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最終観測者による世界の終焉‐イリスかシャルのエピローグ





 「いやいやぁ~、これは案外大変だったよぉ~?」


 いつか聞いた、前にも増した感じの、悪意に塗れた声。

 だが、擦り切れても、狂気を一切孕みはしない。

 全身から溢れ出す気は、正常なモノ、平常に悪意を向けているのだ。

 地を這うようにスッスと近づいて、厳かな声で語る、それが耳へ流れ込む。


「25該人もぶっ殺しちゃったてっから。

 もうそこ此処、この宇宙谷には、コロニーだけ、それを落としてくるっていうのは、ないだろう? サァー?」


 一瞬にして思考が回った。

 全身といわず、脳細胞の一つ一つに至るまでに、鳥肌が立った。

 出会った頃と比べても、容赦がない。

 これは、何故か、とても私が気に入るタイプのアレだ。

 コイツっらしく、それ故に、その奇なる異なる、言動も、目が眩んで、立っている事もやっとだった。

 それでも、戦いの中での快感、気持ちよさには、劣るがね、コイツを見直したのだろう。

 私へのコイツの想い、多少なら振り切らず、受け取るのも吝かじゃない。


 それきり、国という国は消えた。


「その光の聖騎士とやらをして、全うすることは敵わず、か」


「ああ、あのそれを誓ったはず、なのにね、強敵ではなかったよ」


「そうか」


「どうして、そんな、落ち着いてるのかな?」


「ようやく多少、落ち着いてきたのだ、意図して落ち着きを保っているだけだ」


「ううん、余りの急展開に、歌姫としての声を使いすぎた感があるし、休憩だね」


 、、、で、そう問いかけるのは、また今度の機会にした。




 歪だ。

 目に映るものが何もかも。

 なぜ、これほど歪で不快しか醸さない世界で、みな平常に正常に生きられるのか?

 まあ、いい、私が狂気を凶器で撒き散らし、狂わせればよい、のだ。

 そんな、赤色だけで、の、構成されたの世界。


 全世界を、作りし者はわたし、だけ。

 唯一無二の城に鎮座するべきは私。

 先に進む事が許される、安に易し紅玉の主も私を選んだ。

 他の何にも、私は一切の影響を受けず強制されない、自分の事は全て自分で決定いたします。


 パチリと目を開ければ、何時もの風景だ。

 外はどこまでも果てない、広い広い世界が在るのみ。

 世界は日々、事もなし、私が事を起こすまでは。


 既に、日が傾き落ちた。

 翼を広げて、空を飛ぶ。

 太陽を追って、どこまでも。

 暮れかけの光景を追っていくと、辿り着くは真っ赤な夕焼け空。

 綺麗だ、が、何時までも見ていられない、はずの絶景。

 飛び続ければ、ずっと見つめることが出来る。

 終わりの無い夕闇も、何もかも。

 世界を規定できるという事は、何にも増して素晴らしいことだと確信する。


 薄暗い室内に帰り着く。

 そこを照らしているのは唯一無二の光。

 だからか、そこには楚々とした趣がある。

 それ、視界に映るものが、それだけ。

 もう、こんなに何も無い、殺風景な場所。

 さっきの荘厳壮大なる真っ赤な紅との対極に驚嘆する。

 世界とは、位置を帰れば、これほどに異なるのか。

 別世界、平行世界、パラレルワールド、異世界に行く必要も無い。

 世界なんて、見方一つ、角度一つで、千差万別玉虫色に変化し曖昧としている。


 するする、するする。

 これは、○○なのだろうと思った。

 しかし、やめられない。

 享楽と快楽には、最終的には抗えない。

 理性とは、感情を最大化させるもので。

 感情を律するのでなく、己の感情全てを踏まえて、生きる指針を決める為にある。

 更なる享楽と快感、悦楽の衝動を満たさんが為、自分を変えたい殺したい、変革の熱望は、自殺志願者の狂気に通じる。

 自分の為に生きるのに自分を殺す、果たして人間とは誰の為に何のために生きるのか? 

