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最強の観測者‐永遠に続く夜明け前‐銀の血統、黄昏の神話群★★



「たく、めんどくせぇ」


 目の前に躍り出てくる、沢山と表現できる数頭の、筋骨隆々のグロい肉達磨を一気に細切れ分解する。

 広大な洞穴空間で、銀の糸を旋風させて、囲まれる前に全力で退避する。


「はぁ、町から出ると、直ぐにこれだ」


 俺は溜息を付きながら、洞穴空間に存在する町の門を潜った、死線を何度も超えた修羅場の後の事だ。


「また、死に掛けたみたいね」


 どこからか、降ってくる、黒髪の少女。


「漆黒の女王」


「そう、わたしは漆黒の女王、、、、とも、呼ばれているわね、でも気に入らないから、やめなさい」


「そうだったな、レイル」


「それで? 調子はどう?」


「どうもこうもない、どうにもならないを現在進行形だ」


 俺は最近の話だが、特異点領域、つまり無限ダンジョンに挑戦している。

 そこは一言で言えば、いろいろと破綻している空間を意味する。

 この洞穴空間が永遠に続くかのような次元領域が、それであるのだ。

 一応、この次元の拠点である”シティー”だけは、絶対の守護下にあるが、一歩外に出ると、そこは無法の破綻が支配する領域となる。


 だが、仮初の法則性はあるらしく、其処では”精神の続く限りは、奇跡が連続して死なない”、のだ。

 つまり、諦めなければ、死ぬことはない。


 しかし簡単なゲームモードで当然なく、存在を殺す為だけに存在する敵がいる。

 特異点の領域は、意思ある自我を許さない、神のみを認める領域という特性を持つ。

 でも先述の此処の特性により、その敵に対しても、諦めなければ無限に勝利することが出来るわけだ。

 だからか、此処は俺のような奴、存在、鍛錬者が集う、修練の次元として割と一部の巷では有名だったのだ。


 さてそしてだ、俺は、力をただただ求道し、最強や無敵、観測者の領域、今よりも上位の、超上位の世界や存在を目指す、そんなような存在奴なのだ。


「そういう人種、根っこの部分が破綻して崩壊した、破滅的な生き方を地で行くやつの、最後の到着点が、ここだったのかもしれないな」


「あら? そうだったの? ここは貴方の望みに叶う場所?

 我々の唯一無二に信仰するべき救世機関、図書館”幻聴蚊帳”が用意し、自らの望みの叶う、

 その最小単位の僅かばかりの可能性が、眠り在るかも知れない領域、特異点の次元世界、のことだわよね」


 レイルと町のカフェでお茶を飲んでいると徒然と思考を語りたくなった。


「それで、だけど、貴方、混沌に来るつもりは無い? と?」


「ああ、無い、何度も言ってるだろう、俺はそういう勢力争いに、まったく興味が無い」


「私も、それは知ってる、でも、私達に付けば、いろいろ貴方の望みを叶える為のサポートが、してあげられるかもしれないわよ?」


「いらん、他人の、自分以外の全ての助けなんて、俺は最初から当てにしないを絶対の信条にしてるんだ」 


「難儀な生き方ね、ほんと」


 彼女は、これも最近の話だが、度々こういう事を言ってくる。

 イルミナードにおける覇権争いは常に難関だからか、常に焦燥感に駆られているように見える。

 彼女の所属する”混沌”とは、普通に全次元的に見て、大国とかに例えられる勢力の一つを顕す。

 他にも”秩序”や”幻夢想”や”絶対イデア”や”矛盾”や”虚無”とかも、似たような意味で、纏めて六大国と言われ。


 ちなみに、此処はイルミナードにおける混沌の支配するマイナス領域。

 固有”領域”外延部以降の果ての果てに位置しているって訳だ。

 クソ下らん化け物共が中心部に集まっている、外側には俺達のような一歩離れた位置からソレを見る奴らも居るという事だろう。

 

「だから? そこの全てという全ては、絶対存在の絶対管理下にあるでしょう? 

 領域外、イルミナードという世界の最も熱い最前線の世界、その無法地帯に、大国の守護なく、貴方すら存在する事はできない、並大抵の事業ではないの」


「ああそうだな、だが、だけど例外があり、俺や、特異点の次元領域等々は、その管理下に無い、それもまた事実だろ?

