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茜side 王国で一人ぼっち

 第55話


  その頃、茜はギルドの中にいた。


「...はぁ」


  誰から見ても落ち込んでいる茜に、心配になったエーテル王国のギルドの責任者であるザックは茜に話しかけた。


「どうしたんだい、お嬢さん」

「え? あぁ、ごめんなさい。友達に置いていかれて、これからどうしようか悩んでるんです」


  あははっと苦笑いをする茜にザックは優しく対応する。


「気にしないでいい。それより、君はスカイシティのギルドの椎葉茜さんじゃないかい?」

「なんで私のこと知ってるんですか!?」

「ギルドで働いている人の顔と名前は覚えておいた方がいいからね」

「そうですよね...すみません」

「いやいや、気にしなくていい。他所のギルド職員の名前を覚えていない方が普通だからね。それより、良ければ愚痴を聞くよ。ちょうど話し相手が欲しかったんだ」

「いいんですか!?」


  茜は、やっと話し相手が出来た! とあまりの嬉しさにガタッ! と音をたてて立ち上がってしまった。


「お、おぉ、そんなに愚痴を聞いてほしかったのかい?」

「あっ、すみません! 実はその、はい...」

「はははっ! なら気が済むまで話してくれ。その後、私の愚痴も聞いてくれるかい?」

「はい! それはもちろん!」


  茜は楽しそうに返事をすると、ギルドの職員に飲み物とちょっとしたお菓子を頼み、話す準備をした。


「楽しそうだね」

「はい! それに、ちょっと心細かったんで安心したのもあると思います!」


  少しすると、注文した飲み物とお菓子を職員が持ってきてくれたので、話すことにする。


「私、さっきまでスカイシティにいたんです。それで、友達がケガをしたのでここまで転移魔法で来たんです。そしたら、転移魔法を使った友達がケガをした子を連れてどこかに行ってしまって、私は知らない街で一人ぼっちになったんです...」

「て、転移魔法!? その友達はいったいどんな人物なんだ!? いや! それよりも、ケガをした子は大丈夫なのかい?」

「多分大丈夫です。 迷わずに行ってしまったのでどこかアテがあったんだと思います」

「そうかい、それはよかった。この街には神の使いがいるからね、その事を知っていたんだろう」

「えぇ!?」


 そこでまた茜がガタッ! と音をたてて立ち上がった。だが、さっきとは違い、驚いている様子だった。


「か、神の使いの子達ってこの街に来てたんですか!?」

「そ、そうだよ? というよりも、神の使いの人達はこの街に召喚されたんだよ」

「そうだったんだ...あ、すいません! 少し驚いたもので...」

「気にしないでいい。 驚いてもしょうがないだろうからね」


 そう言われた茜は少し考えをまとめることにした。


 神の使いの子達がここに召喚されたのだとしたら、ここは本当にエーテル王国。スカイシティからエーテル王国は凄く遠い、ていうことは、ソウタ君が本当に転移魔法を使ったっていうことだよね?


 はぁ、本当に規格外の子なんだから...とため息を吐いていると、ザックさんが背中を優しくポンポンと叩いてくれた。


「元気を出したまえ、君の苦労もそれなりにわかるよ。そうだ、茜くんが元気が出るようにここ最近で起こった、私の苦労した出来事を話そうか」

「本当ですか!?」


 茜が嬉しそうに言うと、ザックは頷き、話し始めた。


「神の使いのうちの一人がここに来てね、あまりにステータスが凄かったもんだから私の友人の救助を頼んだんだ。そしたら彼は見事無事に友人を助けてくれたんだ」

「それが苦労したことですか?」

「ふふふっ、彼は無事に友人を助けてくれた。だが、その代償が凄まじくてね」


 そう言ってザックは立ち上がり外に出る扉の前まで行くと、ちょいちょいと茜に手招きをしたので、茜はそれに付いていき外に出ると、山と山の間に指をさした。


「あそこには何もないだろう?実は、あそこには前まで森があったんだよ」

「...それってもしかして、ブラックフォレストですか?」

「おや、知っていたのかい」

「あはは、うちのギルドの責任者が取り乱していたので話を聞いていたんですよ!」

「そうかい、誰がやったのかは聞いたかい?」

「神の使いとしか聞いていないですよ。凄いですね、神の使いって、ソウタくん以外にもこんなことが出来る人がいるなんて思いませんでしたよ」


 ザックは茜の言葉を聞くと固まったが、それに気付いていない茜は続ける。


「あ、ソウタくんっていうのはですね、さっきお話した転移魔法を使った人で、神の使いのうちの一人なんですよ!」

「...もしかして、黒輝、ソウタくん、のことかい?」

「え? そうですけど...もしかして!?」

「あぁ、たぶん茜くんが想像している通りであっていると思うよ」


 はははっ、と二人で乾いた笑いをしてしまう。


 そして、二人は同時にため息を吐いた。


「ソウタくんが山を吹き飛ばしたんですね...」

「あぁ。ソウタくんが転移魔法を使ったんだね」

「はい」


 二人はまたもやため息を吐くと、今度は笑い始めた。


「はははっ! 茜くんとならソウタくんの話が通じるので面白い! まだ何かソウタくん絡みのことで話はあるかい?」

「はい! それはもうたくさんありますよ! 元の世界では四年間以上ほぼ毎日顔を合わせていましたから!」

「それはいい! 今夜はソウタくんの話で飲み明かそうじゃないか! カーミラ! 酒を持ってきてくれ!」

「...はぁ、了解しました」


 ザックさんがカーミラさんという背が高く、綺麗な金髪をしていて、モデル並の体型をしている女性にお酒を頼んだらすぐに持ってきてくれた。


 そのお酒の色は青色で凄く綺麗な色をしている。


「ありがとうございます!」

「いえいえ、これも仕事なので。あー、この人が酔って寝たらいつでも帰っていいからね?」

「わかりました!」

「おいおい、私は酒には強いほうだぞ!」

「どの口が言うんだか...」


 カーミラさんがため息を吐くので、ザックさんはお酒弱いんだなぁと思っていると、カーミラさんがザックさんを睨んだ。


 あんなに優しそうな顔だったのに怖いよ〜。


「次、机とか備品を壊したら、わかってますよね?」

「...はい」

「よろしい。それじゃ、茜ちゃんはゆっくりしていってね!」

「はい!」

「私はゆっくりしてはダメなのかい」

「今日の分の仕事を明日するならいいですよ」

「よし! では飲もう!」

「はぁ、本当この人は...茜ちゃんはこんな人になっちゃダメだからね?」

「あはは、気をつけます」

「二人ともひどいね!?」


 そこから数時間ほどソウタの幼い頃の話をしていたら、ザックがソウタとセリスとの関係がどうなったのか気になると言い出した。


 なので、結婚指輪を渡していたと言うと、ザックはまるで自分のことのように喜んだ。


「そうかそうか、あの二人がねぇ。やっぱりソウタくんはロリコンだったのか」

「それ本人に言わないほうがいいですよ」

「ははは! わかっているとも」


 そこからまた一時間ほど話していると、ザックさんが飲み物を置いて、嬉しそうに笑っている。


「どうしたんですか?」

「ソウタくんはやはり優しい少年だったんだと実感すると嬉しいんだよ。なんやかんや、君達のこともこの世界の住人のことも救っているようだしね」

「ふふふっ、そうなんですよ!もうそういう所が凄くカッコイイんです!」

「はははっ!そうかそうか!」


 それから二人はお酒を飲みながらずっと話し続け、夜が明けてくると二人とも眠ってしまった。



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