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絶対存在でない絶対存在‐境界線上に君臨せし観測者と哲学をする少年の話

 


 ある一家の団欒の風景である。

 俺は一人暮らしだ、なのに一家なのは、果たしてどういう事なんだ?


「おいニルディア、より高次元に生きる為に、有意義な話しようぜ」


「いいよ、しようしよう」


 目の前の、黒髪の令嬢風の女性。

 この人は、自称”観測者”と、そう呼ばれる存在らしい、どの界隈で呼ばれているか俺は全く持って知らん。


 いつから、俺の傍に居たかは、もう忘れたが、相当に前から傍に居た。

 俺以外には見えないし、触れない、俺以外には空気以下の存在しか持たない、そういう特性を持っていたりする。

 ネットで、俺と似たような境遇の人がいないか、少し前から情報収集したが、収穫ゼロ。

 目の前の、軽く全知全能っぽい、歩く全宇宙辞典のような存在にも、それとなく聞いてみたが、収穫ゼロだった。


 まあ、そんなあれこれは、今はどうでもいいな。

 こいつとの、日々する雑談は、割と取りとめもない。

 宇宙の真理だったり、多少高尚な時もあるが、大抵は友達とするような、軽すぎる雑談に終始する。

 今は、俗に哲学って呼ばれるジャンルだな。


 一通り、哲学について、語ってみた、収穫は豊作。

 このニルディアと話すと、頭の中が拡大されたような感覚を、いつも受けるんだよな、だから日課にしているわけだが。


「で、俺のデバイスについて、評価してくれ」


 俺はニルディアの前で立ち、声を出しつつ指先を動かす。


「なるほど」


 ニルディアは眼の色変えて、実際に青から赤に、瞳の色が変色した、それで俺の動作をジッと見つめた、それで。


「言語的発声感覚情報と言語的聴覚音声情報、指先の言語的感覚情報の、融合、あるいはシンクロですか。

 三つの情報の入出力を、先行させたり後行させたり、同期させたり、幅広い端末の動かし方を可能にするみたいですね。

 まあ、多少肩を中心に観測端末に負荷が掛かるかもしれませんが、それもやり方次第でしょう。

 総合評価するなら、現存持ちうる手段の中でも、悪くない方でしょう。

 言うまでもなく、もっと良いプレイの仕方もありますがね」


「よし、それなら、これは及第点ってところか」


 ノートパソコンに、色々と入力する。


 俺は、この存在に会ってから、こういう色々をする事になった。

 それが仕事だからだ。

 当然仕事だから、働きによっては生きる糧、つまり金が入ってくる、まあ、歩合制なんだがな、ほぼ完全。


 なんというか物好きだと思う、彼ら観測者は、天才的存在を見たいらしいのだ。

 というかむしろ、そういう存在にしか、特に興味も持ってないみたいなんだよなー。


「もっともっと、特殊な脳の働かせ方、変態的でもいいです。

 とにかく、貴方の心技体、精神力や技術力、生体機構でもなんでも、端末・端末外を含めたが扱える全てで、もっと素晴らしい芸術を見せてくださいね」


「ああ、分かった分かった、俺もその為に、日々努力してるよ」


「では、哲学の話に戻りますか?」


「ああ、しよう、テーマはさっきと同じ、より高次元に生きる為にってことで」


「ええ、分かりました」


 居住まいを正す訳でもなく、卓の茶を啜って、ゆったりとした、青に戻った瞳を向けてくる。


「やっぱ、老い先短い、80くらいの老人になったつもりで。

 常に最大限必死に生き急ぐような、急ぎたくなるような、致命的で強迫観念、危機感を持って生きれる。

 そういう自覚を、出来る限り真に、限りなく100%の現実感を伴って、持つように生きるのがいいと思うんだよ」


「ふん、とあるなんたらにおける、パーソナルリアリティー、自分だけの現実、みたいですね」


 特に興味無さそうに、眠たげな、ジト目を向けてくる、あまり受けなかったらしい。


「じゃー、これはどうだ?

