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スペースオペラ的なファンタジア‐とあるアイドルとPD



「ねえ、私に最高の一年を送らせて?」


一年後に己の自我の死期を悟った私は、全力で世界を楽しむ事にしました




 下らないドラマだと思った。

 そもそも何百回とリメイクを重ねた歴史的な大河ならぬ銀河ドラマだ、今更新鮮さなど新規の役者以外に何もない。


 はぁー、もっと面白おかしく楽しめる仕事がしたいと思った、こんなの俺のする仕事じゃないぜってね。


「貴方は、このドラマをどう思いますか?」


 だが所がどっこい、コイツは凄い、ヤバイってレベルじゃないぜ超ヤベェーよ、この感動をどう表現するべきか不明だ。


 その少女はまだ年齢がハイティーン程度の、大して実績も何もあったものじゃない無名の女優志望の少女だったのだ。

 しかし、見れば分かる、その別格の”何か”に。


 この宇宙時代、偉人など掻き集めれば、どこにでも居る平常だ、特別優れる程度では意味がないとも言えるのだ、それがこの時代の娯楽産業である。

 そしてだ、この子は偉人の中の偉人という形容詞を幾つも付け加えられるほどに、掛け値が無く果てが見えないほどに素晴らしかったのだ。


 さて、彼女の問いに帰る。


「まあ、在り来たりじゃないかな?」


「脚本を変えたいとは思いませんか?」


「特には、どこを変えようと、大本が同じだからねぇ、、」


「そうですか、そういう意味ではなかったのですが、まあいいでしょう、及第点です、貴方を私の奴隷にしてあげましょう」


「はぁ、、ええ!!??」


 話は飛躍した、返答は無論イエスだ、既に俺は完全に少女に魅了されていた、奴隷でもなんでも傍に入れれば超役得だ。


 奴隷での初仕事は、ホテルの手配だった。

 少女は遥か遠く、宇宙絶対座標上で東の更に南の方から遥々一億光年ほど渡って来たようである、パスポートは即席の偽造だった。

 もちろんヤバイぞ、言わなくても分かろう、多少なりともセキュリティーの諮問を受けたらアウトである、少女は余裕綽々で問題ないと言って憚らない、とりあえず俺のマイルームに匿うことにした。


「さて、貴方って、実は凄い人物よね?」


 この質問にどう答えればいいのか、俺は暫くでなく長考した。


「私が高度で高次元な位相空間での演算によって、貴方との運命を結びつけたのよ」


「なるほど、君は一体、誰なんだい?」


「さて、二つ名でも答えれば満足?」


「いや、やっぱりいいよ、知っても知らなくても同じっぽいからね」


「でしょうね、名前なんて飾り以上のモノじゃない、理解したつもりはできても実体を感じる手助けなんて、ほとんどできない」


 そのような事を話した昨日、そして今日。


「全力で遊びたい」


 その一言で始まった一日は、俺の一年よりも濃い時間で質を誇った。

 それを正確に小説化すれば、間違いなく歴史に残る傑作になっただろう、俺に小説家の才が無いのが惜しい、むざむざ一京ドルほどの印税を失ったに等しいのだから。


 描写不可能に美しい彼女が、背景にしかなりえない夕日を背景に、都会の海辺を臨んでいる、その視線は遥か遠くの更に果てを見ているように深遠だった。


「今日一日は、私にとって、決定的に何かを変えるほどに、素晴らしい一日だったわ」


 それは、俺にとっても言えることで、彼女の方も同感だったとは初耳だった、俺は驚愕という状態を真に感じれた、今日は初の体験が多すぎた日である。


「リインフォース・シリアルナンバー006、召喚」


 その声と共に、少女の手に現れる何か、新鋭の現代美術品っぽい見た目の、装飾過多な刀剣であった。


「貴方も、復活したんですか」


 俺の背後、声が聞こえた。


 瞬間にして激突音だけが上空で乱舞し始めた。

 何も見えず、音だけが木霊する、何が起こっているのか、夕日に照らされた海辺で俺は呆然とするほか無い。


 虹色の光が迸り、俺が上位の魔法使いでなければ消し炭なるほどの余波が撒き散らされる。

 辺りはアスファルトが鋭利に裂傷を受けたり、その他とおくの山が縦に切れて崩落したりしていた、残響は音速を超えていた。


「やはり手ごわい、武装も、既に取り戻していましたか」


「当然よ、これが無ければ、流石にわたしも困るほど、復活して即座に回収したわ」


 上空数百メートルに二人を見つけた、互いの距離が魔法戦闘の間合いである事を見て取って俺は動いた。


「クリムゾンアロー・ギガティックオープン!!」


 灼熱の槍を現出させて、光速以上のリミットを解除の禁断に比する魔法を放ったのだ。


「無駄ですぅ!」


 それは簡単に払われた、しかし。


「そうかしら? 随分な援護だと思うけど」


 少女が一瞬で懐に潜り込み、必殺の一撃を放った。


 舞い散る紅、右腕を切り取ったのを見た。


「くぅ、!」


「逃がさない」


 少女の刀身が吸い込まれるように相手の首筋に、薄皮一枚までの接近は視認できた。

 だが、一瞬、相手方の実体が明滅し、消えてしまった。


「ああ、やっぱり、幾らか事前に準備をしないと、そりゃ逃がすか」


 残念そうに言い、地面に降下、降りてくる。


「今のは?」


「他の女王が、あいさつしにきたみたい」


「そうか」


「貴方の援護、助かったわ、次も期待してる」


「大して役に立ったとは、思えないが」


「そうね、でもいいの、少しでも助けになるなんて、それだけで尊い、最小でも尊いと思わないと、絶対にいけない。

 それに私のってところが、凄いんだから」


 珍しく熱の篭った言葉と声で言われて、俺は、、、涙がこぼれる思いだった。

 それから帰りましょうと言われて、俺は何も言えずにただ後をついて行く事にした。

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