第18話 最強魔法と新たなる騎士団
俺は観衆の中、ロゼの前に跪いた。
ミリアルドさんが絶望の表情でこちらを見ている。
そんな顔しないでくれ。
「ルーク=ピースクラフト!貴殿は騎士を目指す身でありながら、騎士団にも出来なかった事を成し遂げた!」
大袈裟だな、迷子の女の子を救っただけだろ。
だがそんなこと、この場では口に出せない。
騎士には掟があるのだ。
観衆の前で王族に恥をかかせるなど、
騎士の掟に完全に反してしまう。
そうすれば俺はおろか、父さんにも迷惑がかかる。
「素晴らしき貴殿の力、役立てぬのは全ての民に対する不義理というもの!聖騎士団長ジークよ、貴殿はこの者の剣を聖騎士団に迎え、民のため仕えさせるつもりはあるか!」
突然の質問に父さんが一瞬、言葉につまる。
「・・・今はまだその時にはございませぬ」
当然だ。
今ここで父さんの独断で俺の騎士団入りを認める訳にはいかない。
聖騎士団くらい伝統ある騎士団であれば、色々と段階を踏む必要があるのだ。それもまた、しきたりだ。
「なんと言うことか!この力を民のために使えぬとは!これは、大いなる損失じゃ!なんとかせねばならぬ」
ロゼが芝居がかった口調で続ける。
こいつ分かっていて聞いたな。
なんとも白々しい芝居ではあるが、
場は完全にロゼの声量と、
式典の雰囲気に飲まれてしまっている。
くそ、どうするつもりだ。
「おお!そうじゃ!ならば、ルークよ。国はすでに倒れたが、私が王家であることには変わらぬ!亡国ポイヤックの最後の騎士としてそなたを認めよう!そなたはこれより、自らの騎士団を作り、民のために剣を振るうが良い!」
おいおい、どういうことだ。
ちょっと暴走し過ぎだろ王女様。
式典の場にどよめきが起こる。
それもそのハズだ。
王家の公認の騎士団が生まれるなど、国の一大事だ。
たとえ亡国と言えど、その言葉の重みは大きい。
こんな子供が自らの騎士団を作るなど、あり得ない話だ。
「どうした!此度の礼として、騎士団だけでは不服か!それでは更に恩賞を与えよう!何が望みか申せ!ルーク!」
ロゼの追求の言葉に、俺は慌てる。
ダメだ、これ以上好き勝手にさせては。
何か答えなければならない。
そもそも何が目的で俺に騎士団なんて作らせるのかは分からない。
だが、これは絶対に断れない。
王家から直々の騎士団任命。
断れば完全にロゼの、いや王家の顔を潰す。
そしてそれは騎士の掟を破ることになってしまう。
「申し訳ございません。あまりの感動に言葉に詰まっておりました。不服などございません、慎んでお受けいたします」
顔を上げて、ロゼの申し出を受ける俺。
こう答える以外に逃げ場はない。
観衆と騎士団と、王家の関係者がいるのだ。
だが、俺の言葉を聞いたロゼは、
一瞬だけニヤリと笑った。
それは先程目があったときと同じか、
それ以上に悪魔的な笑みだった。
そうか、この笑み。
俺はまんまと彼女の策略にハマったのか。
「よかろう!では貴殿を我が騎士団として任命する!」
戸惑いながらも会場は先程と同じく拍手に包まれる。
俺は再び頭を垂れる。
ようやく終わる、ホッとしかけた俺に
彼女の言葉が続いた。
「では我が剣となった、ルークに早速の勅命依頼じゃ。」
「・・・は?」
俺は思わずそう言ってしまった。
「私と共にポイヤック復興のために闘うことを命ずる!そして我らポイヤック王家は父と叔父の想いを継ぎ、ここに国の奪還を宣言する!」
俺は彼女の言葉が理解できず、
呆然としていた。
正面ではミリアルドさんが、
後方に目をやると父さんとトーマスが同じ顔をしていた。
ただの騎士団へ御礼を伝える平凡な式典は、
一気に他国への宣戦布告の場へと姿を変えたのだった。