 自分の一瞬先からの全将来において、無限に近く高次元な不幸や困難、幸福やその他いろいろが待ち受けていると確信。

 常に精神を異常活性化、強化等々して、生きるというのは」


「はぁ~、、、。

 そうですね、もっと何か、そんな初歩の初歩でなく、キラリと光るような意外性、奇抜性が欲しいです。

 私みたいな美少女を捕まえて、初歩の哲学の復習語りするなんて、純然に、ただただ勿体無くないですか?」


「知らんがな、あと自分で自分を美少女っていうなっての、はぁ~。

 じゃーこれだ。

 自分しか、無限に近い娯楽を生み出す存在はいない。 

 孤高の創造者として、世界にあまり過度な期待はせず、頼れるのは自分だけ、自分こそが自分を無限に満足させられる存在と考えて。

 世界を当てにせず、自分を最大限当てにして、自分に無限の興味関心を持つってやり方は?」


「うーん、うーん、私って、どう見ても美少女だよ、自己申告で威張って何が悪いのさ?

 で、それだけど。

 まあいいんじゃない。

 でも、創造者って難しいんだよ? 知ってる?

 例を挙げるならね、あるレベル階層強度の娯楽を創造するなら、その十倍の娯楽を質量強度、異質多様性含めた質で、記憶して、脳に所持して、持ってないといけないのよ。

 これから導き出せるのは、別に創造者にならなくても、世界に溢れて定期的に供給される娯楽の、受信者でも、全く問題ないって事だよ」


「でも、それだと、生きる次元の強度が、世界によって制限されるだろ?」


「うん、そうだよ。

 特に、こんな、六十億人程度の人間集団のコミュニティーで、受信者に止まり続けるのは、愚の骨頂だよ。

 もっと人口が多ければ、最低でも、千億人、できれば十兆人いれば、別に創造位階に至る必要性は、ほとんど無くなる、ずっと受信者で、十分に、費用対効果が良い。

 ちなみに、兆の次、京の単位や、その次の単位の該、それくらい人間集団の数量があれば、創造者になる意味はゼロになるんだよ」


「は? ゼロ? その話詳しく」


「娯楽文化が、臨界点を超えるから。

 だから、もう人類総体が受信者であるべきってこと、人間である限りは、もう至高の幸福が約束されてるんだからね」


「マジかよ、嘘じゃないだろうな、その話」


「さて、どうかな? 

 少なくとも、君の知的好奇心を、多少なりとも満たせたんだから、真偽のほどは、あまり瑣末じゃないかな?」


「だろうよ、次だ次。

 無限に高次元に生きれば、内面に無限に高次元な存在を再現させる事ができる、って考えを自己の真理信念とかにする。

 だから、娯楽的な情報の収集に、ひたすらに必死になれる、生きる環境や状況の整備にも、最大限努められる。

 そしてこういう風に、自己の内面に存在しえる、無限の可能性としての存在に恋焦がれ続ける生き方ってどうよ?」


「まあ、いいんじゃないかと。

 男性的、女性的、そして中性的、更に神性的な人格や存在を、自己の精神世界で再現再生シミュレーションさせたい。

 ある意味、先言った、創造者、創造位階としての生き方に繋がりますね」


 ちょっと一息付くために、言葉を止めて、飲み物を飲んでいると。

 ニルディアが、肩を寄せ合えるくらいに、近寄ってきた。


「どうした?」


「私が傍にいると、嬉しがると思って」


「戻ってくれ、話しづらくなるから」


 そうすると、渋々対面に戻った、純粋になに考えてるか分からない、不思議行動だった。


「さっき、コレ考え付いたんだけど聞いてくれ。

 この世界には、沢山の種類の娯楽の媒体があるだろ?

 具体的には、最小情報単位に近い小説、言語情報から始まって、次に漫画にアニメにゲームに映画にラジオや配信とか色々。

 そして現実っていう、観測端末からの視点で綴られる、そういう娯楽の分類種類における媒体情報だ。

 分かり難くなったが、つまりは、全ての二次元・フィクション的物語や人生とかは、全て三次元・ノンフィクション、現実で実際にあった事と、出来る限り最大限錯覚とかする為にだ。

 俺は、全ての現実以外の娯楽媒体は、実際にあった現実情報の、二次創作作品と考えて捉えて、認識認知理解解釈、意識意志感覚動作とか色々するのが最大効率効果安定性、安定供給性とかが良いと思ったんだ。

 更に当然もちろん、全ての現実以外の娯楽媒体も、最大限現実的な娯楽媒体情報になるように、変換作業とかをして、逆に二次創作的に再構成とかをしてみる」


「うーん、うーん。

 そうですね、それはかなり技術力が高くないと、あまり上手く使えない気もしますが、、、。

 でも、割と若干天才的な側面が伺えなくも、なくもなくもないような気もしないかもしれません」


「どっちやねん、、、どっちでもいいよなあぁ、もう」


「外出かけたいです、外に行きましょう」


「ああ、分かったよ、準備する」


 いきなりの申し出に、即了承、即断即決が信頼を高めるって、良く聞く話だし、俺って立派だなぁ。


「お金ください」


 駅に近い、デパートの別館一階にある百円ショップで、ジュース片手に、もう片方の手で、そんな要求をしてきた。


「錬金術でもなんでも、すりゃいいんじゃないか?」


 ちなみに、凄く都合がいい事に、普段は空気の癖して、こういう時だけは回りに不自然に見られていない。

 透明人間っぽい属性もってると思ったら、別にそんなこともありませんでしたって感じか?

