観測者領域その2
「やあやあ、イリスだよぉー」
規定現実、リアル現実世界の俺は、偶にこういう奴に出くわす。
緑色のありえない髪色の、コスプレAVに出てきそうな超絶美少女である。
「なんだよ、俺は物語小説の執筆に忙しいんだ、コレがオレの今の人生で一番やるべき事だから、やるんだ」
俺は無視して、某大規模ネット小説投稿サイトに、不定期に投下している小説を一本書きあげた所だった。
「いやいや、その件で、お話が有るんだよぉー」
「あの件か?
だったら問題無い、R18か、それ以外に、観測者が駄目だと言いそうな、世界の均衡を狂わすような事は書いてないぞ」
俺は自信満々に言ったもんだ、そういう自信があるからだ。
「うんうん、確かに、君が書く文章は、世界を狂わすような電波を受信しない、
だけどバックグラウンドで、君の世界には闇が潜んでいるんだよ?」
オレの脳には、とある情景が浮かび上がってきた。
エミリとレイア、二人の超美少女は携帯ゲームを片手に遊んでいる。
「ルナルティアって、治安維持組織って、あったっけ?」
「ないわよ」
「それじゃ、あれは何かな?」
「さあ、多分、ルナルティアの広域治安維持官」
「ああ、正義の味方って奴かぁー、退屈なことしてるねぇ」
「給料と、賞金首を狩れば褒章が出る、所詮は仕事よ」
「ふーん、私達じゃん」
「そうね、知ってのとおりよね」
二人は、賞金首を網に掛けるまで、長く待機していて、暇していたのだった。
「しかしさぁー、最近じゃ遠距離から魔弾で狙撃しても、意味ないじゃん、相当雑魚じゃないと当たらないよ」
「当然よ、既知なのだから、対策を取られるのは必定」
「やっぱ、伏せ札に切り札が、必要かぁー」
「貴方は、どれだけ隠してるの?」
「レイア先輩ほどじゃないっすよ」
「そうでしょうね」
画面内のアバター、黒髪の魔女は、己の魔術書を閉めて、
魔本系のとあるスキルの経験値が、幾らかアップしたダイアログが流れた、
指し示す。
「来たわ」
レイアはソファーに寝っころがりながら、エミリは椅子に足を組んで、くつろいだ姿勢でポテチを啄んでいる。
「うん、ターゲットだね、うわぁ、写真と一緒の、いかにも外道で鬼畜なオークじゃん」
「タナトク級オークよ、重騎士が十人がかりでも手を焼く程度の、って、もう」
「あ、ごめん」
「別にいいわ、今回は、雑魚だったってこと、私はいらなかったわね」
「いやぁいやぁ、いたよ、ずっと長い間ひとりで待機とか、それってどんな拷問って感じ」
「そう、ならよかったわね」
「うん良かった良かった、さあ、帰ろう♪」
ゲーム内の二人は次元の扉を開けて、元の場所、ルナルティアに帰還するようだ。
「おいおい、これがどうかしたのか?」
「この後二人、レズの感じになった、はいBANね」
「ああー、わかったわかった、改変して修正しておくよ!」
また別の場面。
「暇だ暇だ、死ぬよぉーーー」
「暇じゃなくても、わたくし何時も死にたいわ」
そこから直線距離で、次元を超えて、すこし離れた場所にて。
荒廃した工事現場のような有様、超高層ビルの、最上階よりも二階ほど下。
「レイア、駄目だ駄目だ」
「なにが? エミリの言ったとおり、弾道調整してあげたでしょう?」
エミリと名のつく少女は、長距離スナイピングに最適な、中腰の構えを取っていた。
その姿勢のままで、目線を向けずに言う。
「にゃははぁっ、カップ内の液体が、盛大にシャロに掛かったのはいい。
だがしかし、その半分の跳ね返りが、まだ甘かった、ヘルには避けられた」
「どうでもいいことよ」
レイアは確かにどうでもいいことのように、冷たく何の感情も篭らない声を出した。
真っ黒な魔道書を開かせて、光放つ何か、そこに描かれる情報を閲覧するかのように、そのページを見ている。
「なにしてるの?」
「漆黒のダンジョンの運営」
「捗ってる?」
「直属の眷属に、後継者として任せてるのだけど、余り上手く行ってないわ」
その会話の間も、何度か狙撃の音が続いていた。
「????おい」
「この後二人はレズ的にあーだこーだライ」
「改変改変」
また別の情景。
