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暁世界での幻想夢話‐真なる幸運に寄り添われし者☆☆

「ふみゃふみゃ」


 幻聴伽耶、世界最古の知にして図書館。

 世界に最も望まれた、収束にして絶対、世界。

 世界という在り方において真に最善、ゆえに真に失われた、アカシックレコード。


 その意識体として自我を宿す少女は今、寝ぼけ眼で涎を垂らしている。

 

「この俺を絶対の強度の依存対象として定義し、永遠の命を許容する、真に幸運を宿す存在だと確定した主であり従」


 俺が徒然と独り言をしていると、ぱっちりと突然に覚醒した、俺は驚かない、これが平常運転だからだ。


「おい、レイコ」


「うん? レイコっって?」


「アカシックレコードの意識体、だからレイコ」


「はあ?

 ふわぁー、てかさあ、。。退屈ね」


 目の前の金髪、それだけだと珍しくない。

 だが更に金目というオプションにより、目の前の人物は誰よりも特徴的となる。


 家とかでは、足先まで巻き毛にして垂らしているが。

 外に出るときは結って、頭の上を起点にツインテールという形にしている。


「あぁー退屈だね」


「ちょっと、何か面白い芸やってよ、例えばあいつら殺し尽くすとか」



 目の前に存在するは、神の軍勢。

 神々の連合体から派遣された、という設定を、観測者たちが無理矢理捏造し、この世界に顕現させた存在の群像。


「まあいいけど」


 俺は、時間を巻き戻した。

 そもそも存在の根源が、この世にないなら。

 世界に対して一切の負荷なく、目の前の存在達を消す事ができる、そのような理論に基づく。


「はい、面倒ごとがなくなってよかった、私一人じゃ死ぬところだったよ」


 そんな訳はない。

 彼女の方が、俺の一億倍は強い。

 右腕一本使わず、指ニ本程度で吹き飛ばせるであろう、それくらいの規格外れ。


 この世のシステムの裏、観測者達すら、既にどうにも手出しできない、そのような存在なのだから。


「幸運は無尽蔵なんだろ? だったら周りの人間に振り分けてくれ」


「無理無理、そういう事したら、私は際限ないよ、だから絶対に他人の為に生きないのだよ。

 君以外には、生きない事に決めてるんだ」


 幸運、それも絶対の領域。

 なにか世界のバグか、そもそもの構成要素の一つだったのか、彼女には”そういうもの”がある。


 そして俺は、ただただ死ぬ事だけを望む、そういう存在だ。

 だがしかし、目の前の金髪金目の少女の幸運の所為で死ね無い、こいつにとっては俺が生きる事が幸運っぽい何かだからだ。


「はぁ、とにかく、魔界に行くぞ。

 あそこの、絶対の領域は叩いて、警戒を解かせるわけにはいかない」


「そうだね、あそこは、放っておくと際限なく世界が壊れてしまいそうだし」



 魔界にて。


 どこまでも夜が続くだけの世界、そして永遠の領土を持つ魔界空間領域。


 その絶対中心点。

 黒々とした超巨大建造物。

 地上1200階だて、そして横幅にいたっては、視界に収まらない。


「ここか、どうする? どうやって忍び込む?」


「そんな必要も無いよ。

 ただ、私達が本気を出せば、この領域を攻略できる、それだけを示すだけでいいんだ」


「ほお、なら、特にやる事もなしか、行くぞ」


「ねえねえ、君が仕切らないの。

 どうせ私が居なきゃ、観測者達には手出しできないでしょうが」


「ふむ、1000階付近までは、空洞があるな、テレポートできるぞ」


 既にリデイは消えていた。



「遅いよメリク」


 こいつは、ここに何をしに来たんだ?

 観測者達とゲームしている。

 こいつが同時にテレポートしない所為で、一瞬後に進入を感づかれ。

 俺は1000階までテレポートできず、準警戒態勢時に保護されない500階から三日かけてここまで来たのだ。


 テレポート出来ないと、そして一度警戒されると、本当に要塞だな、ここは。

 どんな物質も比べるべくも無い、この建造物の絶対物質は外側からでは、本当に絶対に破れないから自力で、つまり徒歩で来るほか無かった。


「やぁやぁ、我は観測者エンタなり」


「そして、私はゲームだ、そう呼ばれている、よろしく」


 この二人は、一応は知っている、情報としてだけだ。


 12~14人、存在が確認されている、常軌を真に逸した存在、俗に言う観測者存在。


「おうおう、お前達、なに? やる気あんの?

