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フロンティア‐機械女王の支配と破滅とアトランティック



 「好きにすればいいでしょう、今の私は貴方のメイドです。

 この可愛いオッパイだって貴方の欲望の限りに蹂躙する素晴らしい権利が強制的に譲渡されているのですから」


 今俺の前には、銀髪赤目の絶世の美少女のようなメイド姿の女の子が胸をはだけさせて釣り目の可愛い涙目で俺を見ています、さて、どうするか?

 もちろん滅茶苦茶にするに決まってる、ガバって感じでベッドに押し倒し事に及ぼうとするわけだ。


「拙いペッティングですね、こんな無作法なやり口で乙女を満足させると思い込めているのなら、ほんと滑稽ですこと」


 俺は強がった口元を見つめながら、虚空を見つめる彼女の瞳が泳ぎ、段々とふにゃふにゃしてきた可憐な口元に我慢できなくなった。

 

「ああ、いいなー、VRエロゲー、機械少女達のペットな人間関係編、これが終了したら、何を買おうかなー」


 喧騒に煩い外街、天気は夏の真昼間のように燦燦と照り付けて雲一つない。

 本来的に薄暗い地中に作られた都市でも、大都市は人工太陽と天文学的に張り巡らされたミラー反射によって普通に地上と変わらない様相だ。


「おーい、悠里やぁー、どこだぁーぁー!」


 外中で叫ぶな、鬱陶しい、、、なんてね。


 買い物を一端中断し、声の方に小走りで向かう。

 人混みに空白地帯ができている、そこに居るんだろうね、恐らく。

 予想と違わず居て、予想通りの光景。

 腕組みして、横に少女を構えた、かなり上背のある女王様然とした美女が、堂々仁王立ちしていた。


「なんでしょうか? 一姫様?」


「遅い、腕立て十回」


 マジか、まあ、律義にやるんだけどな。


「まてまて、本気でやるなっ!」


 とまあ、ここまでは予想済み、なんだがね。


 この、足先まで届きそうな桃色の髪の毛で、見た目や表情からでは、女王様っぽい、それくらいしか分からない。

 ある意味の話だが、性格が読み難い彼女。

 それが、こういう風に、なんとなく性格が悪いようで、悪くない、それはもう確信の域で把握している話なので、扱いも今では慣れたもんだ。

 今みたいに、偶には俺が彼女を翻弄できるくらいにね。


「おい小鳩、最近のコイツ、ちょっと私に対して、なんというか、慣れてきてないか?」


 小鳩と呼ばれた少女、首を傾げる。


「慣れる? まあ、もう一ヶ月だし」


 口数少なめ、肩口ほどの黒髪、いつも眠たげな瞳、でもちょっと鋭くもあり、理知的な印象を与えてくれる少女。

 そう言った後、制服のポケットから飴玉を取り出し、口に放り込む。


「そうだな、一ヶ月だ、そろそろ交代するか?」


「うん? 交代? なんのこと?」


「やれやれ忘れたのか、悠里の世話を交代する、そういう事だ」


 世話されてたんかい、と、突っ込んでやりたいが、我慢。

 日頃から、俺の方が、なにかと世話焼いてると思うんだがね。


「うん、それじゃ、これから一ヶ月は、私が悠里の飼い主」


「飼い主って、俺はペットか何かですか?」


「そうじゃなかったのかぁ? 私はそういう認識だったが?」


「違いますよ、それも明らかに、です」



 俺は何も、この二人に対して”そういう立場”ではないと、少なくとも認識している。


 此処、”魔都・東京”のシステム的に、俺という人間が宛がわれただけの事だ。


 そのシステムを一口に説明するとだ。

 ”人間が所有する知的生体兵器には、必ず一人、人間の部下を設ける事”ってのがある。


 知的生体兵器ってのは、この女王様としか言いようがない見た目の一姫だ。

 そして、その部下が俺、はいそれだけ。

 ほら、俺はペットでも何もないだろ。

 って言えればいいのだが、話はそういう感じに推移しない。


 そもそもが、人間に所有される知的生体兵器自体が、全体数に対してレアである事を、まず言っておく。

 ほとんどの場合は、マザーコンピューターとして、生体兵器が生体兵器を絶対の管理下に置くのが普通だ。

 だから、普通の生体兵器には、人間の部下など居ないし、置く義務も、とりあえず今の所はない。


 なぜに、生体兵器の部長的存在に、人間の部下を置くのか、これは推察の話なんだが。

 たぶん”監視と融和”だろう、と思っている。

 付け加えて”生贄”だろう、捌け口とも言えそうだが。

 人間に支配される生体兵器に、人間を支配させる、それでバランスを少しでも取ろうとするって訳だ、色々のな。 


 生贄はとにもかく。

 監視はする必要が、本当にあるのか? 

