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英雄との戦い

 第56話


 みんなをエーテル王国に連れて行き、スカイシティに戻ってきた後、俺はまず新しい刀を造った。


 前使っていた黒刀と同じ長さで斬れ味は間違いなく今造った方が上だ。


 デザインは前と違い、刀身は紫色で鞘は赤色だ。


 完成したので月の光に照らすと怪しい光のようなものが浮かんだ。


「俺が小さい頃に見せてもらった妖刀みたいだな...」


 俺が幼稚園に通っている頃、おばあちゃんの家に行った時に見せてもらったのにすごく似ている。たぶん、無意識のうちに似せてしまったのだろう。


 素材は空の大迷宮に埋め込まれていた大理石のようなものとミノタウロスの武器の一部を使ったので、頑丈なのは間違いない。


「前みたいに名前でも付けるか、愛着が湧くしな。うーん、そうだなぁ...イザヨイにするか!」


 名前も決まったことだし、そろそろ行くか。


 それから俺は英雄シルを探しながら街で暴れているモンスターを倒していた。


「きゃぁぁぁぁ!誰か、助けてぇぇぇぇ!!」

「グォォォォォォ!」


 ザシュッ


「え?」


 女に迫っていたモンスターの首を切り飛ばし、すぐに別のモンスターを狩る。それを繰り返していると、街にいたモンスターを全て倒していた。


「ちっ、あいつはどこにいるんだよ!」


 敵探知を発動しているのに全く引っかからない。それなら魔力を探すまでだな。


 そして創造魔法を発動させるためにイメージする。


「魔力探知ッ!」


 魔力探知は周りの魔力を探る魔法だ。


 それを発動させた瞬間、前方から強烈な魔力が発せられていることがわかった。


「見つけたぞ、もう逃がさねぇからな?」


 限界突破Lv5を使って移動すると、その場にはすぐに着いた。


 そこには案の定、英雄シルがいた。シルは銀の鎧を着て空をジッと見ている。


「てめぇ、覚悟はできてんだろうなぁ?」

「...」


 俺がシルに向かって言うと、ようやくこちらを向いた。だがその目は俺を見ているようで俺を見ていなかった。


 シルは虚ろな目でこちらを見ている。ゾンビだと言われてもわからないぐらい不気味だ。


「これが洗脳された状態かよ...でも少しは自我があるのか洗脳された影響なのかはわからないが、少し感情はあるみたいだな」

「ふっ」

「まぁ、んなもん関係ねぇがな」


 シルのことを睨み、覇王と限界突破Lv10を発動させた。いくら洗脳されているとはいえ相手は英雄、凄まじい魔力だということがわかるので最初から全開だ。


「さぁ、あいつらをあんな目に合わせたツケ、払ってもらうぞ!」

「...」


 地面を蹴り、シルに向かって居合斬りをする。剣を抜く瞬間に神速を使用したので目に見えないほどの速さで斬りつけたが、まるで当然だというように剣で受け止められてしまった。


 鍔迫り合いの状態になってしまったので、疑問に思ったことを聞いてみた。


「なぁ、あんた話すことも出来ないのか?感情はあるんだろ?」

「...」

「ちっ、話さない、感情も表に出さない、本当に操り人形ってわけか!」

「...!」

「ぐっ!」


 そこでようやくシルが怒りのようなものを見せ、俺のことを力づくで吹き飛ばした。


 壁におもいきり叩きつけられたが魔力で体を覆ったので大したダメージはくらっていない。


「はっ!俺が何か気に触るようなことを言ったか?」

「...」

「ちっ、まただんまりかよ...なら!」


 魔力を手に集める。そしてそれを圧縮、圧縮、圧縮し、超高密度のエネルギーに変えた。


 そのエネルギーをイザヨイに付与すると、赤いオーラを放ち始めた。


「次は簡単には受け止めさせねぇぞ!」

「...!」


 今度は神速を使っていっきに距離を縮める。シルは俺のことを見失ったのか一瞬だけ反応が遅れた。


 その一瞬の隙を見逃さずに、シルの左腕を切り落とそうと居合斬りをする。


 だが、その居合斬りはシルにかすり傷をつけることしかできなかった。


「さすがは英雄っていうところだな。あんたどんな反射神経してんだよ」

「...ふふっ」

「あ?」

「ふふっ、ふふふっ、ふははははははははっ!」

「ど、どうしたんだ?」


 シルが少しだけ斬られた腕の血を触ると、突然笑いだした。その目は先程と変わらずに虚ろだが、体からは凄まじいオーラが出始めた。


「我に傷をつけるとは...なかなかやるなぁ、小僧?」

「話せるのかよ...というよりも、あんたはいったい誰だ?」

「我か?知っているだろ? 我はシルだ! 英雄シルだ! ふはははっ!」

「それは体の話だろ? その体を操っているお前は誰だって聞いてんだよ!」

「ふふっ、ならばまずは自分から名乗ったらどうだ?」

「ちっ、黒輝ソウタだ」

「素直で良いな。我の名はゲイネス、魔王軍の幹部の一人だ!」


 やはり魔王軍の幹部か、こいつといいヴァイスといい、厄介な奴ばっかりいるんじゃないか?そうなるとだいぶ面倒だな...


