イデア編‐魔王様の人助け記
ファンタジー世界発、FS異世界に召還され魔王の僕となる人の視点
「おおーい!おきろぉー」
なんじゃらココ?
「なんだ? やめろ、揺さぶるな」
目の前に茶髪の美少女。
はてさて、俺は早朝からこんな、ギャルゲーのヒロインのような人に起こされるような、高貴でハイソな人間だったか?
いな、ありえない、というよりココ、野外じゃねぇーか。
「おりゃぁ!」
頭に振動、何かで、てか目の前の少女が手に持つ杖、それで打ったたかれた、ただそれだけだ。
それが起こした現象か不明だが。
俺を襲う、めくるめく情報の洪水、頭の中を支配し、俺を一瞬間没入させた。
この目の前の少女は、ドロシー、魔王の側近っぽい人。
そして、こちらを控え目に見つめる、もう一人の金髪の少女が、アリシア。
更に、ここから少し離れた、断崖絶壁、その向こうの果て無き海を眺めるのが、魔王、そう呼ばれる人。
銀にキラキラ輝く、長髪があまりにも、、、加えて、黄昏るような表情と、憂いを帯びながらも、力強い姿に、眼を奪われた。
で、、、なぜ俺が呼ばれたし?
それから、なし崩し的に仲間に加えられた。
俺を召還した少女曰く、「一人くらい召使が欲しかった、最良の奴隷よぉ!出でよ!って言ったら出てきたの」とか言われた、おいおい。
確かに、俺に奴隷気質みたいなのが、絶対に無いとは言えないけども、そりゃないって話だ、はいそうですかって納得できるかどうかは、難しいのだ。
だがしかし、目の前の茶髪と金髪の少女、なにより銀髪の魔王と呼ばれる人。
その人たちを前にすると、なんだか異議を唱えがたく、もう俺が奴隷納得、召使い的ポジションを嬉々として受け入れた、そんな雰囲気が確定してしまったような気が、、、。
「おおーい、こらぁ~! わたしを無視するなぁ!」
俺を召還した、茶髪の少女、ドロシー、度々と言わず、他の二人よりも積極的に、相当の多頻度で話しかけてくる。
今俺たち、俺を含め四人は、どこかも知れない森の直中で、暗い辺りを焚き火で照らして、いわゆる野宿っぽい事をしている。
「ああ、なんだなんだ、悪い、ぼーとしてたんだ」
むぅーっと、頬を膨らませる少女に対応、子供っぽいが、性格は大して悪くない、むしろ良いと把握しているので、別に怒らせても怖くないので、割とおざなりである。
「きみきみ、行きたい所はあるかな?」
「行きたい所? とくにないが? お前や、アリシア、魔王様は、どこか当てと言うか、目的地はあるのか?」
焚き火を囲む、ほか三人にも聞こえるように、聞いてみる。
「ふむ」
魔王様が、俺の質問に頷きを一つしながら、何か話し始めようとしていた。
「私は、、、世界を巡りたい」
「世界を巡る?」
金髪の少女が、魔王様を見つめながら、何かその先を問うようにする。
「ああ、そして、もし、争いや、大いなる不幸が蔓延していれば、解決したいと思う」
「素晴らしい事です、全力で賛同します」
頷きを過剰に、何度もしながら、アリシアが大賛成する。
「おおぉ! 凄い良いと、俺も思います! 全力で従いますぅ!」
当然、俺もそれに続けとばかりに、頷きながら賛成の意を告げる。
しかし、不意に隣が、静か過ぎるのが気になり、見ると、ドロシーが難しい、それはそれは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「お言葉ですが、魔王様、、、」
あれ? ドロシーってこんなシリアスっぽい声出せたのか、となんだか俺がビックリしている間も、状況は推移。
「なんでも言ってくれると助かる、お前達三人は、とても頼りになるからな」
おお!、俺がカウントされてる、ちょっと嬉しいぞぉ。
「現状、私達の戦力では、魔王様の望みを完全に叶えるには、大いなる困難が、見過ごせないレベルで存在するのです」
「ふむ、難易度が高い、そのように言いたいのか?」
「はい、その通りです。
破滅と隣り合わせの、険しく高すぎる道、そのように、私には思えてしまうのです」
「確かに、そういう見方も、ある意味できますが」
と、そこで、アリシアが話しに割って入る。
「というより、既に貴方は、世界の現状を把握しているようなモノ言いのような、、、まあそこはいいでしょう。
ドロシーの言はもっともです、それは十分に考慮して、この先やって行きたい所です。
しかしです、魔王様の力ならば、十二分に可能な範囲内かと、私は愚考しますが?
どうでしょうか? この辺りの事情は?」
「ううん~、貴方の戦力分析的に、どの程度困難な道なのでしょうか、を問いたい感じかな?
不確定要素が多すぎて、具体的には言えないんだけど、、、。
この世界に存在する勢力、超大国が存在しない、大国が幾つも存在する場においての、私達は一大国レベルかな?