 と思ったりもする、なにしろ生体兵器は常に管理監視下に置かれているしね、様々な方法で。

 でも、直接的にあるんだと言われれば、相当疑問だが、納得できない事もない。


 融和も、何となく程度に推察できた。

 生体兵器は人間と関わる機会が、極端に少ない場合も珍しくない。

 それなのに、人間の為に生きるというのは、なんとなく程度で疑問が湧きそうってのは容易に想像できる。

 人との円滑な関わり方も、いろいろ学べるかもしれないしな、メリットは多そうだ。

 まあ、実のところ、生体兵器も人間も、モノによっては大して変わらない場合も多いのだがね。


 その視点で見ると、この一姫には、人間の部下を置く必要性が高く見える。


 ちなみに、小鳩は一姫所有の生体兵器だ。

 他に人造人間とか、ところ変わって人も変われば、普通に言われそうだがね。


 話を戻すが、なぜ一姫に必要そうだと思ったかだ。

 だってコイツ、相当なレベルの切れる天然、あるいは悪く言えば異常者だ。

 でも、それもしかたない、彼女は兵器として開発された存在なのだ。


 具体的に言うと、この都市を司り、そこ住む生体兵器を直接支配する為の機能を持つ、マザークラス級の生体兵器。

 さっき名称を出した、マザーコンピューターの役割をこなすってわけだ。

 だから当然、肉体的にも精神的にも、知的能力的にも、一般の人間など遙かに超えたものを持つ。

 後天的でなく、先天的に所持するに近いソレだ、当然異常が発生しない方が少ないし、なにより可笑しい。

 ただの人間が、時間を掛けて後天的に持てても、偶にレベルで顕著に現れるのだから当然と言える、アスペって奴だな所謂。


 一姫はというと、ある計画の中で生まれた、その成功例のひとつって訳だ。

 かなり変わった所もあるが、先の俺への対応からも察せられるとおり、割とまともっぽい性格をしている。

 まあ、ぶっ飛んでいる所は飛んで切れてるがな、それも相当。

 でも、一応は一切の調整も必要なく、完全自立で、独自に行動できる、割とそういうのは少ないらしいってのは、後々知れた。


 簡単にだが、彼女、一姫の生い立ち、その背景、今までの経歴を調べて詳細も知っているのだ。

 それを知り、あるいは実際に見た俺が判断するに、一姫は最高傑作らしいのだなこれが。

 これほどまで、多くの機能を詰め込み、此処まで安定した個体は、相当に珍しいようだ、奇跡とも、ある情報書類には記されていたっけ。



「悠里、どこを見ている?」


「どこって、目の前ですが?」


「それもそうか、綺麗だろ? 我が町は?」


 目の前の、機械都市然とした夜景、それを指し示して言う。

 確かに、何もかもが壮大だし、無駄にカラフルに煌びやかで、怖いほどに綺麗だ、恐怖や畏敬と紙一重の芸術作品だな。


 今此処、町中心に毅然と屹立する、地上数百階のタワーの最上階。

 俗に魔城、偶には正式に市庁舎とも言われる、その市長室に、俺と一姫は存在している。


「そうですね、いつ見ても、綺麗です」


「私の所は、嫌か?」


 何を言い出すんだ、この人は。


「嫌ではありませんよ」


「それでは、好きか?」


 そう言われると、若干言葉に詰まるが、、、。


「好きですよ、一姫様のお姿は、この目の前の夜景よりも勝る」


 この言葉に嘘はない。

 確かに確実に、一姫の見た目は、こんなただの夜景よりも、眼測で十倍以上は美しいと思うのだ。


「小鳩よりもか?」


 小鳩。

 さきほど、俺の手を引いて、女王の住まいとは逆、一般の庁舎に共に向かっていた少女の名だ。

 今頃、女王の奇行を訝っているだろうか? いや、普通に寝てるだろうな。


「ええ、俺は、小鳩よりも一姫様のお姿の方が好みです」


「ふっふ、やはりお前を、放さずにいて正解だった。

 こんなにも、気分を良くしてくれるモノも早々ない」


 そうだろうか? 

