幻聴箱庭-虚空帝国と基地Xと銀充血盟
この世はゲームだ。
運と偶然によって、どれだけ経験値等々を今まで手に入れられたか、将来的に手に入れられるかで全てが決まる。
努力や実力の介在する余地は一切ない、そう言ってしまえる、そんな見方も出来るのだ。
観測者として、ただ自己の人生を、一本道の物語として観測することしか出来ない、そういうアクションプレイ要素のないゲーム、なのか?
まあ、実際は両側面的にで、無限に不完全な知的生命体”人間”は、このゲームを”そのように”観測できるのだろう。
つまり、運の要素が一切ない閉じられたゲームとして、または、努力や実力のみで全てが決まる開かれたゲームとか、として、そういう話だ。
「おぉーい、また無駄な哲学してぇ!、勉強しろやぁ!」
目の前至近、考え事をして今まで気づかなかったが、黒髪の麗人が居る。
「するよ、今からしようと思っていたんだ」
この人、リリーである。
俺の、多分、恋人っぽいポジションに位置する人。
「まったく、この人間のゴミ!、至高の駄目人間!、は、本当にどうしようもないな! 死ねばぁ!!???」
思いつきで、適当ながら声量だけは盛大に、罵る。
コイツは、私にこうやって罵倒されると、どうやら確率的にモチベーションの総量がプラスに傾く事が多いので、してあげてる。
うん、今回も賭けは私の勝ちみたいだ、今も奥歯を悔しそうに噛み締めながらも、涙目で決意を新たにしているっぽいぞ。
7月某日、夏季休業が始まり、気合を入れてコイツに構ってやることが出来るようになった、めでたい限りである。
今日も今日とで、コイツの家に出向いて上げた。
口ではギャーギャー何事か言っていたが。
まあコイツ自身、内心私のことが大好き、それも崇拝のレベルで、唯一女神の如しだろうから別に気にする必要は一切ない。
今も、踏んづけてあげている。
だって、情けないから。
もう高学年なのに、この程度、と私から見ての判断だが、問題も解けないでいるのだ、当然の激励的処置だろう。
「おい、リリー、これ、やり過ぎだろうがぁ、、、」
哀れに、顔を歪めて、わたしの行為に文句垂れる奴。
「そのくらいが丁度いいの、真に迫る、真髄を味わうには、こういう事も必要、理解して!」
足蹴にしている下方、彼の顔目掛けて、大音量で野次を飛ばすが如し、思いっきり思いの丈を言ってあげる。
そうすると、またも涙がじわりと溢れる。
どうやら、私の血気迫る、ヤクザレベルすら幾らか通り過ぎた、そんな刺激的過ぎる言葉に、感動とその他の感情、恐らく五分五分程度で感涙しているのだろうね。
昼の間ずっと勉強させた。
だって、このダボハゼは、私の管理監視下じゃないと、最大効率で勉強できない無能なのだ。
まったく面倒を掛けさせる、好きじゃなければ、リアルでこんな堕落した存在、とっくの昔に見捨てて縁を切っていることだろうに。
「ほら、遊びに行くよ、準備して」
五時、外はまだ多少明るい。
ココまで頑張ったご褒美、当然わたしのだ、その自分に対する報酬として、これからは精一杯遊ぶのだ。
「うえぇ~、もう疲れたよぉ~、、、、」
まあ無理もないかな、それは。
生体ストレス耐性の、恐らくは暫定のコイツにとっては限界ギリギリ、その間際で脳に負荷を掛け続けるようなやり方だったのだ。
だからといって、私はこの指導方式が最善と思っているので、これから先も変える気はけっとうない。
最短最速で、コイツが成長する為ならば、少しでも、僅かでも幸せになる、なれる為ならば、一切の手段は選ばないのだ。
うだうだ面倒だったので、耳元で優しく甘い音色で、砂糖菓子のような愛情を呟き、慈悲深いように見える微笑を向けてやる。
めんど臭そうにしているのが若干不服というより瑕だが、立ち上がり出掛ける準備を始めたので良しとしよう。
外に出る。
人が多い。
典型的学園都市であるココは、人口密度がこの時間帯でも途轍もなく多い、具体的には町中が常にお祭り状態の人だかり模様なのだ。
更に言えば、旧世界の21世紀初頭の日本のように、世代別人口比が逆ピラミッド化もしてないので、若者がとても多い、暇そうに歩いている高年の方はまばらか、所により半々だ。
更に更に、皆が皆一様に、快活に生気に溢れる見た目で路地を闊歩している。
なぜかと問われれば、この一帯の学園のレベルが高いのと、他の文化圏よりも、最先進国として”人間の優越現象”が起きている、とか、強いて応えられるであろう
