バンブロ‐アヤカシと人間の世界
「シャル、かわいい、浴衣だね」
「てか、ここどこよ、あなたに褒められても嬉しくないわ」
ここは、始まりの地。
アヤカシを無尽蔵に生み出す、玉が、これから覚醒する場所だ。
「たしか、ある少女が生贄にされるんだ、
シナリオとしては、
その少女が血を流して、絶命することで、例の玉が封印される、
でもそれを、兄が阻止して、いろいろと厄介になる、
二人は逃亡して、僻地で暮らす、
そしていつしか、西の果て、二人は東の果てに逃げたんだね、
そこからアヤカシの大群が、溢れてきて、二人は己の罪と相対して、世界を救うたびに出るってね」
「知っているわ、与えられた権限から、あなたの知っている程度の事は、全部把握しているのよ」
優秀でけっこう。
自分たちは今、始まりの地の、お祭り、大規模なモノに参加している、テイだ。
「いいね、こういうのも風情があるよ、この世界は気に入っているんだ」
「全部の世界で、あなたは同じ事を言っている」
「だろうね、全部好きさ」
それから、祭りは佳境を迎える。
巨大な寺院、その内部の、巨大な境内で、生贄となる巫女姿の少女が現れる。
信者らしい坊さん以外にも、たくさんの人達が、涙を流しながら、感謝を送る。
皆が絶叫して、この場の悲壮感もマックス、
自分は初めてこれを見たとき、もっと中世の魔女狩りのようなモノを想定していたが、
これはなかなか、人間的な情緒があって、良いと思った。
「で、これからどうするのよ?」
「ああ、裏側から回り道して、玉の完全覚醒を、暗躍するんだ」
そう、このシナリオには裏があり、普通にやっても、アヤカシが世界に溢れないのだ。
ある超天才の活躍で、玉の封印が行われてしまう、
それを自分たちが邪魔するのだ。
「なによこれ、この泥の沼を、渡りきるの?」
それから深夜まで続いた祭事が終わり、あたりが静まり返る丑三つ時。
「そうだよ、この大体1キロメートルの、泥沼を、自分たちは渡るのさ」
「ちょっとこの沼、くさいんだけど」
自分は「我慢してね」と冷酷に告げて、自分は沼に足を浸し、腰まで浸す。
「きなよ、シャル」
「、、、嫌よ」
「妹が酷いことになるかもしれないよ?」
「くぅ、、、わーったわよ、やってやるわよ」
自暴自棄に、涙目で、体をぞわぞわざわざわ、させながら沼に入る。
入る瞬間に「きゃっ」とかわいい声が出た。
「ちょっと、シャル、今の声かわいい、もう一回出せない?」
「絶対に嫌、あなたがそういう事を思うって知ったら、なおさら出して何やらない」
「お願いだよ、もう一回、シャルのかわいい声を聞きたい!」
自分はシナリオなんて、もうそっちのけだ。
この女の子の神秘を解明する事と比べたら、すべては些事に思えた。
「ちょっと、やめてよ」
シャルのきめ細かな肌を、さわさわ、本当にしっとりと滑らか、美しく瑞々しく弾力に飛んだ、
それを厭らしく触って、さっきの不快感を与えて、声を出させようとする。
「やめてよ、いやよ、こんな抵抗できない女に、そんな事をして、己を恥ず心はないの?」
「うん、そうだね、シャルのさっきのかわいい声は聞きたいけど、
抵抗できなくて、そんな切ない瞳で懇願されたら、自分は優しいからやめるよ、
いや、やめてあげる、
ここでこういう優しい面、男気あふれる姿を見せれば、
シャルに本気で好きになってもらえる、そんなフラグも立ちそうだし」
「馬鹿じゃないの、既に好感度ゲージが撤廃されるレベルでしょうに」
「でもどう? 実際、やめてもらえて、嬉しいよね?
実際問題、口でしか抵抗できなくて、自分がその気になれば、どこまでも侵食されるの、
なのに、自分はそれほど、シャルにひどいことをしてないの、
これって、やっぱりシャル的に、少しは心に響く感じじゃないの?
シャルは本当に世界広し見ても絶世の美少女、
でも自分は安易に手を出さない、ねえ、紳士だって、そう思ってるよね、
嬉しいよね、こんな男にめぐり合えて、
だって今まで、周りはシャルより低次元なのしか、てんで居なくて、
たぶん、他人を歯牙にもかけた事がない、そんなレベルの絶対上位の
孤高で、孤独で、気高いシャルが、
こういう目にあって、乙女心が、揺れないわけない」
「、、、、、ねえ、向こうの方から、醜いアヤカシっぽいのが、来てるのだけど?」
見ると、確かに、日本の妖怪辞典のオールスターっぽいのが、うじゃうじゃ沼を掻き分けてる。
「ああ、まあ、大丈夫、この沼を潜って、あのアヤカシにぶつからなければ、
気づかれない、
これでも、マイナーな攻略法は、楽しいから読み込んでるの、すごいでしょう?」
「潜る? この沼を?」
「ああ、突っ込みどころは、そこかぁー」
「嫌よ」
「妹がライ、ryカッコのアレね、もしネタが分からない時の、いや分かりづらい時の保険よ」
「うぅ、最低最悪の日だわ」
しぶしぶ、二人で沼を深く潜って、アヤカシを直接ぶつかり掛けながら、
難易度の異様に高いシーン、一キロメートルを走破する。
「可笑しいな、放置すれば、アヤカシは普通でないんだけど」
「どういうことよ」
「特異パターンは、レアパターンは、沢山あるの。
ゲームは飽きるから、そういう作りこみもあるの。
それを見ると、あー、内容検索なら、1000以上ある特異ルートでも捗るわ。
なになに、
このパターンは、天使召還のイデアを、アヤカシの玉に封入している奴だって」
「はあ?」
「つまり、アヤカシの玉を覚醒させて、一時的にあいつらが出てきて。
そのあと、某超天才が、天使召還のイデアを、玉に封入したの」
「はあ、それで、これからどうなるの?」
「いや、なんか別ゲーになるっぽい、某ポケットにモンスターを飼うみたいな、
たくさんの可愛くてラブリーな天使が、世界に溢れて、
なんかすごい桃源郷、天国みたいな、幸せに溢れた世界になるって」
「いいじゃないの、楽しそうよ」
「本当にそう思う? 血みどろと殺戮と戦闘に溢れた世界と、どっちがシャルは好き?」
「言わせないで、察して、ちょうだいよ」
「だね、ここはもういいや、平和主義の穏健派が好みそうになっちゃった、
別の平行世界に行くよ」
自分たちは、なにやら向こうから笛の音がしだした辺りで、その場から消えうせた。