 そんなに大それた事、言ってるつもりは、正味というか全然ないんだが、、、。


 とりあえず、深夜に回ろう頃まで、なんというか愛でられた。

 膝に乗せられ頭まで撫でられて、歪だが純粋な睦言のような事を、耳元で囁かれたら、そういう表現しかできまい。


 この庁舎に宛がわられた俺の自室に向かう。

 一姫は、同じ部屋で寝ようとか、無理矢理に迫るが遠慮してる。 

 いやだってねぇ、なんというか、普通に怖いしさ、いろいろと。



 道中、後方から殺気が一瞬飛んできた。


「おい、鳳凰、どうして殺気を飛ばした?」


「殺したいからです」


 俺の後方に着地する音、それと同時に振り向く。

 そこには、暗殺者っぽい黒い制服、小鳩が秘書っぽいなら、コイツは紛れもない武闘派、女王の護衛にあたる人だ。


「前から思っていたが、、なぜだ?」


「女王の身に、危険が迫るからです」


 苦虫を噛み潰したような感じだ。

 それに危険って、あの怪物を、俺のようなただの人間がどうにかできるわけないだろが。


「考えすぎだ、俺なんかじゃ、一姫様に何もできないだろ、少し考えれば分かる事だと思うが?」


「確かに、その通りです。

 しかし、別方向の危険が、無くなる事はありえません、だから、出来れば、今すぐにでもこの場で消したいのです」


 酷く直線的な殺気を向けてくるなぁー、ちょっと面倒である。


「俺は紳士だよ、そんな事はありえない」


「保証できますか? それも絶対の」


「できるよ」


「はぁ、試みに聞いてあげましょう、どうやってですか?」


「そうだな、ちょっと待って」


「ちょっと貴方、今考えるつもりですか? ふざけているのですか?」


「違います。

 保証を示す、具体的な方法の、その説明の、上手い講釈の仕方を練っているんです」


 訝しげな、詐欺師と分かりきってる相手を見るような眼を向けてくる。


「これでどうですか?」


「なんですか、早く言ってください」


「俺と鳳凰が、一夜を共にするんですよ」


「???、とりあえず、不快ですから、一回殺してもいいですか?」


「駄目。

 勘違いしないでください、意味を履き違いないでください、早とちり」


「、、、貴方、言葉遣いが雑になってますが」


「思い込みでしょう。

 それで、一夜を共にして、俺が手を出さなければ、俺は紳士って事で、証明されませんかね?」


「意味が分かりません、が、やりたい事は分かります」


「ああ、分かってくれましたか」


「ええ、貴方の下劣な思考法が、、今すぐ介錯してあげたいくらいです」


 キリキリと音を立てて、腰に据えた、鋭利な白刃を覗かせる。

 彼女愛用の日本刀である、その煌きが、物騒な気配を周囲に漂わせる。


「思い込みも勘違いも激しいようで、生き難いでしょう」


「その、哀れなモノを見るような眼をやめてください。

 でなければ、いますぐ貴方の胴が二つに分かれますよ」


 本気の眼で、抜刀の構えを見せるので、しかたないので言う事聞く事にする。


「ごめんなさい、信用してもらえなくて、ちょっと弄りたくなりました」


「・・・・・・」


「で、俺と寝てくれるんですか?」


 ヒュン。


「危ないな」


「当然の処置です、次は当てます」


 当てるか、多分当てられたのだろう。

 真の能力者は、抜刀を人間程度では避けられぬ速度ですると聞く。

 弾丸を抜刀で弾くくらい、案外わけないと聞くのだから当然、女王付きの護衛ができない道理も少ないだろう。


「俺が襲ったら、それで殺せばいい話でしょう?」


「貴方、何を考えてるんですか?」