俺は小難しい書籍を読んでいた。
星図詠図書館、あるいは出版社刊行の「失われた神の計画」
オカルト的内容も多分に含まれた、一片の真実を記した書籍だろうと、個人的分析。
他に似たようなモノだが、観測者特権を高度に有した、フィラデルフィア所属の未来人、
これはイワユル”絶対の勢力”が公開した、
おそらく秘蔵文章中の秘蔵だろう、の訳文「破棄された神の第七創世計画」、その書あるいは原典の。
「ふぅ、、、」
俺はブラックコーヒーを嗜みながら、インテリぶって悦に入った。
やはり知恵の本流に晒され、高度に己の内的空間を拡大させる、この感覚は良いものだ。
人は知識欲を求めずにはいられない、それは神に近づく尊き行為なのだろうから。
「兄貴、結婚しよう、エッチしようか?」
ひょこ、差し出されるは手、対面の席の人物は妹。
「なんだマヤ少尉、俺は読書中、邪魔するなら殺すぞ」
「嫌だな、冗談じゃん、ごめんよぉお、ゆるしてよぉお」
うざい奴め、俺は無視して読書に戻った。
「????コイツらは別にいいだろ、夫婦みたいなもんだろ?」
「だめだめ、エッチしない夫婦にしてください」
「はいはい、R18の棚に移動しておくことで、返させてくれよ」
辺りは紫系統のネオンに包まれたジオラマ。
ここは幻想都市、ルナルティア。
俺は、妹の伽耶と、喫茶店でお茶していたんだ。
「おいおい伽耶、唐突過ぎだぞ」
首筋には鋭利な、馬鹿みたいに銀色にギンギラギンにさり気無いナイフの切っ先があった。
「断ったら、どうなるか、分かってるよね?」
悪戯っぽい所作。
日頃から可愛い妹は、常に俺の心を暖め癒し飽きさせない。
でも、こういう過剰なおいたには、目が余りかける。
だが、幼い頃の若さゆえの過ちで、俺は妹に頭が上がらない。
絶対的で致命的な、それは、弱みを握られているに等しい。
「そんなに、したいのか?」
俺はなんとなく、聞いた、それとない疑問。
妹伽耶は、余裕の微笑を貼り付けて、色っぽい流し目。
「ふふん、実兄だからこそ、そこには燃える、ロマンってのが、あるのさ」
不可思議な、淫靡さで魅力、俺は、これが堪らなく好きだ。
あの頃も、この妹の幼い、今も変わらず幼いが、色香に惑わされた。
「そうか」
「そうだよ、兄貴が、全部教えてくれたんだよ?」
俺は何度も何度も、そう、教えた。
決して贖えない、罪悪と背徳を繰り返した。
はい、自覚があるのだ。
「まだ、怒ってるか?」
「ばか、感謝してるよ。
脆く儚い、繊細だったなにもかも、ぶっ壊してくれて、むしろ喜ばしい」
何か振り切るように、伽耶は立ち上がり、俺にそのまま迫って、しな垂れかかる様に、押し倒してきた。
「まったく、しょうがない妹だ」
「しょうがない妹にしたのは、誰だ? 責任を取るべきとは、思わない?
思い出してみて? 私にしたことの、一から十まで、全部という全部」
「そうだな、俺は、鬼畜外道兄貴だったな」
「そうだよ、責任取れ、馬鹿兄貴」
そう言って、その口で唇を塞がれて、強く圧迫されて、おまけに何かぬるりとした物が挿入された。
改めて考える。
「俺は、生粋の悪人なのだろうか?」
と、鬼畜外道兄貴、そんな奴なのだろうか、と。
「こんなに可愛い妹に対して、認め難い悪行ざんまい。
それが、ポジション的に立ち位置的に、、、兄貴、考えてみて?」
あれは、そのような行為だったのだろうか、正直な話、今でもよく分からない。
事実を在りのままに、形容し表現するならば、
未熟で繊細で敏感な、無垢で初心な身も心も壊した、壊しに壊した。
「私は嬉しいよ、快楽の限りを叩き込んだの」
一心に一身で、多いときは五回以上、朝も夜もなく、殺したい時にコロした。
不老不死、同じ血族、咲き誇る四夜、大輪の一族。
「四つの夜を支配する、大円環輪の世界の一族」
身近な異性、そんな程度の、些細な理由と動機からの始まり。
兄である俺を、この妹に、溢れるほどに知らしめたかったのかもしれない。
余りにも、返ってくる反応が甘美で、感動的なまでに、支配欲と征服欲を満たした。