 どんな原理が働いているのか知らんが、傍目からペットボトルが浮いてるように見えないらしいのだ。

 それに自分で買う気満々っぽいから、姿も見えるんだろう、見えているんだろう、不思議な上にご都合主義が過ぎて、ちょっと無意味に萎えた。


「駄目です、貴方から、百円貰います」


「ほらよ、きっかり百円だ」


「ありがとうございます。

 これで貴方も、施しを与えた、私に対して偉ぶれます、良かったですね」


「はぁ? ああ、そうなんだろうな、別に偉ぶるつもりは無いが。

 てか、本当に百円でいいのか?」


「いいですよ、要求したのは百円ですし」


「消費税を知らんわけでもあるまい、あと五円、じゃなくて八円ないと買えんぞ」


「貴方は、私に対して、意地悪した罪の意識を感じているのですね?」


「ああ、そうだよ、ほら、勝手に受け取れ」


 俺は十円を差し出した。


「ありがとうございます、でもお釣りが邪魔になるので、できれば一円単位で欲しかったです」


「募金でも、するといいんじゃないかね」


「ナイスアイディアです、褒めてあげます」


 言ったとおり、釣りの二円を、レジ横の募金箱に入れた。

 なんとなくだが、それは慈善じゃなくて、ゴミを放るような様に見えた、てか実際その通りなのか? 良く分からんが。


「ニルディア、お前、一円単位に、価値を感じてないのか?」


「当たり前です、あんなモノはゴミです、いらないですし」


 当然のように、”こういう事”を言ってしまえる。

 俺はそういう所に、彼女の浮世離れさを、ひたすらに強く感じる。

 現実に、というよりこの現代社会、現存の世界に対して、全く持って一切合財において縛られない。

 そんな真に飄々とした佇まいってか生き様、ちょっとカッコいいとか、馬鹿な発想をしてるんだろうか?

