幻聴蚊帳-イカレ野郎とイカレ妹カヤと朝から遊んでいると
「果てしない混沌領域の力を思い知りなさい」
「ふっ、下らない上につまらないデスネ! 我が秩序の力にひれ伏せ!」
両者が世界から、己の陣営の全てというすべてから、引き出せるだけ目一杯の力を結集する。
「ナイトメア・カオス!」「ユニバース・ビックバン!!」
ズばあああああああああ!!!! ごっごごごごごお!(ホワイトアウト)。
大人気アニメ「絶対少女世界の方向性」の最終エピソード第七章はやはり神作画だな。
って思いながら、食後のコーヒーをすすっていると。
「つまらない、三流ゴミカスアニメですね」
「おいおい、お前」
こんな辛辣な事を言うのは、例外なく我が妹のカヤだ、悪い子なのだ。
「おいおいカヤ、そういう口の汚いの、お兄さんは嫌いだな」
「朝っぱらから、女児アニメ三昧で、しかも妹に目撃された、ださださ兄貴の台詞とは思えないね」
俺が真っ赤になるのと、カヤがニヤニヤして、ちろっと舌を出すのは同時だった。
俺はその隙を逃さず、ちろっと出た舌を、人差し指と親指で摘み上げる。
「りゃっりゃっりゃりゃ!!!!」
「はははハっ!、可愛えェっ!!!!おら!おら!」
「りゃっ!りゃっ!りゃ!りゃーーー~~~!!!!」
満足して離すと、伸びてしまった舌を突き出す涙目な妹が出来上がる。
俺はそのとき、生まれてきた意味を知った、こんなに可愛い過ぎる妹に会うための価値ある人生だったと(笑)、合掌。
「いい格好だな...でぅふっふ」ちなみに俺の笑い声はキモいゾ。
「うえっ!うえっ!」えずいて涙目の妹は可愛いゾ。
満足に耽溺した辺りで、やり過ぎたかな?と思っても後の祭り、涙妹の哀れな姿をコーヒーと共に鑑賞して、俺は家を出た。
陽光が照りつける曇天、差し込む雨に雪に雷に、晴れやか快晴な月食・日食、だが全体的には青々とした、矛盾した領域の空。
俺は天気模様にシンクロするように、複雑だが心地良い気分で歩いていた。
すると「こらぁあああああああああああああ!」っと先ほどの哀れな少女が、案の定というべきか、我が家の方角から疾走してくる音がする。
「なんだねカヤ、俺はいま、この世での全盛期、無上の幸せの余韻に浸っているのだぞ」
太陽に向かって背を向けたまま、妹に男のなんたるかを語る。
カヤは変ににこやかなスマイルで「へへへえええ、それはいいですね、だったら私にも幸せのお裾分けよろしくお願いしますね」と
ジャキっジャキっ、何かを構える不穏な音に振り返ると、彼女は両手に大口径マシンガンを肩で抱えて、きっちり標準を俺に向けていた。
バババババババアッバババババア!!!!×2
フルオートでぶっ放された故の、この危ないカナキリ音ッ、骨身に染みるねッ!。
俺は先ほどまでいた場所から消えている、それ以外に弾丸をよける法はない。
だが、すぐに弾道が横にそれて俺を蜂の巣にせんと殺到する。
「死ねぇ!!!!!!!!」
「俺に、死ねだと...?くっくっく、殺せるものなら...殺してくれよ?」
不穏当な台詞を伴って、数百の弾丸、鋼鉄の嵐が俺に浴びせられた。
だがな、、無理だろ? だって遥かに”甘い話”だ、、俺にとって死は安息だからだ。
「なぁっ!!!」
妹が絶句の声を出す、それはそうだろう、お前にコレを見せたのは確か、初見だ。
「絶対防壁、戦域のアイギス起動、まあ、こんなモンよッ」
観客が居れば拍手喝采、極采透明に輝き、弾丸が接触した瞬間だけ、輝かしい虹色の電光とスパークを破裂させた、盾の威光に俺は乗る。
「はっははっは!!!! 俺は最強で無敵で観測者レベル級の、この世の覇者だぜ! かかってコイヤぁああ!!!」
お尻ペンペンした後、あっかんべぇーして、変な顔で妹を散々に挑発することも忘れない。
「それじゃあばよ」そして見っともないくらい全力で逃げる、なぜなら、この盾は一日一回の技だからね。
遥か彼方から、マシンガンの精密射撃が行われる。
一瞬でレンガの壁に滑り込み、回避。
だが此処にいてはジリ貧、向かい側の路地に逃げ込まないといけない。
今は、先ほどと違い、俺は先の長いスナイパーライフルを抱えていた。
でも、それが枷となり、この距離では向かいの路地に飛び込む前に、射撃を全身に浴びるのは必定。
ならばと、俺はスナイパーライフルを放り投げる、”向こうの路地”に。
それから全速力で隠れていた路地から飛び出すのだ、もちろん斉射が襲う。
だがライフルを手放して身軽になった、この身を捉えるには僅かに遅い。
しかし、さらに俺の方が僅かに遅いのは知っている、想定の範囲内だ。
だから、ここから丁度、飛び込むべき路地の数メートル手前、精確には5メートル手前に、ライフルが落ちてくるのだ。
俺は高く跳躍して、高飛びの要領でギリギリまで高く、おまけに速さを突き詰めて、天辺で胸に抱えるようにキャッチ。
だがそうするとだ、俺の姿勢は高跳び後よろしく、重力に引かれて天地逆さまになるわけだ。
ライフルを抱えて落下中、逆さまの姿勢で、姿勢制御のままならない空中でライフルをキャッチするだけ、そしてまんまとマシンガンの射撃を受ける?
