第13話 最強魔法と女神との再会
夕食を食べ終わり寛いでいると、
父さんとトーマスが連れ立って帰宅した。
今日は飲んでいる様子もないため、仕事だったのだろう。
ホワイト職場な聖都騎士団にしては珍しい。
「遅かったね。何かあったの?父さん」
俺は父に質問する。
「あぁ、探し人の依頼が飛び込んできてな。この時間まで探していた。結局まだ解決出来ていないがな」
「探し人・・・それって騎士団長が直接対応するような依頼なの?いつも父さんは討伐とか難しい依頼ばかりやってる気がするけど」
「俺だけじゃない。この任務は聖都騎士団の総出の対応だ。勅命依頼ってやつさ」
勅命依頼。
それは王族かそれに準ずる者からの直接依頼のことだ。
厳密に王家と騎士団は必ずしも主従の関係ではない。
もちろん王家の近衛兵として仕えている騎士団もあるが、
この世界の大半の騎士団は依頼と報酬、需要と供給に基づく、
市場主義的な面を持つ。
だがもちろん、かつての騎士道が失われたわけではない。
王家からの依頼である勅命依頼は基本的には断ることが出来ず、
断ることは騎士道に反する行為とされ忌避されていた。
また勅命依頼には国防や国家に関わるレベルの依頼が多いのが特徴だ。
「勅命の探し人・・・それって誰を探していたの?」
俺は父さんとトーマスを見る。
「こいつさ、ルーク。お前も気を付けろよ、近付けばただでは済まないぞ」
トーマスが胸元から一枚の人相書きを取り出した。
俺はその似顔絵をじっくりと見る。
「先の戦争で滅びた隣国ポイヤックの王女だ。亡命先として聖都の教会本部に保護されてたんだが逃げ出したらしい」
トーマスが言う。
「亡命の王女なんて裏の人間からすれば歩く金塊みたいなもんだ。捕まればどんな目に遭うかも分からない。一刻も早く保護した方がお互いの為だってのによ」
そう苦い顔をするトーマス。
だが俺はまったく別の事を考えていた。
それは昼間の路地裏での一件。
トーマスの出した人相書きは、
そこで出会った金髪碧眼の少女そのままだったのだ。
・・・
・・
・
夜分、目を覚ました。
珍しい事もあるな。
いつもは父との鍛練で疲れきっているため、
眠りは深いはずなのだが。
そう思ってると、不意に胸元に熱さを感じた。
かつて二度味わった事のある感覚。
慌てて胸元を見ると、
ほとんど消えていた胸の痣の一つが赤く耀いていた。
まさか。
『・・・くん!ルーク君!聞こえますか?』
4年ぶりに聞く、懐かしい声。
「あぁ、聞こえてるぞ。テレシア」
それは俺をこの世界に転生させた女神だった。
『お久しぶりです。繋がって良かった!』
「久しぶりだな、突然声が聞こえなくなって心配したぞ。」
『ごめんなさい、それには色々あって・・・』
俺はテレシアから事の経緯を聞いた。
最強魔法が禁止されたこと。
神託はまだ生きていること。
老神との交渉で、
<女神の寵愛>と他の魔法の限定的な使用が
認められたこと。
「勝手に与えておいて、勝手に剥奪とは。迷惑な話だな」
『すみません、ホントに。神々の説得に時間が掛かってしまって・・・』
それで4年か。
だが、テレシアも頑張ってくれたのだろう。
俺は彼女への感謝から、これ以上責めることも止めた。
『これからは私が全力でサポートします。一緒に神託をクリアしましょう。あのわからず屋の神々達には目にもの見せてやりましょう』
幸い、本人もやる気に溢れているようだ。
「神託か、この4年なにもしていなかったんだが大丈夫か?」
俺はテレシアに心配していたことを相談する。
『えっと大丈夫だと思います。神託に関連するイベントを進めるためには、いくつかのキーイベントをクリアする必要があります、そしてそのキーイベントは明らかにそれと分かるような状態で発生するようです』
「そうなのか、例えばどんなキーイベントがあるんだ?」
『そうですね。記録を見ると、突如現れた黒い球体に飲み込まれ見知らぬ部屋に転移したり、かつて何度も戦った狼と呼ばれるライバルが警官姿で訪ねてきたりするケースがあるようですね』
「それって・・・いやなんでもない」
懐かしいやりとりだ。
『この4年でそういった、キーイベントが発生したような事はありましたか?』
テレシアの言葉に俺はこの4年を振り返ってみる。
こうして考えるとほぼ毎日、父さんに剣の修行を課せられていた気がする。
恐ろしい毎日だったな。
だがひとつだけ思い当たる事があるため、念のためテレシアに確認しておくか。
「まさに今日なんだが、路地裏で少女を暴漢から助けた。あとで話を聞いたら亡命中の王女様らしい」
『あ、それです。キーイベント』
ですよね。




