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化物

 第四十一話


「セリスを背負って行くか起きるまで待つか、どっちがいい?」

「背負って行った方がいいと思う」

「私もそう思います」


 ということでセリスを背負って行くことになったので背負おうとしたら茜さんに「私が背負うよ!」と言われたが断るとニタァと何か悪いことを考えている顔をした。


「そうだよねぇ、自分の彼女を他人に触られたくないよねぇ?」

「そんなんじゃねぇよ」

「でもごめんね? もうセリスちゃんの体の隅々まで触っちゃった☆」

「あ゛?」

「もう、怒らないでよー!」

「怒ってねーよ」


 何だかわからないがすごくムカつくのだがこれ以上疲れたくないので無視するようにメイを見るとセリスのほっぺたをツンツンとつついている。


 セリスのほっぺたはすごく柔らかいので触りたい気持ちも分かるのだが今やる事じゃないだろ。


 そんなことを考えていると茜さんがメイに抱きついた。


「メイちゃーん!! ソウタ君が無視してくる!」

「あんたが変なこと言ってくるからだ」

「お姉ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!」

「お前に育てられてなんかねぇよ!」

「あー!! お前って言った! 口悪いよ!」

「うるせぇ!」

「二人とも落ち着いてくださいよ! セリスさんが起きちゃいますよ!」


 ようやく二人は大人しくなり、ソウタはセリスを背負って先へ進むことになった。


 だが数分間歩き続けても敵は現れなかったし、道も複雑になってきたのでセリスが起きるまでの間、少しだけ休憩することにした。


「いつ起きるんだろうな」

「早く起きてほしいなぁ」

「そうですねぇ」


 三人でまったりしているとセリスから「う、うぅ〜...」と唸り声が聞こえた。


「セリスちゃーん! 朝ですよー!」

「...ん」

「起きてよ〜」

「.....んんー」


 茜が頑張って起こそうするが中々起きない。するとセリスの耳もとで何かを言うと、セリスは顔を真っ赤にして飛び起きた。


「どうしたんだ?」

「.....えっち」

「はぁ!?」


 いきなりジト目をされ変態扱いされたんだが!?


「茜さん、何言ったんだ?」

「何も言ってないよ〜」

「嘘つくなよ」

「ついてません〜」


 このやろう、と思ったらセリスが自分の体を隠すようにして目の前に来た。


「...触ったの?」

「何をだ?」

「私の体」

「触ってねぇよ」

「でも茜が言ってたよ?」

「嘘だから気にするな」


 茜さんの方を見ると「てへぺろっ♡」という感じでウィンクされた。いちいち人をムカつかせることがうまい人だ。


「.......いつ手を出してくれるんだろ.....」

「ん? なにか言ったか?」

「何も言ってないよ! 早く行こ?」

「元はと言えばセリスが寝てたせいだからな?」

「反省しまーす」


 反省しなさそうに言うので脇の間に手を入れてくすぐってやった。すると脇が弱いのかすぐに倒れてしまったが、それでもなおやり続ける。


「ちょ、もうやめて! もう、あははははは、くすぐったいのやだ! あ、ちょ、ホントにやめてー!!!」

「まだそんな態度をとるのか? ほら、ちゃんとごめんなさいをしたらやめてやるよ」

「ご、ごめん、なさ、あははははは、い! もう寝ないからやめてくださいー!! あははははははは!」

「よく出来ました」

「はぁ、はぁ、はぁ」


 そう言って手を離すとぐったりと寝転んでしまった。体も痙攣してしまい、ビクンッビクンッとなっている。まるで無理やり犯されたような現場になってしまったので茜さんとメイに冷たい目で見られた。


「うわぁ...これはちょっと...」

「やりすぎですよね?」

「はぁ、はぁ、はぁソウタの、へんた、い!」

「す、すまん! やりすぎた」


 何度も謝るとようやく許してもらったので先に進むことにする。


 そして何段も階段を登っていくとまた大きな広間にでた。そこにはミノタウロスのようなモンスターがいた。


「え...うそ...」

「夢...ですよね?」

「こんなのまでいたなんて...」

「どうしたんだ?」


 明らかに普通じゃない態度をとるので何か良くない事が起こっている事がわかる。おそらくこのミノタウロスは凄く強いのだろう。それが二十体もいるということは絶望してもおかしくない、というところだろうか?