 支配とかのしようもない、全く一切の手の負えない、底なしの特異点の存在だからな」


「ええ、ソレも認めましょう、最強レベルの観測者を、放置以外に手は、普通は無いでしょ、管理対効果・費用が、コスパが悪すぎるのよね」


 さて、彼女は、恐らくは混沌の勢力所属の存在であろう。

 自由意志を持つ、本来”矛盾”に所属する俺を、自陣営に引き込めないか、今は動いていると予測している。


「君たち、楽しそうな話に私も参加していいかな?

 そうなのだろう、なにしろ矛盾存在だ、無限に葛藤し続けないと、息さえ出来ないような有様なのだから」


 同じような奴が、もう一人いた。


「ファス、お前は違うのか?」


「もちろんだよ、私は混沌に染まってるからな、楽しみの為なら、掛け値なしに何でもする、外道だぜぃ??」


 銀髪赤眼の麗人だった、いつの間にか町の門の上に腰掛けて、俺達二人の座る席、遠く立つ遠望の傍で会話を拝聴していたらしい。


「おいそれよりもレイル、また迷宮に、挑戦しないか?」


 スタッと、一直線に降りて、レイルと向き合う様にそう言うファス。


「いや、あそこは、当分のあいだは懲り懲りよ」


 彼女は隣の麗人に向けて、心底から顰めた顔を向け、嫌悪の漂う声色を発する。


「そうか、なら、クロム、一緒に行くか?」


 奴は血の、というより鮮血に燃え滾るような瞳で、俺に向けて提案してきた。


「断るよ、俺は一人で何事も成すのが、好みでね」


「はっは、残念だな、まあいい、期待はしていなかったからな」


 だったら最初から提案すなっと、言いたかった。


 俺は俺の信仰する神にアクセスする。

 自我亡き絶対神、”トランプの女王と聖女達”だ。

 とある次元領域を拠点として、大きく信仰される神像群だ。

 先程の銀の嵐は、”スペードのクイーン・銀の妖精”の能力を引き出し利用したものである。


 神術に値する、この異能力は、日々の信仰が割りと大事だ、疎かにしてはいけない。

 だから、偶に力の代償に困らされる時がある。


 いきなり”彼女を最大限で、楽しませよ”とかな、神からのお告げが合るのだ、今まさに直感でそう思えたのだ。

 目の前には、俺のイメージに忠実に存在する、銀の妖精が現れていた。


「やあやあ!! ワタシはミリア!!!、よろしく」


 ハッキリと面倒ごとを抱え込む羽目になるのだ、無視は出来ない、信仰に背けば、俺は重要な力の一端を失うのだからな。


「ああよろしく、俺はクロムだ」


「クロム、そおーー!、しばらくの間、よろしく頼むことになると思いますが、よろしいのでしょうか?」


「もちろんですよ、なんなりと、なんでも」


 素直に従う、仮にも神の依頼だ、全力で果たす以外に、選択肢は今のところありえないだろう。


「へえー、これって、イデア系統の力ね、貴方って、召還術もこなせたの?」


 一部始終を間近で観察していた、レイルが尋ねてきた。


「力の系統は、、、、知らん、あと召還した訳でもない、神からの依頼だ」


「その子、可愛いわね、浚いたいくらいだわ」


「駄目だ」


「神ね、、、結構に高次元なレベルだわね、まあ、、、貴方が信仰してるわけだから、当然だわよね」


「そうなのか? 良く分からないが」


 二人が俺とミリアから少し離れ、何事か喋っている。


「まあいい、俺は消えるから」


 俺がその場から離れると、銀の妖精も付いてくる。


「ねえねえ、お兄さん、エッチな気分になったりぃ~~?」


 寝床、典型的な安宿である。

 ミリアが、そこら辺をうろうろしていて、何か落ち着かないが、まあいいかと全て諦める。


「ねえねえ、ここに、ここら辺に置いてある、怪しい本って、読んでいい?」


「まあ、ご勝手にどうぞ、うぃマドモアゼル」


「??? え?」


 滑ったやりとりをしつつ、ミリアが適当に床に置いてある無数の本の一つを手に取る。


「この”宵闇の私の楽園は、玉虫色で何もない”って、面白い?」


「際物だけど、まあ面白いだろうよ、小難しいのが好きなら、中々に楽しめるはず」


 適当に寝転がり、文庫本を開く。


「ねえねえクロムぅぅ、これって、シリーズモノなの??? ねえねえ 、ねえねえってばあぁ~」


 生まれたばかりの子供のように好奇心旺盛の、見た目は16,7くらいか?

