女子会
第54話
ソウタがスカイシティにもどった数分後にメイが目を覚ました。
「...うぅ、ここは? そうだ! あの女性は!?」
「落ち着いてください」
「っ!? あなたは誰ですか!?」
「私はこの国の王女のリアと申します。黒輝ソウタさんからあなたたちのことを頼むと言われたので看病していました」
「そうなんですか?」
メイが警戒心剥き出しでリアと向き合うが、リアは怯むことなくメイに事情を話した。
「そうだ! セリスさんは!? 茜さんさんは!? ソウタさんもどこにいるんですか!?」
「お、落ち着いてください! セリスさんならあなたの隣で寝ています。黒輝さんはどこかに行ってしまいましたが、茜さん、という方は知りませんね?香帆は知っていますか?」
「いいや? 知らないよ?」
そう聞くと、メイはガバッと立ち上がり、どこかに行こうとする。
「ちょ、ちょっと! どこ行くの!?」
「茜さんを探して来ます」
「待ってください。その茜さんという方を探す前に、ここはどこか理解していますか?」
「スカイシティですよね?」
「いいえ、ここはエーテル王国という国です」
「え?」
メイがリアにここのことを教えてもらっていると、セリスも目を覚ました。
「...ここはどこ?」
「あ! 起きたんですね! セリスさん!」
「むっ、苦しい」
セリスが起きたことを喜んだメイは思い切りセリスを抱きしめた。
抱きしめられたセリスはメイの大きな胸に埋められているので苦しそうにしている。
「そうだ! ここはどこなの?」
「では、私が説明するのでお二人共そこに座ってください」
「「はーい!」」
セリスがそう聞くと、リアが優しく微笑みながら言ったので二人とも大人しくその場に座った。
リアはソウタがケガ人であるセリスとメイを担いできたことと、香帆がそのケガを治したこと、この王国のことを話した。
「私とセリスさんはソウタさんがここに連れてきてくれたんですよね?」
「そうですよ」
「それなら、ソウタさんはどこにいるんですか?」
「それは...」
リアが香帆の方を見ると、香帆は分かったように頷いた。
「黒輝くんは今、買い物にでかけてるよ」
「クロキクン?」
「ソウタ君って言ったら分かるかな?」
「ソウタのことか!私、ソウタって名前しか知らなかったなぁ」
「私もです!」
少し恥ずかしいけど、二人の前ではソウタくん呼びをしようと決めた香帆。
「そうなんだ。そうだ! ソウタくんが帰ってくるまでお話しない?」
「いいよー!」
「私も参加していいですか?」
「もちろん!」
香帆は、これで黒輝君のことが少しはわかるかも!と思い、セリスとメイにこれまでソウタと一緒にいて起きた出来事を聞くことにした。
「えーっと、まずはなんて呼べばいいかな?」
「セリスでいいよー」
「私のことはメイでいいですよ!」
「よろしくね! セリス! メイ! 私の事は香帆って呼んでね♪︎」
「私のことはリアと呼んでください。よろしくお願いします」
「わかった! よろしくね!」
「了解です! よろしくお願いします!」
そこから楽しいお話会が始まるのであった。
「じゃあさっそく、セリスとメイってどこでソウタくんに会ったの?」
「私は村でソウタさんに助けてもらったのが初めての出会いでしたね」
「私は私の大迷宮で会ったのが初めてだったよ!」
「「え!?」」
「だ、大迷宮!?」
「それって、最近になって本当の大迷宮は四つしかないと言われるようになったあの大迷宮ですか!?」
「そだよー」
「「えー!?」」
リアと香帆が大声で驚くのでセリスとメイはうるさそうに耳を塞いだ。
「...二人ともうるさい」
「ご、ごめんね?でも、大迷宮って凄く危ないところだよね? どうしてそんな場所で会ったの?」
「私が大迷宮の管理者でソウタが大迷宮に挑む挑戦者だったから?」
「っ!? ...はぁ、もう驚かないようにしましょう。いちいち驚いていたらこれ以上もたない気がします」
「そ、そうだね...」
はははぁ、香帆とリアが乾いた笑いをしていると、メイがクスクス笑っていた。
「どうしたの?メイ」
「ふふふっ、あぁ、すみません。二人の反応がオーバーリアクションだったのでつい」
「こんなの驚いて普通だよ!」
「そうですよ!」
二人は若干怒り気味で反論すると今度はセリスも笑い始めたので、つられてメイもまた笑ってしまった。
「もう! ところで、ソウタくんは大迷宮を攻略したの?」
「うん! 凄くカッコよかったよ!」
「えぇー! 見てみたい!」
「私も見てみたいです!」
羨ましそうにセリスに迫る香帆とメイ。二人とも目が本気だ。
「メイは最近、ソウタのカッコイイところ見たでしょ?」
「え?あぁ、確かに...見ましたね!」
「ウソー!? メイの裏切りものー!」
「あははっ! すみません、香帆さん」
キャッキャしていて、まさに女子会のような状態になっている。
そこで、もっと話が長くなると思ったリアは紅茶を入れるために一度部屋を出た。
「リアって優しいね!」
「そうだよね!さすが王女って感じだよね!」
「紅茶が楽しみですー!」
三人はリアが紅茶を入れてくるまでの間、大迷宮の話をしていた時、たまたま香帆の視界にセリスが左手の薬指に指輪をしているのが目に入った。
「その指輪凄く綺麗だね! いいなぁ、もしかして彼氏からもらったの?」
「うん!」
「へぇ、どんな人?」
「ソウタだよ!」
「...へ? え、えー!?」
その瞬間、香帆の驚いた声が城中に響き渡った。
その悲鳴により、何事だ!?とすぐに駆けつけてきた兵士だったが、なんとか誤解だったということを理解してもらった。
そして、ちょうど戻ってきたリアに説明をしながら紅茶を飲み、香帆はだんだんと落ち着いていった。
「あの、黒輝くんが指輪とはねぇ...」
人って変わるもんなんだなぁ...