「さっき言ったじゃないですか、鳳凰さんと一夜を共にして、俺が紳士である事を証明するって」


「、、、しかたありません、女王様をお守りする為です、その試し方に、乗ってあげましょう」



 その後、巧みなトーク力で、鳳凰さんをデレさせた。


「くっ! いつの間に、、、どうして、、っ!!」


 彼女も、行き成りの展開に戸惑うほどだ。


「ふっはっは、俺のトーク力を舐めんなよ、これで何百人の攻略対象キャラを落としたと思ってるんだぁ!」


 どやぁー!っと、絶妙な顔芸を披露すると、何か鈍器のようなモノで葬られた、南無三。


「貴方と言う人は、どうしてこうも、どうしようもない伊達男なのですか?」


 沈黙は一瞬。

 かと思ったが、時計を見ると、短針だけが異様に進んでいた、もう夜明け前かよ、、、。


「俺は俺だ」


「うぅ、私にばかり、変な態度とってきて、ムカつくっ」


「しょうがないだろ、鳳凰、お前を見ていると、ついついド突きたくなるのさ」


「どうしてですかぁ!」


「そうやって必死になったり、クールな振りして慌て症だったりして、面白いからだよ、典型的な苛められっ子体質って訳だ、ご愁傷様」


「、、、、はぁー、はぁ~っ!!!」


 過呼吸になるほど喜んでいる。

 被虐体質者は基本面倒だが、麗しい可愛い愛おしい美少女の形をしているなら、それはそれで”有り”だな。

 俺は親指を立てて、ニカっと笑いかけた。


 まあ、そのあと、ぶん殴られて俺昏倒。

 鳳凰さんは熱でも出したらしく、くらくらした後寝込んでしまった。

 いやぁー、メンヘラ気質の人間はいろいろ大変だね。

 って、笑って済ませられればいいが、別にここまでするつもりもなかった、素直に反省、そのうえ看病した。



 朝、外でチュンチュウ鳥たちが煩わしく喚き、涼やかさを増す今日この頃。

 俺は外中をランニングしていた。

 俺の日課だ、朝は走るに限る。


 だいたい十キロほどを一時間で駆け抜けて、少し息を上げた頃に終わり、になる。


「なんで、小鳩が隣に居るんだろうな?」


「知りません、貴方がくっついてくるのでしょう?」


 そうなのだ、俺は小鳩の日課をパクッた。

 朝、ひたすらに長距離を走る少女、その後ろをストーキングしている、いや、今はエスカレートして、隣り合う形であるが。


「なんなんですか? 意図が知りたいです」


「小鳩、君の後姿に、惹かれた」


「いつ、引きましたか?」


 天然なのか、ただスルーされたか、微妙に計りかねるが、根本的にはどっちもどっちだと気づく。


「それにしても、健康的だね」


「ですね、私は健康が大好きですから」


「俺も、健康で元気な小鳩ちゃんが、とても大好き」


「、、、ちょっと貴方、不快ですね」


「え、マジで?」


「マジです、ちょっと、話しましょうか」


 小鳩が足を止めて、落ち着いて話せる、公園前に不時着する。


「それで、不快なんですけれど、どうしてくれるんですか?」


「どうすればいいかな?」


「そうですね、媚びへつらって、私を気持ちよくしてください。

 はい、なんでもしてください」


「そんな無茶なっ」


「無茶でも何でも、たとえ無理でも、やってから悟ってください、はいさっさとやる」


「うえぇっ」


「なんですか? 気持ち悪いですね、そのアニメキャラみたいな反応」


「いや、別に狙ったわけじゃ、、、」


「もういいです、貴方は不合格です、つまらないです」


「つまらないって、そんな無茶振りするのが悪いんじゃないですか?」


「歯向かう気ですか? いい度胸ですね、潰してあげます」


「や、やめろぉ! うげばぁ」


