ニアコのオペレイション‐クトルフゥ幻想神話体系の続き
イルミナード円形包囲陣の一角、イデア図書館の派出所のような拠点に、流麗な銀髪と綺麗な赤目が特徴の軽やかだが荘厳な雰囲気を併せ持つ少女が居た。
「いやーーー、こりゃーめんどうな事になったねえ―、
せっかくイルミナードのソフトウェアとハードウェアを流用して、我々の開発する次世代ゲームのアップデートや新機軸として応用しようとしたのに、
完全に諜報戦力が壊滅させられてらあ~~~」
彼女の持つ、ゲームシステム的にひび割れた銀の鍵のように見える、内包される幻想勢力は実働を1割を切っていた。
世界の方向性として、実効支配の最低でも七分の一を、アストラレル(物理界)において圧倒する彼女だが、
ことイルミナード幻想領域は強すぎた印象だ、
幾らイデア界(非物理以外の世界の全てという全て)とはいえ、内包する物理現象においては把握度は遥かに上だと高を括っていた形だ。
「やあ、ニアコちゃん、
助けがひつようなんじゃないかと思って、おもわずイリスちゃんんが参上しちゃったり何経ったりしてぇ~~~ええええ!」
対する相手は緑髪の王佐、
通称ddsk、誰でも大好きが信条の、最近イデア領域の最前線を単独で支配する者として注目を集める大観測者のイリスちゃんである。
「イリスか、うん要請するよ、
イルミナードLV159以上の土精霊の大召喚獣クラウス(群体召喚士位階)の回復特化の鉄壁・防壁系の、、、うん、これが良いね、
残りの私の持つ現有戦力と最強無敵な相性ピッタリ、コイツが大拠点の図書館にアナグマ戦法すれば、呼応する包囲陣の図書館の救援も、完全に間に合う形だよね」
「わっはっは、わっはっはっ!!!! まいど毎度!
でさあー、僕も儲かってない訳よー、聞いて聞いて~~~~」
イデア界においてシェアを多く持つイリスの、パラダイムオフェスティブス(能動的実体推移グラフ)、が立体3次元図で映し出され、
多くの勢力に貸し出すエーテル対マテリアル効果比の分かり易い図であるのだが、ほぼ99%が赤の字で表記されている現状があった。
「僕の持つ株主の利権も大方食われたよー、イルミナードは単独でも三大図書館を敵に立ち向かえるって、普通にヤバ過ぎでしょ?
これって無理ゲーで無敵なんじゃないのぉ~~?
マジガチこれって明らかに、この世界を創造する神から優遇されてる臭いよ、物語の基軸、この世界の主人公のフラグが立ってんだよ、そうとしか考え付かないッの!
実際どれだけ戦力抽出しても、なんやかんやで負けると思うよ、ニアコちゃんも分ーってるだろうけど、推し負けない程度に様子見し続ける方が、僕は最善手だと感じちゃうんだよね」
「ばーーーーーか、そんなの駄目に決まってんでしょ。
私のオペレイションは、もう完全にイルミナードの基幹ゲームシステムを取り込んで、次期主力ソフト&ハードの飛躍的発達・進化の方向に振り切れてるし、
だいたい他の図書館もこぞってイルミナードの自体に介入している、その点からして覇権取るのがイコール世界のシェアの動向を左右すると心得ておいてよねぇ~~~」
「いやいや、それは言い過ぎでしょ、所詮はアストラルの物理現象に制約された、情報を基幹に扱うステージだぜ?