馬鹿かっ!んなわけねーだろ、俺はカッコいいんだからな!
「チェスとっ、だぁあああ!!」
ギュン!ギュン!! 準光速のビーム音×2、逆の視界で逆の姿勢で、逆の構えで。
まるで天地の逆巻き如き、我の、己の正常だとでも世界に反逆するように。
俺のスナイピングは遠方で顔を覗かせるカヤ、妹の手元の銃だけを精確に射抜く事に完全に成功する。
電磁投射されたビームライフル弾は音速を遥かに越えて、妹はその反動で身体すらも軽く揺るがせ後方に押し倒したようだ。
「ふっはっは、俺ってば超絶だな、ぐふでぅふっふ」
しのび笑いながら、路地を闊歩し走っていると。
「なに? 妹と遊んでるの? だったらあたしも混ぜなさいよ」
路地の上空で、青髪が翻り、こちらに突撃してきた。
それから何数十秒後。
「やめてやめてやめてゆるしてゆるしてゆるしてぇええええええええええええええ!!!!」
「兄さん、これはチャシャ猫の毛皮で作られた鞭です、叩けば皮膚が裂け血が溢れ痛いんですよ」
ベタン!!! 俺は気を、、、失えずに絶叫した。
「アぎゃ嗚呼ああああああああああああああああああ!!!!」
「あはっはっはっは!!!!!もっと泣いて鳴いて啼いてくださいぃ!!兄さん!」
ベタン!ベタン!ベタン!。
「興味深いわ、その力の根源は、ワタクシにとって未知に分類されています」
またも、唐突な新キャラ登場のような感。
「ああレイアさん、いま兄さんを、ねえ......してる最中なんですよ」
「ですか。わたしは貴方にも興味があります、鑑賞させていただきますね」
ちょこんと、壁際にしゃがんで、こちらをジッと、見るだけ、弛緩するだけレイア。
「それじゃ続きっと」
べたんべたんべたん。
はぁ、もう涙目も出ないね、勝手にしてって感じ、、、、やっぱやめてよぉおおおおおおおおおおおおお!
「いよー、いーよ、、、よっし、それじゃカット!」
今までずっと、三角脚立に射影機を載せて、俺を記録していた青髪が顔上げる。
そもそも、この裏ボス的立ち位置の、青銅の種族の女王吸血鬼が出張らなければ、
いつも通りに例によって、俺がカヤを馬鹿にして屈服して支配して、可愛がって、
最後には仲直り、こんな拷問パートに気軽に移行するみたいな展開はなかった。
さて馬鹿みたいにアヘ顔さらすオレ、甘甘屈服ピースでエンドッ!フラグ立たったな。
「どうもラスボスです」
そろそろ飽きたかボス、それで拷問継続中の妹に何も言わないようだが?。
「ラスボスにレベル1で挑んだ勇者~、なんたら、って何時もは誰かに言ってたみたいだねぇ~君?。
あらあら~、調子乗っちゃって~、ねえ?いまどんな気持ち?」
べたんべたんべたん。
「それが、んぎいいぃいいぃいい!今は俺がひぎぃいいいっと馬鹿な変態みたいな始末になってるんですよぉ!奥さん!」
言ってなかったが、まだまだ断然、カヤはぶっ壊れたように「あっはっはあっはっは」とリピートして鞭で俺を引っぱたくのに余念がない。
てかいつ終わるんですかね? これ? 気が遠くなって、既に霞の彼方の真理の世界を散歩している。
「ねえねえ君、そこで何してるの?」
狂気に染まったカヤの瞳の中から、全身真っ黒な姿の少女、いや美女がぬっと顔を出してきたのだった。
カヤは鞭を放り出して地べたをのたうち回る。
真っ白な服装の美女は、ヌラヌラとよく分からないウデを周囲に揺らめかせていた。
それこそ糸のようなモノまで含めれば、それは何千とも呼べる群体だった。