西側でも、特に自由の気風とリベラルな文化を高度に育ませた連邦帝国。
西側全体でも、学校の偏差値は他よりも実際上の数値で10程度、東側なら20程度、上回っているのだろう、それは人間の質にも直結する数値なのだ。
また、容姿的にも同様の事が言えそうである。
旧世界の人類よりも、遺伝的選別が進み、更に無限ループ螺旋構造DNAの自立進化により。
この時代の人類は、恐らく顔面偏差値30程度は底上げされているのだ、パッと見で、不細工を探すほうが難しいくらいのレベルだ。
隣を歩くコイツ、さっきからチラチラ、私の横顔を観察しているようだが、まあ無理からぬこと。
私の作画は、当方もない程よいからな、目の保養にでも利用しているのだろう、まあ、そのくらい寛容に許すがな。
だがしかし、コイツはコイツで、、、まあ多くは語らぬ事にしよう、人は見た目だけが全てで無い、という言葉だけ言っておこう。
だからと言って、コイツに中身があるかと問われると、それはそれでまた、難しいところなのだが。
私的に、人間の価値とは、下位の人間80%では、だいたい見た目の価値が8~9割、中身が1割程度であると見る。
上位の人間20%ならば、恐らく見た目の価値など相対的にほとんどゼロか、1割2割、中身の価値に、その人間の価値が集中している傾向があると見る。
あ、人は見た目が9割とか、そういう話があるが、大丈夫、コイツはその価値が無くても、私に奉仕できる、そんな偉大な価値があるからね。
とか、黙って黙々歩きながら、そんな徒然なる哲学。
あるいは高次脳機能作用、はたまた脳内物理物質事象・現象、展開行使、組み合わせ・複雑性最適化作業。
脳内ネットワーク維持、拡大増大、応用発展形化、等々等々、を常人よりも遙かに高速な思考スピードで行い続けていた。
「おい、リリー? 俺の話し、聞いてる?」
「聞いてないけど? なにか?」
きょとんと、つぶらな瞳で、初心っぽい様を演出し、ジト目で見てあげる。
すると、ガックリと、うな垂れる様にする奴。
「うそうそ、脳内で何十窓もしている中で、しっかりと聞いていたよ?」
「それは、”しっかり”と、聞いていたうちに入るのか?」
「ええ? そんなに、私の思考容量を食うような話してた?」
「もういいよ、けっ、だ」
石ころ蹴って、いじけた青少年のようにする彼。
内心悶えた、まあ、彼に悶えるのはいつもの事だが、なんだか今回のそれは特に格別だな。
どうしてこうも可愛いのか、愛らしいのか?
愛する事を可能にする、と書く意味そのままで、可愛いって言葉を体現しているような存在である。
彼を観察していると、いつもいつも私は観測者としての、絶対の理性等々に基づく客観を一時忘却し、まるで主観を持てているような錯覚を覚えれるのだ。
それが甘美で、なんだか胸を熱くするので、いつも彼と四六時中一緒に居たくなるのだけれど。
後ろから抱きしめてあげようか、イチバチかで迷ったが、思い止まれた、彼の魅力に対して、私の理性が競り勝ったのだ。
「なに馬鹿なことしてるの? 可愛くないわよ?」
「うるさい、ストレス発散してるの、放って置いてくれ」
「やだぁ、わたしを前にして、ストレス発散とか、舐めた事してくれてると、締めるわよ?」
両拳を剣呑な風にすると、途端怯えたようにして彼は態度を改める。
うん、日々の調教で、完全に、私の尻に敷くことが容易に、それこそこの程度の簡単な動作だけで、できるようになっている。
私はこの確かな事実で、日々の調教の成果を実感のもと噛み締めれて嬉しくなった。
戯れに尻でも蹴っ飛ばしてあげた、数メートル飛んだ。
まあ、気紛れだ、ストレスは溜まってないがやった、後悔もなにもない。
ただ、このように快感っぽい何かが伴う理不尽、彼の劣等感や羞恥心を煽り、コンプレックスを刺激し増大させるのは、彼の成長に役立つと思ったから。
まあ、何事もそこに愛が篭っていれば大丈夫。
人間とは、他人から与えられる愛情を糧に、無限に成長できる存在なのだから。
そのように一人独善的に悦に入っていると。
尻を突き出して、四つんばいで、なんだか見ているこっちが恥ずかしく興奮するような体勢のまま、首だけ此方に半分向け、後ろ目で反抗的な瞳を向ける彼。
はぁーまったく、どうしてくれよう彼。
衆目の並々ならぬ状況下で、リアル生尻ペンペンでもして、トラウマでも植えつけると、多少は改善されるだろうか?
