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観測者編1

 

 

「イルミナードは、この先、どうなると思うかね?」


 彼はアルド、世界の中心的な真成る存在、その影の一つであった。


「さあね、どうなるんだろうね」


 こちらは、世界の中心的な真成る存在、彼を影から支える、

 支えてやると豪語する、正体不明な観測者という、その偉い方の端末、らしい。


挿絵(By みてみん)


「正直な話、ここは中心点から遠過ぎて、俺の様な者好きしか来ないようだ」


「サービスの質を上げないといけないね」


「そうだ、即急にサービスの質を上げなければいけない、ここの存在達の幸福を守る為にも」


 彼は思う、ただただ思う、人類の守護という名の、博愛精神で思うのだ。


「あっはっは、」


「おい、どうした、ヒルダ」


「いやいや、あっはっは、くふふ、突然わらいが込み上げてきた、うひゃひゃっひゃ」


「おいやめろ」


「うっふ、そうだね、笑っちゃいけないね、でも面白くて。

 で? どうするのさ?」


「どうするって、俺には出来る事が限られる」


「そうだよね、中心点からここまで離れた、収束する力が拡散して、

 アルド、影だったかな、ここでなら観測者である私の方が強いんじゃないの?」


「知らん、俺は俺だ」


「領域から離れた君は、君足りえないよ、弱い君なんて、ってね」


「くっ、

 とかく、観測者の意思は、あらゆる世界を守護する、俺の思想を合致するんだろうな?」


「あ、ああ、そうだね、基本的には。

 でもわたしたちは、費用対効果的に、滅んでしまった方が良い所は、見捨てる主義だよ」


「下種が」


「そうだね、下種だよ、君のように、守るべき、絶対の思想って奴がないみたい」


「それは、確定した執着がないだけだ、お前は俺と同じような奴だって、俺は信じている」


「信じたいなら、信じても良いよ、裏切られて怒らないなら」


 アルドは疲れたようにため息をついた、実際つかれたのだ。


「どうしたの? 人間みたいだけど」


「俺は人間だ」


「そうだったね、相当弱体化するんだね、本当に中心点以外だと、マジでガチで、私の方が強そう」


「勝手に強がってろ、俺は力には執着しないんだ」


「馬鹿だね、強さがないと、この広大な世界を、好き勝手に観測ライフをエンジョイできないっていうのに」


「知らんがな、俺は守れるだけの力を求める、お前達のように果てなく求めてたりしないだけだ」


「まあいいよ。

 それで?

 イルミナードは、まあいいよ、うん、これは本当にいい。

 問題は、アウルベーンだよ」


「ああ、そうだな。

 こんな中心点から外れて、それでも力技で世界を維持している、遠方の大勢力、聖地にしても良いくらいに尊敬の念が堪えん。」


「それで?」


「俺はな、こういう遠方を、もっと増やしても良いと思っている。

 俺は俺の世界が大事だが、それ以外の世界だって、守ってやりたいと思っている。

 それがどれだけ難しくても、だ。

 俺が世界を大事だと思っている様に、そいつらの世界だって、同等に思われているんだ、

 幾らかでも感情が移入できるってもんだ」


「いやいや、そういう話はしてもいいけど、肝要なのは、どれだけのリソースを分け与えてくるのかって、そういうことだよ」


「俺には権限が少ない、手元に自由にできる勢力は、案外に少ない」


「いやいや、少なくないでしょ。

 確かに、世界の方向位の、その一角にしては、少ないけどもね。

 それで、だよ。

 サービスの向上については、こちらも来客の推移を見て、幾らか投資で補うけどね。

 君が測ってくれる便宜のほども計算したいから、具体的に言える勢力量だけでも、今この場くらいで提示してくれるとありがたいよ」


「そうだな、現在、中心地で人気の世界、イルミナードについては、聖地として、直轄領扱いにしても良い、

 それくらいだな。

 アウルベーンについては、第二の中心点、世界の外側の世界として、大々的に宣伝している」


「知名度もあがってるよ、遥か遠方から来てくれる存在も増加傾向だよね。

 でもでも、全然たりない、アウルベーンは、外界からの接敵で、どんな時でも滅亡の危機に瀕している」


「知ってるよ、知っているが、どうにもならんものはどうにもならん、そういう事だ」


「冷たいんだね」


「ああ」


「わかったよ、観測者も頑張ってる、それは知っておいてね」


「ああ、俺はお前たちを評価している、どれだけの熱量を隠し持っているか、分からんがな」


「なによ、わたしたちが、まだ出し惜しみ、いろいろと君から譲歩を引き出すために、って、そう考えてるの?」


「まあな、俺でも、お前達の全貌だけは、どうやっても掴めない、原理的に観測不能な領域に、お前達の中核はある、

 どれだけお前の口から、そう言われても、信じるのは難しいって話だな」


「言っておくけどね、アウルベーンが手遅れになっても、わたしたちは隠し持ってる大勢力で、なんとかできるんじゃないとか、邪推しないでね」


「ああ、それは期待してるが、本命にはしてない、その前に打つ手は打って、最善は尽くしておくべきだろ」


「まあ、そういう心構えなら、いいか。

 それじゃあ。

 わたしは端末置いておくけど、しょうじき、別のところにも行きたいから」


「それは俺も同じだ、できるかぎり、質の高い奴を置いていけ、俺も置いておく」


「って、君はさらに下位の端末を置いておく気?」


「しらん、俺は俺だ、だいたいお前らは中心点から離れても良いのなら、もっと頑張るべきだろうが」


「うっさいよ、わたしは頑張るんだから、君も頑張らないなんて、不公平だよ!」


「しらん、俺だって死力を尽くしている」


「どうだかね」


「勝手に疑っていろ、その疑念が俺を満たす時もある」


「死にな、それじゃね」


「おお、お前も死ねな」


 二人は忽然と、どこへともなく消えていった。


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