 ゲームバランスを崩壊させる奴、ここにいんだけど? どうして何もしない?」


「ああ、それはいいのだよぉ、リデイは世界に刃を向けないしの。

 わたしは傍観する側の観測者なのだよ、ぶっはぁっはぁっはぁ」


「我は、ゲームを阻害しなければ、ある意味有用な存在と見る、場合によっては味方になるやもしれぬ」


「ほらね、凄くいい人たちでしょ、もう私達友達だよ」


 そういいながら、超ハイパーに大画面で、昔なつかしのレトロゲーをやっている始末。


「おう、そうかよ、だったらもういいな。

 これより1200階までの、攻略を開始するぞ」


「駄目駄目、まだ別の駒が到着してないの、それまで、この攻略への入り口で待機。

 まあ、あれだよ、そんなカリカリせず、ゲームでもしようよ、これ君の好きなタイトルでしょ?」


 コントローラを渡してくる。

 目の前の画面では、ゴールデンボーンーアイ、と呼ばれる昔のFPSゲーム。

 確かに、これは俺の好きなゲームだが、でもここでやる気になれん、敵地も敵地だろうが。


「だったら別の事をすればいいだろ? そこにいる観測者達から情報収集とか。

 最上階1200階までの、最短攻略ルートや対策とか、やれることは無限にあるだろ?」


「いいやないね、何をしようが、結果は変わらない、運のみぞ知る。

 そしてその運は、最大限私に傾く、私は何をしようが、運命に影響を与える事はできないの、まあ、これは誰にでも言えることだけどね」


「このニヒリストめ、お前は勝手に遊んでろ」


 俺は、その場で反転。

 別の部屋に、普通の人間はいないか、探索でもする事にする。

 ここ、魔界の、暫定トップが集結する1000階付近は、割とビックな存在が居たりするのだ、できる時に関わり情報収集せねば。


 ゲームコントローラーが手放せず、簡単に巻くことが出来た。

 そこで通信、ほお、通信が通じるのか、まあ当然だな。

 通信すら途絶すれば、相当に問題だしな、強度最高の電波なら問題ないってか。


「もしもし」


「たいへんだぁああああああああああああああ助けてくれぇええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」


