草原と廃墟と戦闘と殺人の、鬼外道鬼畜
目が覚めると、辺りに草の匂いがした。
一面が青く、太陽光に反射して煌めいている。
それによって密度を増した、すなわち蒼で塗りたくられたような、それでも、緑色が延々と広がる草原が適切か。
「ん、ぅゅ……」
小さく髪を靡かせる微風。
眠気を誘うような、暖かな陽光、そよ風。
が、静かに吹いていたと思ったら、途端に止み、まどろむ気持ちを萎えさせてくれた。
「佐藤拓未てさっ」
男は「ちょっ、そこで、俺の名前出すのぉ?」と、ツッコミを入れていた。
「私はさ、いい名前だと思うんだよ。
まず、最も多い、開拓され尽くした、佐藤って名前に、
未知を開拓するっていう、野心ていうか、チャンレジャー精神に、惚れる。
マジでガチで、お前は、拓未は見上げた奴だよ」
男は「適当言ってないで、この状況について、まずは考えようぜぇっ」と言う。
「それもそうか。
確かに、物語小説においては、テンプレートに物事を進めるのも大事だ。
観測する主体的に考えて、ここではまず、そのように振舞うのが自然で、違和感が少なくなりそうだしな」
男は「物語小説脳は、やめろっての」と呆れた感じにぼやく様に呟く。
「いや、やめられんな、やめられない止まらないだ。
少し考えても見ろ、みたまえ、この異世界に召喚されたようなシチュエイションをっ。
どうだ?
そうだろう、私は分かっているぞ、
この状況を、後々振り返ったとき、絶対に面白くなると。
だったらばだ、この状況を、小説のように考えて、どういう展開で進めれば、最大限娯楽総量が最高値になるか、
私は今もって、試行錯誤の連続を試行しているのだよ。
分かるかね? この知生体として極め尽くされた、私の有様を、褒めた称えても一向にかまわない」
男は「お前は見上げた奴だ、将来、大人物になるぞ」、
娘は「そうだろうそうだろう」と胸を張って鼻高々になって踏ん反り返って、嬉しげに微笑んだ。
「さて、そろそろ冗談を言って、ふざけるのは止める頃合か、正直潮時だ、飽きてきた。
そうだな、確立定量的に言って、そろそろ真剣にシリアスに、振りでもなっておいた方が得策だ。
こんな状況なのに、何時までも馬鹿みたいに騒いでいれば、どうなる?
私達は、まるで非実存青少年と青少女になってしまうだろう?
それではリアリティに欠けて、どうしようもなく臨場感や、迫真、胸を打つ真髄のようなアレ、
そうアレ、あの感覚が、物語というフィクションに欠かせない、絶対に必要な引き込む、物語に読者を埋没させる引力のような奴、
そうなのだよ、このままではいけない、そろそろ、指針変更だ、チェンジだ。
今から私は、多少なりともシリアスになるぞぉー」
男は「勝手になっておれ」と醒めたような声を出し、
それでも、一応付き合うのか、シリアス風味に顔をして、腕を組んでみたりしている、付き合いのいい奴だ。
さて、このその、そよそよと頬に掠める程度の、微妙な湿度の風。
夏のような、秋の前段階程度の冷たくも心地良いそよ風。
が、青い草原の上をすべり、あたり一面波立たせているのだが。
「本当に、一面が草しかないな、どうする?」
男は「どうするもこうするも、こんな状況だ、とりあえずは適当に移動するのがいい」
「ふーむ、それがゲームだったら、当然なのだろうがな。
だがしかしっ、これはゲームではないっ。
そう、現実なのだよ、現実っ、君は分かってないねぇっ。
そうなのだ、現実だから、闇雲に動くのは得策ではなく、もっと賢い選択をしなければならないっ!」
勝ち誇ったような表情。
男は「やばっ、ごめん、ちょっとタイム、いま自制心を保って、お前殴るのを耐えてるから、
うわやば、マジで殴りたくてしょうがねえんだけどぉよぉ、、、」
と拳をもう一つの掌で抑えながら、邪気眼おさえるような仕草をしている。
「ふっふ、どうやら、私の勝ちのようだな、これで私の何連勝だ?
そろそろ、私の事を一回くらいなら、殴っても良いのだぞ?
