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王国記‐秩序勢力からの参入者

 

 

 ある日の昼過ぎだ、俺はいつも通りに、終わりの見えない果てすら見えそうな、軍議という名のゲームをしていた。


「そういえば、アウルベーンが動いた件について、君は知っていた?」


「関係ないな、どうせ此処が主戦場なのは、年がら年中不変に不動なんだろうが。

 アウルベーンの強みは、絶対的に未開拓な上位世界を支配している、ゆえだ。

 無節操に世界を解放公開できない以上は、ここだけが下位世界に解放される状況は変わらん」


「確かに、絶対存在ですら、此処では、およそのステータスすら発揮できないもんね」


「奴らは無限熱量を、特異点を知っているだけだ、常に世界に対してフェアプレイを強制される宿命にある。

 たとえ世界の方向性に定められた意志があっても、無限のエネルギーを向ける方向性として、明確な世界の対象が無ければな。

 そういう意味では、アウルベーンの此処だけを解放している意味や価値は、俺ですら計り知れない裏の裏までありそうだが」


 栓無き事だ、俺が望むのは無限の戦場だ、その為の手段や行為自体、集団以外には一切合財の興味を持たないのが絶対心情だ。

 この世界において、此処が熱い戦場で在り、

 俺の故郷、遥かな無き無限の戦場で在りゲーム、最高の知的創造集団である、ヒルダーネットワーク機構、

 そこに返り咲く為の、現実的な手段に成るのも兼ねて、今俺は此処に居る。


「だが、戦場が変わると云うのは、俺的には魅力的だな」


「いやいや、絶対に嫌だよ、詰らない雑事は、全部おしつける君だから」


「痛み分けしてやっても、一考に構わんンぞ」


 相方の副官は、それでも嫌そうに眉を顰めている、

 その顔をもっと歪ませてやりたいと思うが故に、こいつは最高副官の地位に居ると言っても加減じゃないな。


「さて、これから秩序の集団で、それなりの地位の奴が、面会に現れる訳だが」


「知ってるよ」


「まあ、盟主が来る訳じゃない、それほど構える必要もないが、それなりの情報は持っておくにシクハ無い、出せ」


 副官は立体ディスプレイを操作しだす、この機能はおよそカッコいい以外に、特に利便性のあるものではない。


「相手は、秩序盟主、白のマリアが直轄統治・統括する、サンクチュアリゼロの第5324領域師団長、という名目です」


「そんな背景の歴史は必要ない、俺が見たいのは、戦闘能力だ」


「はいはい、僕的には、こういうキャラクターの情報の方が重要に見えるけど、まあそうだよね」


 ため息を吐かれる、それはそうだ。

 俺のような奴は、そのような情報力場を軽視するのが当然な、ネットワークに依存した存在だ。

 まっとうな個体じゃない故に、群体として、軍隊としての在り方の方が、よほど興味が惹かれるのだ。

 まあコイツは、背景の歴史だって、研鑽の歴史だって大したことが無いのは、知っている。


「先天的な、秩序の能力保持者です、それも複合総合世界において、特異点存在として認知されるほどの違法な能力の」


「だろうな」


 俺は一見して、下らん奴だと断ずる。

 俺の見込みをもらうなら、実践と実戦、果てしない地獄の戦場を渡り、灼熱の精神を有するモノ以外はカス以下の価値も意味もない。

 こいつはどうやら、生粋の秩序主義者だと分かる。

 特異点の無限熱量を知りながら、秩序の方向性に傾きった、戦うなんて興味ないだろうが、クソ以下のゴミ屑野郎だと。


「随分な言い草だな、覇者」


「覇者? ああ俺のことか、てめえは誰だ?」


 眼前に剣を突き付けて、強烈な視線を宿す、名をハイネ、先ほどのプロフィールに連なっていた、真名。


「ハイネだ」


「そうか、ハイネさん、この剣呑な状況はなんだ? 秩序の癖に、まったく秩序らしくないな」


「いえ失礼、恐喝の通用する相手か、試しただけだ、これ以降は、やめておいてやる」


 眼前に、それも生粋の秩序の存在を前にして、俺が思うのは下らん事だ。

 人間としてマトモな精神をオートでコントロールし、バランスのとれた極限の刺激を得られる俺のこと、思う事は、

 犯したい、汚したい、とかまあ、人間らしい極限の喜怒哀楽のみ。

 俺の興味の範囲外だが、俺という人間性は、強烈にコイツの性的な魅力に絆されているみたいだな、と自覚。


「薄汚い視線だな、貴様の存在が汚泥に塗れ、心底から腐りきっているのが、一目瞭然に分かる」


「だろうがよ、俺は聖人君主でも、博愛主義でもない」


「はぁ、これだからサンクチュアリゼロから出たくないのだ、身が穢れる思いだ」


「あんな場所、秩序の方向性に固定され、一定の運命力に恵まれているだけだろうがよ。

