偉大なる銀の血統‐女王の至宝騎士
「後発組みって言うのは、かくも儚く脆いものね、惨めぇ」
第三世代機である私は、雲霞の如き敵を次々とその命と共に落としていく。
「さて、だいたい片付いた、もう帰っていいよねぇ、シンディ?」
機体内のウィンドウに移る金髪娘に問う。
「ええ、いいんじゃないですか、だいたい私は貴方にどうこう言う立場にありませんしぃ」
なんというか、相変わらず可愛げのない娘だ、まあいいか。
「それじゃ、さよなら、用があったら気軽に呼んで頂戴」
「そうさせてもらいます」
人という存在が遍く増えすぎて、もう宇宙のどこに言っても静かな場所が無くなったような時代。
私は力を持つ存在として、曖昧な立場を取れない中、まあそれなりに最終的勝率の最も高そうな勢力に所属した。
役割は酷く微妙な感じだ、良く分からない力を持つ多少不気味さすら漂う私だ、外部協力者的に扱われている、ようだねぇ。
「何もする事がないって、凄くひまだなぁー」
連邦の都市、そこに今私は居を構えている。ここからなら主要な戦域に最も速く辿り着けるからだ。
草木が左右に均一に聳え立ち、何でもない一般的な都市の町並みを散策する。
適当にウィンドウショッピングを巡って、昼のランチタイムを済ませてから、まだ何かする事は、したい事はないだろうかと思案する。
「ああ、何もないや、特にやりたい事もする事も、ただ何となく在りたい、生きていたいだけなんだ」
ちょっと止めるべきかも知れない独り言、この癖は別に矯正する必要性に迫られないからずっと放置している。
徒然に歩きながら、続き続ける私の時間、人としての生を改めて考える、そのなかで自分の在り方をどう在らせるのが最も良いか考える。
見つめても、答えは出ない、現状を維持する以上の案は、いつも何時でも私の独力では浮かんでこない。
「シャルロッテ姉さんが転生でもしてくれれば、いいのになぁー」
私の生の中で、唯一強烈な印象と共に在り、とうの昔の過去に散った、女性を思う。
彼女は見ていて飽きない、あの悪たる独善的で我侭な有様は、なんとなく私に近いモノがあるし、放っておけない。
その運命からしても、私と近似する、相似関係にあるから、惹かれたのかもしれない、相手の方は知らないけども。
わたしの中で屈指の影響力を持つ唯一存在、もしまた出会えたなら、恋心としてあの人に思いを告げるのも、はたして良いかもしれないな。
そう考えつつ、街路の液晶になんとなく目線が合わさった。
ただの何でもない、超銀河的超大作の宣伝ムービーが流れていた。
へぇ、あの過去の大戦のぉー、何回リメイクしたか知らないが、今回も無駄に予算を掛けて面白くなっているといいな。
まあなんというか、過去自分も盛大に参戦した戦いの記録を綴った映画だ、興味がないわけでもない、直接知っている人間もかなり出てくるし。
よし、明日あたり、劇場に直接足を運んで見てみようかね。
その時の私は、本当に吹けばどこにでも飛ぶような、無気力な状態だったんだなと、後になって思う。
自らに大きく影響を与えてくれるモノが、この広い宇宙に何にもないのだ。
掛け値なしに一つとしてもないなんて、この時代を生きる人間のなかでは、超極レアに希少種だろう。
とりあえず、その行動によって、未来が大きく変わった、いや変わっていくのだろう。
幸か不幸かと問われれば、まあどちらとも言えないね、ただ私は生きたい様に生きるだけだろうし。
人生全体における幸福と不幸の総量も、とうの昔に測れなくなったような、その場のノリと勢いとテンションだけで生きているようなモノだ。
生きる指針、行動理念の究極に据えるのは常に一つだけ、私の情熱を動かしてくれるロマンみたいな奴だけだろうさ。
さてはて、振り返ってみて富みに感じることがあるね。
熱い血潮をダイレクトに感じれるような、本気になれる現実というのは、割合身近に簡単に、些細な切欠で触れられるのかもしれない。
少なくともそう信じて歩んでた方が絶対に良いって事。
人生に絶望する意味はないし、できる限り私は希望を見出し、出来る限りの最大限、最善を尽くす形で”それ”に近づきたいと何時も思っている、思える自分で在りたいからね。