もちろん、後に残るような事は絶対に駄目だが、絶対に許さないんだからなぁっ!!って奴だ。
しかし、後に残らないなら、多少、本当に多少だが、痛くされても構わない。
いや、やはり今のは嘘だ、駄目だ。
お前にそんな事をされたら、私はキレて、殺してしまうやもしれないからな、無難に止めておくのが得策だろう」
男は「まあ、俺も今の切れたナイフみたいなのになったの、嘘ってか、冗談なんだけどな」
私は「知っていたさ」とクールに答えてみせる。
少しクセっ毛のある、おかっぱの髪がさらさらと揺れる。
ドールメイクで決めて、見た目的には、私は人形のように可愛らしくも、不可思議な魅力を放っている。
瞳にはカラコンを入れて、より人形っぽい、無機質だが、端正さが際立つ仕様になっている。
鏡で己を見て「まるで人形みたいだぁ」と呟くほど、今の私は決まっているのだ。
それが草原に居るのだ、ゴシックロリータ、体格的にも容貌的にも的確な、まったく似合わない風景だ。
黒深紅の黒赤い髪を靡かせて、黒緋色の瞳をした娘だ、
茶色がかった黒紅と黒の刺繍の入った、豪奢な豪華絢爛マントを羽織り翻し、辺りを見ながら話している。
「うわぁ、凄いなぁ、うわちょ、やば、なにこれ、まじもん?。
やっぱり世界は凄いわ、神ゲー確定、
こんな事があるなんて、ちょう感動的なんですけどぉっ、
うはぁっ、ねえマジで、現実っていろいろあるんだねっ?♪」
男は引き気味、ニヒルな口元の笑いを隠さず「なんで、いきなりテンション上がったし」と苦笑で見下すような態度だ。
「さて、そろそろ探検パートはいるか、読者も、そろそろ、つか、もう飽きてるかな?
まあ、どうでもいいけどね、執筆するときに、なにかしら超見栄えするアレンジすれば良いし。
辺りを歩きながら、風景を見ながら、あらためての特異で奇妙な状況を実感した。
太陽が、現実世界よりも、何か輪郭が大きいような気がした、錯覚だろうか?
「そうだ拓未、あんたは召喚のトキに、ワイバーン、飛竜に捕まって、
私が、異世界召喚時のボーナス的なアレで使えるようになった魔法で、助けたことにするから、よろしく」
「よろしくじゃねぇえ」という不満げな声がする。
辺りを見渡して、私は、一人の天真爛漫な少女主人公は、
まるで欲しいオモチャを誕生日かクリスマスに、枕元に置かれた、
「てかさ、今思ったんだけど、あんた、あの感動覚えている?」
じっと見つめる、拓未はもちろん「なにがぁ?」と問いかける目つきと声。
「はあぁ、最悪、恋人でツーカーで、ほぼ生まれた時からの幼馴染、付き合いなのに、最低。
なんで、私の考えてることが伝わってないのぉ? やる気あんの? 人生とかの?」
男は「無茶言うなぁっ!」と酷く心外、反発気味に答える、まあ流石に無理って分かってるよ、けどもさぁっー。
「さっきの話に戻るけど、クリスマスのとき、枕元に、好きなプレゼント、モノが置いてあったときの、
あの純粋にして無垢だった頃の、超ヤバイ感動、貴方おぼえてるぅ? って共感したかったのよ、
ああ、もういいわ、手遅れだから、萎えちゃったから、今更あるあるぅーって顔しても無駄無駄、約百万年遅い、
ほんとさ、私達は、いつも、どんな時も頑なに離れなかった、病的なまでの二人組みを堅持してきた、
パートナーなんだよ?
なのにさぁ、なんで、もっと心と心、思考と思考が、以心伝心してないのかなぁ~?
もっとさ、わたしと君が、一心同体みたいなぁ?