 なんとなく、彼女の横顔を、執拗に見つめたり、している。

 そいつは、道の下を、なんかキョロキョロしながら、歩いてるんだがね。


「何してんだ?」


「何か落ちてないか、見てるんです、例えばお金とか」


「はぁ、お金には、興味を感じないんじゃないのか?」


「違います、お釣りとしてもらったお金には、興味も価値も感じないのです。

 でもただ、落ちてるお金には、ハッと驚くような感じがするのですよ、分かりませんか? この感覚?」


「分かるが、なんとなく、子供っぽい話だな」


「でしょうね。

 それにしても、子供と大人の違いって、なんでしょうか?」


「無力な弱者が子どもで、有力で強者が大人だろ」


「うん、そんな感じでしょう」


「あーあ、無限に、誰よりも強くて、そして有力でありたいな」


「いきなり、なんですか?」


「俺の生きる意味の、絶対的になりうる一つだよ」


「確かに、弱ければ、不幸になる可能性が上がります、それも無限大に深く、自分以外も広くです。

 逆に強ければ、幸福になれます、不愉快な存在を不幸にしたり消す事もできますしね、あと他人を幸せにもできますし。

 総合的に考えて、何よりも素晴らしい生き方のいちだと、私は思います」


「そうだろそうだろ、だから、俺は限界まで全力で、日々を生きたいと思っているんだ。

 暫定の自己の、限界の最善、尽力した果ての限界、最良を、とりあえずの頭打ちで。

 費用対効果を突き詰める事も含めた、真の費用対効率の限界で、極めて突き詰めて、その果てに無限の後悔のどん底の抜けた果ての底で死にたいのさ」


「はぁ、最後は、どういうルートを辿っても、後悔が無限大数量になるんですか? 貴方の世界観では、現実観では?」


「当たり前だ、後悔が無い、なんて事は、ありえないと信じている。

 だからこそ、後悔を最小単位にしたいとも、思えるってもんだ」


「でも所詮、対極の、矛盾的考え方も、持っているんでしょう、所詮は人間ですもんね」


「当然、人間は多くの場合、矛盾的考え方を所持して。

 その双方をバランスよく持ち、無限に近くひたすらに、極め続けた方が、生きる上での出力は高くなる傾向があるからな」


「でしょう。

 だから貴方は、貴方の人生の果てに、後悔なんて一切無い、そういう信仰心も持っているのです。

 うきゃぁ!」


 ニルディアは転んだ、前方から歩いてきた男に、肩を思いっきりぶつけられたのだ。


「なにしてんだ、お前?」


「あうあぁ、、、」


 うるうるした瞳を向けて、切なげに上目、乙女のように華奢な身体を地べたに預けたまま、なんか立とうとしないぞコイツ。


「騙されるかよ、何がしたいんだ?」


 俺は人外に向けて問う。

 そう、コイツは人外なのだ。

 今も、運命を操り、このただ一つのルートを引き寄せて掴み取ったのだ。


「手を、貸してください」


「まあ、いいがよ」


 倒れてる少女に、自然に手を貸すような構図。

 立ち上がり、埃の付いたのか知らん尻を叩く動作。

 ちなみに丈の中間程度のスカートだ、汚れているのか黒だから良く分からない。


「そういえば、ユニークなモブキャラが沢山居るんですよ、この町には」


「はあ? どういう意味だ?」


「分かり易く言えば。

 他の物語なら、主人公格に抜擢されるような、類稀な存在が溢れているのですよ、この町は。

 むしろ、そういう存在しかいません、いさせません、モブキャラにしておくのが、勿体無いくらいなんですよねぇー」


「確かに、道行く奴が、全員可笑しいとは思ってたんだ」


 家を出てからの違和感は、そういう事だったのかと、今気づいた風を装う。

 だが最初から分かっていた。

 道行く人間全員、どいつもこいつも、キラキラしてるのだ、だれでも異常に気づく、気づかない方が可笑しいと断言できるね。


「で、具体的には、何ができるんだ?」


「なんでもできる、モブキャラを使って、遊ばない?」


「遊ばん、そういうのは好まん。

 だいたい、俺はニルディアが居れば、それで全て事足りる。

 つまりだ、この物語は、俺とお前がいれば、全て満足の行く形で完結する、そういう構図で話だ」


「それって、愛の告白?」


「さあ、どう取ってもらっても構わないよ」


「それじゃ、愛の告白って事で、受け取るよ?」


「俺に聞くなっての、勝手にしろって、言っただろうが」


「私の事、好きなんだね、知っていたけど、改めて言われると、うれしいなぁー♪」


 俺を追い越し、前方を走って、くるくるたーんする。

 くるくるくるくる、、、、いつまで回ってんねん!って突っ込みたくなるくらい、バレーのように愉快気に回っている。


「眼が回らんか?」


「回らないよ、人外だもの」


「だろうよ、でも、回す事もできるんだろ? 人外だもの」


「うん、でも回さないよ、不快感だもの、そういうの」


 そう言ってから、だんだんと本当に人外染みた、アクロバティックな動きも取り入れて、まるで演舞のような事を始めた。

 まあ、大概外に出ると、ニルディアはこういう事をするから、慣れたもんだ。


「ねえねえ、VRMMOって知ってるよね?」


「ああ、それがどうした」


「フィクションだけど、あれが実用化されたら、革命が起こるんだよ、知ってた?」


「知ってるよ。

 あれだろ? 常軌を逸した身体動作、本来なら身体を壊すような、強度の高い情報刺激を延々受け続ける事が出来る。

 純粋に言ってそれは、人間の可能性の幅を広げるだろうよ」


「そうなんだよ。

 プロ野球選手が、肩を労わる必要のない、強烈な投球をずっと続けられたら、ひたすらに爽快な気分だろうね、そういうこと。

 人間が無限に近く、運動動作によって、簡単に常軌を逸した快楽を、情報を得ることが出来るようになるんだよねぇー」


「ロマン溢れるな、試みに、ニルディアが実用化してくれないか?」


「駄目駄目、観測者は、直接的干渉をしないのさ」


「俺と関わるのは、直接的干渉って言わないのか?」


「いつ、直接的に干渉したって、勘違いしたの? 

