幻聴蚊帳ネットワーク‐哲学的世界俯瞰☆★
「はぁ、幻聴蚊帳にも久々に着たわね」
私は”此処”に、偶にしかログインしない。
俗にいうVRMMO的なゲーム世界の話である。
そうVRMMOだ。
擬似現実・モデルオンラインオプスの略。
あるいは、ユニオンメディアワールドまたはワークス。
「私の故郷、黄金郷、ゴルデミックパンドラ、中心点には劣るけど、良い場所」
この世界には中心点が存在し、
しかし、その中心点がどこであるかは不明、それぞれの観測者の主観的な意思にしか判定材料が無く
その中心点に無限の作用力を有する外側、擬似現実が無限大にあるのだ。
「久々に来たけど、やっぱり熱くさせてくれるわ、つまりは楽しい」
このゲーム理論に支配された空間だ。
リアルでは、ただの現実では、絶対に味わえないアジ。
絶対的に究極的に、バランスを極めに極めつくした、このゲーム感覚が、現実なんて目じゃないと思わせてくれる。
VRMMOと、そしてゲーム、リアルをより高次元にする為の法。
「このゲームのシステムを掌握するのが、私、観測者なんて、心が躍っても踊り尽くせないくらい」
素敵で素晴らしい事、そう思えてならない。
観測者に絶対依存して、初めて世界を支配するゲームシステム・理論は成立される。
無我の境地であり、己というモノを一切合切もたずに、世界のみに全影響を受けるモノ。
私情を挟まず持たず、世界の法則に支配されている絶対の観測者にのみ、真なるゲームマスターの資格がある。
こんな事は、遠い遠い果ての昔に、世界が創造される時から作られている、絶対存在達の決めた摂理なのだ。
「此処もすこし見ない間に、いろいろ様々に変わっているみたいね」
以前ログアウトした場所に召還されるので、ここは矛盾勢力の本拠地だ。
都市名はなんだったか、なんだか無かったような気もするが、、、。
「うぅ、、魔術師の都みたいな、横文字をカッコよく並べたような奴だったんだけどぉ、、」
私が思い出せないとは、どういう事だろうか?
まあ、それもしょうがない、
このネットワーク空間は俗に、絶対観測者領域、アウトオーバーネットワーク、
一言で言えば、世界の真なる外がわに位置するのと同義であり対義。
つまり何が分かるかと言えば、
「そう、頭が可笑しくなって当然、
というよりも、意図的に計算ずくで、頭を可笑しくして、初めて至れる領域と呼ばわれるべきかしらねえぇ、、」
一人呟きとも言えば聞こえが良くなりそうな、電波を飛ばしながらも、世界の把握に努める。
「しょうがない、全世界を理解する超感覚・神経・理解の力を行使しよう」
黄金の私には、第七複合多重世界に本体が存在し、世界の外延部、その外側から真なる外側を観測できるのだ。
これは世界を観測する上でアシストになるのだ。
できる限り外側に、できる限り全てを一望できる場所、
至高の風景を閲覧する為に、常に超越者は本体を世界から乖離させた場所に置く。
「そうすれば、世界の一部である此処の都市名も自然と分かるのだ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
、、、駄目だ、世界の複雑性が桁違いだ。
やはり、この世界は現実世界よりも、情報量において遥かに上位に位置するみたいだ。
明らかに理解不可能事象、凡そ三割も自己再現できない可笑しい現象とかに溢れている。
元の世界では、一瞬秒で自己を含めて周囲空間、だいたい太陽系の全ての事象を感覚できたのだが。
此処は元の世界で銀河系を感覚できる時間、約30秒をかけても、この都市の全貌も掴めないのだ。
「もの凄い自然現象が、此処では平常の普通の平穏として存在しているのね。
私は常人と比べて、脳の複雑性が桁違いなのに、まだまだ世界に押し負けている、これでは駄目ね。
もっともっと基本性能も何もかも、上げていかないと。
でも、これ以上どうやって鍛錬すればいいのかしらぁ、、」
高い位置から地平線を眺めて、自己の認識する、いやそれ以上の世界すらを敵視する。
私は世界を無上に愛憎するが故に、どうしても世界を絶対的に圧倒しないと気がすまないのだ。
だってそうだろう?