 可愛いオッパイの可愛い処女みたいな奴だな、愛いな。

 

「ああ」


「何巻モノ?」


「まあ、だいたい三桁くらいじゃないのか?」


「、、、どういう意味?」


「別次元に存在する本、その情報を文庫本に写した、練成本だから、まだ十巻くらいしか作ってないぜ」


「ふーん、まあいいか、とりあえず暇つぶしにコレ読むよぉーー」


「うん、読んだら感想聞かせて」


 二人して本を読んでいた、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。




「いええーーーーいっ♪!!!勇者最強おおおお! 最高おおおおお!!!!」


 幾らか経った、次の日、、、うるさ。

 ぴょんぴょん飛び跳ねて、お気に入りを公言する本だ。

 ロングツインテール共に踊るように剣をブンブンさせている。


「勇者様、そろそろ帰りましょうか?」


 いつまでも見ていたい姿だが、まあ、このような場所で無為に過ごすのも考え物だ、やる事は幾らでもあるのだろうがよ。


「オイ、クソ雑魚勇者!己は仕事が終わったのなら、さっさと帰んぞ、糞ボケカス!うぜえ!!!」


「はあ? うっさいわああ!変態バカ! 陰キャキモオタクのデーーーブ、しんじゃえ! ちんぽ爆発しろおおお!!!」


 この銀の妖精は、勇者になった。

 イルミナードには”認定・勇者”という称号のような制度がある。

 勇者はステータス的には、護衛の、この口の悪い俺こと、ワルガキ暗殺者みたいな近接・遠距離含めた戦闘特化タイプのプロプレイヤーに圧倒的に劣る場合が大概だ。

 だが勇者は与えられたMPやその他ステータス・ユニークスキル、又は専用装備などで”固定砲台”として機能するタイプが多いのだ。

 正面決戦では艦砲射撃のように運用する事で並みの魔術師の集団よりも、機動性・継戦能力ほか圧倒的に優越する特筆戦力なのだ、

 故に勇者は守られるべき対象として優遇されて、国家運営の国営ギルドがあったりする訳だな候。


「クロム行こう!!! コイツうざあ!」


「はあ? ざあこっの癖にイキがってっからに、イキリ糞萌え豚ホイホイのボケダボハゼ野郎がああ!!」

 

「はいはい、はいはいはいはい、クロムその辺にしてぇ!、、、勇者様の御前であるぞ!はい」


 付き合いが数日で夫婦漫才のような関係になってしまって、完全に勘違いブスみたいに舞い上がって調子に乗らせてしまった、頭痛が痛い種だ。


 俺はコイツとどうすればいいのか、最近はよく分からなくなってきた。

 毛並みの良い勇者様の髪色と同じプラチナブロンドの馬車が到着する。


「さて! レッツラ!ゴーレムナイト! 行こう行こう! クロム!」

 

 やれやれ、勇者の役割はアイドルのようなモノが一般的だった、俺の最近はコイツのMGみたいなモンに成り下がっている。

 

「勇者なのだぁああ!!」


 銀髪碧眼の麗しい超美少女が平原を駆け抜ける。 

 向かう先には岩山ほどもあるトロール級のオークである。

 普通ならば重装歩兵が百人で一体対応するような危険な魔物である。


「ずばああああああああ!!!!」


 接敵の瞬間に銀光のように姿がブレて加速したように見えた。

 次の瞬間にはオークが胴体を真っ二つにされた、ズレたような空間の亀裂が修復されるようなエフェクトと共に消滅する。


 場所はイルミナード中央、平原、外延部から一気に中心点だ、世の中なにが起こるかマジでよく分からんから、お前らも気を付けろ。

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