そんな、彼にとって恐怖的事態を面白可笑しく想像していたからか、彼はまたも露骨に怯えて、媚びたような、悪戯を反省する子供のような純真っぽい顔をする。
「ご、ごめんなさいぃ!!! おれ、なにしたか分からないけど、、、」
あーあ、最後の付け加えがなければ、ギリギリ妥協点だったのに。
私はしかたなく、本当にしかたなくだ。
まったく、なんで私が、私自身で、最高級の美女学生が、その奴隷っぽい少年を調教する場、それも特段に羞恥的なやり方で、ってのを演出しなくてはならないのか、考えあぐねる今日この頃。
まあしょうがないか、彼の為だ、彼の為を思ってばこそ、私は多少なりとも非情に、そして冷酷に成らなければなるまい。
たとえ、彼が泣き叫び、羞恥と劣等感で変な感じになろうとも、手を一切緩めないと決心を固める。
彼の首根っこ捕まえ、自然公園の草むらまで連行する、人気は無し。
まあ、あそこでソレをやると、公衆なんたらで、犯罪になってしまうのでね、流石に自重したよさ。
「お! おい! リリー! こんな所に連れて来て、、、どうするんだよぉ? なにするんだよぉ?」
一切期待してない、絶望のみに染まった瞳。
なんだかムカつくなぁ~、そんなに日々色気がない感じだったろうか? それとも恐怖が大きすぎるのだろうか? わたしに対しての。
無言で近づき、彼の身体全体をがっちりホールド、先程思いついた肉体的、精神的調教を敢行。
百回くらい? 一回一回、私が盛大に煽るようにカウントした方が、彼が嫌がるだろうから、それに決定。
彼の履いているジーパン、それを直接皮膚を引っ叩けるようにずらす、途端、暴れようとするのを取り押さえる。
暴力で大人しくさせる意味も込めて、最初の一発、私にとって、快楽と愉悦でしかない悲鳴、あぁ、心地よい。
そのまま連続で叩き続ける。
五十回くらいを数え始めたところで、彼が瞳から大粒の涙を零しつつ、許しを乞うように、あられもない言葉にすらならない嗚咽と共に静止を呼びかける、必死の必死で。
まあ、それはそうだろうね。
これ、相当痛い感じにやっている。
人間の皮膚という感覚器官、それを絶妙に刺激、痛覚が最大限増大するようにやっている、地獄の鍛錬だと思って頑張って。
無言で百回、ただただ厳しさと、それに内包される愛、そんなのが確かに伝わっているのを確認しながら行われる非道。
だって、彼は私の命令に絶対服従しないと駄目なのだ、そうじゃないとやっていけない人間なのだ、これは必要な処置なのだ。
そのままペンペンペンペン、飽きもせず叩いた結果、結構真っ赤になったお尻を見て、成果確認。
彼の表情も、オマケに見ておく。
苦しそうに、荒い呼吸をしつつ、涎を垂れるがままにして、うつろな瞳をしていた、、、うん、悪くないよ、すごく。
身体が悶えるように、変な風に振動してしまった、わたしのだ。
まあしょうがない、彼を痛めつけ、その血を啜るような事に、自己満足的な快楽が一切無いと言えば嘘になる、その明確な状況証拠になるだろうね、今のは。
だってだ、こうやる事で、また一歩、私の夢や理想、希望が叶う確立が上がった、そんな確かな実感があるのだもの。
彼に寄せる、終わらない愛の形を実らせる為のね、だ。
自分から、最大限全力で尽力し、成果を積み重ね、多段階的目的・目標達成のプロセス、その過程を消化するのに欲望が満たされたような、悦を感じる、人間ならばしかたない心の在り様なのだ。
えぐえぐ泣いて、見っとも無く地べたを這いつくばって、私から一歩でも逃げようとしている。
ああ、こりゃ駄目だ、今日のお出かけは中止である。
その後、彼を手刀で気絶させ、家まで持ち運んだ。
意識があると、色々と人目もあるから厄介でのこと。
彼をベッドに横たえ、その最大限、この大宇宙で最も慕い敬愛する、そんな私にとっての唯一無二の愛の対象の寝顔を見つめる。
彼が手中にある喜びを噛み締め、そして神に祈るように手を合わせて、拝むように自然としてしまう。
あぁ、どうか、この幸せが永遠と続きますように、、、と、そんな風に居るかどうかも分からない、この世の絶対者に祈って願ってしまうのだ。
だって、この宇宙には無限の謎がある。