世界を圧倒できなければ、無上に不幸に幸福になる可能性が未確定になるのだ。
恵まれた状況・環境を手に入れる為に、そして恵まれない状況・環境を回避する為にも、これは私の絶対必須に値するのだ。
今まで、どうしようもない、神すら堕落する塗炭の日々を送って、そういう人生を生きてきた私は、そう思わざるを得ない。
「あ、シャルだ」
マジでいたよ、黄金の女王が。
少し小高い丘で、黄昏るように彼方の虚空を見つめている。
「久々にログインしたみたいだな、くっく、そうだ、ちょっと脅かしてやろうか」
俺は全天下12剣の一つ、英雄剣”ユニバース”を召還する。
「お前の持つ黄金剣”ゴールデン”と、どっちが強いだろうな、くっく」
この剣は少し前に手に入れた代物だ、シャルの持つ剣と同格に位置する一品である。
「くっく、これでお前の屈辱に濡れた涙目紅潮顔を拝んでやるぜ」
「ちょっとお兄ちゃん、笑い方が怖いよ」
隣から痛いもの、じゃない、可愛そうなモノを見る目線が突き刺さる、てどっちも同じか。
「なんだ佳代、お前も参戦するか?
前々から思っていたんだが、シャルは調子に乗っている、締めんべぇ?」
もし妹の佳代も手伝ってくれるなら、100%勝てる自信がある。
なぜなら、俺の妹も全天下12剣、黒鉄剣”ゼロクロム”の所持者なのであるからして。
「駄目だよ、お兄ちゃん。
そういう事ばっかりしてるから、シャルさんあんまりログインしてくれなく、なっちゃったのかもしれないよ?」
普段から”そういうこと(不意打ち&奇襲)”をやられまくっている我が妹は、酷く実感の篭った感じで言う。
「ううむ、確かに、それはそうかもしれない。
だが、現実じゃ、絶対に勝てないから、ここでくらいあいつに対して優位に立ちたいんだよなぁ」
「それでも、やめとこう?」
「まあしゃあない、我が世界一可愛い妹に免じて、あいつの暴虐を許してやろう、俺って優しいよなぁ!!」
一人全自動ハイテンションスキルを発動し、がっはっはっはぁ!っとハイにラリりながら、丘のシャルに近づこうとする。
「やあぁああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
隕石が降ってきたかと思った。
ずごぉおおおん!!!っと大地が弾けて、緑髪の少女がエクストリーム着地いや着弾した。
粉塵が晴れると、巨大な剣にスノボーのように乗っている女がいた。
そしてぴょんと飛び降り、大地に突き立つソレを抜き放って、ニコニコやってくる。
「天下12剣、風緑剣の使い手! シルフィードの女神!
イリスちゃん華麗に過激に参上だ!!!にゃはっはっはぁ!!!」
剣を天に掲げて、太陽のように嬉しげに明るい笑い声が響く時空。
「お、おう、元気だな、イリス、今日もぉ」
「わあぁ、、、こ、こんにちは、イリスちゃん、、」
「うん? なになに! 引いちゃったかぁ!!???」
ぴょっこぴょっこと左右に飛び跳ね揺れながら、キスできそうな位の距離に近づく。
「顔が近いぞ、今すぐ離れないと、キスしちゃうぞ」
「うはっは、それじゃ離れないとね、きゃー逃げろぉー」
子供、というより馬鹿みたいに一人で駆け回る、俺の半径五メートルくらいを、ちょっとうざかったりしないでもない。
そこで、袖を引かれる感覚。
「お兄ちゃん、シャルさんどっか行っちゃうよ」
「まじかぁ! 追いかけろ!」
「待て待てぇ~~!!」
俺はシャルを追いかけた、久々に此処で合ったんだし、顔くらい合わせておきたいではないか。
矛盾の本拠地から、遠く離れた地点に、その存在はいた。
「絶対の矛盾ってのを内包した、あれが勢力の宝か、普通に欲しいな」
世界を絶無に滅する為の使者は、ただ暗いだけの瞳で見つめていた。
「黒鉄剣”ゼロクロム”、黄金剣”ゴールデン”、風緑剣”シルフィード”は認識したが。
あの英雄剣は偽者、つか、レプリカ臭いな、他と格が違うように感じる」
「ねえねえ」
「うん、なんだ?」
彼?彼女の少し離れた地点に、銀色に白を混ぜたような不思議な髪色の少女がいた。
「全部、あそこに、あるんだろうね?
青銅剣”ブルーア”に、暗黒剣”ダークネス”、銀妖剣”ネオミスリル”。
虹花剣”ピンクアリア”に、紫宝剣”アメジスタル”、光茶剣”ライトアース”。
火紅剣”クリムゾン”に、無白剣”ゼロホワイト”。
そして、大本命の、真なる英雄剣”ユニバース”がね。」
「当たり前だろうが、ないなんて事が、あるかよ」
「まあ、そうだね。
とにもかくにもさ、特に英雄剣は、11の剣霊をしょうかんできるし、絶対欲しいんだけどぉ。
剣霊の証は、聖剣を所持することだっけ?