 俺がそんな予想を立てているとミノタウロスが動き出した。


「みなさん! 早くここから逃げてください、」

「私が時間を稼ぐよ!──火輪ッ!」

「ソウタ君!? 何してるの!? 早く逃げるよ!?」

「あぁ? 何言ってんだよ。全部殺るに決まってんだろ?」


 そう言うとみんなは顔色を青くし、必死に俺を説得してきた。


「ミノタウロスはね、強靭な肉体のせいで魔法も剣もどちらも効果的じゃないの。それに限界突破も使える化物なの」

「だからなんなんだよ」

「「「え?」」」


 三人とも「何を言ってるの?」といった感じだ。この世界の事情を知っている者からすれば俺が言っていることは自殺行為なのだろう。


「なんだよ、こんな奴らからお前らは逃げるのか?」

「こいつらはたった十体で魔王軍に挑めるほどの力をもっているんだよ!? それが二十体もいるんだよ!?」

「落ち着けよ。そんなんじゃ勝てるものも勝てないぞ」

「でも!」

「茜、落ち着いて。ソウタ、本当にやるんだね?」


 セリスが真剣な事を話す時、それは誰よりも大人びて見え、誰よりもみんなの事を考えている時だ。


「もちろんだ」

「誰か死ぬかもしれないよ?」

「俺が全員守る」

「できるの?」

「男に二言はねぇよ」


 すると、みんな覚悟を決めたように自分の武器を持ち、構えた。


「いくぜ?──限界突破Lv10ッ!」

「「──限界突破ッ!」」

「ふぅー...──剣姫ッ!」


 全員自分の身体能力を強化するスキルを使うと、ミノタウロスからも赤黒いオーラが出始めた。


 だが一体だけ違う色のミノタウロスがいた。そいつのオーラの色は黒。それはヴァイスと同じものだった。


「あいつが一番危ない奴だな?」

「はい、ミノタウロスのオーラは黒に近付けば近付くほど強い個体になっていきます」

「それならあいつは俺がやるぞ」

「任せたよ」

「任された。できるだけすぐ戻る」

「うん、待ってるよ」


 俺はセリス達から少し離れるために黒いオーラを放っているミノタウロスに神速で近付き、その勢いのままおもいきり蹴飛ばして遠ざかるという強硬手段を使った。


「さぁ、早くやろうぜ? 嫁が待ってんだよ」

「グォォォォォォォ!!」


 ミノタウロスが吠えると黒いオーラがますます力を増していくのがわかる。


「──覇王 希望のオーラ発動」


 ソウタも負けじとスキルを発動させていく。すると、ミノタウロスが一瞬怯むような行動をとったが、そんな自分を叱るように咆哮をした。


「──雷切 Lv10ッ!」

「グォォォォォォォ!!」


 ソウタが雷切を発動させるとミノタウロスが持っていた大剣が光始め、相殺させられた。


「へぇ、やるじゃねぇか」


 雷切が防がれた、なら防がれないようすればいいだけの話だな。なら、だいぶ強引になるがやってみるか。


「──心眼ッ神速ッ!」


 この高速戦闘についてこられるか! と思いながら仕掛けたが普通についてこられた。


 そして鍔迫り合いに持ち込まれると、単純な力だけで押されてしまった。


「お前馬鹿力すぎんだよ! でも、腹がガラ空きだぜ?──雷切 Lv10ッ!」


 相手の力を利用して剣をいなし、そのまま腹に向かって雷切を喰らわせようとすると、腕を盾にされ防がれてしまった。


「ちっ。けど、左腕はもらったぜ?」

「ぐ、グォォォォォォォ!」


 ミノタウロスは左腕から出る血を抑えるようにするが止まらない。