だからだ、最小単位の以上の可能性で、そんな絶対者的、神的、四次元を越えた五次元存在。
そいつに縋りたくなったので、そんな風に、一途に恋慕する乙女の気持ちを電波に乗せて送信する。
それが、私にとって死と、同義程度の、”救い”等々の一つなのでもあるので。
「むにゃむにゃ、あれ? ここどこ? だ」
「あら、お早いお目覚めで」
上から覗き込むように見つめる、その後悲鳴、人間が出せるかどうか疑念を抱かざるを得ない、獣のような咆哮だった、そんなに驚かなくてもいいのに。
「大丈夫よ、もう、”そういうモード”じゃないから、安心して」
聖女のように、彼を心底から限界まで安心させる為だけに編み出した、そんな表情を無理矢理気味に形成すると、彼は見惚れるように呆けて沈静した。
「どう? 落ち着いた?」
「う、うん、、、ありがとう、、、」
精一杯顔を真っ赤にして、俯き加減でいる、右手が力強くシーツを掴んでいるところが意地らしくて、可愛いと思った。
「今日はもう、休みましょう、ねていいよ」
「そう? ごめんね、外で遊ぶのを駄目にして」
「いいのよ、、、、もう遊んだようなものだし」
言うかどうか一瞬迷ったが、彼の罪悪感を軽減する為に、口が滑るように発言をまろび出させた。
彼は、得も言えぬ、といった表情。
遊ばれた、とか、そういう心境なのだろうか、うん、ちょっと察して余りある、逆の立場なら、私はどうなっていたことか。
そう考えて、彼の情けなさ過ぎて死にたくなる、そんな現在の心境を知覚する。
私の視点から見てみれば、とても哀愁漂う甘美な、紛れも無いリアルの、今目の前にある彼の感情が愛おしい。
目尻に涙を為ながらも、男の子チックな意地やプライドで、決して大好きな私にばれたくない様に懸命に足掻く姿、可愛すぎて憤死するかと思った、いやガチでマジで。
ふっふ、こんな感じで盛大に煽れば、明日から更に必死に懸命に全力で、生きる事に真剣に尽力を出すはずである。
その姿のなんと美しいだろう事か。
わたしは、彼のコレから先、ずっとずっと将来的に伸び続けるだろう、そして光り輝くだろう個性が、どれだけ引き立つか、磨き上げられるか、それこそに最大級で無上の知的好奇心を有する存在なのだ。
「添い寝、しよっかぁ?」
明るい声色で言ってあげる、彼から見て、魅力的に映るだろう美少女フェイスを出来るだけ極めて、最大限演出する。
「っ!!!!!!」
声すら出ずに、出せずに固まる彼、硬直した身体は最大限力み、石のように一ミリも微動しなくなってしまった。
よいしょっとっと、彼の寝るベッドに入り込み、掛け布団に身体を潜り込ませてから、顔を横に向ければ、潤む瞳で、ソレを揺ら揺ら最大限大きく動揺させている彼の顔。
緊張と興奮、動揺で精神が可笑しくなっているのが、傍目からも、明確に一目で分かるかのような姿だった。
「うっふっふぅ~、一緒に寝られて嬉しい?」
ニッコリ、微笑を形作り、追い詰めるように、顔と顔の距離を縮める。
目算を誤り、チェックメイトを通り過ぎ、彼の心を破綻させたようだ、既に白目を剥いて気絶してしまった。
あーあ、ガッカリだ、どれだけ弱いんだ、こころが。
いや、そうでもないのかな、これでも彼にしては、頑張った方と、そのように評価してあげるのが愛情なのだろうか?
意識のない彼の頭を撫でてやり、「また明日、いろいろ、頑張ろうね」、と耳元で自己満足で囁き、私も深く浅い眠りについた。
私の本当に欲しい夢、それと同義の、究極的な理想や希望等々。
きっとこれは、そしてそれらは。
情報や、イデアの世界にしか、存在しない事象・現象・現実であるのだろう。 決して100%手に入らないのだろうか???。
多分、確信にも似た推測だけども。
宇宙が開かれた形か、閉じられた形か、そんな人間にとっては娯楽にしかなりえない話だろう。
そういう類の、実際の如何によって現実が直接的には影響されない、しかし間接的には多大な影響を与えるだろう、想像的で創造的な事象であり、紛れもない確固とした現実、というと語弊があるかもしれない、が、である、のだろうね、きっと絶対に。
だって、そうじゃなきゃ、ここまで必死になれるわけがない、少なくとも人間にとっては、私にとっては、そうなのだろう。