シンクロ感というか、共鳴感というか、シンパシーが過ぎて、共感が過ぎて、
常に、こいつが私の生涯で唯一の運命の、奇跡的な、伴侶なんだぁ! よめぇ!みたいな、
そんな超絶ハイテンションで生きることって、高望みかなぁ? はぁ、、、ぁぁ、、はぁ、、だわ」
男は「そうだな、あの頃のプレゼントの存在感は、異常だよな。
初めて、ゲームをしたのも、そのトキ位だろうから、超記念日だな。
あの頃の俺を、今の俺が見たら、
プレゼント見つめる、あまりに子供の無垢で純真すぎるキラキラした目で、失明しそうだ」
「スルーか、させるかよ」
とことこ歩きながら、私は空想する。
草原を歩き歩き、すると何時しか少女は、辿り着いた。
そこは、、、
「ねえ、いつまで草原なの?」
羽織っていたマント、その下に常備している、何冊もの手帳とノート。
その内の、設定資料集、を取り出して、開く。
もう片方の手には、下の方に着けていたショルダーからペンを取り出し、構える。
「拓未、あれの準備を」
男は「はいはい」と言いつつ、
私と同様、服の胸ポケットから、メモ帳とペン、らしきモノを取り出す。
「前から思ってたんだけど、あんたのソレ、DSのタッチペンじゃないの?」
男は「おお、よく気づいたな、これはタッチペンの芯の部分が、鉛筆の芯だ」
と、なんだか威張ってる、というか偉そう、というか得意げだったので、ぶちたくなった、ぶたなかったけどもぉ。
「そう、良かったわね、おめでとう。
それで、そうね、、、、、。
ここの空気は良好だわ、拓未。
これといった有害物質も無いし、
酸素の濃度は、だいたい地球の平均より、ちょっと多いくらい」
男は、毎度の事ながら、とっさに合わせてくれる、
私が設定した「宇宙飛行士が未探査の惑星に降り立ったシチュエイション」、
つまりシミュレーションごっこのような、遊びだが遊びでない、現実を再現してくれている。
「惑星全域を調べるのには、まだまだ時間が掛かりそうね」
「そうだな可憐、ここから見える領域だけでも、まだまだ惑星表面の0.01%程度だ。
これから、どれだけの探査になるか、計り知れん。
「しょうがないじゃない、私達が行けるのは……もう、ここだけなんだから」
微妙に、唐突にシリアスな顔で、俯いてみせる、どのように返してくるのだろうか?心なしかドキリどきりっ。
「だな。
怪物や迷宮が、あるやもしれない、一度本拠に戻るか」
「ええ、そうね。
もう少し移動して、なにもなかったら、今日は帰りましょう。
こことは違った、別の場所も調べる必要があるし。
宇宙船からなら、惑星全体の地勢も分かって、何かありそうな場所も検討付くわ」
さて、これくらいかな。
私は、色々と呟き、彼も小さく呟きながら、お互いメモ帳に何かを書いてゆく。
私達は、今のシミュレイションで、閃いたアイデアを思いのままに書き綴っているのだ。
数分、どれくらいメモ帳に何かを書いていただろうか?
気づいた時には、1ページが丸々埋まったところで、私はピタリとペンを止めた。
「さて、これくらいにしましょうか」
彼は「ああ、そうだな」と頷く。
「核心の話をしましょうか、お遊びは、これくらいよ、あんたは落ち着いた?」
彼は「ああ、落ち着いた、限り無くクールだ」
すると男は、まるで、怨敵の誰かと話しているような、剣呑素振りで口を開く。
「この状況、相当に想定外で、正直どうしたらいいか分からない、怖い、助けて可憐」
「そっか。
あんたは、そういう奴だった、使えない、最低の屑だわぁ。
まあいいわ、それも想定の内だしね、全然期待してなんか、なかったんだからねぇ、くたばれ。
さて、その点は、まあ追々分かってくるでしょう、
そ、おいおい、気が向いたときに、調べるからいいとして、
こんな草原に放り出されて、果たして私達って、次はどうすればいいか、教えてくれないのかしら」
男は「なんかアイツは、俺達を放り出して、自助努力に期待する風だったなぁ」と、
そう言って考え込むようにする。
「はいはい、分かってるよ。じゃ、あれね。
観測者ってワード、未知の世界へ行って参りますって感じの、そういうパターンね」
「分からん、一概に、そういうパターンと定まった分けでもない。
そも、分からない事だらけだ」、そう言って深紅の髪色の頭髪を撫で撫でる。
「確かに、こんなの、お手上げだわ。
せいぜい、パニックを拓未と楽しんで、
可能な限り満喫する以外に、手なんかないよなぁー、
くっく、いいじゃねえかよぉ、
少女と少年、二人っきりで、異世界への小旅行、
どうなんだよぉ? おい、気分が高揚して、変な気分になってないだろうなぁ?」
男は「なってない、いきなりキャラかえると驚く」と言う。
「それ狙い、一択だろが。
動揺すな、でんと構えろ、でんでん太鼓のようにな、
いや、それだと、左右に右往左往して、逆にアレか、
どうでもいいな。
てかな、確かに、キャラを変化を、キャラの変化も、一応は整合性が無いと駄目かぁ?