 しかしこの結果にソウタは納得していなかった。なぜなら相殺さえされなければそれだけで終わる自信があったのに、左腕を吹き飛ばすことしかできなかったからだ。


 ならもういっそ、全てを吹き飛ばそうか。


 天撃ではちょっと頼りない。だからそれよりも火力が強い物をイメージする。


「お前とはもうちょっと戦いたいんだが嫁が心配なんだ、散ってくれ。──神撃ッ!」


 ドォォォォォォォンッ


 と鳴り響き、ミノタウロスがいたところには巨大なクレーターができた。


「くそっ、やっぱりこれは魔力の効率が悪すぎるんだよ」


 魔力を使いすぎたせいで疲労が溜まってしまったのでその場に座り込み、クレーターの中心を見るとそこに何かがいた。


「おいおい、嘘だろ?」


 なんとミノタウロスが粉々にならずに、右腕と左足を失った状態でいたのだ。それにまだ目が死んでおらず、戦う気満々の姿勢だ。


「グォォォォォォォォォォォ!!!!」

「...ははっ、セリス達が焦る理由がわかったぜ。こいつは本物の化物だ」


 ミノタウロスが咆哮をすると、体がペキペキと割れ始め、光り出したと思ったら中から真っ黒のミノタウロスが出てきたのだ。


 しかも、先程吹き飛ばしたはずの腕や足が元に戻っている。


「グォォォォォォォォォォォ!!!!」

「ぐっ!」


 さっきまでとはまるで違うオーラを纏っている。それはまるで、本物の闇を纏っているかのようだ。


「さてさて、俺はこれからどうすればいいんだ?」


 ソウタはこの世界に来てから初めて、いや、生まれて初めての恐怖のせいでどうすればいいのか分からなくなってしまった。


 くそっ、こんなことなら逃げるべきだったか?いや、追いかけられていただろうな...


 そんなことを考えていると、いつの間にか目の前にミノタウロスが目の前にいた。


「ぐはっ!」


 なんとか腕に魔力をタメて防御力を上げて防いだが、左腕が折れてしまった。だが限界突破のおかげですぐに回復できた。


「ちっ、余計な考えすらできねぇな」

「フッ」

「なっ!?」


 ミノタウロスに鼻で笑われた。


 こいつはまだ、全然本気を出していないのか!?


 どうする? こんなやつを吹き飛ばす方法は何かないのか!?


 ちょいちょいと指で「かかってこいよ」と挑発されるが攻めても意味がないだろう。


「フゥ」


 ミノタウロスはソウタが動かないせいでため息を吐き、やれやれといった身振りをする。


 それにキレたソウタはつい攻撃をするためにミノタウロスの懐に入ってしまった。


 その瞬間、ミノタウロスが「二ィ」と笑い、剣を使わずに素手でソウタを吹き飛ばした。


「ぐっ、てめぇ、なめてんじゃねぇよ!!」


 ソウタは自分の能力を最大限まで高め、再びミノタウロスに攻撃を仕掛ける。


 まずは、ミノタウロスの懐に入ると右手で殴られそうになるがそれをなんとか黒刀を使いいなし、背後に回った。


「喰らいやがれ!──雷切 Lv10ッ!」


 ドォォォォォンッ!


  音が鳴り響き、煙が舞った。その煙がなくなると、そこには背中に火傷だけを負ったミノタウロスがおり、その顔は笑っているようだった。


「.....すまねぇな、セリス。助けに行けそうにねぇや」


 ズドンッとソウタはミノタウロスに殴られ、セリス達がいる方へと吹き飛ばされてしまった。





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