最終決戦イフ史実‐レイアとローレルの闘争
そう、だったのだ。
あのとき、あの本に触れたときから、
そして、あの本に触発されて、己で本を、情報を創作してから、
一人の少女、彼女の、私の世界は、無上なほどに拡散し、広がり続けている、
今も連綿と、ビックバンのように、既存の世界すらも凌駕する勢いで、不可思議なほどに、、、
「知れば知るほど、本当に、もっと知りたくなるのよね」
想う、私は、世界が知りたい、のだと。
この世界は、無上に広く深く、趣があるので、
知れば知るほど、もっともっと、無上に知りたくなる、そういうモノとして、在るがままに在る、
私は、知識欲の虜、情報に恋しているのだ、と、自覚的に誇らしく想う、
そんな己を含めた、この世界が愛しい、
どうしようもなく、胸が一杯になり続けるくらいに、愛しくてしかたがない、のだ、だからぁ、、、。
「生き残りたいぃい!!!!!!!!!!!!!!」
真っ暗闇の広大な地下空間に反響する、強力な流動強化の強化人間にのみ知覚できる例のアレ的な不可思議で不思議な、あの感覚だった。
この時には、彼女は、いや私は、完全なる自己客観視によって、未来予測による5分23秒後の鍔迫り合いによって、
相手方の獲物を強度限界に追い込み、その破片を全て精密に”目”で見て避けて、致死毒の呪いだけに気を付ける、つまり、完全に勝利を予感し、回想に浸る、沈思のレイアだったのだ。
だが、そのとき、銀髪赤目の私の知る誰よりも美しい乙女、少女ローレルの操る高異次元物理制御ユニット機体が、レイアの、私のアルファズムに迫る、いま、その手元の獲物が追いつく、この戦いで始めての現状!!現象。
「っううううううううううう!!!」
急展開する計算のミス、失敗による失望、強度の高い計算の半自動的な再計算による脳の負荷、超過寸前、手動リミットカット。
補助人工知能が機能停止。
だが問題ない、全力で機体を後退させ続けるだけなら馬鹿でもできる、同時、セイレーンシステムを全方位に展開している、その間隙を縫うように、次元切断の刃を飛ばす、眼前の敵!! 敵!!!!敵!。
この戦いの中で魅せた事が無い超次元軌道、高次元な機動センスだった、全ての刃をバリアシールドで防ぐことなく、すり抜けるように、魔法でも使ってるのかのように避け尽くされる。
もちろん、複雑に推移する、方形カミソリの多面体の衣のようなアレ、掛け値なしに秒速36万キロの光速で移動する隙間、普通ならば絶対不可能。
しかし、完全未来予測を可能とする、現存する最高の機体と覚醒した彼女とレミニセンスの演算補助によって、それは可能となる、、、ようだ、、、認めざるを得ない。
「はああああああああああああ!!!!!」
ならば、こちらも切り札を全てキル。
周囲に副次的に展開していた直近の援護用はステルス迷彩で秘匿されているモノも多数、他はこの広大な地下空間においてはバラバラの瓦礫のように見えたかもしれない。
しかしそれは、この”フロンティア”が放棄されてから、人間達の奥の手の奥の手、統合戦略級の超巨大な分離ユニット式の幾万の機動兵器、
その燃料に火が入り、わたしは命令を下す。
黒の乱流を周囲に撒き散らし、光の流星を描きながら移動する。
「アレは、、、もしかしてアレなのでは、、」
αズム艦橋、その機体内部中央で、彼女、レイアは勘付く。
一瞬後には、機体の外部に取り付けられている幾つかの砲塔が、何かに両断された事を知る。
超光速移動の、実体すら物理イメージで計算できない虚数空間戦闘において、計算結果に狂いが生じるのは純粋に可笑しいのだが。
再計算を開始する、っ、どうやら敵の隠していたよう、新兵器によって、状況が再展開・構築されるようだと。
「今の盤上で、このような事が可能なのは、二人、そして、この局面ならば、彼女の方かぁ、、、」
レイアは一人察し、眼前の敵について思考を始める。
狂気の科学者にして、特級にして観測者、そして上級の魔法使い、最古の人間の強化人間、どれも本質に外れる、ただそれだけの、優秀な、決して天才ではない存在、だった。
だが、私と同じ、誰よりも、運命を味方に付けて、最終的に生き残った、最終的な勝者の一角。
「ならば、最後は、己の真価で勝負を、勝敗をつけるのが、潔いでしょうか?」
呟きながら、溢れ出る高揚、愉悦の衝動を、抑えきれない己自身に、彼女は何ものにも変え難い喜びを認知する。
強化人間なのだ、同じなのだ、普通の人間が80年生きるらしいが、自分達強化された人間は何かしらの遺伝的な欠損、大抵はテロなんとかが短く、
「16年しか生きられないらしいじゃないか、、、」
その時知ったのは、よく分からないが、孤独のようなモノだったのだと思い出せる。
周りの人間も同じように死んで欲しい、そして殺したんだ、そして同じような奴が現れたのだ、自分と同じ位に頭が良いなら大体おなじ位の年齢、、、それはつまり??!