 君とは、全て間接的だよ、根本的には、何も交わってないもの」


「そうか? それは無理があるんじゃないのか?」


「無理を可能にする、あるいは捻じ曲げる、そういうのも、観測者の領分なのさ」


「それは観測者っていうより、お前の領分っぽいがな」


「そうとも言う、だって私は私であって、同時に観測者だしね」


「アイデンティティが、もう既に広大すぎて、なんにでもこじ付けられそうだな」


「そうだね、私は森羅万象、全てと直結してるようなモノだしね」


「それは、一体どんな存在なんだ?」


「目の前にいるじゃん。

 補足すると、神に操られし、意志や自我ある存在。

 神は、絶対的価値観と、無限を内包するがゆえ、自我や意志をもてないの。

 だから、神を信仰する私たちがね、その価値観を守り攻めるように、生きなくちゃいけないんだよ」


「前に聞いたっぽい話だな、で、神はどこにいるんだ?」


「さて、どこにいるんだろうね、私達は、絶対にどこかには居るって思ってるんだけどね。

 でもまあ、実際問題、居なくてもいいんだよ。

 この世界が、神を絶対に信じられる環境や状況である限り、別に実際には居なくてもオーケーなの。

 いやむしろ、実際に居ると、問題が発生するリスクもあるし、居ない方が逆にプラスなのかもしれないね。

 だってだって、実際神様が居たら、いろいろ面倒そうだよね。

 神様を守ったり、命令に従ったり、他にも実際の神が信じるに値する存在かどうかって問題もあるしね」


「そうか、それじゃ、限りなく神に近い存在とかは、居たりするのか?」


「当然。

 私の上司とかが、多分ソレだと思う、少なくとも、私は最も一番神に近いって、頑なに信じ込んでるよ」


「へえ、そいつは、実際に神様になれると、思うか?」


「うーん、どうだろうね。

 私の持論的には、神様になるのは絶対に不可能だって、絶対的に信じてるけど。

 でも矛盾的に、その上司は全てを可能にする、この宇宙の覇者みたいな人だから、うーん、分からないや」


「神っていうのは、やっぱり人外も人間も、変わらないらしいな」


「うーん? どういうこと?」


「つまりは、自己の絶対の信念、それを無限に全肯定してくれる、そういう絶対の対象なんだろ?」


「うっふっふ、そうだね、その通りだよ、間違ってない。

 この全宇宙を支配する、その対象が、自分と同様の信念のもと生きてて、この宇宙を創造し運営管理をリアルタイムで今してる。

 そう考えると、とてもとても、わたしは胸が一杯に、いつでもどこでも、どんな時でも状況でも、することができるんだ」


「それは良かったな、神様もきっと、喜んでるよ」


「なんか、ひと事だね、君も神様を信じてるんでしょ?」


「いや、俺は神様なんて、信じてないね」


「それは、神様を信じないって事を、信じてるんじゃないのかな? 

 神様を信じない神様って言うか?」


「意味分からんが、言いたい事は分かる。

 つまり、神様を信じないって事は不可能って、そう言いたいんだろ?」


「そうそう、生きている限り、誰でも絶対の信念が、あるはずだよ。

 曖昧に生き続けるなんて、人間に成せる業じゃないもの、それこそ神様の領域だもん。」


「確かにな、死ななきゃ、神の領域には到達できないのかもな」


「うん? 死ぬつもりなの?