 耳を話す、イチバチで時間を戻すか迷った。


「ああ、もしもし、とりあえず落ち着け、何があった」


「す、すまない、ただ大変な事態において、相当に混乱してての」


 こいつは、声だけで分かるが、月世界国家の、第二の都市、エルフドゥームの村長的ポジションにいる奴だ。

 そこは確か、大自然と都市の調和、更にルネサンス的風潮が激しく、町全体が年中パレードのような場所だ、偶には観光にでも行くか。


「それで、用件を手短に頼む、何が起こった?」


「それが、超科学世界首都に対する電撃戦、あれが失敗に終わったのだ」


「そんな事は知ってる、それで緊急の事態とはなんだ?」


「圧倒的に形成を跳ね返された、それはご存知のとうりじゃ。

 それで、電撃戦力を駆逐した敵は、返す刀で身近の敵性勢力の都市、ここに攻めてきたわけなんじゃよ」


「はぁ? 大丈夫だろうが、第二の都市。

 お前のところ、どれだけ戦力があると思ってるんだ? 偶には実践の刺激でも与えとけよ、後の為になるぞ」


「それがじゃ、敵はどうも、最高級の歌姫の加護がついた、全てが精鋭級に強化された第一級戦力なのじゃよ。

 ただの数が多いだけの第二戦線の敵集団を、こちらの一級戦力で戦闘を行う、その無意味さは分かるな」


 そりゃな。

 歌姫ね、そんな世界に数えるほどしかいない奴が、それも最高級、なんの肩入れをして協力してるんだか。


「わかったよ、リデイに話す。

 てか、まずはリデイに、そういう事は直通だろうが」


「着信を拒否、いや、おそらくマナーモードにでもしておるみたいなのじゃよ」


「おお、そういうことか、まあいい、できるだけ早く折り返す、またな」


「あい、頼んだぞ、本当に緊急事態ゆえ、ホントに頼んだぞぉ!!!」


 それを最後に強制的に音声が途切れた、無駄に引き伸ばすのもあれと思った、相手の気遣いかね。



「おい、リデイ、月世界の第二都市がやばいって、、、おい、こりゃなんだ?」


「おお、やっときたか、新しいゲームだよ」


 目の前には、リアルな、この世界を上空から映し出したような図。

 しかも、件の第二都市の周辺領域一帯、沢山の資料や図解、それらによって複雑に映し出されている。


「なんだ、もう対策でも立ててくれたのか? お前にしてはやるな。

 てか、これで、どうやって敵をなんとかするつもりだ?」


「こういう事もあろうかと、第二都市の周辺。

 周囲等間隔で存在する36の準都市に、良い防御兵器を置いといたのさ、ほれさ」


 映像が一瞬ぼやける。

 一瞬の後、青白いフィールドと、多少の映像の乱れが普通になった、超上空からの映像。


「これで、都市内部全て、統合エナジーシールド効果と、外側からのジャミング、まあ後はわかるよね?」


 まあな。

 エナジーシールドで物理保護と同級、ジャミングで敵にとっては見えないこちらとの勝負に持ち込まざるを得なくする。


「でも、まだ足りねえんじゃねぇーか?」


「うん、そうだね、だからこそ、空にもこれを仕掛けて置いたんだ」


 空、だいたいの状況を把握。

 いまこの映像を映し出しているのは空、そこから推測するに。


「これを映し出してるのは、なんと超巨大空中都市、精錬の箱舟なんだよ」


「あー? だからどうした、空だって敵も攻撃できるんだぞ?」


「ちっちぃー、違うんだなぁー、この都市はステルスフィールを発生させることができるのだよ」


「はぁ? だったら攻撃はできないどころか、移動すらできねぇーぞ」


 ステルスフィールドは身を隠せるだけだ、だから戦闘に参加するなら使えないはず。


「だからいいんだって、この映像データが入るだけで。

 後はこっからの高度な転移魔法で、ここから援護ができるんだから」


「なんだよ、だいたいな、お前が直接出向けば、ってここから離れるわけにはいかないんだったな」


「どうよ、この最強提案、ひざまずいてくれないかな?」


「ばーろぉーが、それは後でにしろ、それでどうやって援護するんだ?」


「さっき言ったよ、召還魔法だって」


「どの程度だ? 言ってみろ」


「まあそうだね、敵が歌姫加護の第二線級戦力なら。 

 こっから向こうに回せるのは、第一線級の戦力を歌姫加護した精鋭部隊だね」


 まあ、それならいいだろう。


「お、早いね敵は、もう有効範囲、画面の端のほうまで来た」


 確かに、画面の端の端。

 第二都市まで、まだ半日程度はかかる、そんな距離に割りと早い移動速度で迫る影。


「とりあえずは、最強のエースパイロット軍団に、一撃離脱戦法プラス遅滞戦術で、どうにかしてもらおう」


 まあ妥当だろ、それが使える駒ならな。

 今はまだ、第二都市周辺の、エナジーフィールドもジャミングも有効でない範囲だ。


「てか、俺は別に援護に行ってもいいな、お前はここで勝手に何でもしてろ」



 という事で転移。


「きさま、また引っ掻き回しに来たな」


 目の前に金髪の鬼隊長。


「ああ、ヘイゼ、適当に助けに来てやったぞ」


「はぁっ、きさまの助けなどいらぬ。

 私達は基本的にお前達を信用していない、本当に大変な時は助けてくれない事もな。

 だいたいもう、助けなどいらない。

 我が国家の大規模魔法が発動したのだよ、もうお前達などお払い箱なのだよ、シッシッ」


 おいおい、勝手にお前達の手柄にしたのかよ、あれ。


「何をしておるのだぁ? お前達二人は?」


 またももう一人、長い赤髪の少女剣士。


「おお久しぶり、アケノ」


「はい久しぶりです、貴方がいるという事は、もう事態を楽観視しても良いのでしょうか?」


「おおぉ、任せとけぇ!」


「ふんっ、小賢しい、貴様など私は認めない、絶対にな」


 そう言って向こうの方に行ってしまおうとする。


「なんだ? 俺に勝てないのがそんなに悔しいか?」


「くっ!!きさまぁ!ならばいい、ここで勝負してみるかぁ???!」


「おいおい、やめたまえよぉ、二人とも、これから戦いがあるかもしれないんだぞ!」


 ちなみにここ、第二都市の前線砦の一つだ。

 敵にまず、矢面の第一をつとめる場所。


「まあ、いいや、偶にはこの三人で、敵と戦うのも面白いな」


「きさま何をする気だ?」


 嫌な予感がして振り返ったのだろうヘイゼ。


 次の瞬間には、全員を今まさに迫る敵の一味の、進路上のすこし前に転移させていた。



「おし、それじゃ、適当に閉鎖空間に潜って、来る敵を倒し続ける、エンドレス持久戦するか」


「おい、何を勝手に話を進めてる」


「ちょ、これってどういう? あれ? ここって、見覚えが」


 それもそのはず、ここは有名な遺跡だ。

 ノーサンプトン平原地帯の、大空洞遺跡なのだからな、目の前にはメモリアルのようなもの。


 そこで、何か目の前にフライウィンドウが現れた。


 ”あなたの能力が制限されました、能力詳細については下記をご覧ください”