「これが、最後にして末期の、最終決戦、」
最後の戦いである事を、確信するゆえに、もう止めようも無い震えで、血の飢え、狂気の高ぶりで、可笑しくなる、なっているのだろう。
何ものにも勝る、最後の最後の、勝利を決定付ける、闘争、競争、優越の最終証明に至る階梯なのだから。
それに、それだけでなく、それだけではあるが、ある意味で都合良く、この巨大な機体では、彼女、レイアのアノ機体は落とせそうに無い。
このままチクチクされ続けたら、目的地に到着する前に、外部取り付けの装備 戦力を大幅に目減りさせる事になる、それは面白くない。
フロンティアの一大拠点を崩壊させ、内部の100億人からなる人間たちを、現実世界で殺し切るには、この機体の特殊装備以外に変わりはない、特に特装砲は絶対死守。
ならば手段は一つ、限られることになる。
本来ならば、遠隔操作で、レイア自身が操ることになる、ワンオフ機、その一つを使う。
この大型戦艦に内蔵される十三の剣の、第一位、特殊戦機ブラックサラス。
完全体に至った、始めはコピーでしかなかった、矮小だった、成り上がりの己に相応しい、スロット無制限のスキル重複可能機体だ。
「出てきたわね」
巨大な機体から、吐き出される、ずいぶんと小型に見える機体を視認する。
スラスターが先ほどから、最大噴射を繰り返し、うるさいほどの警告音が鳴り響いている。
レミニセンスの、ギリギリのギリギリを切り詰める、絶対に故障しない程度の、オーバーフローの唯一弊害だ。
この二人の邂逅は、遥か昔に一瞬、
たったそれだけだった、しかし、それだけの因縁が、何ものにも二人にとっては勝る運命、絆とも言えた。
西側に亡命したとき、ローレルは、レイアのボロボロに傷つき、今に死にそうな瞳を目撃していた。
それは東側を抜ける時に、所属していたとある研究所での、出来事。
恐るべき子供達計画、その唯一の生き残り、レイアを見逃し、逃がして、研究所の破壊、崩壊を目論んだ。
その混乱に紛れて、研究所のデータを持ち逃げしての、亡命だったのだ。
だから、この瞬間が、まさに、お互いがお互いを、真なる敵と、認めた瞬間だった。
今は、今までは、お互いがお互いを、真なる敵とは、認めていなかった。
大いなる敵達に対して、己たちは、同士討ちを避けて、漁夫の利を得るために、協力し合う、そのような関係。
その関係を断ち切るように、次元切断の刃が鍔ぜった。
紅の刀身は、お互いの核を切り裂くように推移していた
そして、それを防ぐように、ほとんど同様の機動、刃と刃が触れ合った、
その一瞬後には、お互いの機体の加速性能も相俟って、遥か後方に追い抜く、そして反転。
ローレルは、内心、驚愕していた。
レミニセンスは、完全なる未来予測が可能、ゆえに、同性能の機体では絶対に負けない。
レイアも、驚きを隠しきれなかった。
誰よりも秀才であり、誰よりも用意周到に動く己の、ゆえの圧倒的な性能、
運命を手駒にし、盤上の己を勝者の舞台に、ステージの中央に常に誘導する、
この天才性に、およそ、通じない領域が存在したことに。
初めて経験する、それは衝動である。
科学信奉者であるローレルは、完全なる技術力が防がれたことに、精神の臨界を越えて焦燥した。
己の信奉者であるレイアは、完全なる、完全に至ったはずの、運命力が、通じない事に。
巨大な黒の機体の周囲で、
二つの機体が、更なる接触を果たすまで、今度も大して時間を要さなかった。




