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アンネリーゼ編1‐宮廷魔術師の従者

 

  

「アッハッハ、私の魔法に、こんがり焼かれなさい!」


 宮廷魔術師の、超エリート魔女。

 アンネリーゼ=ストライカーは、今日も今日とで、しごく、調子に乗っている。

 丘の上から、大量のフレア、並みの魔術師には不可能な、大規模に炎を降らせている。

 平原、大炎上。


「アンネ様、お疲れ様です」


 汗をかいて、若干顔を紅潮させた彼女に、僕はタオルと飲み物を手渡す。

 飲み物は、彼女の好きな最高級銘柄の紅茶である。


「うふふ、ありがとうね!

 あー気分いいわぁ~、クソオーク共をぶっ殺すのって、超楽しいぃいいー!!」


挿絵(By みてみん)


 清清しいほど、圧倒的な自信に満ち溢れた、強気、そのものの体現のような笑顔だ。

 彼女、アンネは、凄く釣り眼、という訳でもない。

 だがそれなのに、有り余る自信、強気が上乗せされて、キツイ、というのも一概に違う。

 言うなら、不思議なカリスマ性、それをより昇華、斜め上に発展させて、近づき難い雰囲気。

 単刀直入に、明確に形容するなら、高飛車で、怒ったりキレたりすると、凄く壊そうって印象、が分かり良いか。

 それも、違うか?

 凄く華やかで、育ちは良さそうだ、優しさも印象として、感じれないことも、、、


「どうしたのぉ? ぼうっとして、あたしに見蕩れてたぁ? 