 まあ、例えば死んでも、無になるだけで、ソコには到達できないと、私は考えているんだけども」


「だろうよ。

 まあ、自分の中で、絶対の象徴として、神様っぽい存在を信じるのは、悪いことじゃないと思うな、多分に場合によるかもしれないがな」


「私の信じる神様は、どう思う?」


「興味深いと思うな、ニルディアが、興味深い奴だからかな?」


「私の一部だからね、感情移入してくれているんだね」


「そうだな、好きな奴の全てを、なんだか好きになっちゃうって、アレかもな」


「そうだよ、きっと。

 、、、だったら、森羅万象、世界の全てと、多分イコールっぽい私を、好き、愛してくれているんだから。

 君は、この世の全て、事象も存在も、その他全てひっくるめた全てが、大好きなんだね」


「否定はしないな。

 でも、その全てを終結させたニルディアの方が、無量大数大好きだけどな」


「嬉しい事、言ってくれるんだね、私もきみのこと、好きだよ」


「ああ、知ってる、俺も好きだよ」


 そんな睦言っぽい事言っているうちに、家は遙か以前に通り過ぎていた。

 徒然なるままに、歩きつつ話していたかったのだろうね。

今日は一日中、体感時間では30時間くらい本を読んでいた。

 横には、ライトノベルのとあるシリーズ(あのシリーズって意味じゃない)が平積みで十数冊積みあがっている。

 緩やかなチェアに座り、楽な姿勢で読書、休日はこれに限る、かもしれない。


 そしてベッドに、ニアディアが居る。

 類稀な身体を、ただ縦に座らせて、パラパラ漫画のような勢いで、ページを捲くっているが、あれが彼女にとっての”視る”らしい。

 俺が12巻ワンシリーズ読む間に、もう1000冊くらい見たような心地である。


「お前って、改めて考えると、凄く恵まれた存在だな」


「馬鹿な事を、この世界に、恵まれた存在などいない」


「その真意は?」


「はぁ、さっさと神の領域まで、悟りきれ。

 そうだな、無我の領域まで悟りきらなければな、到底人間を極めきって、突き詰めきったとは言えんのだ」


「うんうん、それで、恵まれた存在がいないって意味は、果たしてどういう事だ?」


「お前は、等価交換の原則を知っているか?」


「もちろん、ああつまり、幸福を得たら、その分の不幸を得るからって、こと?」


「そうだ、だから、恵まれた存在も、恵まれない存在も、この世界には決して存在しないという意だ」


「そうかぁ、、?」


「絶対的真理だ、何の間違いも無い。

 私達は所詮は物質だ、高次元の事象か、低次元の現象か、とか、そういうのがあるだけだ。

 そして、人間は生きる事に関しては、無上の天才性を有しうる、なんと言うか、そういう的な存在なのだ。

 だから無限に娯楽や快楽、幸福に従属し、同量の不幸を厭わずに求め続ける。

 いや厭うが、不幸や幸福観を超越した欲望、退屈に耐えられないので、そのストレス等に従わされるのだろう。

 この原理だが、高度な脳の働きに基づく、人間は絶望の中でこそ希望を強く感じる、絶妙で無限にバランスを極めて物事を感じ生きる。

 絶望の底でも生き続けて、前向きに希望に、高次元に至る為に生きる。

 で、だからだ、私たち人間は、弱く愚かで、無限大に神に、絶対の存在から程遠く、其処に無限に到達不可能な存在だ。

 人生において、ただただ高次元の事象に至りたい、その自我にのみ従う、それだけだ。

 その自我を満たすか、満たさないか、つまり欲望だな。

 欲望を満たすか満たせないか、その要素として、恵まれているか、いないか、という話だが。

 幸福不幸も意味は無く、欲望だって、無限に湧く、底なし沼のようなモノ、人間なんてどう生きようが意味は無い。

 よって、恵まれている、などという事象や現象は、そもそも存在しないのだ。 

 この無限大に、破綻し崩壊し破滅した、この世界で、その一部でもある人間にとってはな」


「確かに、一から十まで聞くと、納得できる、気がする」


「その納得できた感覚が大事だ、それこそが理性の片鱗になりうる、おまえ自身だけの感触と心得よ。

 でだ、人間とは高次元の存在に至る為だけに、高次元に欲望を満たしたり、退屈をする事で、そうなるから、最大限そのように生きるんのだ」


「ふーん、なんでお前達神は、そのように生きる事、幸福不幸を度外視で、娯楽の為だけに生きれるんだろうな」


「神じゃない、神に限りなく近いだけで、絶対性は有しないぞ。

 答えは、最終的にプラスマイナスがゼロでも、途中計算が複雑であればあるほど、純粋に面白いから、そういう例えに答えが見出せるだろうな」


「楽しいから、面白いから、生きる、なら、恵まれているって要素は、やっぱ存在する気がするんだが」


「絶対に無い、これは私の信仰とか、そういう話じゃなく、絶対の真理だ。

 そもそもが、楽しい、面白いから生きる、というのが神の領域に至れない人間である事の証明だ。

 つまりは愚かで弱く、どうしようもない生命体という証明に他ならない。

 幾ら幸福で、楽しく面白くても、同量詰まらなく下らないのだから、そもそもが意味が無い。

 なのに生きる、破綻した存在が、破綻した世界で生きるのだ。

 どうだ? どう考えても、こんな状況で環境で、”恵まれる”だの”恵まれない”だの、そんな要素は存在し得ないのだ」


「それは、神の視点からじゃないのか? 人間の視点から語ったら、果たしてどうだろうか?」


「人間の視点? そんなモノは無限に存在するから、語れんよ。

 お前ぇ、こういう話は、聞いたことないか?