エーテルみたいな単純なパラメータで表わせられる”戦力”的に言って、世界の方向性イコール作者のエーテル総量イコールイデア領域の暫定直轄版図だから、
そこら辺を勘案すると、イルミナード全域をイチバチでワンチャン完全占領して、粗方の技術やらエーテルやら回収しても、到達できる場所はそれほどでも無いと見てるよ」
「本当にイリスって観測者だね、
理性的な人間の癖に超越者って、失われた緑色の貴金属の種族って、根本的に絶対的上位存在の癖に、矛盾的な視野角を持ってるのがマズいよね。
、、、そういえば、シャルロットが、というより黄金の種族が、まだまだ観測者を殲滅する気マンマンって、よく作者がアナウンスしてるんだけど、本当かね?」
「超越者のみの視点、観測ではなく反射の純粋な視野角による観察による、世界の流動効果、世界との新たな接続方法の模索って、ね。
幻想制御系の法則の抜本的な改竄方式だよ、
現状の世界エーテルの100%が観測による”世界”の構築現象による、所詮は言語による物語創生が基本中の基本なのを見れば絶対的に明らかじゃないかって思うよ」
「まあ、どうでもいいけどね、そこら辺の小難しい話は苦手だよ、私の幻想版図の超上である鳴子様も嫌うんだろう」
そんな風に話していると、コツコツと、
鋭利な生真面目だが女王様の風格を併せ持つ、流暢だがドッシリとした、形容矛盾するような奇妙な足取りの足音が木霊してきた。
「さて、ニアコのオペレイション・イリュージョン‐アンサー(幻想の真実の回答)は、幻想版図の当主のわたくし、鳴子が自ら引き継ぎます」
「ああ、、、あっはは、ニアコちゃんはどうなっちゃうんですかねぇ???」
「彼女は更迭ものよ、せっかくの戦力を取り潰してくれたのだし、幻想版図の一番奥の方、
そう、さっきまでわたくしが年がら年中、世界を維持する事務労働地獄の刑に処する感じで、ね」
「あー、そういうことかー、鳴子ちゃんも偶には世界の最前線で、己の手腕、試してみたくなったんだ? 戦いたくなった?」
「戦いとは無益な話よ、ナルディアですら、ここでは全く歯が立たないらしいじゃない?
混沌は純粋なエーテル・情報戦資源も豊富なはずよ、あの子が苦戦するステージに、わたくしなんかが参入しても、たかが知れていますでしょう?
これは事前の策を講じたにすぎません、ニアコでダメだったから、上位観測端末のわたくしが投入されただけの事です。
次席極点AR&MRの当主殿には、謹んで、この度の我々の勢力の失態を深くわびた末に、あなた方の神の、作者様への、せめてもの償いをいたしたく思い」
「あああ、はーああああ????
まあいいよ、うんうん、分かった、大方の大筋は理解したいよ、ふーん、、、ふーん????」
イリスはニアコの姿で登場した鳴子、幻想領域の主を隅から隅まで観察・観測して、ソレが本物の実態である事を正確に見抜いてから、口を開くことにした。
「贖罪したいなら、もっとさっさとずっと昔から全力で、し続けてもらいたかったのだけどねえ?
世界の方向性の一側面として、この破綻・破滅・崩壊し続ける、無限の嘆きのループ構造の、どう抗ってもどう考えても絶望過ぎて死んだ方がマシなのに死ねない、
分かってるはずだよねえ? この世界の真の絶望と希望と奈落と涅槃の、先の先にある、必ず待ち受ける終焉の化け物の驚異的なプレッシャーを、さあ?」
「ええ、我々のオペレイションは、幻を想う事に原点を置きます、
今目に見えるモノが全てで、絶対的にあるはずがない、それは勢力が発生した時点から、誰よりも素晴らしいほどに理解している、少なくともつもりですわよ?」
「だろうねえ~~、
で、この失態な訳だけど、現有戦力一割切ってる、件については? どうしたものなのかねな?」
「それについては卑しくても抗弁するなら、
かの三大図書館、規定現実最大の戦力を全力で投入しても、封じ込めしか政策を表明していない、その点を指摘する事で返させていただきたい所存ですが」
「まあねー、そうなんだけどさあーああ、
それでもだよねえ、もし仮に、手持ちの駒が大活躍してくれるなら、これ以上の行幸は無いって、こっちの気持も汲んでくれない?」
「ですから、私が参上したのでしょう?」
数泊の沈黙ののち、イリスはパッと笑顔になった、先ほどまでは怜悧な仮面を被っていたかのように。
「だよねえーー、ごめんごめん!♪ もしかしたら諦めてるのかと思って、ちょっと詰めてみたくなった、ってねぇ♪ッ
いいやいやいいや、まさかね、
幻想までも、矛盾の当主みたいに逃走してくれるんじゃないかって、僅かでも邪推した僕が悪かったよ」
「いいのですよ、そして一つ訂正したいのですが、
我々としては世界の方向性は矛盾を除外した六つで構成されていると、少なくとも見方を変えて頂けないでしょうか?