と上を見ながら元の世界での黒輝くんのことを思い出していると、頬をつつかれた。
「香帆って、ソウタのことが好きだったの?」
「えーっと、うん。そだね」
「じゃあ私と仲間ですね!私と一緒に愛人にしてもらいましょう!」
「はぁ!? あ、愛人!?」
「まぁ! 黒輝さんってモテるんですね!」
「ソウタはカッコイイからねぇ。しょうがないよね!」
「え!? セリスはいいの!? メイにとられちゃうかもなんだよ!?」
「ソウタは私のことが一番好きって言ってくれたし、結婚してくれとも言ってくれたもん!だからとられる心配なんかしてないよ!」
「そうなんですよねぇ。それにソウタさんはセリスさん一筋ですからね。無理やりにでもキスしないと...」
「メイ?」
「ごめんなさい」
ゴゴゴゴゴッという感じでセリスが言うと、メイが即座に謝った。
それを見ていた香帆とリアは笑っている。
「はぁ、ソウタくんとセリスはラブラブなんだねぇ。いいなぁ、羨ましい!」
「ですよね!」
「ふふん!いいでしょ!」
胸を張るセリスだったが、その姿がどうしても小さな子供のようにしか見えなかった香帆は、つい思ったことを口に出してしまった。
「セリスって小さい子供みたいだよね」
「え...」
「香帆さーん!それは言っちゃダメです!」
メイは香帆の側により、肩を掴みながら真剣に言う。
「え? なに? そうなの?」
「はい! セリスさんは自分の幼児体型を気にしているんです!」
「うっ...」
「なるほど」
「それと自分の年齢のことも気にしているので触れちゃダメです」
「...うぅ」
「何歳なの?」
「ソウタさんが150は超えていると言っていました!」
「え!? そうなの!? こんなに可愛いのにおばあちゃんなんだね...」
「うっ!」
「二人ともこれ以上は言ってはダメです!」
「「はっ!」」
それを見ていたリアは慌てて止めに入ったが、遅かった。
香帆が言った最後の一言でセリスの心は折れてしまい、手と膝を床に着けて落ち込んでしまったのだ。
「...ふふふ、そうだよね...私はおばあちゃん...ロリババァ...」
「セリス!? 急にどうしたの!?」
「大丈夫ですよ! セリスさん! 誰もそんなこと思っていませんから!」
「そうです! セリスさんはおばあちゃんなんかじゃないです!」
「いいんだよ三人とも...ソウタも言ってたんだ...時にウソは人を傷つけるんだ、って...」
「「「...」」」
何も言えなくなる三人。
その三人を見てもっと落ち込むセリス。
そして香帆達三人は小声で作戦会議を行うことにした。
「これからどうする?」
「セリスさん、凄く落ち込んでいますよ」
「この場にソウタさんさえいれば解決するんですが...」
どうしよう...と悩む三人。
だがそんな悩みを吹き飛ばすように、ぐぅぅぅという音が部屋に鳴り響いた。
するとセリスは立ち上がり、お腹を抑えた。
「...お腹空いた」
それを見た三人は一瞬、ポカーンとしたがすぐに笑ってしまった。
「なんで笑うの!」
「だって、いきなりお腹空いたって、あははっ!」
「セリスさんは本当に食いしん坊さんですね!」
「ふふふっ、ではご飯を用意してもらいますので少しだけ待ってくださいね」
「本当?ありがとう!」
ごっはん〜♪︎ごっはん〜♪︎と機嫌を戻したセリスに安心した三人はホッとした。
そして数分後、また話をしていると部屋の中に料理が運ばれてきた。
「これオムライスだよね? 凄く美味しそう!」
「ふふふっ、喜んでいただけてなによりです。おかわりもありますので遠慮せずに言ってくださいね」
「うん! ありがとう!」
セリスの機嫌がすっかり元に戻ったので、三人は安心してオムライスを食べることができた。
一時間後、オムライスを食べ終えたセリスとメイはソウタがなにをしているか話していた。
「ソウタ遅いねぇ。何してるんだろ?」