 へえ、観測者も粋な事をしてくれる。


「それはなんなのだぁ? なにかの事象顕現装置の類か?」


「いや違うな、これは観測者からの介入、権限を使って俺を制限したんだろう。

 控え目に言っても、俺の能力はずば抜けている。

 リデイが直接いない所だと、割と多少の事はできるみたいだな」


 これは世界の裏側にいる存在が、”ゲームを成り立たせるために、必要な処置”と判断した場合に発動する、ようなもの。

 この場合は今だ、俺に丁度いいハンデを与える事で、ゲームを絶妙な難易度にする、そのような事。

 俺にとってしてみれば、全力を出す機会が与えられたに等しい、ただの修羅場だからだ、単純に因数分解して言えばな。


「おお、こりゃ、今回は相当ハンデを課せられたな、それだけ容易って事かもしれんが。

 喜べよ、お前ら二人と同程度に能力が落ちたぞ。

 全力を持ってしても、ホント容易ではない状況だぞ、三人で力を合わせてがんばろうな」


「ふざけるな。

 待て、、、そうかぁ!!」


 目の前の金髪が、何かに閃いたのか、俺にレイピアを突き出してくる。

 俺は、とっさ、反射の勢いで、腰の銀の長刀を引き抜いて、それを弾く。


「そうだよ、倒すなら、今しかないよな」


「待て待て二人とも、敵の直通で、なにをやっているんだぁ!」


 そんな言葉聞く耳持たず、ヘイゼは連続攻撃をしかけてくる。

 太刀筋が上がったな、前あったときから、地道な努力を欠かさなかったのだろう、ホント尊敬するね。


 キンキンと、連続で攻撃をいなしながら、遺跡の中に入り込んでいく。

 流石に空けた場所、敵に襲われると、面白くないくらい簡単に駆逐されてしまうんでね。

 こういう閉鎖された遺跡内なら、一度に相手する敵の数も制限でき、更に遠距離からの攻撃もあまり心配要らなくなる。

 だいたい、大多数はたった三人の敵、相当に素通りするだろうがな。


「はぁあああああああぁ!!!!!!!!!」


 力の乗った突き込み、紙一重で横に避ける。 

 そして上段から、叩き切るつもりで振り下ろす、簡単に回避される。


「おいヘイゼ、お前成長したな、お前の個性と同時に、その能力も魅力に値するぞ」


 そんな軽口には一切答えない、ただただ、俺を打倒する事のみに一直線、スピードを上げて突撃してくる。

 目の前に迫る、レイピアの先端を流すように弾き、積極的に相手の体を捕らえるように剣を振る。

 華麗なる身のこなしで、全てを余裕で避けているように見える、が、その実は割りと必死なのだろう。


 すこし距離を置き、ヘイゼが集中するように、息を呑む。


「攻撃魔法、属性付与、追尾、同時展開」


 剣に内包される、顕現装置、エネルギーを供給する収集ドライブとしても機能するって事は知っていた。

 それによって魔法的力学によって、いくつも展開される、聖なる光球、その数30ほど。

 それが彼女を中心にいくつも、周りを守るように周回運動を続けている。

 なるほど、精霊や剣の遠隔操作、更に自立での直接命令に特化した数だな。


「防衛魔法、アイギス、全自動モード」


 剣に命令する、流石にあれは、ちょっと今の状態では捌ききれないので。

 彼女とのコンビネーションが可能にする、あの様々に連携し、複雑に組み合わさった一つの芸術的攻撃に対しては。


 彼女が迫る。

 瞬きする直前まで、いなかった領域に潜り込み、レイピアを突き出しながら、更に光球による攻撃。

 あの光球は、内部に存在する精霊による、遠距離攻撃も可能だ。

 いくつもの射線上から、からみとられるようにレーザー光線のような力線。


 俺に当たる直前で、全て弾かれるわけだけどな。

 企みが失敗に終わり、彼女は近接戦闘を継続、そのまま横薙ぎに一閃しつつ、距離を取る。


「おい、本当に敵が来るぞぉお前達、わかっているのかぁ?」


「ああ、もう時間一杯だ、ここからはエンドレスで戦い続けられるな」


 そう、入り口から大量の敵が、こちらにずっと前から気づいていたのだろう、迫ってきている事も。