 優秀な人間は、生活模式が似る、とかだ。

 逆に、愚劣な人間の生活模式は、多岐に渡ると。

 これは神に近い人間は、この世の真理の多くを悟り、それに沿った生き方をするから。

 愚か者は、真理に沿わない、無限に拡散するような、無駄な事をするから。

 この世には、無駄な事なら沢山あり、有意義な事は少数、見つけ易さの存在比も圧倒的に違う。

 だから、人間の視点など、娯楽以外の用途で不要。

 ただ一つ、神の視点、真理だけを知っていれば良いのだ、分かったかぁ?」


「分かったよ、何が言いたいか。

 そもそもが、恵まれるだの、恵まれないだのは、娯楽以外の用途で使いようがないって」


「その通り、真理が娯楽の頂点だ。

 それを支える形で、真理以外は知れる分だけ知っておけば良いのだ。

 まあ、真理をより深く知るためには、真理以外を広く深く、どこまでも只管に無限に知る必要がある、そういう話もあるのだがな」


「そうか、娯楽が重要って、さっきから言ってるが」


「もちろん、脳に記憶さす娯楽の総量が、欲望や退屈等々、それらストレスに対する耐性の総量。

 どれだけ高次元に生きて、高次元な存在に至れるか、それを決定付ける為の、大きな一つの尺度だ。

 だから、娯楽は重要、なモノの一つなのだよ」


「なにが、具体的に重要な娯楽だろうか?」


「レクチャーしてやろう。

 第一の基礎に成るモノ、娯楽であり情報なら、言語というモノが挙げられるだろう。

 言語というのは、全ての娯楽の媒体に、関連付けたり、変換、逆変換等々することができる。

 絶対の普遍性と単純性、更に汎用性と応用性を併せ持つ、柔軟にして強固な強度を、人間の脳で唯一に近い形でも持てる情報の在り方だ。

 これをどれだけ高次元に扱い、言語思考力や、想像力として極め突き詰め、精神世界の娯楽を高いレベルで維持できるかが、重要だろうな。

 その為にも、収穫逓減の法則を意識しつつも、一つの超重要な娯楽の媒体として、一生を通して扱うべきだ。

 総合的で全体的な言語情報力、質と量と強度、多彩多様性も含めて、費用対効果の限界で、上手く維持向上させるべきだ。 

 これらの脳の働きの次元性、高速想起力や、連想想起力、情報価値総量力等々、その他、様々な応用発展力等々、できる限り高くするべきなのだ。

 だから日々、身体を動かす感覚で、脳を言語的に動かして、高次元に働かせる事ができるようにするんだ、最善を尽くす形でな」


「うんうん、大事だな、それは」


「冗談じゃなく、本当にな。

 機動兵器の戦闘のような、ものだ。

 どれだけ多くの、戦闘機動を知っているか、それに基づく情報処理能力の速度、最適化度。

 それが射撃の正確さ、回避の上手さ、近接格闘戦の高さを、絶対的に決定付けるしな」


「分かった、他に、重要そうなメディアはないか?」


「それよりも、だ。

 ああ答えはない、言語以外は、全部団栗の背比べだ、優秀な人間はみな本を読む、読んでいる、だろう? 他はない、というより知らん、わけでもないが、特筆するほどじゃないって感じだ。

 愛を、育むぞ」


「愛? って?」


「なんとなく、魂の震えるような、そんな言語化できない、そういうイメージ的な感覚だ」


「それを、育むと?」


「ああ、むろんもちろん、お前とわたし、と、でだ。

 それでだ、最近は、セカンドワールドという、ネットワークゲームが流行っているようだが、、、」


「待った待った、ニルディアは、生きる意味なんて、あるのか? そういう方向性で?」


「ないな、わたしの一方的な、慈善事業だ。

 と、言いたい所だが、そうじゃないのが残念なところだ。

 わたしは、お前が今より高次元な存在に成ったり、仮初の幸福を得たりする、そう見えたりすると、魂が震えるような感覚がある、つまり、愛が、愛情みたいなのがあるらしい。

 わたしは今、そういう愛の未知なるパワーに魅せられ魅入られている、というわけ。

 だから、お前との愛を、今より絶対のモノにしたいし、まあこれは人間だから、絶対の強度にするのは激ムズそうだが、これにおける不可能を可能にしたい衝動は抑えがたいので、なんとかして画策しよう、絶対に無理だが、今より強度の次元を高くするのは、十二分に可能だしな。

 でだ、愛してるから、愛を育みたい、今より高次元にしたい、最大限協力せよ、身を粉にして尽力せよ。

 わたしにとって、お前が高次元に動き回るのが、最大限の幸福であり娯楽であり、悦楽とか快楽等々に直接的に繋がるのだよ、絶対的に唯一な。

 まったく、神に最も近いような存在であるわたしを、このように魅せるなど、本当に罪深いほど愛くるしい奴なのだろう、お前は。

 いや、そうでもないのか?