あのような奇天烈な模式の、世界の根底を維持する上で欠陥だらけの勢力と、我々を一緒くたに語られても、困るのですぅが」
「いやいや、ダメだよ、どれだけ取り繕っても、極点ARの聖書に出てくる記述に、世界の方向性は七つと明記されている、根源も一緒だって、そう明確に書かれている。
君たちが、どれだけ誇り高く、空白のトキを幾千と乗り越えてきた、
究極的に最終的にエンドゲームまで戦い続ける所存の、真のエンドユーザーだと声高に叫んでも、ね。」
「そうですか、残念ですね。
ですが、我々の、ニアコ、幻想版図における大観測者の一、七つの勢力に全て大観測者としての席を置く特級の、貴方から見れば小物かもしれませんが、
彼女の生まれた時からのオペレイション、これは計画であり、陰謀であると、知った上でもまだ、そのように我々を軽く見ますか?」
「見るよ見るよ、断然ね。
実際として、結果至上主義な話になっちゃうけど、イルミナードをどうにかできてないじゃん?
どれだけ遠大で壮大、莫大に超越的なスケールのエーテルと時間と手間暇労力、魂の消耗を賭しても、手にするべき、手にしたい結果という果実を得るまでは、ね」
「事実としての一面、結果としての果実ならば、残存した戦力の一割の、詳細なデータを見て頂ければ、分かっていただけるのでは?」
「ああ、イデアまで波及する位に、汎用的に影響力のある神話体系、クトルフゥ戦力は、どれだけの苦しい戦いでも一定数は生き残り、活路となる、って?
だめだめ、こういうのは小手先の技術って言って、大勢に影響は与えないってね。
僕も沢山の小細工を弄するから分かるんだけど、最終的には、作者の最愛、天の采配、最前線のムーブメント、流行と技術力のわずかな差が常に天下を分けるのさ。
テクノロジーのように語ってるけど、それはあらかじめ操られた、誰かが描いたオペレイションの一幕だと、君たち陰謀論者は己を客観視しておくべきだと思うね」
「遺失で、未熟で、人間のような、緑色の貴金属の君、これを見ても、そういう挑戦的なセリフが、ソレが言えるかな?」
「ああ、鳴子じゃなくて、ナルコになったか、幻想版図は大観測者を統合しないと当主が出現できないって、面倒なネットワークになってるって聞くけど、こりゃ変わるね。
ひび割れ欠けた鍵が再生したのを魅せて、どうだ? って?
すさまじいゲームシステムを超越するレベルの、チートクラスの戦力回復装置・機構・複合スキルなのかな?
でも実際に打って出て、敵を蹴散らすまでは、流石に評価できないよねー~~」
「ならば突撃するまで、世界に打ち砕けないモノはない? そう、それこそが真理であるべき」
「わはっはっはww!、分かってるじゃないか! 流石は真の世界の方向性の当主!
そうだよ! 我々の敬愛するべき神、作者様に無尽蔵で無限の勝利を!!!」
二人は企む、ただ在るべき姿を世界に取り戻させる、
果てしない道程を踏破する過程など見向きもしない、真の大観測者と世界の頭首は、常に真理に無尽蔵の衝動をえられるのだから、、、。