どうよ? 拓未から見て、私には整合性が、あるかぁ?」
男は「ねーよ、滅茶苦茶だわ」と平坦に冷えた声。
「だよなぁー、私も私のキャラがぶれてないとは、正直言えんから。
だけどな、こう見えないか?
お前と私の関係性は、ぶれてないから、キャラがぶれてないように見えるって現象だ。
わたしはお前に、終始、上から目線で、奴隷のように苛めっ子のように、そんな感じだ。
このぶれなさは、私のキャラのぶれを軽減する、そんな安定のほにゃらかって材料にならないか?」
そのように、私達は、燕が飛び交う、青く広がる草原を、徒然と暢気に歩く。
数十分ほど歩いていると、青い草原が途切れた。
半分腐敗した、無機物と有機物の、ゴミのような、廃墟や建物が見えてきたのだ。
何か、くる。
思ったときには、私は手を翻していた。
「おいでなすった」
「ああ、そうだな、敵だ」
男は、まんま殺人鬼アイで、駆け出す。
手には、ジャックナイフか何か、切れ味の鋭そうな、適切な、人間を殺すに最的確なナイフを所持。
敵は上方、草木の生い茂る場所、建物が盛大にツタに侵食された、それに張り付く虫のように陣地。
手には長弓のような武器、あれで、私をヤろうとしたらしい、クソ生意気なっ。
絶妙に建物の間、私達から見て死角になり易い場所に隠れていた。
男は獣のように駆けていたが、ストップ。
一定以上、そこから線を張っているかのように、何も生えてはおらず、明らかに怪しい。
生えてるが、コケのような奴で、露骨なカモフラージュ。
このパターン、敵の軽業のような振る舞い、十中八苦で罠などが殆どだった。
「伏せろ、飛ぶ」
私は、男の後に続いていた。
男は私の意図を察して、その場に伏せる。
私が男の伏せられた背に、乗るように飛び、踏み付けと共に跳躍。
男も、絶妙にタイミングを合わせて、背を上方に飛び上がらせて、跳躍の反動を上乗せする。
「よし、上出来、GJグッジョブ」
トラップを乗り越えて、男が居る上方、を見上げた時には、既に奴は、
ギィンッと、ナイフ同士が、いや、これは金属同士がぶつかった音だろう。
私の丁度いる場所に落下した、そのまま攻撃に繋げて、弾かれて距離を保って睨みつけてくれる。
「さて、どうしてくれようかぁ? あたしぃの命を狙った罪は、無条件で万死に値するぜぇ?」
ナイフ、これはバタフライ程度のナイフだが、まあ大丈夫だろうと、そう断定。
私は駆ける。
男は、手に、あれは、なんだ? よく分からない、よく分からないが良く光る獲物で、対峙。
敵の動きは、分かり易い、私的には一目で”できない奴”と分かる程度、瞬殺できるだろう。
今まで、何人も、人を殺してきた。
殺した感触は、リアルは、今でも明瞭に、鮮明に、リアルに、刺激的に、思い出せる。
あの感触は、どうしても忘れられない、いや、忘れたくても忘れたくない。
刺激的で甘美で、どうしようもなくカルタシスを極める、絶頂的な快感だった。
私は思った、殺せば殺すほど、わたしは殺しが、殺人技術にカテゴリされる、あらゆるが上手くなると。
殺人が上手、うまくなっても、意味や価値が無ければ、しょうがない。
だが、殺人が上手になるメリットが、これほどに、、
より上手く殺せれば、これだけ気持ちよいことが、もっと上手に甘美的に、できるようになるのだ。
上手くならない訳がない、私はわたしの欲望の赴くままに、殺しまくったのだから。
殺人の鬼の妙技は、絶技を極めた、それは既に神の技術ともいえる、紛れも無く神業。
一瞬で、しゅるりと、動体視力なのかどうか、自然と敵の攻撃を抜いて、
気づけば、敵の急所にナイフが突き込まれていた。
「死ねっ、!、きゃっはっ! 死ね死ね! シネヤっ!」
ナイフをひねり、捻る。
