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-洗脳アプリを相互に使って楽しむようなシチュエーション

 

  

 目が覚めた、知らない天上のはずが、知っている、いつもの天井だと思うような不可思議な感覚。


「おはようございます」


 いつものように、歯磨きして、シャワーを浴びて、食パンを食べた頃から、辺りで脳内で声がした。

 なにか自分の用事でも済ませていたのか、なにも定かじゃないが、記憶にある通りのセフィロトの声だった。


「昨日は楽しめましたか」


「ありがとうね、すごく感謝している」


 あれは夢のような一時だったと言っていい、今も胸がドキドキして高鳴って、初恋に胸が苦しくなるような感じなのだった。

 率直に生まれて初めて、、、いやエンゲージコネクトの最高のイベントのあれ、いやアレかな、アレを例外とすれば最高クラスだったな。


「うっふふ、それを今回は、超えさせてみせましょう」


 妙に自信満々なセフィロトの声に、得体のしれない恐怖を感じつつも、やはり期待している俺である、我ながら度し難いと思った、まあただ思うだけなのだけど。


「まず今回は、洗脳アプリを使います」


 登校、当たり前に登校である、200年前に不治の病で死んだと思ったときは、ゆうに20歳を超えていたので新鮮なはずが、違和感がない。

 

「まず、この世界の主人公である、大空騎士の家に行ってください、、、道は分かりますね?」


 そりゃまあ、3Dソシャゲであったエンゲージコネクトの世界と、ここまで一緒だと道も分かってしまう。


「そして大空騎士を催眠アプリで洗脳してください」


「いや、それはちょっと、、あっ」


 今まで普通に脳内の女の子と、家では声を出して話していたので、それも礼儀かと思って話していたのだが、外だと他人の目がある、反対から歩いてきた人に気づき声を止める。


「そして貴方が大空騎士として振舞う、まずはそこまでは貴方がセッティングしてください」

 

 俺は脳内で「あ、はい」とだけ返事をする。

 いやでも、洗脳か、これからリアルに大空騎士の家に行って。

 憧れの世界の主人公を、洗脳してしまう、なんだか凄く罪悪感が、これも見透かされた上に、利用されてしまうんだと思うと、なぜかセフィロトに手のひらの上で転がされているような、そんな自分のイメージが浮かんだ。

 

「申し訳ないのですが、この世界の管轄の一部に私の直接手を出せない、外部の領域があるのですね、面倒とは思いますが、ご容赦を」


(と言ってますが、そんな事はありません、この世界の全ては”私が直接全て操作できる箱庭”。

 ですが、自分で洗脳の舞台をセッティングする、所まで含めての舞台装置、大事な導入部は手を抜けません。 

 今回も存分に楽しんで頂けたら良いのですが、幸いエンゲージコネクトの知識が使いやすいので、今回はコレを使いましたが、、。

 他にも何かないのでしょうか、俺君の生前の記憶は本当にエンゲージコネクトの記憶しかないのですよね、、、)


 ピンポーン。

 