 とにかく、この世界というゲームにおける、やり込み要素として、当座の攻略目標は、どうやらお前だけで、優先度もお前が一番、というわけ」


「よく分からなくも、なくもないが。

 第一に、愛ってなんだけっか?」


「そんな事も知らんのか。

 愛とは、信仰であり希望であり、夢や理想や願望や欲望とうとう、最も崇高な事象の総称だ、少なくとも関連付ける事が可能だ。

 わたしはお前だけを、唯一絶対に信じれるし、希望とできる。

 無限に広く深く、この世の特異点のように、夢や理想を見れるし、感情や欲望を抱く事ができるのだよ」


「俺も、ニアディアを、ちゃんと愛せてるかな?」


「うん? 駄目だな、全然駄目だな、わたしが満足できないから。

 わたしは底無し沼だ。

 私よりも上位の存在に成り、屈服させるくらいじゃないと、駄目だが、それは人間程度の矮小さでは掛け値なしの不可能ごとであろう。

 私のフラストレーションを、多少なりとも解消する為に、気張ってくれ。

 幸福も不幸にも、興味がない、つもりだが。

 欲望や退屈は、多少なりとも、お前に、なんとかして欲しい、わたしは、そう、それを願って病まないのだ。

 私は病んでいるのだ、いつもな、精神が、常に異常に活性化している、愛によってな。

 いつもいつも、私は、私を含めた世界の全てよりも、お前を優先するだろうし、絶対に価値を感じ、絶対の強制力や影響力を認めるんだ。

 このどうしようもない愛情を、僅かでも、最小単位でも満たせれば、私がどれほどの悦びを感じれるか、お前では一生掛かっても共感できないだろうけど、不可能ごとだろうけども、最小単位でも共感して欲しい、理解して欲しいと、私は何時も思っているぞ。

 君が、私の愛情を少しでも感じて、その感受性を引き出し引き伸ばし、それを踏まえたうえで、最小限以上でも高次に生きてくれるだけで、もう私は無上の幸福を、満足や充足を感じれるのだよ。

 さて、何をしようか?」


「何でもするよ、何すればいいかな?」


「君がしたい事を、わたしは何でもしようじゃないか。

 さて果て、お前がわたしをどれだけ喜ばせ、満足させてくれるか、楽しみでしょうがない。

 何処までも只管に無限大に、ただただ、この全時空世界を、どのような形でも生きたい、生きたいと思わせてくれるのだ。

 わたしの方は、どんな人生でも、お前と一緒なら、なんでも良いのだろう。

 つまりはお前次第だよ、なにもかもな、全てという全てが思うがままだ、私の意志など無い、無にも等しい。

 だって、お前が居れば、それで全てが始まり、全てが終わるも同一。

 神の領域まで自我を失い無我に成ったような存在だ、私の意志など、”ほぼ”の強度でないのだよ。

 私の要望よりも、お前の要望を優先してくれて、まったくもって構わないという事だよ」


「そうか、それじゃー、うーん、なにしようかなぁ?」


「私に聞くな、私は何でも良いのだからな、ほぼな。

 でも、強いて言えば、私の意見を参考にして、私のほぼない、自我に基づく要望を聞きたいなら、答えよう。

 さっき言った、セカンドワールドっていうネットゲーム、あれが、あれを、お前としたい」


「そうか、それじゃ、それ、しよっか?」


「うむ、もちろんだ。

 恐らくだが、いや絶対だけれども。

 お前は私の要望を聞きたい、そんな性分なのだろう?

 だったら、私はそれに従うだけだしな。

 しかたない、しかたない、お前と遊んでやろう、わたしも遊びたいしな。

 で? 本当にしたい事は、それで良いのか?」


「本当にしたい事は、俺にとって、唯一つだよ。

 ニルディアの、ほぼないって言う、自我に基づく要望を、満たしてあげることだけ。

 それ以外は、正直に言って、100%どうでもいいしね、それが俺の、ニルディアに対する高潔さと認識するからね」


「カッコいい話であるな、なんて都合の良い彼氏だ、褒めて遣わすぞ」


「ありがとう。

 嘘じゃないよ、本当に今までも、そしてこれからも、俺の生きる全ては、全てを、それだけに集約させるんだ。

 最も神に近い、その意志の方向性に沿って生きるのが、最も意義あるモノだと、俺は思うんだ」


「だろうね、もしかしたら、最善解になり得る、たった一つの冴えたやり方だと、私は思うよ」


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