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イルミナードと覇者の日常的邂逅



 今日も今日とで、終わらないゲームシステムの調整と、

 近日公開宣言しておいて音沙汰が無いと思われないタイミングで、ギリギリまで引き延ばす恒例の新しいイベントと、

 加えて、あっと驚く系統の敵性クリチャーのヴィジュアル微調整などの、めんどいかったるい作業ゲーをしていた頃だ。


「マジで、俺のする、この作業が既に無限大のクソゲーな訳だが、作業ツールが悪いんじゃねーのか?」


「我の作ったツールだ、最強であろう? それとも汝は人狼なりや?」


 突然聞こえる声、いつの間にかこの執務室のドア前に、全身白づくめの超絶美少女が居た。


「なんだ? 法王、それとも最近貴様が流行しだした大主神官と詠んだ方が良いか?」


「どっちでも良いぞ」


 偉そうにふんぞり返りながら、こちらに歩いてくる。

 この少女こそ、イルミナード女王と権力的には二分する、この王国の二大派閥の首領、

 そして、この世界を最初に構想し構成した立役者、

 アウルベーンという世界の方向性・新領域、それにおける絶対無二のエーテル索源地を創設したモノだ。


「おい、イルミナード、今日のお前は、酷く偉そうだな、慢心は慎め」


「嫌よぞ、我は偉くなったのだ、存分に偉ぶって、ナニが悪いのかね?」


 ツカツカ歩み寄って、俺の目の前で、あまり無くは無くも無い胸を張っているのだった。


「おい、何の用だ?」


「もちろん、用が有ってきた、この件だ」


 眼前に立体ディスプレイが展開されて、イルミは言いたい事を直接的に俺の脳髄にインプットしようとする。


「なるほど、この王国を中心点として、現在のプレイヤーが分散しまくる体制を変えたいのか?」


 俺は概要を高速で一覧して、コイツの言いたいだろう結論を問う。


「そうだ、イルミナード王国の半径、そうだな、そこを段階的にラインとして、プレイヤー人口を外側に行くほど少なくする構成が良い。

 現状は様々なイルミナード辺境都市にプレイヤーが分散し過ぎる、

 一極体制でツワモノが集っていた方が、初見のライトユーザーなどには受けが良さそうだ」


「それは一過性のプレイヤー人口の増加だろう?

 熟練プレイヤー、へヴィーユーズするプレイヤーは、世界の多様性、果ての無いほどの無限大の世界観、ダンジョンなどを希望する場合が多いだろ。

 イルミナード王国に留めるにしても、文化の多様性を維持したまま、それが可能だと思えるのだとしたら、知的生命体の限界を知るべきだな」


「もちろん、そういう諸々の問題はある、だが現状の問題点も無視できないのではないか?

 イルミナード王国には、ナニが有る?

 確かに女王近衛部隊は強力にしてカリスマもある、魅力的なゲーム要素だ。

 覇者もそうだ、覇者の王国を征服したUM、ユニオンメディアのグループは、世界的にも伝説的な超絶英雄として語り継がれるほどだ」


 イルミナードはそこで言葉を切って、淡々と告げる。


「だが、逆に言えばそれだけだ、それだけが特筆して魅力的な、現在のイルミナード王国の全てになってしまっているのだよ。 

 初見のプレイヤーは、まずは一番にぎわっている場所に目を向けるモノだ、そうだろう?

 そこがまず最大の見せ場だ、

 もっと集客する為には、多少世界の多様性を犠牲にしてでも、これを成すべきだと思うが?」


「一理ある、だが一理あるだけで、それは現実を見据えないクズの提案だ。

 現状の最大に最適に推移している事象を、成功ヴィジョンの底が知れない提案程度で崩すとでも思っているのか?」


「もちろん、我も成功のヴィジョンも無く、こういう事を言っているのではない、

 矛盾の大都市、エクストラシャペルンの例をあげる、あそこをモデルにして全てを成すのだ」


「それこそ机上の空論だ、あんな特異点は、世界の王者、つまりはアルドという、世界の方向性レベルの逸材が居て、始めて成せるものだ。

 お前だってそうだぞ?

