表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

314/588

SFネット小説神話伝説譚‐何かの因縁話



 ネットの最奥の底に、そのサイトはある。


 現存、掛け値なしに最高レベルの娯楽小説が、そこには掲載されている。

 内容はスペースファンタジー。

 物語の舞台は、光速の壁を突破して、移住圏を全宇宙に拡大した世界。

 概要は、そこで巻き起こる、壮絶で凄惨、涙も枯れ果てるような戦役の時代を生きる、少年少女とその周りの人間達の成長とドラマである。


 現在、本編は13部まで更新されている。

 全17部が予定されており、プロットは既に完成している、と公表されてもいる。

 現に、作中世界の架空歴史年表等々、幅広い意味での設定資料は、事細かにサイト内で閲覧することもできる。


 文書量は13部の本編だけで、文庫本260冊分である。

 さらに、キャラクターや、作中世界の様々な、戦争・経済・社会・学園生活・過去・IF・未来等々を描いた、外編・外伝等々も存在する。

 それは(無駄に多いので)全890部が(大幅に変更の可能性大とされている)予定されており、現在560部まで完成している。

 付け加えると、物語世界における、事象・現象・存在・世界等々の一般に公開されている設定資料集は、上記文章量の十倍以上である。

 これらは分量はもちろん、内容も様々な意味で、相対的に絶対的に超一流の内容である。

 この、全てからして規格外のようなその、ネット小説あるいはサイトは、ある意味での”現代の神話”と呼ばれている。


 そして、それらの実態は、およそ総勢十数人、ネット上での創作者達による合作だったりする。

 目的は、”一生を尽くし掛かっても味わいつくせない、読みつくせない物語の創造”。

 または、”世界の至高位存在たちが退屈して、破滅・破綻・崩壊的な娯楽に走らないようにする為の、深遠なる娯楽の創造”とかである。


 俺は、その小説の敬虔で熱心な信者である。

 さらに言えば、設定資料を創作する、準創作者の一人でもあったりする。

 今目の前には、本編を執筆することができる、類稀な能力と権力を有する存在が、偶然でなくいたりもするわけだが。


「おいシャル、早く続き書けよ」


「いや、最近書いてても、面白くなくなってきたから、スランプってやつぅ?」


 俺が死ぬほど望んでる事柄に対して、本人は酷くどうでも良さそうに言う。

 ムカつくが、それよりも今は、目の前のコイツのショーツ一枚のあられもない脚線美と、薄地のネグリジェに浮かぶ胸の膨らみを凝視しておこうか。

 まったく、なんてソソル身体してやがる、けしからん。

 グラマラスな体系というわけではない、が、細身ながら付くべき所にはしっかり肉がつき、黄金のような比率で絶対に比する美を体現しているのだ。


 俺は、自分を自分で卑下しない程度には、人間としての格が高い自覚がある。

 しかし、これほどの圧倒的で絶対的な”美少女”という存在に、勝てているかどうか、、。

 俺は率直に、彼女、シャルに負けたくない。

 俺を負かしていいのは、俺の信奉する小説だけだ、それ以外の一切の事象に平伏するつもりはない。

 だから、、、どうするのか?

 余りにも可愛くて、綺麗で、美しくて、どうしようもない、はっきりとそう言ってしまえる。

 目に映るだけで、胸が一杯になって、ドキドキして張り裂けそうで、あるのだ。

 俺は俺の認めた、許した、それ以外の彼女、シャルという存在を絶対に否定する、例え何がなんでも、あっても。

 いまこの瞬間も、俺の絶対に譲れないアイデンティティ、それと他にも絶対死守するべき何かを圧し折っている。

 絶対に耐え難いほどの劣等感、コンプレックスや羞恥心が湧き上がり、内心で爆発しながら、常時俺を責め立てるようにあるのだ。


「うん?」


 今も、横目で彼女がチラッとこちらを見てきた、ただそれだけで、ときめきが大変だ。

 そして言葉で攻められたら、俺はどうしようもないだろう。

 なにせ、あの物語を創作する人物なのだ、その言葉は俺を衝天させるほどのモノでも、なんら不思議はない。

 だが、俺は認めないのだ。

 俺は彼女と物語を完全に分離し、分けて考えている。

 彼女は物語を創造する再現装置で、信仰の対象ではない。

 信仰する神と、聖書を創作した人物とをイコールで結ばないような、そんなモノなのだろう。

 とにかく、俺は絶対に彼女に屈しない、俺の信愛する物語に誓って絶対にだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