席していた3人の王家の側の関係者と思われる大男が大笑いしだした。浅黒の肌に甲冑を纏い、以下にも武人って感じだ。


「が、ガルド殿!何を笑っているのですか」


ミリアルドさんが大男に声を掛ける。


「ガハハ!いいじゃねぇですか!こいつは小せぇが心意気はもう立派な騎士ですぜ!おい、坊主。姫様の剣になるなら俺たちゃ運命共同体だ!一緒に戦おうじゃねぇか!」


「いいかげんにしたまえ、ガルド」


今度は隣にいた長身細躰の男が口を開く。


「こんな子供一人増えたところで何になると言うのだね、これは戦争なのだ」


「ラインバッハ、てめぇ。やはり分かっちゃいねぇな。戦争ってのは、時にはたった一人の騎士が流れを変えちまうことだってあるんだぜ。」


「この少年がそうだと?分かっていないのは君の方ではないかね」


そう言って二人は口論を始めた。

どうしよう、完全においてけぼりだ。

ロゼは俯いたままだし、

ミリアルドさんもあたふたしているだけだ。

トーマス、はもう死んだ魚みたいな目をしている。

ふーむ、調子にのり過ぎたかな。どうしよう。


混乱する場の流れを変えたのは、

父さんの一言だった。


「・・・すこし、息子と話がしたい。出来れば1日、時間をいただけないだろうか」


話し合いの場はそこで終了となり、

俺は騎士団と一緒に自宅へと戻るのであった。



・・・

・・



「ルーク、いいか?」


夕食後、父さんが部屋に来た。

神妙な顔つきで俺を見る。

思わず背筋が伸びてしまう。


「今日の件だが、本気か?」


騎士になると誓ったことを言っているのだろう、

俺はゆっくりと頷いた。


「そうか、ならばこれを持っていけ」


父さんは手に持っていた剣を俺に差し出す。


「これは、父さんがずっと使っている剣じゃないか。これは受け取れないよ」


「いいんだ、どのみちお前が家を出るときに渡そうと思っていた。それがこんな形になっただけだ」


俺は父さんから剣を受けとる。

金の細工が施された剣で、

今の俺にはすこし重く感じた。



「4年前のあの日から、お前は別人になった」


父さんの言葉にギクリとする。


「それまではどこにでもいる、と言ったら語弊があるが。普通の元気な子供だった。だがあの日からお前は急激に大人びた事を言うようになったんだ。俺は最初、それこそが女神の加護なのかと思っていたんだ」


なんということだ、

父さんにはバレていたのだ。



「だがそれは違った、お前は女神に授かった魔法を失ったといい、代わりに剣に没頭するようになった。だがそこでも俺は震えたよ。我が子ながらお前の剣の上達速度は異常だった」


父さんは俺から視線をはずし窓の方を見る。


「だから俺は今でもお前が勇者なんだと思ってる。魔法は失ったとお前は言うがな。そして俺には勇者を育てる役目が与えられたのだと考えてた。息子の姿をした、女神が遣わした勇者。そんな風にお前を見ていたのかも知れない。だから・・・」


「だから、俺を聖都騎士団には誘わなかったんだね」


俺の言葉に今度は父さんがハッとする。


「その通りだ、すまなかった。」


父さんが謝る事はない。

俺は実際に女神が転生させた別人で、

あんたの本当の息子ルークはあの日、川に落ちて・・・


などと伝える事は出来なかった。

俺は黙って俯く。


「だが・・・」


父さんが続ける。


「今日のお前の言葉を聞いて、俺は間違えていたのだと気が付いた」


「・・・言葉?間違いって」


「騎士の掟を守ると誓ってだろう。あれを聞いて思ったんだ、こいつは間違いなく俺の息子だってな」


「父さん・・・」


「よく言ったぞ、我が息子よ。正直、あのシーンはかなりカッコ良かったな。羨ましいぞ。騎士の掟こそが俺たちの誇りだ。それをいつまでも忘れるな。お前は間違いなく、俺の息子ルーク=ピースクラフトだ。」



そう言って父さんは俺を抱擁した。

力強く、暖かい。

俺は転生したあの日、父さんに抱き締められて眠ったことを想いだし、涙を流していた。


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