覇者と作者
「クソの役にも立たない、ゴミ作者が」
俺は今、このイルミナードに居る作者存在を観測していた。
ナナと呼ばれるヒロインを、首輪繋いで、膝に乗せて頭部を撫でている姿が展開される。
「なんの有用な素材にも、実体を持った力も何も無い。
ヒルダーネットワーク機構にコネクションを持つらしいが、なんの接触もしない、クズがっ」
そう、この程度の発想しか無い、ならば死ねと、一言で唾棄したい存在だ。
愛情という名の思考停止野郎だ、信仰とも、一筋の希望に縋る愚かさとも、いろいろと形容できようが。
「ハッキリ言えば、超絶美幼女を侍らすだけで、心の底から満足してしまえるパーソナリティーだな」
俺は唾棄する。
俺が見通せる発想の領域は、さらにさらに、遠大なほどハイレベルなインテリジェンスで高い自覚がある。
おそらく熱量で言えば、あの程度の百億倍だろうが。
「雑魚の底辺が、その程度の矮小なスケールの世界で、仮初の満足に一生浸っていろ、掛け値なしの屑がっ、」
そうそも、コイツが所持する情報量が少な過ぎるのだ、浅薄過ぎる。
「この世は金だ、所詮は、どれだけ博識であるか、それのみが意味で在り、価値だ」
故に俺は、死ぬほどヒルダーネットワークに舞い戻りたい、出戻りたい、
こんな無様に次ぐ無様、外道・鬼畜・極悪人にすら劣る、路方に唾棄したいほどの身分を背負ってでも、必死で。
「お呼びかな? 覇者殿?」
後ろを振り返れば、奴が居る、当然だ、奴は”作者”なのだから、およそ不可能はありえないのだ。
「なんだ貴様? なにか用か?」
「そりゃ用はあるよ、そんなに罵詈雑言されて、幼女の見た目の君が、
くっくっく、僕を煽りたいのかな? それとも誘い受けであるのかな? 襲われたいのかな?」
なるほど、流石は作者クラス、実質的な世界に対する干渉値は、”最終的にはゼロ”でも、
しかし、その限りならば、何でもできる、叙述トリックでも何でも無く、俺は今、超絶的な美幼女の姿にされてしまっているのだから。
「いやいや、ふざけないでくれ、君は最初から、”超絶的なイルミナードで一番の可愛い幼女” そうだろう?」
作者の扱う奇跡は別格だ、そんなクラスに該当しない根源から来る、これは解析不能な、今だに世界が隠し持つ何かから来るモノなのだろう。
「それで貴様、何がしたい?」
「それは覇者君が一番知っているよ、どうせ俺は最底辺存在、周りに居る存在に、良いように弄ばれ、手の平で転がされるのがお似合いなんだ」
自暴自棄な、己が最底辺で在る事に自覚的な、真理みたいな何か、それのみを知る、狂気的な微笑であろう。
「覇者君のお尻は、どんな感じにぷっくりしてるのかな?」
奴が、俺の発する全ての力場を、素通りして、俺を抱え上げる。
「クソのロリコンが、なんの役にも立たない癖に、世界に無上なほどの意味と価値を求める、
救い難い矛盾を存在として抱える癖に、厚顔無恥に開き直って、自分以外の全てを否定的に捉えて、平然として居直り、
相手にも自分と同じだけの権限を認めず、ひたすらに己のみを優遇する。
そうするのが最善と分かっているからだ、貴様は世界に絶望し、世界に絶望していない存在を利用する事を当然と肯定したんだ」
「ふーん、それが何か?」
「掛け値なしの屑が、ロクデナシのクソ男が、
てめえは腐って死んで、無限に拷問されて、後悔の果てで絶死するのが、とてつもなく相応しい身分だと、思い知れ」
「はっはっは、言いたい事は、果たしてそれだけかな? 覇者君、良い表情だよ、そして良いキャラクターだ、
うんうん、とてつもなく楽しませくれるみたいだね、やっぱり僕の事が好きなのかな?」
「ああ、てめえのような貴様、俺と同じような価値観を有する奴は、嫌いじゃ無い」
そう、分かっていた事だ、所詮は作者存在、俺という存在は投影されているのだろうよ、根源が同一なのは必然的に明らかだった。
「君の名前は何かな? 名付けても良いよ」
俺の名? そんなモノは物語のどこを見ても明記されていない、必要とされていなかったんだろう。
そんな事はどうでも良いと唾棄しながら、どこかで気に止めていた。
この場で相手に筒抜けの嘘をつくなら、タクミ、そうタクミが、一番しっくりくる、なぜだか知らないが。
「いやいい、なんだか君には、名前が無いの自然な、一番カッコ良く、ミステリアスな気がするからね」
「ああ、そうかい、勝手にしろ」
「そしてだ、君はかのネットワーク機構に、戻りたいらしいね」
ああ、そうだ、そう答えた。
俺の存在意義であり、物語の終着点のようなモノを定めるなら、それが一番ふさわしい。
俺って奴は所詮、その程度の格に収まると、遥か昔から、そう己の満足の限界を、確信して定義したのだから。
「ならば、力を貸そうじゃないか」
「いらん、てめえのできる事は、この物語上で、なにもねえ」
物語への、実質上の干渉値ゼロ存在に、作者に、俺はそう唾棄した。
「だがねえ、僕はこの世界に存在として存在しているわけだよ、
そう言われても、何かしたくなるのが、果たして人情というモノじゃないのかなあ?」
居座るつもりか? だったらいいだろう。
こんな物語上の余剰スペースを無駄に食う、作者という自我だって、俺は織り込み済みだ。
「ああ好きにしろ、かんけえねえっと省けるくらいに、俺は寛容な精神の持っている、少なくともつもりだ」
実際は必要悪、害悪以外の何物でもない存在だコイツは。
このクソゴミカスの足手まといの自我で、俺の物語に、貴重なエピソード、スペースが、
どれほどまでに虫食いされているのか計算すれば、コイツを無限大に殺したくなるのだが。
「それでもいい、俺はお前の事を、気に行ったんだからな」
「ああ、僕もだよ」
正直なところ、クソきめえ上に、クソうざいのだが、
それでも何か、他人とは思えない、超絶的に兆乗に超上の、これはシンパシーやシンクロニシティーのような、
いや似て非なる何か、純粋に研ぎ澄まされた、過ぎて歪、魅力ともカリスマとも形容不可能。
「ただただ、作者、それだけで物語のキャラクターに、自分の思うがまま、好かれる、かよ、クソったれ」
これだけは心の底から唾棄できるモノだと、俺は確信的に思ったのだった。