 駄目だぞ、このぉー、あたしを無視するなぁ~~~」


 頬をぐりぐりされる、嬉しいやら、恥ずかしいやら。


「ごめんなさい、僕はアンネ様の事が好きなので、魅了されてました」


「あっはは!、素直でよろしい!、

 お前のような、素直で正直な下僕を持てて、あたしも大満足だよぉ!」


 おっほっほ~~!と、常人ならまず発しない類の、聞きようによっては、酷くワザとらしい笑い声。

 だが、彼女のような生粋のお嬢様、

 兼エリート&スタイリッシュにシャープクールな魔女衣装に身を包んだ、

 さらにプラスして、こんなにも、凄まじい位、ゾッとするほど、綺麗な声をしていると、

 それも全く嫌味というか、嫌悪がわかない、むしろ只管に清清しく、好感触、大衆に受け入れらそうなモノとなる。


「よし! ここら辺は、遍く殲滅したかなぁ!!???」


 丘の上から、杖を振り回して、なにごとか、魔物の気配を探索する、地味に高位な魔法を使っているらしい。


「楽勝!楽勝、ぜんぜん手応えが無いわねぇー、つまらない位で、飽きちゃったわ、退屈過ぎぃー。」


 僕と彼女は、ほとんど単機に等しい戦力で、ここまで来た。

 大部隊を送るほど、大軍の魔物ではないが、討伐せずに放置するのも危険。

 そういう時に、彼女のような自由気ままに、集団行動を取りたくない人は、ここぞとばかりに志願する。


「あたしの人生、マジでガチで、超イージーモード過ぎ!」


「超エリートで、勝ち組お嬢様で、超絶美少女で、超天才魔術師で、あとなにかなぁ? ねえ? なにかある?」


 気ままに笑っているが、それが長過ぎない事は、僕は明瞭に知っている。

 このソーシャルエロゲーの皮を被った、尋常ならざる、王国防衛、陣地略取&領土支配シミュレーションゲームは、

 素直に言えば、難易度が高い、鬼畜ほどじゃないが、いや?どうだろう、鬼畜かもしれない、

 ゲームシステム的にも、プレイヤーは単身、VRMMO的な振る舞いしかできず、戦術的勝利を積み重ねる事しか、およそできる事はない。


 全体的な戦略を左右するのは、プレイヤー個々の戦術的勝利の集積は、言うに及ばず、

 それに加えて、王国の特記戦力にアプローチできる、プレイヤーの振る舞いに大きく賭けられる。

 他にも一応、王国上層部に接近し、王国の戦略についての助言を、代行してもらう、というのがある。

 だが、ハッキリ言って、ゲームとしての駆け引きや色々な事が、難易度的に難しい上に、

 成果効果が未知数で、微妙な面が、これにはある。

 そもそもが、戦略選定のプロセス、その全貌がよく分からない構造に、なっている。


 しかも、ヒロイン系キャラクターは、失礼ながら、頭脳明晰、才女な人が少ないのだ。

 まあソーシャルゲームのヒロインだった人達だし、しょうがないのかもしれないけども。

 特に代表として上げるなら、女王系とメイド系、笑顔の可愛い天然姫、

 と、ドジっ子系の、間違っても、戦闘のプロみたいな姫騎士やメイドは、ああ、居た、

 でも全体から見て、超一部、超少数派だ、居ないも同然である、と今のところは見て良い。


 けど将軍クラスのヒロイン、一部の隊長格の近衛騎士、このパイプは、それなりに戦略プラス効果がある。

 この眼前に、仁王立つ少女は、宮廷魔術師の天才、若干孤立気味だが、その有り余る才能と戦力で、上層に顔が効かなくもない。

 基本的に、AIに戦略を任せるのは、余り良くない、というのが原則である。

 だから、僕も頑張っているのだ、頑張っている、と言っても、主戦線を外れた、オーク、辺境魔物退治なのだが。

 できる事は、それだけであり、忸怩たる思いだ。

 裏で進めてる、事案として。

 一部BL的な感じで、男、サブキャラみたいな将軍タイプに、アプローチできるという、”うわさ”が、あるのだが、、、。

 これには、僕は参加できない、うん、まあ、参加してない、他の人が、頑張っている、という”うわさ”だ。


「きぃーーー! なんであたしの話、聞いてないのぉー!」


「いや、、ええと、聞いてるよぉ?」


「生返事過ぎますわ! 適当なんですわぁ! いつもの切れ味が感じられませんわ! 

 愛が感じられませんわ!」


 わーきゃー、騒ぎ立てられる。

 僕は慣れない、彼女は、ゲームのキャラクターだが、それでも、人間的には別格の、

 このように騒がれると、ただでさえ肌を刺すようなピリピリとした上位者の風格があるのに、慄いてしまう。


「これは帰ったら、さっそく”調教”を、しなければなりませんわねぇ!」


 嗜虐的なひとみ、だが、一応は安心して欲しい、これは可愛がりである。

 彼女なりの、愛情表現だと、僕なんかは心得ている、間違っても、拷問みたいな感じではないのだ。

 むしろ、ご褒美と、言っても、それは良いのかもしれない。

 ランダム的に決定される、”調教”の内容に、多分によるのだが、、。

 例えば、だ。

 彼女の足に踏まれたり、椅子にされたり、鞭で叩かれたり、etc,etc、である。


「とりあえず、ココで出来る事は、もうありませんわね、帰りましょう」


 彼女は杖の輝きを収めて、マントに覆う。

 ちなみに今のアンネは飽きたのか見た目が、アバターが違う。

 先程の高飛車女王様、足もムチムチのボーンテージでSの女王の有様から一転、清楚な少女のようになってしまっている。

 振る舞いや所作もそれに合わせているのか、いくらか幾分おとなしい、、、世の中嘘ばっかりなんだなっ、と真剣に思う今日このごろ、です。


挿絵(By みてみん)