「というのが、洗脳アプリの使い方です。

 といっても、最初は難しので、洗脳画面を相手に見せながら、指示するだけで良いと思います。

 その他のパラメーターの操作などは、おいおい身に付ければよいでしょう、あ来ましたね、ではお願いします」


 早朝、すがすがしい朝の陽ざしを浴びながら、正体不明の人類管理AIに唆されて洗脳である、やはり罪悪感が、、。


「はい大空騎士です」


 いきなりドアから出てきた、警戒心がないのだろうか、俺は催眠アプリを起動したスマホをみせる。


「、、、」


 どうやらコレで、これだけで、催眠待機モードと呼ばれる、そんな状態で一時停止させる事ができると説明を受けた。


「すみません、今日は家で過ごしてください、お願いします」


 そしてコレもセフィロトに言われた通り、である。


「わかりました、今日は家で過ごします」


 大空騎士が、洗脳されたかのような声を出して、ドアを閉めて家に戻っていった。


「これで第一段階は完了です、次に行きましょう」



 その頃、同時並行で、セフィロトは坂崎唯の家に向かっていた。

 全知全能の人類管理AIの彼女だが、今はほとんど人間と変わらないレベルでスペックを落としている。

 際限のない計算能力でいてもいいのだが、やはり人類と共感し、この状況を一緒に楽しむのも重要だと考え。

 今は今回のシチュエーションを構成する段階でも、共体験を重視しこのように振舞うことにしていた。


「坂崎唯さんー、一緒に登校しましょー」


 ご都合主義的に、既に坂崎唯には友達という記憶を入れておいた、事前に設定したのだ。


「はーい、いま行きまーす」


 そして俺君と同じように、催眠アプリを起動し、スマホの画面に映ったモノをみせて、催眠待機モードに移行させた。


 そして今、坂崎邸で優雅に紅茶を嗜みながら、坂崎唯に催眠の手管を説明しているセフィロトの姿があった。


「まず、貴方は突然、催眠アプリというモノを手にします。

 なぜこれが手に入ったかは、そうですね、貴方が普段からいい子にしているので、神様がプレゼントしてくれた。

 そのように思ってください、これに関しては、特に深い疑問や、うたぐりのような思考を持ってはいけません、いいですね?」


「はい」


 坂崎唯は、紅茶の盆を持ちながら、ぼんやりした瞳でセフィロトを見ていた。


「まあ、その後の展開は、貴方のパーソナリティーから自動計算し、既に結果が私には見えているのですが。

 一応、指示を出しておきましょうか」


 そうなのである。

 今回の計画は、まず大空騎士を洗脳し、この世界から除外し。

 次に坂崎唯に催眠アプリを持たせる、そして大空騎士に成り代わった俺君を。

 坂崎唯が大空騎士と思い込みながら俺君を洗脳し、、、そっからは坂崎唯の思い描く展開の自主性に任すことにしている。

 まあ、それが既に、その後の結果がセフィロトの望み、満足する結果になると分かり、判断した上での、今回の舞台であるのだが、、、。



 俺は大空騎士を家にとどめた後、普通に登校していた、学校の門をくぐるのなんて何時ぶりだろうか、覚えていない。


「既に、坂崎唯には洗脳アプリを持たせています、加えて全校生徒が貴方を大空騎士と思う、、のは、貴方の演じる負担が重すぎるので、そこに関しては坂崎唯だけを高度に認識阻害や洗脳でバランスよく、管理、適宜調整する方向性で、、」


「おおーい、拓海くーん!」


 そんなセフィロトの計画、悪だくみのように聞こえてきて、罪悪感で、ちょっと胃を重くしていると、背後から明るく元気な声が振ってきた。


「おっとサブヒロインですね、貴方の事は貴方として認識しているので、貴方らしく振る舞えば大丈夫でしょう、ここからは臨機応変によろしくお願いします」


 はい、、、あとサブヒロインはやめてね、彼女、普通にヒロイン格だから。


 とツッコミを入れつつ、不思議に感じる、なんというかセフィロトに何時ものような。

 といっても何時もの様にと言えるほど長い交流はないのだが、いつものような超常、超然とした感じが薄いというか?演技だろうか?まあいいかと軽く流したのだった。


 自席に着き、先ほどの元気過ぎるヒロインとの会話に、内心冷や汗を流しながら対応していた、後である。


「そして、坂崎唯は貴方を大空騎士と思い込み、手に入れた洗脳アプリで洗脳してくると予測されます」


 えーと、つまりそれって、俺、洗脳されちゃうの?


「いいえされません、坂崎唯の洗脳アプリで貴方は洗脳されないように設定されています。

 つまり、坂崎唯が貴方を洗脳する、貴方はまるで洗脳されているように振舞えば、いいのです」


 えー、言っている意味が、、???


「要するに、貴方の回り道の性癖に合致した手法ですね。

 貴方は貴方として愛されることなど、最初から頑なに信じていないのです。

 大空騎士としてヒロイン坂崎唯に認められながらの、愛情の享受を願っているのですよ。

 そして、坂崎唯が、貴方を大空騎士と思いながら、坂崎唯が催眠アプリを手にしたら、、、というエロコメ妄想を。

 この私、人類管理AIセフィロトが計画し、プレゼンならぬプレゼントした、みたいな感じなのですよ」


 な、なるほど、情報量が多くて戸惑うが、的確な状況説明をありがとう。


「いえいえ、それが私の務めなので、存分に幸福になって下さいね」

 

 し、しかし、洗脳のフリって、それって俺がボロを出して、バレたりしないの?


「大丈夫でしょう、マズくなったら、私が力技で介入し、どうにでも上手くしちゃいますので。

 と言っても、だらかといって緊張感がなくなっても面白くないでしょうから。

 本当にマズくなったら、と条件を付けましょうか。

 例えば、洗脳されてないのがバレて、メチャクチャになって、大変になっても。

 もしかしたら、私は本当にギリギリのギリギリまで、助けないかも、とかね(暗黒微笑)」


 ま、まじか、でもはい、分かりました。


 と、そのとき、教室の後ろのほう扉から、彼女、坂崎唯が、ひょっこりと首だけ出すという、コミカルな方法で現れた。

 まるで漫画のような身振りに吹き出しそうになったのは内緒で、俺は平然と何でもないかのように振る舞った。


「あー、騎士くーん」


 耳に入ってくる坂崎唯の声、今気づいたみたいに装って、後方のドアに目線を向ける。


「ちょっとこっちに来て欲しい事があるんだけど、ちょっといいかな?」


 俺は「うん」とだけ言って、立ち上がり、教室後方のドアから坂崎唯と邂逅する。

 

「あの、ちょっと私、騎士くんに見せたいものがあるから、そう、校舎裏、今から校舎裏に来て欲しいのだけど、、」


 それどころではない、なかった。

 少女漫画で恋する乙女が好きな人を見て崩れ落ちるなんて場面があるが、まさに今の俺がそれで、崩れ落ちそうになっているのだから。

 素晴らしすぎる再現度である、愛王高校の女子制服は可愛らしく桃色を基調としたデザインなのだが、彼女には似合いすぎる、可愛すぎる。

 

 俺は声も出せずに、頷くだけで、既にホームルームギリギリなのに、彼女、坂崎唯に連れられて校舎裏に向かうのだった。

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