現に、この妹は、俺の意図を最大限尊重し、指の一本すら、俺に捧げてしまいたくなっている。
俺が、そのように、してしまった、責任を感じている。
「ごめんな」
「いいよ、その代わり、私だけを見てくれれば。
兄貴にとって、女性は沢山いるけど、私にとっての男性は、生涯でただ一人、兄貴だけなんだからな」
「お前にとって、俺がそうな大層な存在なら、俺だって、伽耶を、妹をただ一人の女性にする覚悟だ」
「信じられないよ、鬼畜外道兄貴の言う事だもの、、、殺して、○○○でしょうめいしてみせて」
「ホント、しょうがない奴だな、今日は寝かせないぞ」
言って唐突に、俺は伽耶をお姫様抱っこして、連れ出す。
「きゃ、兄貴、駄目、こんなところでぇっ」
「連れて行ってやる、天国だろうと何処にでも、俺には、そういう責任があるんだろう?」
「いっ意味分からない、言いたいだけの、出したいだけの、自分勝手、、、でも、しゅきぃいっ」
胸に抱える、重みを全身で感じながら、俺は額にキスしてみる。
「俺のすべてで、愛してやる、守ってやる、幸せにしてやる」
「うぅ、、そ、そうだよぉ、兄貴には、わたしを、幸せにする、責任がっ、あるのぉ、、、」
「・・・・・間違えた、これはそもそもR18として書いて、そのつもりで、あっちの方に投稿したモンだった」
「極点AR、運営にBANされる前に、さっさと移しておくんだよ?」
そんな二人を、近場のホテルまで入るのを、観測している存在がいた。
そこから僅か離れた、空けたテラスだ。
「まったく、メロドラマですわね、ルヘル」
「うん、シャロは、ああいうのは好み?」
「さあ、私には姉しかいませんが、姉に、ぶふぅっ、」
超長距離から、何かしらの飛翔物が、突撃したのだろう。
シャロの持つ、カップがピンポイントで吹き飛ばされて、テラス下の庭園に落下する。
「シャロ」
「なにかしら?」
お互いが見る、遠方の場所を、ここ同様に喫茶店の趣の、幻想的な配色、装飾の成された其処。
「何か来るから、用意しておいた方がいい」
「どういうことかしら?」
立ち上がる二人。
シャロと呼ばれた少女は、無形の構えで、腰のレイピア剣の柄を握る。
もう一方は、背中に背負った、大振りの凶器、デスサイズを構える。
「なにこれ最悪だわ」
「うん、異次元から、超長距離で放たれる、これは魔弾」
二人は無傷だ、しかし、せっかくの時間が台無しである、いらっとしている。
そんな所に、上方から影。
「あらあら、お困りのようですけど、手助けが必要ですこと?」
言った瞬間には、球形の大型魔方陣が展開されていた。
ホログラムのように、蒼と紫に発光する、それは防御に特化した円状の防壁。
辺りを光の粒子が浮遊する中、中空に佇むゴシックな衣装の、いかにも魔女が、したことである。
「僕達、通報を受けて、きたんだよぉー」
佇む魔女の後ろから、ひょこ顔を覗かせるように、こちらも飛んでいるように見える。
よく見れば、それは、近未来的な、何かカッコいい箒に乗った、緑髪ツインテールの、スーパーロングヘア少女であった。
その少女、ダブルピースしている。
それになにか、魔法少女コスプレと学生服を合わせた様な、いかにも萌え萌えとした、あざとい格好してる。
「観測者だよぉーーーーーーーー」
「こらっイリス」
「あにゃあっん! なにするんだよぉーっクエス」
「あんぽんたん、貴方がしゃしゃり出ると、途端にミステリアスな、黒幕風味な雰囲気、語り口調が台無しになる」
「ふぇぅ、僕達は、何時からそんななったのぉ」
上方であーだこーだ、勝手に言い合いを始めた二人を、下の二人。
金髪碧眼のシャロ、銀髪赤目のヘル、輝かしく美しい双方の瞳が、胡散臭げに見つめていた。
「あれは、世界を影から陰謀で操り、権謀術数で支配する、大いなる何か、、なのかしらね?」
「違う」
「でしょうね、大方ただの、広域治安維持官、つまり観測者」
「おいおい、お前が出てきてるんだが?」
「うん、そうだよ、この後、この子とR18な事をしている件を直して」
「クソが! そんな所までフォローしないと駄目なのかよ!」
某真なる作者も楽じゃないのだった。




