イデアネットワーク‐とある生放送の一幕
「しまって行こぉー!!!」
九竜秋野久クリュウアキノヒサが大声で野球のプレイボールのように宣言する。
「おおぉ!!!やったるでぇ~!!」
佐久四夜拓海サクシヤタクミさんも、同様に橙色の髪の毛を翻してノリを合わせる。
「うわぁーーー!!!!今日一で全クリしていこー!!」
そしてこの俺、坂崎樹サカザキイツキもノリを同調させて騒ぎ倒す。
俺とアキノとタクミさん、この三人は、まあそれなりに仲の良い友達のような関係だ、偶にこのように集まって遊ぶのだ。
今日はタクミさん、仕事が休みという事で、アキノは学生なのでもちろん、俺も同様である。
そんな感じでぇ! 今現在、社会人であるタクミさんの家に集まり、ゲームしているのだ。
スマイル生放送の俺のコミュ、”黄昏る約束の地”にて、現在世界に向けて配信中でもある。
「おおぉ!!ごみどもぉ!!元気しってるかぁ!!????」
アキノがいつものノリで、視聴者に喧嘩を売るように発言、こいつも自分のコミュで偶に放送したりしている。
「こいつら全員イツキくん目当てなのか? どぉ~? コイツ生放送中どうな感じなんだぁ??」
そして、昔動画を上げて、一時期は星の人、いまは没落したように細々配信している感じのタクミさんが問いかける。
「おいおい、今日はそんな話をするんじゃないんだろぉ? ゲーム配信だぜ!いくぜぇ!!!」
当初の目的を逸脱しようとする二人に、俺は前半控え目に、後半ハイに軌道修正を試みる。
「おお、そうだったそうだった、わりぃーなぁ!!よっしゃぁ!!!俺から行くぜぇ!!!」
「はっはぁ、テンション高いなぁ!!!!!アキノはぁ!!!!」
そういえば、タクミさんは俺以外の奴らにはあまり君付けしない。
多分アキノのように既に社会人レベルの逸材とは、もう同い年の感覚で関わりたいのかもしれない。
「おいおい、これは三人同時プレイだっつのぉ、てかまだVR機器も取り付けてないし。
まさかアキノお前、この時代に、前時代のゲームをするつもりじゃないだろうなぁ??」
「はぁ?? ヴァーチャル? テレビでゲームするんだろ? 今日くらいアナログに付き合えよ」
絶句、おいおい、昨今の最新ゲームを捨て置いて、昔のゲームをやる利点とは、考えが俺には全くわからないんだが。
「はっは、いいじゃないかぁイツキ君、今日は昔に戻って、純粋にゲームを楽しもうではないか?」
タクミさんが、場を取りまとめるように俺に言う、むぅぅぅー、ちょっとプロゲーマーの俺としては簡単に納得できない状況下である。
すると、興奮したようなタクミさんが、俺を両手で包み込むように抱きしめてきた、うえぁああ!!
「わぁーーー!!!なんて可愛い奴なんだぁ!!君はぁ!!!ずーこらずーこらぁ!!」
「やっやめてください!!あ、やだぁっ!!!」
俺動揺、そりゃそうだ、タクミさんは、まるで女の子なんじゃないかってくらいの、見た目だけは美女なのだ。
別に体格とか、そういうのが女ってわけじゃない、全体的に見て、美青年っぽい美女なのである、言ってることが分かり難いかもしれないが、タクミさんとは得てしてそういう人なのである。
だから、俺として、この状況、超嬉しいのだ。
だってあのタクミさんだ、色々と憧れる面も多々ある、尊敬すべき人なのだ、こうやってくっ付けて嬉しくないかと問われれば、嬉しいと答えるだろう。
でも駄目だろう、常識的に考えて、拒否しなければ俺は俺でいられなくなってしまうのだぁ!!!
