白の吸血姫アラヤ-対ハスラーの物理で無双艦隊
「今日は滅茶苦茶に好調だぜぇ!」
戦艦内部に忍び込み、目的達成の為に暗躍する。
標的は此処ではない場所にいる”リスラー”とか言われる女だ。
この多少特殊な戦艦からの特殊な一砲撃により、強固な防備を誇る場所にいるソイツをこの世から消滅させる、それがミッションだ。
高速で通路を移動し、内部人員にかち合う前に察知、進行の邪魔になれば瞬殺していた、気づかれた様子は無い。
メインコントロールルーム、そのドアと後方の隔壁もろとも消滅させて、ソソクサと内部へ。
「やはり、曲者が来ましたか」
何人かの部下を横に並べて、広大に見える中央の広間に立つ男がいた。
だが隙だらけに見える、ちょっと殺意と共に能力開放、顔面に叩きつければ簡単にソレが爆散した、口ほどにも無い。
だが次の瞬間に、ソイツの首から黒い霧が溢れて、こちらに向かってきた。
「混沌かぁ?!!」
触れれば危険、致死の感覚に持てる最大の高速でその場を退避。
コレに対する何かを思考、多分効果ありそうな戦術を選定、実行。
銀の短剣、それに意思を巨大に乗せる。
この場でのみ秩序を信仰、銀の種族としてアクセス。
煩わしくて面倒な偽装も挟んで、俺自身が吸血鬼である事を隠す。
白く光の燐光を放ち始めたのを確認後、いきなり逃げ腰からの方向転換、黒い霧に向かう。
「くらえやぁああドクサレぇ!!!」
黒い霧は拡散しようと逃げるが、俺の手の内から溢れ出る白い光に飲み込まれて、一片残らずの消滅を確認する。
感覚的には楽勝な心地になりそうだが、客観的には、それなりに危うい戦闘だったな。
この手法自体は簡略化効率化された技法だ、知っていれば誰でも扱えるわけじゃないが、何度も予習復習すれば実践に耐えうる力。
しかし、力の大元にバレれば末代まで祟れるに値するヤバイものだ。
アクセスの際、一定の確率でミスする自信も確信もあるから出来れば使いたくねぇーかった。
とりあえず、まあいい、先程の目的地の場所からちょい遠く離れた。
時間を惜しんで素早く処置に入る。
時空間振動系、666ミリ超振動波動体射出砲、これだこれ、これで標的を確実に殺せるはずだ。
プログラムを組み立てる。
万全を期すために一瞬で行うのが肝だ。
標的の艦に、正確に精密に、この一発だけをクリティカルヒットさせるのが全てなのだ。
標的推定、間に雑魚艦がうじゃうじゃ入るが、どれも防備が紙だから問題なし。
そして肝心の標的の艦は通常巡航、シールド強度は観測機により70%で一定、最大にされなけりゃどうにでもなるレベル。
「よし、それじゃずらかるか」
この艦が必殺の一撃後、四面楚歌状態で周りの幾千の艦から集中砲火で一秒もたないのは確定している。
まあだから、時間設定して、俺が離脱後、今製作したプログラムが事前の指示通りこなしてくれるってわけだ。
きっちり頼むぜ、マジでな。
俺は単身でこの戦域の、特定の別の艦内にワープする。
この艦内にある第八世代機が必要なのだ。
俺は上位魔術師なので、普通なら専用の機器が必要なワープを独力で行える。
だが、この戦域、具体的には俺の陣営の絶対防衛ラインまで逃げるのに、最低でも30回はソレをする必要があるのだ。
身一つで、それは無理だ、途中に休息を必要とする。
だがワープ機能の付いた機体があれば、それは可能ってことだ。
俺自身の空戦技能、更に単独で機体ごとワープさせる事も考慮して、この四面楚歌から無傷でトンズラできるのは固いのだ。
艦隊内部から外の標的艦の様子を見てみる、この艦の艦橋から送られる観測機器からの映像だ。
俺の腕輪端末から立体映像として現れるソレは、改めてみて装飾過多、しかし堅牢で重厚な形をした巨大艦だ。
正攻法じゃ、こりゃ落とすのに労だぜぇ。
そして刻限、あまり意味ないが自然カウントしていた。
、、、3、2、1、ファイア。
それは一瞬だったろう、さきほど俺が居た特殊戦艦が反転、特殊砲がその力を標的艦に解き放った。
稲妻を纏った紅の一線が、標的艦のエネルギー中和シールドを貫いた。
傍目からは、標的艦の全面に展開されたシールドが可視できるほど色彩豊かに輝いているように見える。
シールドの放つ光がなくなり、標的艦が見える、もちろん中心を垂直に貫かれている。
その姿を一瞬でなく晒し続ける、多少シュールだな、まあ宇宙戦艦は簡単に爆発しないから当然か、炎上するとしても内部の燃料とか弾薬に引火するか、それにしても安全装置が付いてて簡単に引火しないが。
そんな思考をしながら、標的の消滅を確信できる指揮系統の乱れを確認、どうやらしとめ損なったってのはまず無いだろ。
俺は機体に乗り込み、直ぐさまフルスロットルで離脱にかかった。
機体を艦橋の指示通り、外に出す、これは指揮系統の混乱のなか、俺が偽装した旗艦からの指示である。
少しでも俺の離脱が露見するのは後の方が良いからな。
宇宙空間に出る。
周りは昼のように明るいクリーム色の空間。
この宇宙は永遠に続かない、端の外側からの光量により、このような特異な光景が現出する時空だ。
俺は、機体をワープ航法の為の、異相空間航行時の状態、つまり特殊シールド発生装置起動、その一瞬前までもっていく。
俺は俺の、高次な魔術師としての技術によって、機体ごと一瞬にして、元の場所より百万光年飛ばしワープさせる。
もちろん、これは敵に露見する、艦隊全体としても警戒状態だったから、幾ら多少混乱してても俺は追跡される。
だがダメ押しにもう一回、この機体のワープ装置で更に百万光年飛べば、追跡は容易ではなくなるのだ、計画通りってやつだな。
自陣営絶対防衛ラインまでは、端の方で多少追い詰められたが、もう大丈夫だ、ついでに此処にも用はない。
俺は俺のもと居た世界に帰還するための魔術を発動させた。