「く、しょうがない、お前との戦いは、一端、とりあえずは預けよう、だが背中には常に気をつけるのだな」


 恨みがましい言葉、そこまで思われているとは嬉しいな。


「とりあえず二人とも、自力でがんばって下さい。

 、、、、オン、煉獄の世界から、来たれ神の剣、、、」


 彼女の剣に、何かが降り立ったようだ、降臨術の、剣に降ろすヴァージョンか。

 燃え盛る炎を宿し、赤く光り輝きだす、美しい緋色の剣を完成させた。


「では、わたしからぁ!」


 剣を敵に向かって薙ぎ払い、火炎が大量に降り飛び散り、それも敵にとって大きなダメージとなる。


 敵はただの召還された下級悪魔達、雑兵だが数が多すぎるのがやっかいだな。


 ヘイゼも飛び、敵を一体一体、そして独立機動兵装のように動き回る光球で大量に射抜いていく。


 俺もアイギスを展開しているメリットを活かし、彼女達の中央で攻撃を担保する、中距離からの攻撃は全て俺に降り注ぐ。

 それでも迫ってくる敵を、何体も同時にいなしながら、すれ違いざまに切り伏せ続ける。


 背中に存在感、ヘイゼだ。

 何を思ったか、振り向きざまに切りかかってきた、大上段からのこの攻撃を、刀を盾にして防ぐほかない。


「おい、本当に攻撃する奴があるか」


「しるか、私はお前を倒すことの方が、優先順位が高いのでな」


 そう言い合いしながらも、背後からの敵、それを振り向き叩き落す俺達両者。


「蘇えれ、不死の生物達よ、、、、」


 俺が召還魔法を使う、これはランダムに近い形だが、それなりの生物を呼び出す幻想世界への召集命令。

 蛇がでるか鬼が出るかだ、出て来たのは巨大な白い二対の蛇型の怪物。

 大量の白色の炎を吐き出しながら、俺の周りを巨大な長細い体躯で、守るように囲む。


「おお、これは久しぶりに良い奴がきたな」


 ホワイトスネーク、略してホワイと命名した、俺と親交のある幻想種だ。


 俺はそいつの背中に乗りながら、迫りくる敵を羽虫を落とす感じで蹴散らしていく。


 その間も、周囲ニ方向では、金色の閃光と、赤黒の焔が飛び交っている。


 遺跡の入り口から、誰かが呼びかけてくるような声。


「おおーぃ!みんなぁー!」


 長い黒髪の麗人、ありえないほどの美少女が、魔法を周囲に放ちながら、走って俺に近づいてくる。

 俺に飛びつき、捕まえるように抱きしめてきた。


「久しぶり!!メリク!!ずっと探してたんだよぉ!!」


 明るい声、理知的だが、どこまでも少女っぽい清楚さと華奢さ、儚さも失わない、いつ見ても魅力的過ぎる少女のような美女だ。

 この子は俺を慕っているらしいなぜか、そして好いてもいるらしい、これもなぜか分からないのだが。


「おいおい、クロノ、どうやってココに来たんだ?」


「ああ、それはシコクさんの戦艦で、ここまで乗り込んできたの。

 さあ、外で一時的に周囲の敵を抑えているから、こんな所からはさっさと離脱しよ?」


「それは駄目だな、俺は好き好んで、こういう事をしているんだからな。

 修羅場や戦場を潜りぬける事、命を賭けて、そして生還する事、それのみでしか人間は真に成長も飛躍も出来ないんだからな」


 魔法を周囲に拡散させ、花びらを舞い散らせながら、幻想的な美しい攻撃を周囲360度に展開する、今は少女っぽい顔をしているクロノに言う。


「そんなぁ、、それじゃ、私もここで一緒に戦う!それはいいよねぇ!」


 まあ、別にいいのか、こいつも強くなりたいと、昔語っていたし、本人が望むならそれを止めるほうはない。


「ああいいが、援護はできないぞ、自分でしっかりと全て万事滞りなく行うんだぞ」


「うん!!」


 そして俺の傍で、俺のみを援護するように展開する一人の少女。


 漆黒の焔が舞い、どこまでも美しい魔法体系を披露する、同時に花びらが幾千も飛び散り続ける。

 美しいな、と、美女を見て思う、こいつは格別の綺麗さをいつも誇っているな。


 その時、俺の周りの、遠巻きで見守っていた奴らが、見えない糸で切断された。

 この攻撃は。


「どこにいるんだぁ!シズカぁ!!姿を見せろよぉ!!」