「そうですね〜。またプレゼントでも選んでくれてるんでしょうか?」
「それなら嬉しいね!」
「はい!」
セリスとメイが楽しそうに話しながらソウタの帰りを待っている。
その姿を見て香帆とリアは心配していた。
「黒輝くん、いつになったら帰ってくるんだろ」
「そうですね、遅いですよね」
「...無事に帰ってきてくれるといいね」
「...そうですね」
「なんの話をしているの?」
「「わぁぁ!?」」
二人で小声で話しているといつの間にかそばにセリスがいたので驚いた。
そして、セリスがそばにいるということは、もちろんメイも一緒にいるということだ。
「無事に帰ってきてくれるといいねってどういうことですか?」
「「ギクッ」」
「どういうことなの?」
「えーと、それは...」
「そ、そうだ!セリスとメイはここに来る前は何してたの?」
メイとセリスに言い寄られ、リアが話しそうになったがギリギリの所で香帆が無理やり話を変えた。
「え? えーと、確か...」
「...んーと、そうだ、私達! メイ! 急いで戻らないと!」
「はい!」
「ストーップ!」
「ちょっと! 離して!」
「香帆さん! いくら香帆さんでも怒りますよ!」
またしても香帆が、部屋を出て行こうとした二人をギリギリの所で止めた。
「怒ってもいいよ。それよりも、メイ達はケガをしたからここに来たんだよ。だからここで安静にしてなきゃダメ」
「わかってるよ! でも、ソウタは行ってるんでしょ!?」
「...うん」
「じゃあ戻って私達も戦ってくる」
「それは無理だと思います」
「なんで?」
リアがそう言うと、セリスが少し不機嫌になりながら聞いた。
「あなた達が戻ろうとしてるのはどこですか?」
「スカイシティだよ」
「そのスカイシティに行くにはここからでは一ヶ月かかります」
「「ッ!?」」
セリスとメイが驚いた顔をする。
それは当然のことだ。まさかそれ程の距離があるとは思っていなかったのだから。
「じゃあどうやってソウタは私達をここに連れてきたの?」
「...転移魔法を使ったのだと思います」
「転移魔法!?」
セリスが過剰に反応するので、メイはそれに疑問を持った。
「なんでそんなに驚いているんですか?」
「...転移魔法って魔法陣がある場所でしか使えないの。それに、魔法陣があれば出来るわけじゃない。ちゃんと目的地にも魔法陣がないと発動なんて出来ないの。でも、ソウタのことだから魔法陣なんて使ってないんでしょ?」
「はい」
「...はぁ」
セリスが何かを諦めたようにため息を吐くと、魔力を高め、集中し始めた。
「セリスさん? 何してるんですか?」
「ちょっと待っててね。ソウタみたいに上手くいくかわからないから」
「...もしかして、転移魔法を使おうとしてるんですか?」
「王女様は察しがいいね」
そう言うと、創造魔法を使うためにもっと魔力を高めていくセリス。
「い、いったい何者なの?」
リアが不安げに言うと、メイが得意気に言う。
「世界で一番強くてカッコイイ勇者さんのお嫁さんです!」
セリスはそれが聞こえたのだろう。顔が赤くなり、魔力が少し乱れたが、すぐに立て直した。
「...ゲートッ!」
そして、ソウタが使用したのとそっくりなゲートがセリスの目の前に現れた。
それに驚くリアと香帆。メイは「さすがです!」と感激している。
「ふぅ、できた。あっ! メイ! さっきのだけど、あと一つ忘れてるよ!」
「え? そうでしたか?」
「うん! 私は ──天才魔法使いだよ!」
そう言ったセリスは得意気に胸を張っている。
「早く行こ! メイ! 香帆とリア! ケガ治してくれてありがとう! オムライスも美味しかったよ!」
「はい! 香帆さん!リアさん!ケガを治していただいたりご馳走になったり、ありがとうございました!」
そう言って二人はゲートの中に入って行ってしまった。