だから、争いを無くす、それを完遂するのが困難、そういう話なんだよぉ、、、」
「なるほど」
「魔王様、どういたしましょうか?」
アリシアが、ドロシーの真偽もちょっと疑わしい話で、すんなり納得したのか、難しい瞳を魔王様に向けて、魔王様も考えあぐねるようにしている。
次の瞬間、ハッとしたように、魔王様が俺に、視線を向けた。
「イデア、お前からは、何かあるか?」
イデア=アストラル、俺の名な、コレ。
「そうですねぇー、良く分からないですけど、戦力増強を模索しながら、上手く立ち回れば、なんとかなるんじゃないですかねぇ?」
なにも言ってないに等しい、誰でも考え付く話をした、だが。
「流石、頼りになる助言だ、それで行こうか」
「ええ、彼は歴史上稀に見る秀才、最大級の知性派だけはある、のか、、だから召還されたのでしょう」
「そうだそうだぁ!!イデアは超ハイパーに凄い超人!!私が召還したんだ!当然だよなぁ!!!???」
にゃはにゃはげはげは笑いながら、ドロシーが俺の背中をとんとんしながら、皆にドヤ顔してる。
てか、アリシアに変な誤解を与えてねぇーか? ドロシーの適当な吹聴なら、後で正しておかないと。
「方針は決まった、これから私とお前達は世界を巡り、戦力を増強させる事も視野に入れつつ、人助けをする。
かなり私のやりたい事一辺倒で、みなに悪い気もするが、それで良ければ、これで暫定の方針を定めたい、よいか?」
みんなニコニコしながら、なんだか遠足に行くくらいの軽いノリで、頷きあってるが、やること結構壮大な面もあるから、雰囲気がちょっと軽薄に、俺には感じられた。
夜、みんなが寝静まった辺りで、ドロシーに接近。
「えっっちょ、ちょっと、エッチなことやだ」
「違うよ、ちょっと聞きたい事あるんだ」
「えへ、しってたよ、なに? 何でも聞いていいよ、知りたいことがあるならね」
「お前は、どれくらい世界のこと知ってるんだ?」
「どれくらいかぁ~、そうだね、世界の全てを、上から眺めて、盤上の駒を動かすが如し、観測者の視点と言えば、分かりいいかな?」
「なるほどね、それなら、これから不測の事態が起きて、どうにもならなくなるくらい”詰む”なんて事も、絶対にないって思ってもいい、それくらいに、お前の底知れない実力を信じて、信頼をしてもいいのか?」
ドロシーは、なんだかちょっと憎らしいニヤリ、笑顔を形作り、俺を見つめる。
「ふっふ、安心したいのかな?
まあ確かに、安心くらいは、しても大丈夫だと思う、、、けど、やっぱり完全には安心なんてできない。
何が起こるか分からない、世界は壮大ってこと、、だからね、全力を尽くして欲しいんだ、ありとあらゆる、全ての事にね」
なんだか、真なる回答をはぐらかされたような、そんな感覚。
「それは分かった、人生の真理として自覚しておく。
でも、具体的にどの程度安心できるのかなぁ~? それが出来れば知っておきたい」
「難しいこと聞くんだね、強いて答えればだよ、全然信用ならないから、あんまり言いたくないんだけど、、、」
「うんうん、教えてくれ」
「みんなで話してる時も言ったけど、私達は大国なの、四人という存在が、大国と渡り合える純粋な戦力として存在してるの。
だから、どんな難しい、苦しい状況下でも、逃げに徹したり、機動的に動けば、幾らでも戦術的、戦略的有利を一つの戦場、長期的戦争の中で見出せる。
つまり、死滅させるのが難しい存在たちなんだよ」
「なる、でも、完全には安心できない、そうなんだろ?」
「そう、安心はできない、現状、沢山の勢力に分かれてる、特級の存在達が結託、同盟を結んで、私達を叩き潰そうとすれば、どうなるか不明、分からないの。
でもでも、実際そうそう易々そんな事には、ならないんだよ。
なぜか、なぜなら全ての勢力が、確固たる意志や主義のもと、存在してるから。
簡単には手を組まないし、同士討ちや、戦いの中で双方戦力を磨耗させる事も考慮、だからね、そういうことなんだよ」
「うーん、あんま、俺が最高に納得できる感じじゃないけど、とりあえず一安心はできそうだよ」
「心配性なんだね、しょうがない、今日はわたしが添い寝してあげようぉ」
そう言って、俺を抱き枕のように抱えてくるので、暑苦しいと引っぺがす。
「気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとうな、いちいちうだうだ追求しちまって」
「いいよいいよ、気になること、そういう事あったら、なんでも聞いてくれていいよ、説明するのだって、楽しいんだからさぁ」
いい事を、いい奴っぽい表情で言う。
まあ、根っこの方もまんま、良い奴なんだろうけどな、コイツの場合。
俺は一言、おやすみの挨拶をした後、割と安心した心持で、野宿を堪能する事にした。
はあ、これから万事全てが上手く行きますように、俺も最大限努力するから、どうか神様、、、、とか思いつつ眠りに付いた。