 この暗殺者ちっくなやり方、そしてクロノの傍に従える奴なんて一人しかいない、そうシズカだ。


 そして何もないところから、ヌッと現れるように姿を現す、どう見ても美女以外の何物でもない。

 そういうプロポーションも身長も、何もかも場違いの、モデル体型でしかも万全のメイド衣装で現れるそいつ。


「ふっふ、いつ見ても、面白い服装なんだな、こういう場くらいは、服装を変えたらどうなんだ?」


「余計な気遣いです、これが私の戦闘服でもありますので」


 背中から、二対の長刀を引っ張り出し、目の前に掲げる。

 養成所時代からの知り合いだが、こいつは昔から合いも変わらず、俺と似た事をしたがる傾向にあるな。


「メリク、剣を一本のスタイルに変えたのですか?」


「ああ、あんまりもう、俺には変わりがないように思えてきたからな」


 昔は二刀流のスタイルだったが、世界を回って、様々な”手段”を身につけた俺は、もうそれを堅持せずに済むようになった。

 だが、昔からのやり方って言うのは、技術の蓄積が段違いだ、だから一対一の時には最善なんだがね。


「そうですか、まあいいでしょう、私にとってはこれが最善なだけですから」


 そうやって、二本の刀を操りながら、銀の糸を同時に操る。

 閉鎖空間では敵なし、そう感じられるほどの大立ち周りを繰り広げ、敵を全く近寄らせない。

 向かってくる敵、銀の糸を避けた敵には直接攻撃。

 遠巻きで距離を取る敵には、容赦のない銀の糸のレーザーの網の目のような無慈悲な計画的で意図的なチート攻撃。

 こいつは、ちょっとこの状態で敵に回したくはないって思わせられるくらい、純然に強いな。

 更に、アクロバティックな、回転するような攻撃も凄い、それを剣を両手に持ちながらだ、ありえないほどに苛烈で優美。

 トリッキーで、その上力強さもある、回転する災厄のように、彼女の後には沢山の無残な屍が築き上げられる。


 そして、凄く綺麗な見目。

 釣り目で、どこか白バラのような、優雅で、且つ淑やかな印象をも与える、最高の美女が全体的に更に絵を引き立たせ次元を上げていた。


 というよりハーレムだな、俺の周り。

 蛇と伴に、沢山の無限沸きの敵を駆逐しながら、思う。


 艶やかな金の流線と、赤の焔、黒い花に漆黒の戦乙女、あと一人くらいいれば本に出来てしまいそうじゃないか。



 そのような形で、当初よりも大分楽に、敵の割いた戦力を全て完膚なきまでに消滅させた。


「それで、メリク、これから貴方はどうする?」


 ここは先程の場所ではない、他の四人娘も皆無。

 一度話に出た、後から来た二人を到着させた、そして遺跡の外側からずっと援護のように空から攻撃し続けていた戦艦内部。

 この目の前の、圧倒的威圧感をともなう美女、完全に成熟し熟練したような女傑のような人物が、その艦長だ。


「シコク、お前こそ、これから何をするつもりだ?」


「言ってなかったっけ? この事態をとりあえずは沈静化させる」


「違うよ、その先だよ、何をするのか、聞いておきたい」


「別に貴方に言うほどの事でもないけど、先は不明瞭、だけど方針は決まってる、戦争拡大よ」


「だろうな、まあ勝手にやってくれって感じだがな」


 そうなのだ、この目の前の美女は戦闘狂だ。

 だから、極端に不誠実でなければ、荒事に世界が傾くように仕向けるのが、人生の生き甲斐のような奴。


「これから、貴方もこの船に乗って、前線に向かう?」


「いや、もういい、俺は戦わないでも、なんとかなりそうだしな。

 それに、観測者の介入で、たいして戦力にならないだろうしな、他の奴らと遊んでるよ」


「怠惰ね、まあやる時にやってくれれば、それで構わないし、好きにしたらいいわ」


 そうして、艦長席に戻り、また何か支持を出し始める、艦橋のプラットフォームでの話しだ。



 俺は端末を呼び出し、四人の少女と戯れる事にした、さて、誰と話そうか。

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