「くっっくっくふぅっ! 即死確定ぁ! 人生にさよならぁ~~ぁあ!」
敵はくず折れる。
ナイフを引き抜いて、わざと血をべっとり浴びて、悦に浸る。
「はい、終わり、あっけなかったねぇ~。
つーかよわぁ? ざこキャラですかぁぁ??」
人を殺して、楽しかった経験は数知れない。
だがやはり、殺人鬼を殺すことほど、楽しい事はない。
己と似て非なる狂気、明確に敵と認識できる、胃の底、骨の髄まで痺れる闘争。
ナイフを鍔ゼリ合わせ、こいつは雑魚過ぎて無理だったが、そういうトキの感触は紛れなく至極だ。
お互いに、お互いの快楽を掛けて、殺しあう。
それはまるで、至玉の相手とのセックスのような、愛しい存在との密月より増す、行為だろう。
「……、あぁーぁ、ひどい有り様だな、、、戦争の直後かなぁっ?!!」
考えながら、ナイフで、好きなだけ、いいだけグサグサ、敵の内臓やら抉り抉りしていると。
なんだか見た目からして、もう戦車でひき肉にされたような、酷い有様だったので、若干びくった。
「・・・・・」
しばらくじっと見ていた私は、服の胸ポケットから、あるメモ帳を取り出し、ペンも取り出し、
今の風景、この景観を含めた、その光景を、血まなこチックに、がりがりゅ記録していく。
殺した感触と、殺した風景、殺した達成感等、情感を、幾つも幾つも、大切な宝石のように記録していく。
「くっくっく、ふぅ、殺人ノートに、また新たな一ページが追加されましたッと」
パタンと閉じて、もう用は済んだとばかりに、もどろうとして気づいた。
男は「おーい、どうすんだこれー」と言っているが、どうするんだろうねコレ。
この廃墟の中は酷く、殆どは瓦礫に阻まれて通れないのだ。
そんなことも確認せずに、一方通行のココを飛び越えたのだから、
あの時の私は考えなしだった、マジでくたばれよ馬鹿が、出来損ないのくずが。
「思ったんだけどさ、私は過去の私を、死ねばいい、くずが、後悔の元凶、カスっ!
人間の風上にもおけない淫乱クソ殺人鬼とか、いろいろ思ってるんだよねぇ」
対手の男に、語るでもなく語る。
「そうすると、胸がぽかぽかしてきて。
過去の自分なんて、他人みたいなモノだけど、その他人が怒ってるのが分かるんだよね、
そう、この胸の中に住むわたしが怒って、わたしを見返そうと、頑張ってくれる、
これって、割といい循環で、わたしは重宝している、君もやってみたまえ、いろいろ捗るぞ、じゃあっ」
男は「じゃあじゃねーだろ、じゃあじゃ」
「それじゃあ、これはどうかな?」わたしは振り返る。
「常に、どんな時でも、真に見下す、毒舌を極めた、侮蔑と憎悪、それ以外にも色々言語表現できるが、
自分以外の、いや、自分自身でもいい、特定の観測者、観測視点が、真底から、
劣等感や羞恥心、コンプレックスが喚起されるような、嫉妬を伴う、感情を励起想起させるような、
そういう熱い思いを、怒りや義憤じゃなくてもいいが、喜怒哀楽を滾らせられなくちゃいけない。
それによって、初めて、私達は真に成長飛躍昇華、なにがしか頑張ろうと、生き甲斐を得られるのだ」
男は「それじゃあ、別ルートで、再合流な、じゃあな」
と、放って置くと、話が前に進まないと気づいたのか、強引に話を進めた。
やはり、彼がいると、物語が強制的に進むような、勝手にわたしの物語が綴られているような感覚があって、純粋に良いな。
この、自分の手では、どうにも制御、コントロールできない感、展開の推移が、面白いのかもしれない、いや、紛れなくそのようだな。
私は、この先の展開もどきどきしながら、反対を向いて、廃墟の探索を始めた。
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