「ご、ごめんよ、驚かせてしまったようだね」
凛とした顔を困惑に染め、悪かったようにすまなそうに謝る、やはり大人である、度を弁えてくれているようだ。
俺は内心残念に思い、はすはすしそうになるのを抑えるのでやっとだった。
「いや別にっすよぉ!!むしろ俺がテンションを合わせられなくて!わるかったくらいですぅ!しょうじんしますぅ!」
「オイオイぃ!はっは、イツキ!おまえはホモなのかぁ!そこは拒否をちゃんと示さなきゃならんぞ!ガチなら別に良いがなぁふがぁっはっはっ!!!」
アキノが俺とタクミさんの会話に突っ込みを入れる、まあ、傍から見たらそうなんだろうよ、だがケースバイケース、今回はこれが最良だっての。
「それじゃーはじめるぜぇ!!どりゃぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
ヤバ、なにこいつ、こわ。
と思ってしまうくらいに、アキノは馬鹿煩い声を出して、巻き舌気味にプレイを始める。
毎度お馴染みのマリモ、緑の帽子のオジサンが、Bダッシュにより疾走を始める。
しかし竜頭蛇尾、一面の最初のクリボーに正面衝突、マリモの哀れな顔とともに一機減る。
「あれぇえええええ!!!!!!!!可笑しいぞぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるせえぇぇえええ!!!アキノぉごらぁおらぁ!!大きい声出せばいいと思ってんじゃぇええ!!!!
俺のコミュの馬鹿どもはぁ!!お前のコミュの馬鹿たちほど!そういうの面白がらねぇーてのぉ!!!!!!!!」
「なんだよなんだよぉ!!!大きい声出せば面白いぃ!!そんな真理もしらねぇえのかぁ??イツキ、お前生主失格だぜぇ!!??」
「しるかぁ!!!!そんなモンが生主の資格ならぁ!!!!俺は今日で持って生主を超えた存在になるつぅーのぉ!!!!!」
「ちょいちょい、君達、静かに、プレイに集中できんよ」
歌い上げるようなメゾテノール、お嬢様のような、ようなじゃないかも知らんが、そんな美声に俺とアキノが黙る。
真剣な面持ちで、プレイを始めるタクミさん。
難なく最初の難関(?)を突破して、次の敵に向かおうとして、VIPならではの罠に引っかかる。
普通のマリモの一面では存在しない、上方からの敵に頭のドットを掠められ、またも哀れなマリモの表情と共に一機減る。
「な、なんだこりゃぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ぶっはっはっはぁ!!!!がっはぁっはっはっはぁ!!!!
おいおいタクミぃ!!ざまあねぇなぁ!!!!歳の功で最初を潜り抜けて油断したなぁ!!これはVIPバージョンだっての!ひっひぃ!」
煽るように言い放つアキノ、おいおい、なにがそこまで言い募るように言う必要があんだ、マジで。
「ぐはぁ!やられたなりぃー、タクミくん、俺の仇を取ってくれ」
そういってコントローラを手渡し、息絶えたように突っ伏すポーズ、芸人チックな事が大好きなタクミさんらしいぜぇ!!!
「よっしゃぁ!!!!真打登場ぉ!!俺が来たからにはみんな大丈夫ぅ!!いっちゃうぜぇ!!!!」
「おいこらぁ!!!オレが真打だろうがぁ!!お笑い担当がぁ!!主人公のオレを差し置いて目立ってんじゃねぇ!!!」
「うわぁ!!!!萌ぇえええええええええ!!!!!!いいぞぉーこれぇーもっとやれぇー!」
「煩いぃ!!俺がどう考えても!この物語の主人公だぁ!!その力、このプレイでとくとみよぉ!!!」
ふっはっはぁ!!
俺は実は言ってなかったが、VIPマリモは初見ではない、何回も相当に遣り込んでいるのだぁ!!!ぐはっはっはぁ!!
まあ最初から、ヴァーチャルヴァージョンをやるつもりだったんだ、俺に有利になるとは思ってなかったんだ!
だからこれは俺が悪いとか、ずるいとか、反則だぁ!不正だぁ!という話にはならないのだぁ!!俺の天下だぜぇ!!カッコいいところみんなに見せちゃうぜぇ!!