「そういえば、お前に一応聞きたいのですが」


「はい、なんでしょう」


「お前は、この魔物との攻防のゆくえ、どのように見るのです?」


 来た、と思った。

 これは、彼女との会話では、重要なタイプである。

 ここで楽観論でも口にすれば「おっほっほ!そうですわよねぇー楽勝ですわぁー」とか言って、

 場合によっては、不味いことになる、それは度重なる試行錯誤、ゲームのプレイの記憶が証明する。


 例えば、この少女は楽観論で行動すると、傾向的に危うい。

 一人で突撃して、案外、簡単に確固撃破されることも、無いことも無い。

 こういう辺境での魔物討伐でも、間違いは起こりえた。

 パターンを一つ上げるなら、対魔術師用の高レベルアイテム、それも希少で強力なモノを使われた場合だ。


 この少女も最低限心得ているので、遠距離から攻撃して、不測の事態には備えている。

 この丘からの、攻撃は、油断してないパターンだが、そうじゃない時もある。

 油断している場合は、平原の離れたところから攻撃する。

 そして、対魔術師用のアイテムを行使されて、逃避一辺倒になったとき、

 魔術師は移動速度が、あまり速くないので、捕まってしまうトキがある。

 もちろん、この少女は魔法特化なので、接近戦の、しかも束で掛かられると不味いパターンに嵌る。

 僕のような、上位プレイヤー級の護衛、または護衛の騎士団員、傭兵など雇っていればいいのだが、

 楽観論で行動させると、そういうのをケチって、行動してしまったりするのだ。


「うーん、僕的には、そうだねぇ、、、」


 答えは決まっていた、慎重論だ。

 だが、ゲームをしていた時の、癖みたいなもので、このような口上が出てしまった。


 彼女は、楽観論で行動すると、簡単に魔物に捕まってしまう。

 だが、それが僕には、嬉しい場合も多分にあるのだ。

 特に、護衛に付くか、同じ狩場、討伐時に彼女が現れたトキは、それは見物なのである。


 正直に言って、僕が一番好きなヒロインは、ダントツに彼女、アンネリーゼ=ストライカーだ。

 なにが良いといえば、普段はこんなに、そう”こんなに”だ。

 実際見てない人は、分からないかもしれない、この人気投票五位圏内の、彼女の迫力を。

 そんな少女が、魔物捕まってしまい、甚振られたり、まさか、処女を奪われて、陵辱の限りを尽くされる。


 僕は、初めてその現場を見たときに、一生で感じた事もないレベルで、心が震えた。

 絶対に堕ちないと思っていた存在が、地に落ちて、惨めに、

 日常と普段で、あれほど自信と強気、光り輝くほどの、不可視の後光すら放っていたから、

 余計に、哀れを誘う、憐憫を喚起させ、胸に熱く、込み上げるモノを想起させる。

 つまり僕は、そんな彼女の姿が、たまらなく、大好きなのだ。


 オークの巨大なアレで、捕まっても気丈に、危機感が不足した感じで、平然と抗議しまくる姿。 

 だけど、あそこにアレを根元まで、貫かれた瞬間の、

 ”この彼女”の、あの青ざめた顔、ゾッとして、己の現状すら把握不可能に陥ったような、顔。

 すべてがすべて、僕の宝物のような、素敵で、すばらしい、記憶である。

 本当に、僕は彼女が大好きだ、

 大好きだから、この世界に着てからは、まっさきに彼女の傍に行って、自分の尽くせる全力を尽くしている。

 正直な話、王国がどうなろうが、他のヒロインがどれだけ犠牲になろうが、僕はあまり関心がない。

 むろん、助けれるなら助けたいが、彼女に比べれば、しごく、興味がなくなってしまう。

 彼女が僕の世界の中心であり、彼女だけが助かれば、守れれば、他は手駒程度の認識で、使いつぶせるのだ、僕は。


 話が逸れた、だから、僕はこう言う。


「慎重に行きましょう、なにが起こるか、分からないので」


「ふーん、そうね、お前の意見は、参考にしてあげるわ、感謝しなさい」


 ゲームなら、ここで担ぎ上げて、調子に乗らせる。

 だが、ここでは、どれだけ保守的になっても、足りない。

