レイジネットワーク‐物語と幻聴伽耶の図書館司書
「在る物は、ただ在る物でしかありません、人間だって、例外なんかじゃ、ないんですよ?」
矛盾領域、エクスラシャペルン学園、付属、大図書館の一室、にて
「主様の作品凄い! ぶひぃー!ぶひしぃー!!」
可笑しな人がいた、俗に変人とも言えそうだ。
彼女は普段は冷静沈着な、メガネの似合う銀髪赤目の麗しい図書館司書なのだが
何かしらのスイッチが入ると、デフォで豚の鳴き声みたいな奇声を発しながら、頬を紅潮させて興奮するから、偶に瑕どころの話じゃない
彼女がいま読んでいるソレは、この都市の主が直接描いている作品である
彼はかなり速筆な方で、月に何冊も出版するのも、最近ではそう珍しくなくなって、彼女の喜びやら発奮も一塩なの、かもしれない
「ルヘル、それ、面白いのか?」
「ぶひぃ!!ぶひぃ!!!」
聞いちゃいない
目の色変えて(実際変えて)、本の文字を目で追う作業だけに全神経を集中していらっしゃるようで
「おい、そろそろ五限の、講義の時間じゃないのか? そろそろ行かないと、、、」
その後、本を取り上げて、頭コツン、いやポカン位して、目を覚まさせて講義の行われる部屋に行った。
「さて、貴方の最近見た、夢の話でもしましょうか? お・と・も・だ・ちぃ」
お友達、ね、なんだか酷く魅力的ながらも、白々しいというか虚しいと言うか、退廃的と言うか響きだ
チャームという魔法があれば、いま不意打ちチックにリアルタイムで掛けられたような気分
それだけ、彼女の発する声、仕草、瞳etc,etc,から発せられる、その”お友達”という台詞には魔性の魔力があった、恣意的に込められていたかは永遠に不明だが
「おい、課題の、原稿用紙数十枚単位の、小説執筆は終わったのか?」
「終わった事でしてよ、だから、このように暇な時間を割いているのですわ」
講義は、担任の急用により、ほぼ自由補修のような有様であった
俺は「そうかい」とだけ答えて、既に書き終わった原稿用紙を脇によけてスペースを確保して、肘をつく
「それでぇ? 夢の内容かい?」
「はい、そうですとも、語り合いましょう」
彼女はこのように、頻繁に夢を教えろと言ってくる。
他人の夢の内容を知ることで、自分の夢の内容を思い出す精度を上げるとか、なんとか
なんかオカルトチックな話だ、現実味に欠けるファンシーな話題は情緒不安定になってくる
コイツと話してると、こういう話題も相俟って、ますます催眠暗示的に魅了されてしまうんじゃないかと、偶に恐怖するのだが
「夢って、そんなに良いものか?」
「ええ、特に、二度寝してから見た夢は、格別に良いものである可能性が高いですわ」
「ふん、良い御身分だな」
彼女の語って聞かせる夢は、いつも迫真ていうか臨場感に満ち溢れている、粋がよく瑞々しいのだ
ジャンルはときどき様々いろいろ、だが、脈動的な、まるで実際に旅行でもしてきた後の土産話のような語り口調なのだ
夢見るたびに異世界にでも召喚されてて、それを夢と勘違いでもしてるんじゃないかと、うたがりたくなるね。
「さて、私の夢語りも一段落したところですし、貴方の夢をどうぞ、お友達」
「ああ、そうだな見てねーな、最近」
そっけなく答えるが、実際そうなのだから、しかたない、残念そうだが悪く思うな、ネタが無いんじゃ語れないだろ?
「そうですか。
ですが、こう考えると面白くありません? お友達。
いま、この状況、世界、人生が、実は夢の世界でリアルタイムに体験していることだと。
っそして、夢から醒めて現実に帰れば、此処での記憶は、曖昧な数パーセント、いえ零点数パーセントしか覚えていなくて
まるで、まさに夢のような体験として処理されて、貴方は現実に立ち返って何事もなかったかのように生きていく。
そしてまた就寝につくと、この夢の世界に帰ってきて、私との何気ない日々をお過ごしになるんですの。
ねえぇ?これって、想像するだけで凄くトキメク、良い話だと思いませんか?」
俺は「そうかもな」と、またそっけなく答える。
彼女の、なんか情熱的な気の感の入った潤みを帯びてそうな瞳を見つめ難くなったからだ。
こんなロマンス小説みたいな出来事、己の夢でしかなかったら、ちょっと悲しくなるぞって思いつつ、さらに顔を背けた