常にBダッシュで一面を駆け抜け、そのさまはまるでTASの如き。
最初にいたクリボーは舞い上がって避け、上方からの攻撃はしゃがみで回避、土管からの刺客は出現ポイントを初めから叩き無効化。
初見では絶対に至れない華麗なプレイに、アキノは目を剥いているぜぇ!!!がっはっは、愉快だぜぇこりゃ!!
そして最後、ゴールの線を切る終盤、事件は起こった。
なんとありえない所から、それは俺のプレイの記憶と照らし合わせてって意味だ、敵が現れ、俺の操作するマリモを扼したのだ。
当然自失する俺、なにが起こったのかわからず、数瞬コントローラを持ったまま固まってしまった。
「、、、、、、は、はぁああああああああああああ??????????!!!!!!!!!!!!!!!」
絶叫する、いな、彷徨を大地を轟かせる勢いでしていた、だって意味分からなかったから。
「ばっかだなぁ!!!!」
「な、なにぃ!!!どういうことだぁ!!!アキノてめぇ!!!なにか仕組みやがったのかぁ!!それともエミュ特有のバグだとでも言うつもりなのかぁ!!!」
「ちげえよぉーーー!♪ 俺は何もしてないつぅーの!」
「だったら、これは、どういう事なんだ、、、あ!!まさか???!!」
「はっはーん、やっと気づいたか、だが、もうおせぇー。
そうだよ、VIPマリモは、先日、割と大きな更新があったんだよぉ!!!最後の敵とかぁはっは!ああいう初見殺しが主な更新内容だぜ!しかもぉ!ほぼ全面でなぁ!ぶっがっはぁっはぁ!!」
「く、くっそぉ!!この!くそ!!」
「ああああぁ!!ああああん!!!」
タクミさんが、頭可笑しくなったみたいに俺に突撃、胸に、これは流石に全くないが、俺を掻き抱いてきたぁ!!!!!!
「もえぇっもえぇっ! 可愛い、可愛いよぉ~イツキぃーー!!」
「わ、わわぁ、や、やめてくださいよぉ!!!」
どうしようもない気持ちを発散するように、頬を摺り寄せて、俺を撫ぜ回すタクミさん。
俺大興奮、だが、簡単に受け入れられるようなモノではない、逃げようと体を捻るが、頑強な握力でガッチリとホールドされている。
「はっは!!羨ましい限りだがぁ!一足先にクリアさせてもらうぜ!
おうよイツキ!お前の捌きを観察し! 最後を含めた全てを完全把握した俺を、もう止める事は出来ないぜぇ!!!」
「あ!!てめぇ!!!卑怯だぞ!このぉ!!!あん!や、やだぁ!!やめてぇ!!!」
頬を摺り寄せるのをやめて、首筋に顔を近づけて、鼻をすんすん、同時に鼻息も掛かって俺は頭が可笑しくなって、変な乙女のような反応をしてしまっていた。
傍に綺麗なタクミさんの顔があり、必死に頬を紅潮させ、俺の首筋に夢中だ。
男性と分かっていても、興奮せずにはいられない状況、俺も欲望に身を任せて、イチバチかで受け入れて快楽の渦に飲まれるかどうか迷うほどである。
それでも、全力でウットリ紅潮したタクミさんを引き剥がし、冷静に会話をしようと試みる。
「本当にやめてください、やなんですってこういうの」
「大丈夫だよ、こわくない、ただイツキくんの、匂いを嗅いでるだけだから!安心して欲しい!!!」
できるか、それが不味いんだって!いろいろな意味で!
更にヤバさに拍車を掛けるのが!それが魅力的で!俺がそっち方面に流されてしまうんじゃないかって危険性!!!
まだ多感な青少年、どんな刺激でいつ何時、”そういう風”に覚醒するか分からないのにぃ!!こんなのホント駄目なんだって!!
「ほ、本当に、ちょっとだけでも、駄目かい? いやかい?」
その懇願する、最高級の乙女的表情に、またもやイチバチかで決断を迷わされた。
「ええ!!!良いに決まってるじゃないですかぁ!!!!!!!!!!」
あれ? 変だな? 全力で肯定していた。
「そうだよねぇ!!!!!それじゃお言葉に甘えさせていただこうかなぁ!!!」
俺にまたもや抱きついて、胸の辺りに顔をうずめられる、うひゃぁあああ!!!幸せすぎるぅ!!!いろいろとぉ!!!!