 間違いは許されない、たとえ一回でも、しくじれば、戦場では、それは死や破滅を意味する。


 それに、特に言うなら、まだまだゲームは序の口の段階だ。

 今は、彼女の魔法で、オークを簡単に殲滅できるが、

 この段々と難易度の、只管に上がり、危険要素も加速度的に増えていくゲームでは、

 後半では、彼女だって、かなり苦戦を強いられる、

 不測の事態以外で、まっとうに戦っても、太刀打ちできない敵だって、いるには居る。

 第一に、重層魔法障壁鎧のオーク、これは接近戦が得意な騎士に任せたい。

 第二に、魔法耐性のある種族、ダークエルフなどの存在。

 第三に、超長期戦に移行した場合の、魔法武具の枯渇、特に錬金術師の負傷者が続出した場合だ。

 最後に、第四、宮廷魔術師が、王国を乗っ取るシナリオでも、彼女は危険な立場になったりするし、一応気をつける必要がある。

 まあ、第四は、宮廷の権力争い、上層部の様々な思惑に左右されるし、全プレイヤーで団結すれば、なんとかなると思う。

 基本的には、今の体制が、一番スタンダード、全プレイヤーが対応しやすいシチュエーションなので、

 間違っても、ありえない推移のパターンだとは思うが、油断はできない、、、。


「ねえねえ、お前、この杖、使い勝手はいいけど、ちょっと消費が激しいと、思わない?」


「そうですか?」


 隣を歩く少女が、杖を指しながら言う。


「そうなのよ、コレ、お前に凄く薦められて使い出したのに、どういうことよー。

 確かに、出力と拡散力は増したけどもね」


 僕の見立てでは、これでオーケーな筈だ。

 しかし、今回の雑魚の大量討伐では、どうか、彼女の微妙な使い心地も、分からなくない。


「説明が難しいのですが」


「なによぉ、どういうことよぉ、、ほらほら、あたしに分かり易い様に、

 一から十まで、全部、説明しなさいよぉー、時間はあるんだし、無理じゃないでしょう?」


 杖で小突くような仕草をして、明確な説明を求めてくる。


「つまり、アンネ様は、戦場において、大量の敵を引き受けられる、そういうのを求められています」


「知ってる、知ってる、前に聞いたわよ、、それで、それで?」


「今回は、相手が雑魚過ぎたので、もっと出力が弱ければ、魔力消費が抑えられました」


「そうなのよ、もし仮に、敵の総数が多すぎたらって、思っちゃったのよねぇー」


「分かります。

 それでも、アンネ様は、出力重視で居られた方が良いかと」


「どうして?」


「敵が戦力を、小出しにしてくるのは稀です、

 だから、一度に相手にできる、敵の総量を最大にするには、杖の出力は、高い方が良いのです。

 もちろん、長期戦になれば、魔力が枯渇するリスクがありますが、

 個人的には、こちらの方が良いかと」


「そ、、、そうなんだぁ、、。

 わかった、お前の意見を、信じますわ、ありがたく思いなさい、、、ありがとうですわぁっ」


 好感度が、微妙にぴょこんと上がった。

 彼女は自分に無い物、こういう頭のキレ、良さを発揮すると、偶発的にときめく事が、ママある。


 もっと詳しく説明すれば、

 彼女は、大量の敵を殲滅する、大掃除の役回りか、

 固定砲台として、強力すぎる敵に一対一が望ましい。

 特に、大量の敵を殲滅する、その一点においては、他では代用が効かない、希少戦力とも言える。

 戦線が破られて、殺到する魔物に対し、そこに颯爽と現れて、解決に導けるのは、彼女の専売特許だ。

 それを鑑みて、選んだ武装なのだが、、、。


「はぁー、宮廷に帰ったら、リフレッシュ休暇が欲しいわねぇー」


「相談してみます」


 いや、流石に戦時です、とは言わないのだった。

 彼女には、己を慕って、それでも傍に寄り添い、対等でなくても、支える存在が必要だと、僕は思うので。 

 僕は、彼女の隣を歩きながら、

 いろいろ、ひたすらに色々と、思い出しながらも、多方面で分析しているのであった。


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