出会いはいつも突然で第二話
『プレイヤーの方ですか?』
目の前に浮いていた文字は一回消えて次の言葉が出てくる。一体どういう事なのか。とりあえず。
「プレイヤーです」
文字に返答してみた。そうすると文字がまた消えて新しい文字が浮き出てくる。
『良かったら一緒に行動しませんか?』
ガツガツくるなー。挨拶もなしにすごいなー。なんて思いながら言葉を声に乗せる。
「えっと、その前に姿を見せて欲しかったりするんだけど」
『ずっと目の前にいます』
え、メリーさんかな? いや、あれは、電話でどんどん近づいてくる話か。違う違う。目の前に居ると文字が出ているので真っ直ぐ見ると下の方に白いのが見えた。これか? 視界を下げると白髪の少女が居た。
「君がこの文字を出してる子?」
『そうです』
「もしかして喋れないの?」
そう聞くとちょっと困ったような顔で頷いた。そんな顔されるとちょっと罪悪感が湧いてしまう。まあ、一人でゲームするのもいいけど折角他の人とも遊べるし。ちょうどいいかも知れない。
「あー、ごめんね。自分はノヴァノヴァって言うんだ。最初に言ってた一緒に行動しないかって話、自分で良ければお願いしたいんだけど」
『おkです! 一緒に行動しましょう! 私はイヴと言います。これからよろしくお願いします』
「あはは、よろしく」
そう言って自分はイヴちゃんに手を差し出しす。イヴちゃんもニッコリと笑って自分の手を握ってくれた。これが、少女のおてて! と変態みたいな思考をしながらイヴちゃんの手の柔らかさに衝撃を受けた。手を離して互いの職業などを話し合う。
話し合う、というよりよく聞くステータスとかの見方を教えて貰った。
ノヴァノヴァ:猫又
探検家Lv.01
発見Lv.01
観察眼Lv.01
暗殺術Lv.01
これがステータスらしい。名前の横はどうやら種族のようで。種族とかあったんか。ちなみにイヴちゃんのステータスも見せてもらった。
イヴ:魔法少女
盗賊Lv.01
付与魔術Lv.01
回復魔術Lv.01
盗賊技能Lv.01
魔術文字
魔法少女っていう種族があることにビックリである。最後の魔術文字っていうのは文字を出現させるやつ。まあ、これがないと会話出来ないからね。仕方ない。しっかし、二人して種族に関しての技能がまるっきりないってのはどーなんだろう。これから期待ってことかな?
『ノヴァノヴァさんは外見だけは猫っぽいですけどね』
「あはは。外見だけ、ね……」
ゆらゆらと揺れて見え続けていた黒いものは自分の尻尾でした、というオチ。どうやら頭の上にも猫っぽい耳があるらしい。ネコミミ! ネコミミ!
『そろそろのようですよ』
「そろそろ?」
『あっちです』
イヴちゃんが指さす方向に視線を向けると、大きな街が見える。まだここからでは街の声は聞こえないが、きっと賑やかで騒がしい街なんだろうな。
『この世界の私達の扱いについて、調べたり、公式HPは見たりはしましたか?』
「残念ながら調べてもないし、見てもないね」
首を振って答えると、イヴちゃんは文字でしょうがないですね、と出した後、自分たちの立ち位置について教えてくれた。まるで自分のチュートリアルをしてくれてるみたいだ!
『私達は旅人であり、傭兵であり、学者であり、村人でもある。船員が居ない船に揺られ異国へと降り立つ。この世界の者にとって、私達は神の者と同一視する者もいれば、侵略者として捉える者もいる。待遇は、一人一人の行動によって変わっていくだろう。というのがHPの載っている内容を要約したものです』
「わかりやすくまとめてくれてる。すごいね」
『何回も読み直しましたから』
「なるほど。それだけ楽しみだったんだ」
『……少しだけです』
「そっかー」
説得力ないぞー、と続けたかったけど、そっぽを向きながら頬を染めるイヴちゃんを見るとどうでも良くなった。とても可愛い。
『見えているのはイカリ、という港町ですが、今は船も出ていないという変わった街だそうです』
「……それもきっと何かイベントとかがあるんだろうね」
『そうですね。例えば船を作ったりだとか、海の怪物を倒せだったりとか』
「夢が広がるねぇー!」
『っ……!!』
にっこー、と笑ってみせるとイヴちゃんはぷくぅ、と頬を膨らませる。そんな仕草もいいね! という感じなのだが抑えて楽しみだね、と声をかけた。
『はい』
短な文字が浮かんですぐに消えた。
その後はからかいすぎてごめん、と謝って何があるんだろう、とか、パーティの組み方とか、組みたい人がいたなら勝手にパーティに追加してもいいからね、とか話し合っていると、ようやく街が近付いてきた。港へと入っていく。帰港、とはまた違ったものになるんだろうけれど、この場合なんて言っていいのやら。初めてのVRMMOだ。楽しんでいこう。