「なんだ、我に恐怖して何も言えないのか! ふはははっ! そうだ、たしかお主は我が殺そうとしているのを邪魔してきたな? もしかして、お主は我が突き刺した小娘のコレか?」

「...だったらなんだ?」

「目の前で汚してやればと思ってな、その後であの場にいた小娘どもを殺してやればよかったな! ふははははははははっ!」


 プチンッ


 ゲイネスの言葉を聞いた瞬間、今までなんとか抑えていた怒りの限界を突破した。


 すると、ソウタから黒い魔力が流れ始めた。あきらかに先程よりもパワーアップしていることがわかる。


「お、お主、それは、ま、まさか!?」

「.......シネ」


 そう言ってソウタは消えた、と思いきや、いつのまにかゲイネスの背後で居合斬りの構えをしていた。


「──雷切Lv10」

「な、なめるなぁぁぁぁぁぁ!!」


 ゲイネスは操っているシルの身体能力と剣を使い、なんとか直撃を防いだ。


「...お主、闇に呑まれたな?」

「...」


 ゲイネスに直撃はしなかったが、ゲイネスが操っているシルの体は血だらけだった。


 なんと、雷切の余波だけでそれだけのダメージを与えたのだ。


「ちっ、これは少し分が悪いな... 退散させてもらうとしよう」

「...」

「ふんっ、こちらが話しだせばお主が黙り込むか。まぁよい、この体が素晴らしいことが改めてわかったからな。今回はそれで満足するとしよう」


 ゲイネスが石を取り出し、その石が光だすと、何もなかった空間に魔法陣が浮かび上がった。


「ではな、小僧。次に会う時は...」

「ウォォォォァォォォ!!!!!!」

「な、なんじゃ!?」


 ソウタに別れの挨拶をして魔法陣に入って行こうとした途端に、ソウタが雄叫びをあげた。


 それに驚いたゲイネスは魔法陣に入らずに、ソウタの様子を観察してしまった。


「...はぁ、はぁ...はぁ...」

「な、なんだったんじゃ?」

「ふぅ、まったく、意識を完全に持っていかれちまってな。くそっ」

「っ!? お主、まさか!?」

「あぁ、ちゃんと自我を取り戻したぜ? もう逃がさねぇからな?」


 そう言ったソウタの右目は普通だが、左目は真っ黒になっている。


 ソウタは黒と赤色の魔力の球体を人差し指に作り、それをゲイネスが展開した魔法陣に向けて放った。


 パリンッ!


「...やってくれたのぉ、小僧!」

「俺はお前を許さねぇ。だからここで殺してやるよ」

「図に乗るなぁ!!」


 ゲイネスが真正面から突っ込んできた。いくら英雄の体でスピードが速いといっても真正面からくれば簡単に防げる。


「おいおい、仮にも英雄の体だろ? もっとマシな攻撃をしてこいよ」

「っ!! ...ふぅ、いかんいかん、キレて取り乱してはお主の思うツボじゃな」

「冷静なんだな」

「これでも五百年は生きておるからの」

「それでその若い肉体が欲しくなって洗脳してるって訳か」

「洗脳とは少し違うが...まぁ、そういうことになるのかのぉ」


 洗脳とは少し違う?シルの体を乗っ取っているってことか?なら、魂を移しているのか?...ものは試しだな、一か八かやってみるか!


 シルの体をこれ以上傷つけずにゲイネスだけを斬るイメージをする。


 そして、神速と心眼を発動させ、無理やりゲイネスの懐まで突っ込んだ。


「──悪心一刀ッ!」

「そんなもの、我には効か...ん...がはっ!」

「上手くいったみたいだな」

「お主...なにを、した!ぐっ...」

「お前だけを斬ったんだよ」

「はぁ、はぁ、この痛み...何百年ぶりか...」


 悪心一刀は悪感情を持っている者のみを斬る付与魔法だ。なので、先に付与していた高密度のエネルギーを解除して、悪心一刀をイザヨイに付与したのだ。


 英雄シルは悪感情を持っていないおかげで体には傷一つつけることなく、ゲイネスだけを斬ることができた。


 ゲイネスは苦しそうにしている。今まで操ってきた者の痛覚を遮断していて痛みに慣れていないのだろう。


「次は仕留める」

「ちっ、本当に分が悪いの...仕方ない、さらばだ」

「逃がさねぇって言ってんだろ!」


 ゲイネスが言うと同時にシルの体は地面に倒れた。


 ゲイネスがシルの体から抜け出したのだろう。なので、魔力探知を発動させゲイネスの魔力を探すと、空中にあることがわかった。


 それを逃がさないために瞬時にイメージする。


「──ロック!」

「!?」

「これで終わりだ!──悪心一刀ッ!」


 固定したゲイネスの魔力を斬ると霧散した。


「呆気なかったな」

「あぁ、そうだな」

「なに!?」


 後ろを振り向く間もなく剣で突き刺されてしまった。


「ぐはっ!」

「我が逃げたのだと思い、あの魔力を追って斬ったのは素直に褒めてやろう。だが...まだ甘いな」

「ちっ、くしょう...」

「我は言っただろう、さらばだ、とな」

「あぁ、そう...だな...」

「ふふふっ、ふはははっ! お主の死体をあの小娘どもに見せると思うと楽しくて仕方がないわ!」

「そうかよ...短距、離、ワープ...」

「む?なんと言った?」


 ゲイネスが笑いを止め、突き刺したソウタを見ると、そこには剣しか無かった。


「どこへ行った!?」

「──悪心一刀 神速斬りッ!」


 その声だけを聞き取り、ゲイネスはどこから斬られたのかもわからないまま呆気なく斬られてしまい、気付けば目の前が真っ黒になっていた。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ソウタは短距離ワープを使ってゲイネスの背後に回った後、悪心一刀と神速を発動させながら何十回もゲイネスの魂だけを斬ったのだ。


「ふぅ、往生際の悪い爺さんだったぜ...」


 背中からおもいきり突き刺された後に、無理やり体を動かしたので今にも倒れそうになっていると、身体中に激痛が走った。


「ははっ、これが闇の力の代償か?...まるで、中二病だな...」


 そのまま俺は気を失ってしまった。


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