 朝っぱらから、芝の上で、小さな少女に頭押さえつけられて、服従っぽい体勢を晒す俺が居た。


「うっふっふ」


 うげぇ、なんて力だ。

 さすが生体兵器、どうにもならんぞこれ。


「ギブ、ギブアップっ」


「面白いですね、これ。

 まるで、私が悠里に対して有利になって、支配している気分です、いい気味です。

 普段から、変態的に迫る貴方に、こうやってお灸据えるのも、大事な仕事でしょうか?」


「悠里に有利って、駄洒落かよ」


「貴方は変態でしょう? 

 突っ込むより、涎垂らして、見っとも無く喜んだり、したらどうでしょうか? もっと面白い見世物が見たいです」


「己の心情ばかり口走るな、だいたい俺は変態じゃないって」


「いえ、貴方は理想の変態です。

 変態で、いてください、その方が面白いので」


「変態に、なに期待してんだ?、お前は」


「期待してます、変態は面白いって、なんだか思ってしまうんです」


「歪な願望でも、抱えてんのか?」


「分かりません、襲われたいとか、別に思ってないんですけど、、、刺激を、暗に求めているのかも」


「うん、まあ、それはいいから、この体勢を解いてくれ、あまりにも不甲斐なさ過ぎる」


「ですね、泣いたら解きます、見っとも無く涙を流してください」


「これくらいで、泣けるかよ」


「そうですか、それじゃ、面白くないので、離してあげます」


 そのように、このように、肉体的に激しいコミュニケーションを含めて、朝は多少なりとも体力を消費する、疲れる。



「そして、昼から一姫様に従えるって、どんだけ過剰業務ですか?」


「業務してないだろ悠里、ほとんど、遊んでいるようなものだろう?」


「一姫様の遊びに付き合う、それすなわち、仕事です」


「はっは! 仕事の心持で付き合ってくれるとは、真剣になってくれて、ありがとうな」


「ちょっと、行き違いがありますよ、きっとそこには」


 こんな風にかどんな風にか知らんが、日々は過ぎていくのだろう、適当に。

 そう思っていた。


「ところでだ、悠里、大変だ。

 大変な事があって、大変な話がある」


「なにがですか?」


「東京が、廃棄されるらしい」


「はあ?」


「外敵に攻め込まれる。

 よって、この都市は時間稼ぎの為、自滅的な奮戦が期待されているようだよ」


 一姫の真剣すぎる瞳、嘘なんて吐いてないって直ぐ分かった。


「どうするんですか?」


「最後まで戦う、しか、あるまいて」


「逃げればいいでしょう?」


「簡単に言うな。

 私はともかく、他のマザークラス以下は、上の支配に抗えない」


「一姫様が、支配すればいいでしょう?!!」


「駄目だ、繋がりの強い、小鳩や鳳凰くらいしか、上の支配から逃れさせる事はできない」


「、、、だからって、死ぬ気ですか?」


「死ぬ? それは違うな」


「じゃー、、、なんて意味なんですか!」


「当然、生き残るつもりで、いるんだ」


 はぁ。

 廃棄が決定されたのだ、数的戦力が、今から増援を回したところで、どうにもならない、そういう戦況と認知する。

 なのに、戦って生き残るか、笑える話だ。


「俺は、どうすればいいんですか?」


「自由にすればいい、無理に付き合わせるつもりはない」


「・・・・・」


 俺は何も言わず、その場を去った。

 100%、この世に絶対は無いが、ほとんど100パー死ぬと分かっているのに、残る馬鹿は居ない。

 俺は割りと馬鹿だと思っていたが、割と割と賢い面もあったんだなって、そら寒い心境で思った。

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