マジでガチで幸せすぎるぅ!!あのタクミさんがぁ!!!俺の胸板に!興奮して飛び込んでいる図、ああぁ!なんかいろいろともう駄目になりそうだぁ!!!
「ちょ、お前ら、どうしたんだよぉ、おい、一面クリアしたぞ」
完全に一人蚊帳の外だったアキノが、呆れたように俺たちに投げかける。
「ふひゃぁ~~~んあっ、、もえぇっ!もえぇっっもえぇっぇーーー」
タクミさんがトリップした感じで、駄目になっていた、もちろん俺も駄目になっていた。
「はぁー、どうしてお前らは、、この可愛いモノ信者共が、萌豚が、、、、、、オレも混ぜろやぁ!!!!!!!」
その後はおしくら饅頭が展開され、疲れきった頃に、やっと正気に戻れた。
本当に萌えとは恐ろしい、注意しないと死の危険性があると、今日改めて再確認した。
「いやぁーーーはっはぁ、わるかったねぇ、イツキくん。
君の可愛さに、すっかり頭の大事なところをやられてしまったらしいよ」
つやつやした感じで、見た目の魅力と愛嬌とかいろいろ、五割増しくらいした素敵な表情で告げてくるタクミさん。
「いやいや良いんですって、俺も頭可笑しくなってましたし、ぐっはっはぁ!!おあいこですよぉ!お・あ・い・こ!!」
「お前ら仲いいな、羨ましいくらいだぜぇ!!!」
「なに言ってるんだぁ?
ただイツキ君に対しては、私は過度の肉体的接触をしたいだけさ、アキノとも同程度に仲は良いさ」
「うえぇー、なんで俺だけ、そんな愛玩動物みたいにされるんすかぁー!」
「はっはぁ!オレはちょっとゴメンかな、悪いが女の子大好き主義なんだ!
だがしかーし、タクミ!お前なら!確かにオレもちょっといいかもぉ!とか思ってしまいそうだぜぇ!!」
「ふっふっふは、アキノぉ!大胆な告白だなぁ!だが安心しろ!お前にはそんな感情は天地がひっくり返ってもありえないのだぁ!
この気持ちは彼、イツキくんだけに向ける!俺の特別な気持ちなのだからなぁ!!」
「うわぁー、ちょ、もうやめてくださいよ!俺はノンケですよぉー!」
「その点についても安心してくれたまえ!一線は越えないから!絶対!!!」
「信用できますかぁ!万が一、変な間違いがあったら、、、、、は! うわぁあああああああああああああ!!!!もうやだぁああああああああ!俺の性格もなにもかも!!!みんな死んでしまえぇええええええええええ!!!!!!!!」
俺は自己の想像に、それに対する自分の直感的な感想に、サン値を手酷くやられて、このように発狂してしまった。
体全体をピクピクさせ、陸に打ち上げられた魚のように、床をのた打ち回る!!
「はっはぁ!!なにこれぇ!!おもしろだなぁ!!!」
「ちょおい!大丈夫かぁ!イツキ君!」
焦ったようにタクミさんが俺を助け起こす、その魅力的過ぎる顔面に映える、優しい色合いの艶々した唇、、、、がくり。
「ありゃりゃー、からかい過ぎたかな? まあしょうがないぜ、イツキは遊ぶと超変になって面白いからな」
「ぶがくはぁ!!ふっはっはぁ!やり過ぎだろぉ常考ぉ、どうすんだこれぇふっふっふぅ!」
「まあ、ある意味、幸せそうでもあるし、いいんじゃないかね? 俺はまったく後悔してないしな」
「ふっ!この悪魔めがぁ、はっは!偶にオレすら恐怖に陥れる、 流石ってところだなぁ!!」
「大丈夫だ、アキノには、こういう感情抱かないからさ、安心してくれ」
なんで俺だけ、とか、薄れ行く意識の中で思ったのだった。 エンド。