 実際上の数値で言うなら、此処の方が万倍も上だろうが、

 なんなら此処に、俺の権限で、サンクチュアリゼロを再現してやっても良い、おいどうだよ、なんとか言ってみろ」


 俺はこの女を露骨に挑発する、この女の憤怒の表情はさぞ綺麗だろう。

 本当なら奴隷にでもして、心底から貪るのも良いのだが、やはり無理そうだ、実態を前にして俺は直観的に知れるのだ。


「会話する気も失せるな下郎、

 絶対の守護者と秩序、守護天使も存在して、初めて聖域としての天界なのだからな、笑わせてくれるな」


 多少は怒ったか、力の片鱗を展開し、俺を脅そうとするが、まったく問題ないと知覚、この程度で狂えるほど、俺は甘い地獄に常在居ない。


「貴様、、、っ!」


「ああ、分かるだろうが、俺は秩序なんて怖くない、一切合財を踏みにじって、高笑いして、狂った端から殺せるほどに、強者だ」


「救いようが無い愚者が!、変態が!、愚かにもほどがあるだろうがぁっ!、

 貴様のような奴から殺して、世界は浄化されきるべきなのだ!!」


 アホらしいほどの悪意を向けてみれば、この通り、普段、どれだけ潔癖な環境に居るか、まあその高潔そうな顔で分かっていたが。


「そのくらいで良いだろうが、無理な話を延々としてても、現実は一切変わらないんだからな」


「ああそうだなぁあ! 貴様を消滅させる算段を立て、世界浄化計画を進めた方が幾らか建設的だなあ!」


 馬鹿が、計画の存在を仄めかして、少しでもこちらを脅したいようだが、こいつは二流だと確信する。

 今この瞬間、秩序が企てる計画の全貌の、数パーセントでも判明したのだ。

 それによって、世界の戦略と戦術において、切り捨てられる割合だが、秩序の戦局は悪くなったのだ。

 絶対の方向性に意志が固定されて、これ、所詮は先天的な能力保持者、戦力として有能だから、使われているだけの小間使い程度の馬鹿だと判明した訳だ。


「そうかい、勝手にしろ。

 だがイルミナードに存在する以上は、役割をまっとうしろ。

 お前はクソみたいな甘アマヒロインに成って、男を喜ばす醜態をさらして、女としての悦に浸っていろ、じゃああな」


 奴の端末に、とびきりクソみたいな電波設定の、ヤンデレでシスターで痴女属性の、ゴミ屑みたいなヒロイン設定を送っておいた。

 それを見た奴はかな切り声をあげていたが、ごねても規定路線が変わらないと分かると、見苦しい罵声を上げて去って行った。


「ちょっと、幾らなんでも、これは酷いというか、無理というか、絶対に人気でないと思うよ」


 副官が、クソみたいなヒロインの設定を閲覧しながら俺に言う。


「当たり前だ、あの程度の固体を送ってくる、秩序勢力への抗議でもあるんだからな」


「はあ、どの程度のクラスが来れば、君は満足したのかな?」


「そらあ、秩序盟主、白のマリアだろうが、絶対の聖域を犯したいのが、人間の究極絶対欲望だろうがよ」


「でもあの、クソ味噌みたいな設定、君は好きだよね?」


「当たり前だ、好きに使っていい固体、ヒロインならば、俺が接収しても良い塩梅なんだろうが」


「そりゃそうだよ、最初からそのつもりで、全部進めていた癖に」


 その際の雑務を追っていた副官が、辟易しているように振る舞う。

 そうだ、俺は最初から、秩序からの申し入れを受けた際に、奴が来ることを想定したのだ。


 奴の特徴は、剣に由来する。

 秩序の機動による、アライエンス流、常に剣を振ってばかりいる女だ。

 あいつが俺の旗下に参入すれば、様々な剣を扱うヒロイン達に、良い影響が出る。 

 そうすれば、俺の戦いがより美しく、流麗になるのだ。

 戦いに芸術性など、俺は好みではないがな、だが芸術性が戦闘能力に変わる以上は、それは純然たる力技と不変ないって訳だ。


「あのクソ女が、ヒロインの設定になじむまで、どれくらい掛かりそうだ?」


「うーん、あんまり器用じゃないけど、勉学はできるみたいだし、直観じゃなくて、経験でなるように成るみたい」


 副官が奴の丸裸な、スリーサイズも当然のっている詳細な情報を見ながら言う。


「そうか、仕上がったら、俺が初めに接触して、俺好みのヒロインに染め抜いてやるぜ、くっくっく」


「悪い顔、女癖の悪さは、数多い君の欠点の中でも、とびきり醜悪で隙に成りうる悪癖みたいなモノだよ」


「知らん、俺は人間性をこの方向性で固める事で、弱点の最小化になっているのだ」


 まあ、戦闘に関するアレコレによって発生する、俺の致命的な弱点に比べてみれば、

 これは切って捨てられるレベルの、それこそ小数点以下なわけだが。

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