 答えは決まっている、自分を最後まで客観的に見つめる、絶対の鑑賞者の為だけに生きるのだ、それが答えだ。


 血の匂いが酷くなる。 

 鼻をつんざく、ような匂いが好みなのだが、でもこれは酷い有様。

 すぐにやめたい、だけど、殺戮の闘争心は止まるところを知らないようだ。

 更なる、果てない戦闘を求め狂う己の心の底、その疼きと衝動を止めるのは己には無理だ。

 認識を改める、これで、良いのではないか? と。

 己の真に成したい事を、成すがままに任せるのだから、これが最善に思える。

 床や壁に撒き散らされた、酷い者、モノ、物。

 赤紅で塗られている数々の残酷に、性根が染まってしまいそう、否、既に手遅れ気味か。

 赤という色は素晴らしい、ただただ惚れ惚れして、魅せられずにはいられない。

 誰が流したか、それすら忘我して、、、。

 それは己と、己の愛したモノが、流したらしいと、気づいて、それらしい赤を全て飲み干すのだ。


 新しい己と世界は、常に上昇と常勝を続ける。

 聖なる母に見守られ、絶対の守護を受けた我と我らに敵無し。

 その映し出すヴィジョン、未来の像は、決して今の延長線上では見れない、絶対に素晴らしき何か。

 昔の私らしきものが転がっている。

 不必要なモノは排他される、ことに、元は一人の矮小な少女だったのだ。

 今は教会の長として、天界に比する場所、嘗てにだっただろうこの場所で、天下一と成る。


 それが今。

 いや、正面の現実は、ガラス細工のように切り刻まれる。

 堕ちながら反射する窓という窓、全てが無限の煌めきとなり、光は乱反射を繰り返す。

 一定は粉々に砕け散り、現実は割られてしまった。

 割れた現実、そこには、神聖など一欠けらもない。

 流石に、後戻りも何もかも遅すぎた。

 過去の面影すら何もかも、見当たらない。

 なんて、酷い。

 こんなにも酷い事をした、それが実態としての光景で現出した。

 罪、なのだろう。

 顔見せできない、私は私すらを覆っても、私からは逃げられない。

 そうなるはず、確信の運命も、手から零れ落ちた。

 最後の切り札、すらも既に真っ赤に染まり、無用の長モノである。

 私は罪を覆い隠す、どころか、その話は当然無限大に広まる。

 こんなはずではなかった。

 ふと、視線を向ければ、数多の無限の存在が、私を罪人として見る視線。

 自らの内に宇宙を作っても、同じことだ。

 服役しても、贖罪に手向けて黒装束で畏まっても、意味はない。

 私へ向けられる何かは、もう憎悪と嫌悪以外に、そこには無い。


 いつもなら、何も思わないはず。

 着るはずのない、媚びた成りをして、ふんわりとした純白の存在を装う。

 ドレッドレス。

 なにがあった?

 綺麗なモノは、紅と赤であり、装飾のなされた純白は、無味乾燥、何も私に感じさせてはくれない無用以外に何物でもない。

 それに、もういいだろう?

 これでもかと不意を突き、裏切り、と言った具合に暴虐を尽くせば、世界全体に赤が散りばめられる。

 腐っている。

 これが全て私の真の望みだ、紛れも無い、心の底から望んだこと。

 世界を真底から見下し、己の優位性を絶対の領域で確信する、それが能だったのだ。

 私にとって世界とは、遥か以前から敵だった、から。

 デコデコした装飾はいらない、私のみが着飾れればいいのだから、世界は引き立てに回れ。

 レ・ミゼラブル、惨めで、そしてどこまでも不幸なさまだ。

 ショート寸前、私が救いを差し伸べなければ、死ぬ世界、常にそうあれば、言う事はない。


 だったら、どれだけ良かったか。


 それにしたって、世界は鬱陶しいほど巨大で。

 ここでは何が起こっているのか、全体を把握するのが困難に近い。

 神が作ったのだろう?

 何故、自分は存在するのか?

 ここに存在するのに、意味はいるのか?

 なに一つ明確に知れない。

 分からないことだらけで、とにかく、毎日をとりあえずは生きていたい、そんな怠惰のような意志だけ。


 この状況。

 やけに冷静に見つめることができる。

 私のアレな思考回路でも、だ。

 兎に角、私は今のままで満足できない、それだけは確かな話し。

 ここから、どうすればいいのか?

