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しかくしかくしかくおんらいん  作者: ゲームは縛りをつけてこそ
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なにがきっかけで行動を共にするのか第三話

 

 初めてのVRゲームで、初めての街へと着き、初めて見たのものは、大量の文字だ。視界を覆い尽くす程の文字。街の様子が全く見えない。内容も読もうと思ったところで消えていき、新しい文字が浮かんでくるため頭の中に入ってこない。辛うじて、分かるのはイヴちゃんが興奮してるんだなってことくらい。


 街が見えねー。


 消えないものかなー、と思って横に手を、振ると文字が薄くなっていく。あ、消えはしないけどまだ街や景色が見える。


 初めて降り立った地は、山に囲まれた港町。いや、山、と言うよりは崖に挟まれた渓谷の中にあるような街だった。そして、ここからきっとこの街の出口、大きな門が見える。ここから見えるってことは相当大きな門なのだろう。きっと。


 すごいなあ、と辺りを見渡しているとちょんちょん、と袖が引っ張られる。まあ、引っ張る人といえば一人しか居ないのでイヴちゃんの方を見て声をかけた。


「どーしたの?」

『そろそろ動いて街の中を見に行きましょう』

「それもそうだね。行こうか」


 イヴちゃんの言葉に頷いて歩き出す。現実では見ない、見る事が出来ない光景に年齢を忘れて興奮してしまう。周りを歩く、プレイヤーや、NPCたちの姿が独特なせいもきっとあるだろう。人外やモンスターが街を歩いている姿を見るとあんなのもいるのか、って気分になる。


 ほーん、と見ていると手に温もりが与えられた。


「ん?」


 首を傾げながら手を見るとなるほど、イヴちゃんがギュッと手を握っていた。その可愛らしいほっぺは赤く染まりながら膨らんでいる。自分は好奇心から思わず頬っぺをツンツンしてしまった。


「ふわぁ……」


 あまりの気持ちよさに声を漏らしてしまう。こ、これは、気持ちいい。ぷにぷにすべすべほっぺ。なるほど、これが子供の肌。自分にはない、失われてしまったもの。キモチイイ。


『ノヴァノヴァさん?』

「あ、ごめん」


 文字が浮かんで来たのでシュバっと手を引っ込めて謝る。


『いえ、大丈夫ですけど。いきなりでビックリしただけです』

「そっかぁ。嫌だったらどうしようかと」


 イヴちゃんの大丈夫、という返事に少し安心してしまった。まだ知り合って数時間も経っていないのにいきなりこんな事して嫌な気分になったら困る。折角さっきまで楽しそうにキラキラしてたのだから。自分はもう一度謝って。


「こらからどこへ行ってみる?」


 問いかけてみる。イヴちゃんは空いてる手で顎に手を当ててうーん、としてみたあと、文字で答えを出してくれた。


『取り敢えず協会に行きましょう』

「協会? 教会じゃなく?」

『はい。協会って言ってもわかりやすく言ってしまえばギルドみたいなものらしいですから』

「へぇ。ギルド、ねぇ。どこにあるんだろう」

『……すみません。そこまで調べてなかったです』

「謝らなくていーよー。自分も調べてないから。逆に自分の方が謝らないといけないのに」


 イヴちゃんがしゅんってしていまい、慌てて謝らなくていい事を告げる。自分も調べてないことと、逆に何でもかんでもイヴちゃんに聞いてばかりだし。言ってしまえば頼りきり、とも言うしね。よし、ここは一肌脱ぎますか!


「ちょっと待っててね」


 イヴちゃんにそう一声かけて、手を放す。辺りを見渡してみるいやっぱりたくさんの人や人外がいて、自分はその中でも一人で歩いているゲームの中では珍しいタイプのおじさんに近寄って。


「すいません」


 声をかけた。おじさんはビックリしたようなホッとしたような顔をしてこちらを見ていた。


「道聞きたいんですけど、協会ってどこにあるか教えてもらっても良いですか?」

「ああ、どこら辺にある、というぼんやりした情報でよければ」

「全然それで良いですよー」

「街の中心に大きな噴水があるのは知ってますか?」


 自分が頷くとおじさんは優しい顔をして分かりやすい情報をポンッとだしてくれた。


「あー、確かにありますね」

「その噴水を見て、海を背に右側が協会があります。左側に商会があるそうです」

「へー。そこまで、詳しくご存知なのに何故先程からぼんやり、とかあるそう、とか不確定みたいな言い方するんですか?」


 最後に気になっていた事を聞いてみる。おじさんは困ったような、恥ずかしそうな顔をして、目をそらして言った。


「恥ずかしながら迷子になってしまいまして……」

「なる程、もし迷惑ではないのなら一緒に行きますか?」

「良いんですか?」

「これも何かの縁ですし、一緒に行きましょう」


 にっこり笑って手を差し出せば、おじさんは恥ずかしそうにはにかんだ後、手を握ってくれた。


「よろしくお願いします」

「お願いします。自己紹介はもう一人一緒に遊んでいる人が居るのでそこでしましょう」


 おじさんは快諾してくれて、自分はこっちです、とイヴちゃんの元へと案内した。


 そこで分かったことが一つある。この人、すっごい方向音痴だ。どおりで一人で協会に辿り着けないはずである。髪も整えられて、背も高くしっかりとした印象を受けるのにかわいらしい一面が見れたけれど、パーティで一緒に行動するとちょっと大変かもしれない。


「イヴちゃん。お待たせ」


 おじさんを横に並べてイヴちゃんに声をかける。イヴちゃんは少し不安そうな顔を一瞬見せたあと、文字でおかえりなさい、と声をかけてくれた。


「じゃあ自分から自己紹介しますね。名前はノヴァノヴァっていいます。MMORPGっていうものは初めてです。よろしくお願いします」

『私はイヴと言います。喋れないので文字で会話します』

「私はヴィンジーと言います。ゲーム自体久しぶりなのでよろしくお願いします」


 そんな感じに、3人で名前だけ言う簡単な自己紹介をして、イヴちゃんにパーティ申請の仕方をおじさんと一緒に教えて貰いながら正式に三人でパーティになった。

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