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サムライ・エイジア  作者: 七陣
第7話「ボーン・トゥ・イクサ・ドライヴ」
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3 爆炎と爆煙を銃弾が縫うように走り

アクションだ! 空戦ってめんどくさいことがわかってるのにね…

 艦橋スクリーンに騎影が映し出される。〈ワイアーム〉5騎、〈ワイヴァーン〉1騎。カゲミツ工房作のこれら量産騎(カズウチ)イクサ・フレームは空戦能力に重きを置かれた設計を成されている。敵の姿を睨み、コチョウが言った。

 

「ジトー=サン、〈グランドエイジア〉は?」

「出撃出来る。高機動ユニットも装備済みだしな。ただしバランス取りが完全じゃないぞ」

「ナガレ=サンは?」

「構わない。〈グランドエイジア〉の方で補正してくれる。だろ?」


 コチョウが頷く。

 

「出撃だ。無茶はするな」

 

 ナガレは走り出し、〈グランドエイジア〉に騎乗する。〈フェニックス〉のハッチ開放。〈グランドエイジア〉は各種装備を携え、カタパルトにスタンバイする。

 

「〈グランドエイジア〉、出陣だ!」

 

 射出装置がスイングし、〈グランドエイジア〉を黒い風めいて出撃させた。――(ゴウ)ッ! 肩甲骨部位に装備された高機動ユニットが長く炎を棚引かせる。コクピットの慣性中和装置でも殺しきれぬGがナガレを襲うが一瞬のこと、すぐにコクピット内は平穏を取り戻す。

 

 だが騎体の外は平穏とは程遠い。敵騎のうち先頭をゆく〈ワイアーム〉2騎を〈グランドエイジア〉が視界に収めるや、あちらもこちらを視認したらしい。2騎は手にしたアサルトタネガシマの銃弾をこちらへ向けてばら撒いた。BRATATATATATATATAT! 当たる距離ではない。牽制だ、とわかっていてもナガレはヒヤリとする。

 そのお返しとばかりにナガレはタネガシマライフルを応射した。(BLAM)! FCSのロックが甘いままの射撃だ、当然当たらない。〈ワイアーム〉が回避運動をするまでもなく銃弾は虚空を抜けてゆく。

 

 ナガレははたと気づいて下を見た。上空二千メートル、眼下には都市が広がっている。しかも屹立する軌道エレヴェータ〈ミハシラⅠ〉は嫌でも目に入らざるを得ない。無用な破壊を行う意図は敵味方共にないのは確かだ。

 

 幸い、海は遠くない。ここは迂闊に間合へ入っての撃剣(チャンバラ)は避け、洋上に誘き出すべし。ナガレは三次元ジャイロ羅針盤に投影されたタネガシマ島マップを睨みながら騎体をカーブさせ、牽制射を交えながら敵との、そして〈フェニックス〉との距離を保つ。〈フェニックス〉の装甲は、6騎ものイクサ・フレームの攻撃を受けるには十分とは言えなかった。

 

 彼我の距離は徐々に接近しつつある。その時、敵前に出現したのは二機の戦闘ヘリだ。コクピットにパイロットの姿はない。ナガレが空域をレーダー走査するとパラシュートが二つ。コントロールを〈フェニックス〉に奪われて脱出したのだ。BRATATATAT! アサルトタネガシマの弾幕のひと薙ぎによりヘリが爆発四散した。

 

 だが、それだけでは済まない。〈フェニックス〉が無人攻撃機〈ムクドリ〉を20機、放つ。二機一組の鳥にも似た飛行体はユイ・コチョウ直々にコントロールされており、その軌道はイクサ・フレームの電脳と言えど読み切るのは至難である。BUSH! 〈ムクドリ〉が断続的に翼下に懸架されたロケット弾を〈ワイアーム〉に浴びせる! BUSHBUSHBUSH!

 

 BRATATATA! 機銃が火を吹いてロケットを破砕し、一基としてロケットはイクサ・フレームには届かない。黒と赤と黄色の爆炎が無秩序に広がる。その隙をナガレが突く。(BLAM)! 爆炎と爆煙を銃弾が縫うように走り、1騎の左腕部を破壊する。

 

  先頭の2騎が速度を緩め、敵後方から残る騎体が前に上がってきた。三騎の〈ワイアーム〉だ。〈ワイヴァーン〉の姿は視認出来ないし、三次元ジャイロ羅針盤のマーキング情報からも敵後方にいるらしいことがわかる。やはり〈ワイヴァーン〉が隊長格かとナガレは見当を付けた。 

 

 ――PPPPPP! 突如として発するアラート音。ナガレは3次元ジャイロ羅針盤を見た。〈グランドエイジア〉の背後からだ。ナガレは眉根を寄せながらその予定進路を確認した。

 

 ――(ゴオオオ)ッ!! 〈グランドエイジア〉の右後方より、敵フォーメーションへ突っ込んでゆく巨大な質量を持つ飛翔体! イクサ・フレームほどの刀身を持ち、質量もまたイクサ・フレームに匹敵する、長大にして肉厚の出刃包丁!

 

 左右それぞれ32門、計64門の噴射孔から真っ白い炎を吹きながら飛翔してきたのは他でもない、エンジュ工房製試作型対艦対要塞噴射式ドータヌキ・ザンバー・ブレイド〈一刀両断丸〉だ! ユカイ・アイランドにて〈セブン・スピアーズ〉が一、「剣なる凶鳥」〈ペリュトン〉すら刃の錆とした剛刀である。かの壱番刀は破損が酷く戦闘後廃棄せざるを得なかったが、コチョウは予備としてもう一本を発注していたのである! なんたる未来視的リスク・マネジメント能力か!

 

 ドータヌキが突っ込むのを見てナガレは〈グランドエイジア〉を再度ターンさせた。当初の予定を捨て、近接戦をする(ハラ)を決めたのだ。(BLAM)(BLAM)! (BLAM)! 〈ワイアーム〉に対して牽制射撃をしながら、〈グランドエイジア〉はドータヌキに追従して肉迫する。

 

 ――(ゴオオオ)ッ!! 直進する剛刀にさしもの傭兵たちも度肝を抜かれたか、進路を開けて回避する。その後へ続くナガレへの警戒も忘れてはいない。BRATATATATAT! アサルトタネガシマが火を噴く。ナガレは弾幕を躱しつつ、左マニピュレータをタネガシマの銃身に添えて引金を引いた。(BLAM)! これで弾切れだ。

 敵との間合いは近い。ナガレはタネガシマを銃剣モードにした。銃身下部から小ぶりなヒロカネ・メタルの刀身が伸びた。〈ワイアーム〉もまた抜刀している。

 

(イヤ)ァーッ!」 

 

 敵騎とすれ違う。――(ザン)! 手応えあり。そのまま抜ける。3次元ジャイロ羅針盤をちらと見た。1騎撃破。そのまま速度を緩めたドータヌキとエンゲージし、その柄を握る。騎体は再加速し、勢いを増して第二陣に殴りかかる。もう、眼下は真っ青な海になっていた。

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