 至れる階層には極限まで上った、これ以上があるとは、正直思えないほどに。

 ゲームとしては全クリと思えるこの状況、更に隠し要素でもないか探すかのような、先行き不透明な日々。

 ゲームの枠の外から、何かが来れば、面白い、私も外に向いたい、心躍るような冒険がしたい。


 身に危険が迫れば、逃げなければ。

 苛められるのは、どちらかといえば嫌い、なのだから。

 自分だけは、そうならないと考える。

 それもいい、だろう、自己を特別視し、それを確信する事には、一定で意味も価値もあるのだから。

 だが、見たところ、このままでは拘束される。

 今はされていないだけで、遠からず、そうなるようだ。

 ならば、とっとと、一歩足踏み込んで、回避か打開打倒をしなくては。

 だが、ところ変わって、世界は狙ったように、思いがけない展開を演出してくれる、だからやめられないのだけど。


 声がした。


「邪魔をしたね」


 あ、目ェが覚めた。


「シャルちゃんったん?おはっよ〜♪」


 声の主は、誰だ? 分からない? この私が?

 なんでもないように、ただただ笑っている。

 ながら、こちらへ接近し、私を小突づいてくる。

 それは懐かしい感覚、仲間と呼べる存在のいない私。

 だが、目の前のコイツ、まるで昔の、あいつ等のようではないか?

 ゴミのような奴らだった、でも、どうしようもない哀愁、現に懐かしさみたいなので涙が止まらない。

 このような、一人、孤独な旅の中で、初めて出合った、気の合う同格者。

 よく見れば、見慣れた人物でもあった、のか?

 見極めて、知れた、アイツだ、あのゴミだ。

 まあ、だからと言って、安心感などはない、ゴミなのだからな。

 むしろ、警戒心が上がった、トレードマークの八重歯も標準装備。

 存在理由、レゾンデートルとも言える、帽子に付着したマカロン型の何かアレ。

 それと、カッコいい軍の、支給品っぽい量産品の制服姿。

 白かったはず肌は、健康的に染まって、それらを赤に染まめているのは、興奮しているのか、どうか。

 わかっているのか? 

 私は気にも留めず、舌なめずりして、彼女をジロジロ嘗め回すように見る視る診る観る看る。

 っているところを、対手の観測者も、しっかり見て、思いつくことはただ一つだろう?

 どう考えても変態です、本当にありがとうございました、ってところ? カネガネ間違っていないと思う。

 彼女が、この惨劇、人類最大の悲劇の創造者だとは、思いたくないが。

 これを作ったのは、彼女としか思えない。

 そんな彼女だから、私は逃げなければならない。

 それはとかく、直感にも本能が全力で叫んでいる。

 しかしでも、こんな時に限って、感情が言う事を聞かないのだ、膝が笑い出して動けない。


「大好きだった、その愛しさも、何時かは消えるはずだった。

 でもだよ、愛してる、今でも、ね。

 それじゃあ、足りないかな?

 少なくとも今は、私は、君が私を思うくらいには、好きだよ?」


 それを言い、事によっては、彼女は私を、引いては世界を手にする。

 全てを包み込むようにして、私を抱きしめた。


 彼女にとっては、これは力の加減を間違えたやり方だろう。

 加減をしているつもりでも、世界は実際、それほど頑丈にできていない。

 吹けば飛ぶだろうが、痛みを感じれば絶望して死を思い世を儚む。

 しかるに、程度を弁えず、”それ”には力が入れられていた事になる。

 世界は抵抗しようにも、あまりに彼女は強すぎる、話にならないほどの、絶対の力量さ。

 そも私も手を貸した、この細い腕で、だが敵うわけもない、世界はあまりに脆弱だから。


「エターナル・ドクトリン・ウルトラインペリアン、、これは、思ったより苦しいな」


 それでも、世界は抗わなければ、いけない。

 とっくに、乾き切った大地を相手に、口を開いては砲撃を促す声を出す。

 零す涙は、誰の為だろうか? もう分からないが、とにかく私は泣くことができていた。

 思った以上に手強い。

 世界とは、これほど掠れてもなお、立派に、今にも消え入りそうなはずなのに、声が止まない。

 だったが、彼女は届いたようだ。

 ごめんと謝りたい気分だ。

 揺られ揺られ、ゆっくり離れる、放たれたっと、一定の距離を進むと、時空の狭間が作られる。

 なんとか、世界に立脚、保つことも出来た。

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