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聖塔、マリア、秩序サイド


「はぁー、今日も神様の祝福のおかげで、よく眠れましたぁー」




 テラスに出て、幻想的に煌く陽光を浴びて、眠気を覚ましている少女。


 マリア=ガーネットは、普段の重々しい聖職者の姿ではなく、いたって普通のパジャマ着だった。




 このテラスから見える風景は、大まかに分けて二つある。


 この聖塔学園は、その作りがペンタゴンのような、多角形の城塞のような有様だ。


 その一片を所有する、彼女の居城から、内側方向に、広大な中庭空間を今、彼女はボウっと見ている図だ。


 そうなると、見えるのは学園中央の、高集積オフィスビル、通称、部活タワー、が一つ。


 そして対する、もう一片の、彼女の居る場所と、見た目は同じ作りの”宿敵”の居城である。




「混沌の輩、あなたたちを、わたしは、世界は、一刻も早く排撃しないといけない。


 たとえそれが、あなた達の世界を、決定的に害する、間違っていても、、、


 あなた達は、世界に在ってはいけない、


 人間の絶対に、致命的に、自然として所有され維持されるべき、


 絶対にして揺ぎ無い、人道と倫理に反する、害悪存在、世界の歪み、確固たる悪なのです」




 彼女は思う、思い込んでいる、その事実にすら、自覚的だ。


 だが、世界は思い込みで構成され、己すらその範疇と自覚的でも、


 思い込まなければ、なにも思考できないことを、彼女は誰よりも知っているつもりだ。




「此処において、世界は決定されるのです、絶対に正しい、


 それは世界という信仰、創造主という絶対存在、


 滅私奉公なんて、大それた事をわたしは言いません、


 ただ、個人の個人によって個人の為だけに、総体が在るのではない、


 その紛れもない、真理によって、わたしは貴方達を、神の代行であるかのように、断罪するのですよ。


 そんな世界は、間違っている?


 、それならばいいでしょう、世界に仇なす、神に反逆する、逆賊として処刑です。


 お互いの命運だけを糧にして、世界を味方にできない、果たしてあなた達が勝利できると、道理があると確信できるなら、


 存分に、どうぞ。


 人間を超越して、世界と伍することできれば、きっとあなたたちは、間違っていても、価値と意味を自ら創造したことになる。


 つまり、わたしたちの断罪の刃を、すべてを持って、すべて避け切れれば、あなた達の存在、生命は、世界に許されることになる、


 世界全体に認められ、わたしが許せる、許される形として、それは贖罪のようなモノと成るのでしょう」




 そこで、彼女は演説をいったん打ち切り、ただ何を考えるのでもなく、中空を静謐に見つめだす。


 もしここに、神のように彼女の内面を見れる存在がいれば、今一度、己を問いただす思考が、垣間見えただろう。


 それはだが、ひたすらに純粋に研ぎ澄まされて、己の自我すら最大限薄くなり、どこまでも研ぎ澄まされた、


 ただただ善という、形にできないイデア、


 それでも形しようと、彼女の一生と存在を全てかけた、意志としか形容できない何かでもないモノだった。




 そして彼女の意思、思い込み、信仰とも呼べるそれは、混沌の排斥であった。


 混沌は、世界にマイナスになる、負の要素。


 これを世界の真理と定義できれば、世界の複雑怪奇な構造は、一挙にシンプルになるのだ。


 正しいことを成したい彼女に、その価値観は非常に歓迎されるものだった。


 しかし、それが最近は、危うくされる事態に出会わされている。


 そう、それが、それこそが、新世代の主張、リソース主義の台頭だ。




 矛盾からなる、絶無の陣営に対する形の、共同にして協同同盟、世界の統一を主目的にする一群。


 世界の根底から革命する勢いの、彼女のような古い世代、


 それこそ、過去の積み重ねで、その延長線上でしか、絶対に生きられない世代には考えられない発想、生き方、人生観であり世界観だった。




「よもや、貴方達と組まなければ、世界が成り立たない、そんな世界の事態を、誰が創造できますか?」




 世界のリソースは、一定で限られる、ゆえに、悪人の魂も、利用できるだけ利用しなければ、いけない。


 そういう話だ、今もって、まったく持って、御しがたい激情を醸す、世界の現状が確固として在るのだ。


 混沌は悪、混沌粒子という魔性の力、魔法を使い、世界を害する存在を、これまで絶対対立する事象として、定義してきた。


 だから自分は、正しかった、絶対にどんな事をしても、許される絶対の存在だった、のだ。


 これは一時のイレギュラーと捉えなければ、自我すら崩壊しそうになるほど、受け入れがたい事実であった。




「一刻もはやく、世界を完全浄化しなければいけないのに、迷惑な事実です」




 彼女は、中空から、聖白な光り輝ける、棒のような、それは次第に次第に形を成す。


 多少の装飾過多風味、それでだがスタイリッシュに、古めかしくも近代的な、さまざまに形容矛盾する、


 全体的に見て、神々しい、に値する見目の、彼女の愛用杖を取り出す。




「だから、少しでも領域を狭めて、彼らを冷遇、いうなら不遇、不幸にしなければ、いけませんね」




 言いながら、彼女は毎日の日課、創造主との交信を、祈りの純度を増す、信仰強化の儀式を、その場で執り行った。

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