 アウルベーンという最強の中心点が、壮大なソーシャルネットワークの組織を作り、

 最終的に、お前に全てが集まって、壮大な世界がイルミナードに集束しているだけだ、

 現在の全ての初端は、アウルベーンが管理運営する、イルミナード辺境都市として括っているが、実際はもっと根が深い場所だと自覚するべきだな」


「辺境は世界を構成するピースだ、しかしイルミナード王国が絶対の力を持っているのだ、それは否定できない、させもしない。

 つまり我は打ち明けるが、王国による占有がしたいのだよ」


「結局はそれか、貴様がしたい事は常に決まりきっていたからな、

 貴様のような暴虐の駒をもって、アウルベーンもさぞかし苦労しているだろうよ」


「いいや、主様は我の成す事を肯定している、戦争したいのならばすれば良いと、何事も全ての権限を委譲してくださっているのが、その証明だ」


「そりゃそうだろ、新領域の一翼だ、全てを構成するピースが無限に重要視される、お前だけが例外で、あるはずもないってわけだ」


「それで? どうするのだ? 我に従ってくれるのか?」


「やるなら勝手にやれ、教会が動く分には、王室は関与しない」


「という事は、現在のイルミナードを円形に包囲する奴らに、例えば我が先駆けで先陣を切ってしまっても、問題無いと?」


「ああ、最初からは俺は、教会なんて無いモノとして、この王国の戦略も戦術も何もかも、

 砦の一つからして王都の防衛プランを立ててんだ、本当にガチで勝手にしろ」


「手助けはしてくれないのか?」


「ああ、? なんだ藪から棒に、俺に頼る気か? 言っておくが、俺はお前のツンデレのデレの部分でも、絶対に微動だにしない精神の所有者だ」


「我こそ言っておくが、新領域が新領域たるゆえんは、己が道を己が全てで切り開く事があげられる、

 もし仮に、絶対に助力を請えないのならば、それは所詮は我の力ではないのだから、そもそも貸してもらう理由も無いのだ」


「それで? どれだけの対価を用意できるんだ?」


「我が貴様の要望するモノを予想しろと?」


「そういう事だ、交渉事ではそういう駆け引きが絶対重要なんだ、さっさと出せるだけの対価を上げてみろ、話はそれからだ」


「下らん、我はそのような程度の低い駆け引きはせぬ、そんな下らん事をするくらいなら、助力など請わぬわ」


「おいおい、急ぎ過ぎだ、俺だって目的がある、お前には言っただろうが、

 あの例の世界三大ネットワークの一角だ、あそこに出戻る為には、世界の方向性に匹敵するレベルの、純粋な世界レベルのエーテルが必須だろう事が予測されてんだ」


「貴様も難儀過ぎる人生を歩むのだな、我の新領域というイデアと良い勝負であろうよ」


「ああ、そうだと思うぜ、この世に無いモノを、この世発信で創世するのに比べたら、俺が若干負けてんじゃねーかと勘違いするほどに、

 でだ、どれ、手始めに俺の要望するコスプレで、イルミナード、お前が娼婦のごとく振る舞うってのは、はたして面白いのじゃないか?」


 俺は提案書を急速展開、すけすけのネグリジェで、娼婦のまねごとをするプランを出した。


「なるほど、我がコレをすれば、王都の一部隊を貸し出すと?」


「他にも様々なプランを用意するぜ、段階的に対価を等価交換できるんだ、商売は長期スパンで信用と信頼、実績作りが大事だからな」


「、、、、考えさせてもらおう、、今日は失礼する」


 らしくなく赤面するほど、コイツが提案された格好は卑猥に過ぎたんだろうよ、逃げるように執務室から出て行ってしまったのだった。


「さて、イルミナードもそろそろ動くだろうよ」


 俺の計算の道理だ、この世界の均衡も、あの円形の包囲陣が出来てから、崩れつつある。

 イルミナードは初見のプレイヤーが集まる場所、円形の包囲陣は出入りが難しく、人やモノ、その他の流通が阻害される。

 転移が可能とは言え、ゲーム的な旅の、そのような制約は著しくあれこれが欠ける。

 そしてイルミナード辺境都市から、初めから円形包囲陣を迂回してゲームを始めれば?

 つまりイルミナードというゲームの収束点の影響力が弱まるのだ。

 これは幾ら強力な中軸でも、それこそ絶対の勢力でも、無視したくない程度には問題だったんだろうよ。


「実際、戦力的には問題が無さ過ぎる、イルミナードは既にゲームリソースの極点を手にしている」


 復習程度に計算するが、結果は同じ、このイルミナード王国は、絶対に落ちない。

 純粋に無限大の兵隊が送り込まれても、時間さえあれば完全に撃退できる。

 これは極点を極めたHP・MP自然回復能力と、もろもろの極点まで極めたパラメータ的に、絶対と断言できる特異点の事象が此処に存在するゆえんだ。


「しかし絶対の勢力があっても、成せない事がある、それこそが新領域の真の渇望があってこそだろうよ」


 俺は黄昏に呟きつつ、最終的には全てが掌に在る実感を持っている。

 こんなのは所詮は、掌から零れた砂のように掴みどころが無く、覆水が盆に帰らない一時の気の迷いが生み出した幻覚だと知っていたのだった。

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