あれだけでもあれば、天下12剣にも対抗できるとか、風の噂に聞いたよ」
「俺様も聞いた噂だぜ。
まあ、更に眉唾の噂として、その召還された剣霊ってのが、今の天下12剣の保持者らしいってのもな」
「はあ? どういうこと?」
「つまり、今の天下剣の所持者は、実は剣霊かもしれないって噂だ、てか推理しろやそれくらい。
そしてそういうことなら、今観測した英雄剣の格が落ちてるのも、道理がなるってわけだ。
11の剣霊を召還したから、してるから、英雄剣の格が他のと比べて落ちてるとかな」
「あっはは、名推理だね」
パチパチと拍手の音が響く。
「そこら辺は、正味、どうでもいいがな。
とにかく、一つ残らず、奪うぞ。
一つでも逃せば、格が大分落ちんだからな」
「了解、了解、それじゃ行く?」
「ああ、行く」
二つの影、更にそれに続く形で正体不明の何かが、矛盾都市へと迫っていた。
ナルディアは、快楽悦楽主義者で、自殺志願者だ。
彼女は、望める限りの最上級、限界高次元の楽しさの為なら自己の、世界全体の命すら一切で惜しまない。
だから彼女は、混沌の存在であると言える。
更にその存在の性質、格の都合上、絶対の混沌存在と呼称認識されている。
それは、彼女の存在の在り方が絶対のステータスだから、ゆえに永久不滅の絶対であるからである。
「あは、おもしろいことが起こりそうだよ」
彼女は認識した。
世界の凡そ七分の一を制する彼女に、認識範囲外の外は極端に少ない。
「おーい、ナルディア、お腹減った、偶にはお前がつくれよぉー」
「おお、良いところに来たねアルド将軍」
「それじゃあね」
少年は一瞬で嫌な予感がしたようだ、ノータイムでどっかに退散しようとする。
「だめ、一緒にくるの」
「やめてぇ!助けて! リリー!!!」
リリーと彼が発音した次の時刻には、その少女は少年の片腕を持っていた。
「ナルディア」
「やあ、リリー」
少女同士は見つめあう、言葉は不要だった。
「秩序を乱すつもりですか?」
「うん、それがわたしのアイデンティティだった、さっき思い出した」
「やらせない、これ以上みんなを、、、絶対に阻止します」
シリアスな空気の中、両手を拘束された少年は困惑して。
「あれ? どんな物語が始まってるの、説明してよ、、。
っつうか!手を離せ! 引っ張って腕が取れる流れだろぉこれぇは!!」
少年は暴れた、非常にも手は離されない。
「すごいね、いつの間にアルド将軍、高度未来予測演算ができるようになったのぉ?」
「必然の流れ!、いや、何時もの黄金パターンだろうがぁ!」
「お約束は守るべきもの、かもしれません」
「いや、リリーは離してよ、それだけで助かるって今気づいたんだ」
「残念ながら、駄目です」
「もういいよ、手が取れても、元に戻るだろぉ、多分。
だから、なんか良く分からない、全部の事情の説明を求むよ」
彼の嘆願に、第四者が名乗りをあげた。
「それじゃ、わたしが説明します、よっと」
「ナルコ、なんだその眼鏡とボードは、可愛いな」
「はい、では」
少女は早口過ぎる説明を試みる、外資系も真っ青なレベルである。
少年には難解だった、さらに内容は意味深で造語っぽい用語の説明もなしであった。
「はい、理解したかどうか試します、今までを軽く口頭でおさらいしてください」
「えと、つまりまず事の発端は、矛盾勢力に絶無と虚無が仕掛けるところからぁ、、、」
「はいはい」
「えっと、そして幻想と絶対は、、なんだろう、、幻想は援助してくる勢力に援助してぇ、、」
「はいはい」
「絶対は、絶対に在る為に阻害する存在を優先的に消してぇ、、」
「はいはい」
「あとなんだ、リリーは秩序を絶対に守る使命があって、それでナルディアを今止めようとしてる、左矢印いまここって感じかぁ?」
「意味分かりませんね、なに言ってるんですか? 今から死んでくれるんですか?
要は、同盟と利害で均衡していた勢力バランスが崩れた、それだけです」
「あうあう」
「さて、ナルコちゃんありがとね。
で、リリー、なんで私を止めるの? 矛盾って秩序的だったっけ?」
「分かりませんよ」
「だったら、守る必要ないんじゃないの?」
「そうかもしれませんね」
「だったら、そこを退いてくれないかな?」
「良く考えれば、行かせる分にはプラスにもなり得ますし、、分かりました」
「そう、一緒についてくるんだ」
「です、貴方は確実な絶対悪ですから、隙が生まれるかもしれませんし」
「怖い怖い、いつ寝首を掛かれるか分からないよ」
あーだこーだ舌戦を交えたあと、四人は何処かに向った。




